膝裏が痛いのはなぜ?痛みや腫れの原因と自分で行える治し方(ストレッチ等)を解説

「しゃがんで立つと膝裏が痛い」「膝の裏がピキッと鳴る」など、生活する中で膝裏の痛みが気になったことはありませんか?

考えてみれば、普段ご自身の膝裏を見る機会はほとんどないかもしれません。意識することも少ないはず。

ゆえに痛む理由に心当たりがなかったり、「膝の後ろ側が痛いのはなぜ?」と不安を感じたりするのも無理はないでしょう。

そこで当記事では、膝裏が痛い原因と自分で行える対処法・治し方を解説します。

最後まで目を通すことで、膝の裏が痛む原因が見つかり、早く痛みを改善できるでしょう。役立てて頂けたら幸いです。

膝の裏側が痛い!考えられる原因

膝裏の痛みの原因としては、筋肉・靭帯の損傷関節(骨)の損傷または変形、そしてリンパの詰まりなどが考えられます。

背景としては、膝への負担や膝周りの血流悪化が大きく関係します。もちろん加齢も関係しますが、生活習慣が影響し膝裏の痛みが現れる場合が多いです。

では具体的な症状を見ていきましょう。

参考記事:【膝の外側が痛い】痛みの原因とストレッチなどの対処法について詳しく解説!
参考記事:【膝の内側の痛み】4つの原因の見分け方と対処法をわかりやすく解説

膝の痛みに悩む様子

筋肉が硬くなる(凝り)

膝裏に付く筋肉が硬くなり痛みが出る場合があります。

歩き過ぎや過度な運動をはじめ、悪い姿勢によって膝への負担が増して膝裏が痛くなるケースが考えられます。

したがって、比較的改善されやすい痛みといえますが、膝への負担が減らなければ痛みが長引きやすいので注意が必要です。

リンパの詰まり

膝裏のリンパの流れが悪くなる(詰まる)ことで痛みが現れるケースもあります。

リンパのおもな目的は、身体に残った老廃物の回収です。膝裏には膝窩(しつか)リンパ節という部位が存在し、身体の老廃物を体外に出しています。

そして、疲れの蓄積や暴飲暴食による肥満によって「膝窩(しつか)リンパ節」の流れが悪くなることで、いわゆる「むくみ」に近い状態になり痛みが出ます。

変形性膝関節症

変形性膝関節症の病態を解説した図

膝の軟骨がすり減ることで痛みが現れる症状が「変形性膝関節症」です。加齢のほか、日常生活での膝への負担も関係してくる症状です。

変形性膝関節症によって痛む部位はさまざまで、膝裏に痛みが出るケースが少なくありません。また痛みとともに、朝のこわばりが見られる場合があるので注意しましょう。

後十字靭帯損傷

膝に付く靭帯(じんたい)が損傷したことで痛みが生じている可能性もあります。

交通事故や転倒によって、膝関節内の後十字靭帯(こうじゅうじじんたい)に傷がつくと、膝裏の痛みとともに膝の不安定さが残ります。

過去に後十字靭帯損傷を経験し、一旦は痛みが改善したとしても再発する可能性があるので注意が必要です。

半月板損傷

半月板損傷を解説した写真

膝への衝撃を和らげるクッションの役割を持つ半月板が傷つく症状が「半月板損傷(はんげつばんそんしょう)」です。

そして、半月板の後ろ側に傷がついた場合、膝裏の痛みが現れます。

サッカーやラグビー、スキーなどのスポーツで発症するケースをはじめ、日常生活での膝への負担や加齢によって発症する例もあります。

半月板損傷の特徴は、膝の動かしにくさ(ロッキング)が生じる点です。半月板損傷は改善までに時間がかかり、手術が必要になる場合も少なくありません。

参考記事:【半月板損傷】膝のロッキングを自分で治すのは危険?適切な治療方法を解説

ベーカー嚢腫(のうしゅ)

膝関節の動きをスムーズにする滑液包(かつえきほう)という袋が炎症を起こす症状が「ベーカー嚢腫(のうしゅ)」です。

滑液包は膝裏に存在しており、ベーカー嚢腫(のうしゅ)によって膝裏が痛むケースがあります。

ベーカー嚢腫(のうしゅ)は、先ほど解説した変形性膝関節症や後十字靭帯損傷と併発するケースが多いです。

膝裏の痛みを放置するとどうなる?

原因が何であれ、膝裏の痛みが自然に改善していく例は少ないです。

もし膝裏の痛みを放置すると、さらに悪化して「長時間歩けない」「正座できない」「スムーズにしゃがめない」などの影響が出ます。

また、膝裏の痛みから姿勢が崩れたり背中に負担がかかったりすれば、腰痛につながる可能性もあります。

膝裏の痛みはどのくらいで改善する?

