膝の内側にふと触れたとき、今までなかった“出っ張り”を感じたことはありませんか?痛みを伴うこともあれば、見た目や触った感触で初めて気づくこともあります。
違和感が軽度でも、それが炎症や変形性の疾患によるものだった場合、放置すると悪化する可能性もあります。
本記事では、膝の内側に出っ張りができる主な原因や病気、見分け方、自宅でできるケア方法、そして医療機関にかかるべきタイミングまで、わかりやすく解説していきます。
最後までお読みいただくことで、適切な対処法を講じることができるでしょう。ぜひお付き合いください。
膝の内側に出っ張りができる主な原因(病気)とは
膝の内側に出っ張りを感じた場合、いくつかの代表的な疾患や状態が考えられます。原因ごとの特徴を把握し、自分の状態と照らし合わせてみましょう。
鵞足炎(がそくえん)|スポーツや歩行後に痛む人は要注意
鵞足とは、太もも内側の3つの筋肉(縫工筋、薄筋、半腱様筋)が膝の内側に合流する部分の名称です。ここが繰り返し擦れたり、筋肉の緊張が強くなることで炎症が起き、「鵞足炎」となります。
症状と特徴
- 膝の内側を押すと痛い
- 階段の上り下り、長時間の歩行で悪化
- 膝の内側に小さな腫れや出っ張りを感じることも
運動の習慣がある方やO脚傾向がある人に多く見られる疾患です。
参考記事:【膝内側の痛み】鵞足炎(がそくえん)を早く治す方法とは?原因と効果的なストレッチ3選を紹介
膝蓋下脂肪体の炎症・腫れ|柔らかい出っ張りを感じるとき
膝蓋下脂肪体(しつがいかしぼたい)とは膝蓋骨のすぐ下にある脂肪組織で、膝の動きを滑らかにするクッションのような役割を果たしています。
膝を強く打ったり、長時間圧迫された状態が続くことで炎症を起こし、膝の内側がぷくっと腫れるようになります。柔らかく、押すと痛むのが特徴です。
症状と特徴
- 膝の内側に柔らかい出っ張り
- 膝をつく仕事や正座の多い生活習慣の方に多い
- 初期は痛みがなく、進行すると動作痛が現れる
変形性膝関節症|中高年に多い、骨の変形による出っ張り
変形性膝関節症では、加齢や長年の膝への負担で関節軟骨がすり減り、内側に出っ張りができます。進行するとO脚や膝の可動域制限が出ることもあります。
症状の特徴
- 膝内側に硬くてゴツゴツした出っ張り
- 朝のこわばり、歩行時や階段での痛み
- 時間とともに膝の変形が進行
参考記事:【膝の内側の痛み】4つの原因の見分け方と対処法・ストレッチをわかりやすく解説
膝の内側の出っ張りがあるときの見分け方
膝の出っ張りが痛みを伴うか、左右差があるか、動作で変化があるかなどを確認することで、ある程度の原因を推測できます。
痛みの有無で見分ける
以下より、痛みの有無で見分ける方法を紹介します。
痛みがある場合
炎症が疑われ、鵞足炎や膝蓋下脂肪体の腫れなどが原因となっている可能性が高いです。特に押したときに鋭い痛みがある場合は、早めの対応が必要です。
痛みがない場合
構造的な違和感や軽度な腫れであることが多く、変形性関節症の初期や脂肪体の軽い圧迫などが考えられます。
左右差をチェック
次に、左右差を確認することでわかることを紹介していきます。
両膝を見比べる
出っ張りが片膝にのみ見られる場合は異常の可能性が高く、骨の突出や片側の炎症による腫れが疑われます。
曲がり具合にも注意
片方だけ膝が内側に曲がっているように見える場合は、膝関節のアライメントの崩れ(O脚傾向など)も考慮に入れる必要があります。
膝の内側の出っ張りに対する自宅ケア方法
出っ張りや軽度の痛みがある場合、自宅でできる対処法を取り入れることで症状の改善が見込めます。
安静と冷却が基本
- 炎症がある場合はまず冷やす(1回15〜20分)
- アイシングは日中2〜3回、痛みのあるときに行う
- 湿布も活用して熱感や腫れを抑える
安静にし、膝に体重がかかる動作は一時的に控えましょう。
サポーター・テーピングの活用
- 膝の内側を保護するタイプのサポーターを使用
- 簡易的なテーピングで膝の安定性をサポート
- 動作中の不安感や痛みを軽減する効果あり
使用時は締めすぎに注意し、長時間の着用は避けましょう。
自宅でできるストレッチ・マッサージ
以下で紹介するエクササイズを行うことで、膝への負担を軽減させることができ、炎症からくる腫れを抑える効果があります。
ご自宅でも簡単に行えるエクササイズですので積極的に実施していきましょう。
ハムストリングストレッチ
STEP2:上体を真っ直ぐし、体を前へ倒しましょう。太ももの後ろが伸びた状態を維持します。
STEP3:元の姿勢に戻りましょう。
注意点:腰を丸めないように注意しましょう。
内転筋ストレッチ
STEP2:両膝をおさえて骨盤を前方に倒しましょう。
STEP3:ゆっくりと元の姿勢に戻りましょう。
注意点:腰が丸くならないように注意しましょう。
タオルつぶし運動
STEP2:タオルを床の方向に押しつぶす
STEP3:ゆっくりと力を抜く
注意点:背中が丸くならないように注意する
膝内側の出っ張りが治らないときの注意点
自宅ケアで改善が見られない場合は、早めに医療機関を受診することが重要です。以下の項目を目安に受診を検討してみてください。
- 1週間以上症状が続く、または悪化する
- 歩行や階段昇降が困難
- 触れると強い痛みがある、赤みや熱感がある
まとめ
膝の内側に出っ張りを感じたときは、まず痛みの有無や動作時の変化を観察し、冷却やストレッチなどのセルフケアで対応しましょう。
改善が見られない、もしくは悪化している場合は、ためらわず整形外科を受診することが大切です。
正しい知識と早めの行動が、膝の健康を守る第一歩になります。
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