ある日、熱心にスポーツをしている子どもが
「膝を曲げると痛い」、「膝が痛くて全力で走れない」
と訴えたことはありませんか?
もしかしたら、オスグッド・シュラッター病が影響しているかもしれません。
「足が痛いのは成長痛」と放置していると最悪の場合、手術になることも。
そこで当記事では、成長期の子どもに頻発するオスグッド病の原因と簡単にできる対処方法を解説していきます。最後まで読んでいただければ、子どもが抱える膝の痛みを詳しく理解し、適切な対処法を学べます。
ぜひ、お付き合いください。
【成長期特有の痛み】オスグッド ・シュラッター病とは?
世間でよく言われるオスグッド病は、正式にはオスグッド・シュラッター病といい、小学校から中学生くらいの成長期にあたる子どもに頻発するスポーツ障害です。
オスグッド病を発症するのは、男子で11.4%、女子で8.3%と男子に多い傾向にあります。1)
また、オスグッド病の痛みは特定の場所に生じます。
膝には、膝蓋骨(膝のお皿)と呼ばれる骨があり、膝蓋骨の下に脛骨(けいこつ)という太い骨があります。さらに、脛骨の上部には脛骨粗面(けいこつそめん)と呼ばれる部分があり、オスグッド病は脛骨粗面が筋肉に引っ張られて少しずつ突出して、痛みが引き起こされるのです。
オスグッド病の原因
オスグッド病は上図にある大腿四頭筋(だいたいしとうきん)と呼ばれる太ももの筋肉が硬くなることで、太ももの筋肉が付着している脛骨粗面に負担がかかり、痛みが引き起こされます。
簡単にいうと、オスグッド病の原因は、スポーツによる膝の使いすぎ(オーバーユース)です。
また成長期は、急激に骨が伸びるため、筋肉が骨の成長に追いつかないときがあります。
結果、筋肉が骨に引っ張られた状態で繰り返し運動を行うと、オスグッド病になるリスクが高まるのです。
とくに、サッカーやバスケ、バレーボールなどジャンプや全力疾走など、膝への負担が激しい種目で発症するケースが多いです。
オスグッドの症状は、以下が挙げられます。
- 成長期の身長が伸びやすい時期に発症(関節軟骨が未成熟のため)
- 脛骨粗面がでっぱり、押すと痛い
- 成長期が過ぎると軟骨が成熟しているため腱に負担がかかりやすい
- 成長期を過ぎると脛骨粗面は痛くないが腱を押すと痛みが出る
オスグッド病の症状とその他の痛みとの見分け方
先ほど、オスグッド病の症状を解説しましたが、他にもオスグッド病に似た症状を引き起こす別の疾患も存在します。
以下ではその他の痛みとの見分け方について、それぞれの症状も含め紹介します。
ジャンパー膝
正式な医学用語では「膝蓋腱炎(しつがいけんえん)」と言います。
ジャンパー膝は、頻繁にジャンプを行うスポーツやダッシュを行う種目で痛みが引き起こされやすい症状です。
たとえば、バスケットボールやバレーボールなどが挙げられます。とくに男子バレーボールでは約50%の選手がジャンパー膝を経験すると報告されています。2)
ジャンパー膝の見分け方は以下が挙げられます。
- 膝の前面や膝蓋骨の真下に痛みが生じる
- 膝を曲げたり、伸ばしたりする際に痛みを感じる
- 運動中やジャンプ、着地時で痛みが現れやすい
痛みが出る場所はオスグッド病と似ていますが、ジャンパー膝は痛みが膝蓋骨の真下に出るのに対して、オスグッド病では膝蓋骨から指2〜3本下に離れた場所に痛みが出ます。
鵞足炎(がぞくえん)
鵞足炎とは、膝下から5cm程下の内側にある、鵞足と呼ばれる部分が炎症を起こしている状態です。
鵞足は、縫工筋(ほうこうきん)・薄筋(はっきん)・半腱様筋(はんけんようきん)の3つの筋肉があつまっている部分を指し、膝の曲げ伸ばしにより強い負荷が生じます。
主に、サッカーやバスケ、陸上の短距離走などが鵞足炎を生じやすい種目です。
鵞足炎の見分け方は以下です。
- 膝の内側、やや後ろに痛みを生じる
- 突っ張り、腫れが主症状
- 足に着いたときに、つんと来るような痛みがある
- 膝の曲げ伸ばしで引っかかるような違和感がる
ランナーズニー
ランナーズニーは、正式には「腸脛靭帯炎(ちょうけいじんたいえん)」といい、骨盤から太ももを通り、膝の外側まで付着している腸脛靭帯が炎症を起こしている状態です。
ランナーズニーは長距離ランナーに多く見られ、膝の曲げ伸ばしを繰り返すことによる、膝の使いすぎ(オーバーユース)が原因とされています。
一般的なランナーズニーの見分け方は以下が挙げられます。
- 膝の外側を押すと痛みが出る
- 太ももの外側が明らかに張っており、外側の筋肉に沿って痛みが出ている
- 初期はランニング後に痛みが発生するが、休むと痛みが消える
- 無理にランニングを続けていると痛みは強くなり、休んでも痛みが消えない
オスグッド病になったら運動していいのか
オスグッド病と診断された場合は運動を控える、または症状が軽い場合は運動量を制限することが必要になります。
オスグッド病は、発症初期であれば少しの安静で治るケースも多いです。