筋肉の張りやリンパの詰まりが原因の場合、生活習慣を見直せば2週間ほどで改善が見込めます。ただし生活習慣が改善されなければ、1か月以上痛みが続く可能性もあります。

また、靭帯や半月板の損傷、関節の変形などが原因の場合は、セルフケアを行ったとしても改善までに2か月〜3か月はかかるとお考えください。

膝裏の痛みに効果的なセルフケアを紹介!

膝裏の痛みを早く改善するために、ご自身でセルフケアに取り組みましょう。

ここから、膝裏の痛みに効くおすすめセルフケアを紹介します。

いずれもご自宅で実践できるので、ぜひ参考にしてください。

ストレッチを継続する

膝裏の筋肉が伸びるストレッチが効果的です。ストレッチによって血流が良くなり、痛みが緩和されます。

膝裏の痛みには「腓腹筋ストレッチ」がおすすめです。

座った姿勢で片足を伸ばし、タオルをつま先にかけて引っ張った状態を保持します。こちらのストレッチで、ふくらはぎに付く「腓腹筋(ひふくきん)」が伸びます。

空き時間を使って実践できるので、できるだけ毎日ストレッチを続けるように心がけてみてください。

適度な運動・筋トレ

適度な運動筋トレも、膝裏の痛みに対して有効です。とはいえ、膝が痛む状態ではできる運動が限られますし、無理をすれば逆に痛みが悪化しかねません。

そこで、おすすめなのが「タオルつぶし運動」です。

座って片足を伸ばした姿勢で膝裏にタオルを置き、タオルをつぶすように力を入れます。太ももの内側につく「内側広筋(ないそくこうきん)」を刺激できます。

先ほど解説したストレッチと併せて、ぜひ実践してみてください。

セルフマッサージ

膝周辺につく筋肉へのセルフマッサージも効果的です。ストレッチや筋トレに比べて、よりピンポイントに膝をほぐせるメリットがあります。

ただ、ご自身の手を使ってのマッサージは疲れやすく、膝裏のマッサージであればなおさら。そこで、ボールを使ったセルフマッサージがおすすめです。

座った姿勢で脚を伸ばし、膝の下にボールを置いた状態で脚を動かすだけです。こちらの方法で、膝裏の筋肉が効率よくほぐれます。

ご自宅にあるテニスボールや野球ボールを使って、セルフマッサージを実践しましょう。

テーピング・サポーターを着用

膝の痛みをケアするためにサポーターを着用する

膝の痛みが引かないうちは、テーピングサポーターの着用を検討してみてください。テーピングやサポーターによって膝の可能範囲が適度に制限されるので、痛みの悪化を防げます。

ただし膝裏にテーピングを貼るのはやや難しく、手間がかかります。したがって、着脱簡単なサポーターの使用がおすすめです。

生活習慣を見直す

膝裏の痛みを改善するために、生活習慣をあらためて見直してみましょう。

睡眠不足によって十分な休息が取れず、身体に疲労が溜まれば痛みは長引いてしまいます。また食生活の乱れによる肥満が、膝への負担を増やし、血流やリンパの流れの悪化につながります。

とくに睡眠と食生活には注意してみてください。

加えて、意識的に水分を多く摂取することも有効です。十分に水分補給することで、血液やリンパの流れが良くなります。

1日2リットルを目安に水分を摂り、体内の新陳代謝を促進しましょう。

もしかしたら病気かも?痛みが治らない場合は病院を受診しよう

膝裏の痛みには、重篤な病気が原因で現れるケースがあるので注意してください。

膝裏に痛みが出る病気の例は以下のとおりです。

  • 深部静脈血栓症(足の静脈に血栓ができる病気)
  • 関節リウマチ(関節の変形が進む病気)
  • ガングリオン(良性の腫瘍)

上記のような病気が原因の場合は、セルフケアを続けても膝裏の痛みが改善されない可能性があります。

もし「膝裏の痛みが続く」「違和感がある」場合は、必ず病院を受診して詳しい検査を受けましょう。手遅れにならぬように、できるだけ早めの受診をおすすめします。

まとめ

言うまでもありませんが、日常生活を送るうえで膝は大切な部位です。膝裏が痛いままでは歩く・座るといった動作に支障が出てしまいます。

膝裏の痛みの原因には、筋肉の張りやリンパの詰まり、関節や靭帯の損傷などが考えられます。すぐに痛みを解消することは難しくても、改善までの期間を短くすることは可能です。

当記事を参考に、ストレッチや筋トレ、セルフマッサージを継続していきましょう。

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