しかし無理に運動を続けていると、痛みが悪化し最悪の場合、筋肉の付着部(痛みのある部分)が剥離して手術になるケースも。
痛みが落ち着くまでは医師や専門家の指示のもと、患部に負担のかかる運動は控えましょう。
オスグッド病の対処法!症状を早く良くするためのオススメストレッチ3選
オスグッド病を早く治すためには、過剰な負荷のかかる運動はなるべく避けながら、筋肉の緊張を緩和するためのストレッチを行う必要があります。
以下でオスグッド病にオススメのストレッチを動画とともに解説しますので、ぜひチャンレンジしてみてください。
膝の曲げ伸ばし運動
膝の曲げ伸ばし運動がオスグッド病に効果的な理由としては、膝を曲げたときに、太ももの筋肉をストレッチすることができるからです。
オスグッド病は太ももの筋肉が硬くなることで、脛骨粗面にストレスが加わり、痛みを引き起こします。ですので太ももの筋肉を柔らかくすることは、オスグッド病に大変有効です。
STEP1:両足を伸ばし太ももを支えましょう
STEP2:アシストしながら膝を曲げていきます
STEP3:ゆっくりと膝を伸ばしていきましょう
STEP4:繰り返し膝を曲げ伸ばししましょう
※痛みがない範囲で大きく動かしましょう
ジャックナイフストレッチ
ジャックナイフストレッチとは、太ももの後面にある「ハムストリングス」と呼ばれる筋肉を伸ばす柔軟運動です。
ハムストリングスが硬くなることで、骨盤や背骨の傾きに影響し猫背姿勢になりやすくなります。また猫背姿勢になることで、オスグッドの原因となる太もも前面の筋肉に負担がかかりやすくなってしまうのです。
ですので、ハムストリングスを柔らかくすることで膝に負担のかからない姿勢にしていくことも重要になります。
STEP1:足首をつかみしゃがみましょう
STEP2:太ももとお腹を付けたまま膝を伸ばしましょう
STEP3:太もも後面の伸びを感じましょう
STEP4:元の姿勢に戻り、繰り返し実施しましょう
※太ももとお腹が離れないよう注意しましょう
腓腹筋(ひふくきん)ストレッチ
腓腹筋はふくらはぎにある筋肉で、立っている姿勢で大きく活躍する筋肉です。
腓腹筋はハムストリングスと同じく、下半身の後面に位置します。またハムストリングス同様、腓腹筋が硬くなることで猫背姿勢に影響するのです。
膝に負担のかからない姿勢にしていくためにも、しっかりとストレッチを行いましょう。
STEP1:壁に手をつきましょう
STEP2:前方の足に体重を乗せましょう
STEP3:ふくらはぎが伸びた状態を保持しましょう
STEP4:繰り返し実施しましょう
※踵が床から離れないように注意しましょう
オスグッド病にサポーターは効果的?
結論、オスグッド病にサポーターやテーピングを使用することは、根本的な治療にはなりません。
サポーターやテーピングは膝にかかる負担を軽減する効果があるため、動いているときの痛みを一時的に緩和することは可能です。
反対に、サポーターやテーピングで痛みが緩和されたからといって、無理に運動を続けると痛みが悪化する可能性もあります。ですので、サポーターやテーピングに頼らず適切なストレッチを行うことが早期改善には重要です。
オスグッド病はいつ治る?放置するとどうなるのか?
オスグッド病の多くは成長に合わせ、自然に治るとされています。
しかし放置して運動を続けるとより脛骨粗面に負担がかかり、筋肉の付着部が剥離してしまうケースもあります。そして剥離がおきると治るまでに最長で2年かかるとされています。1)
ですので、オスグッド病の可能性がある場合は、すぐに整形外科を受診しましょう。
まとめ
今回は、オスグッド・シュラッター病について、原因と対処法を解説しました。
当記事をまとめると
- オスグッド病はスポーツをしている成長期の子どもがなりやすい
- オスグッド病は太ももの筋肉が硬くなり膝蓋骨の下に痛みがでる
- 早く治すには運動を中断し安静にすることが大切
となります。
オスグッド病は、痛みを放置し無理に運動を続けると、悪化してしまいます。
もし子どもが、膝の痛みを訴えたら当記事の内容を思い出し、オスグッド病の可能性も考えてください。
それでは、当記事があなたの痛み軽減のお役に立てば幸いです。
参考文献
1)Smith, James M., and Matthew Varacallo. “Osgood Schlatter Disease.” (2017).
2)Lian OB, Engebretsen L, Bahr R. Prevalence of jumper’s knee among elite athletes from different sports: a cross-sectional study. Am J Sports Med. 2005 Apr;33(4):561-7. doi: 10.1177/0363546504270454. Epub 2005 Feb 8. PMID: 15722279.