パソコン作業中や食事中などに、手の薬指と小指がしびれたり、力が入りにくくなったりすることはありませんか?
もしかしたら「肘部管症候群(ちゅうぶかんしょうこうぐん)」かもしれません。
肘部管症候群のきっかけは多岐にわたり、誰でも発症する可能性があります。日常生活への影響も大きいので、対処法を知っておくことが大切です。
当記事では、肘部管症候群の原因やチェック方法、おすすめのセルフケアを紹介します。
最後まで目を通すことで、肘部管症候群のメカニズムや発生原因、緩和方法や予防法まで分かるでしょう。
ぜひお役立てください。
肘部管(ちゅうぶかん)症候群とは?どういった症状が現れるの
最初に、肘部管症候群のメカニズムや、どういった症状が現れるのかを解説します。
肘部管症候群とは、肘の内側にある「肘部管」を通る尺骨神経(しゃっこつしんけい)が引っ張られたり締め付けられたりすることで起こる病気です。
なお、肘部管は上腕骨や筋肉、腱などで構成されており、「管」と名がつくようにトンネル状になっています。
そして、肘部管症候群によって現れる症状は、「手の小指や薬指のしびれ・筋力低下」「手の小指や薬指の変形」「手の親指の動かしにくさ(親指を小指方向に動かす動作)」「手を使った細かい作業がしにくい」などです。
つまり、尺骨神経が関係する筋肉に不調が出ることになります。
参考記事:手のしびれの治し方は?原因と症状別の効果的な対処法を専門家がわかりやすく解説!
肘部管症候群の原因や発症するきっかけ
肘部管症候群の原因や発症するきっかけはさまざまです。
まず「肘の骨の変形」が考えられます。加齢などによって肘の骨が変形することで、肘部管が狭くなりしびれや筋力低下が現れます。
次に考えられるのが「スポーツ」です。野球や弓道、テニスなどによって肘を酷使した結果、肘部管周りに負荷がかかり症状が現れる場合があります。
ほかには、ガングリオン(良性の腫瘍)が肘にできることで、肘部管症候群が発症するケースも存在します。
また最近では、長時間のスマホ使用が影響して肘に負荷がかかり、肘部管症候群が現れるケースが増えているので注意しましょう。
【テスト】肘部管症候群のチェック方法
ここで、自身が肘部管症候群なのかチェックする、「フロマン徴候」という方法をご紹介します。
まず1枚の紙を用意します。そして、両手の人差し指と親指でつまみ、左右に引っ張ってみてください。
このとき親指の関節(第1関節)が曲がる場合、尺骨神経の圧迫や伸び過ぎが考えられ、肘部管症候群である可能性が高くなります。
ただし、より正確に把握するには、病院で検査を受ける必要があります。
肘部管症候群を放置するとどうなる?
普段の生活において肘関節はよく使う部位で、ゆえに負担も大きいです。
したがって、肘部管症候群が自然に緩和されていくケースはほとんどありません。
時間が経つにつれて、しびれや指の動かしにくさが悪化していくことが予想されます。もし放置すれば、それだけ改善までに要する期間も長くなってしまうでしょう。
肘部管症候群を放置せず、早めの処置をお考えください。
まずは病院を受診することが大切
手のしびれや筋力低下が現れたら、まず病院を受診することが大切です。
精密な検査によって肘部管症候群だと診断されたあとに、その後の対処法についてお医者さんに相談しましょう。症状によっては手術が必要になる場合もあるようです。
なお、何科に行けば良いか分からない場合は、まず「整形外科」を受診してみてください。
【自分で改善】肘部管症候群に効果的なセルフケアを紹介
ここから、肘部管症候群に有効なセルフケア方法を紹介します。
いずれも継続することで効果が出てくる方法です。ほとんど準備は必要ないので、ぜひ取り入れてみてください。
まずは3か月ほど続けてみて、手の様子がどう変わるかチェックしましょう。
肘周りのストレッチ
1つ目は、肘周りのストレッチです。
ストレッチによって腕の血流が改善されるので、肘部管症候群の改善が期待できます。おすすめのストレッチが「前腕前面ストレッチ」です。
STEP2:反対側の手を添えましょう
STEP3:手を手前に引き、腕の前面が伸びている状態を保持します
STEP4:元の姿勢に戻りましょう
※手首に痛みがある場合は肘を曲げて行ってみてください
こちらのストレッチによって、肘から前腕にかけての部分が効率よく伸びます。その際、呼吸を止めずゆっくり行うことを意識しましょう。
肘へのセルフマッサージ
2つ目は、肘へのセルフマッサージです。
セルフマッサージを行うことで、血流改善やリラックス効果が期待でき、ピンポイントで筋肉をほぐせるというメリットもあります。
おすすめのセルフマッサージが「前腕内側軟部組織リリース」です。
STEP2:腕をつまみながら反対側へ回しましょう
※痛みのない範囲で実施しましょう
上記のセルフマッサージによって、肘周りが効率的にほぐれるでしょう。空いた時間を使って実践してみてください。
正しい姿勢を意識する
3つ目は「姿勢の矯正」です。というのも、悪い姿勢が肘への負担を増やしているケースがあるからです。
とくに、座って作業している際に、背中が丸まって「猫背」になっていると、肘への負担が増えます。それだけでなく、手首へも負担がかかることになります。
パソコン作業中は指を使うため、なおさら負担が大きくなるでしょう。「キーボードをスムーズに打てない」「手先がピリピリしている」という方は要注意です。
そこで、背中を伸ばし正しい姿勢をキープすることで、肘や手首への負担を軽くできます。「肩と耳が縦にまっすぐ揃う」ように意識するのがコツです。
ぜひ、ご自身の姿勢に注意を払ってみてください。
参考記事:【簡単】姿勢を良くする方法4選!猫背や反り腰を改善して正しい姿勢を保つには
参考記事:猫背を治す方法とは?姿勢改善にオススメのストレッチ・筋トレを詳しく紹介!
サポーターの着用
4つ目は、肘用サポーターの着用です。
サポーターを装着することで、肘周りが安定します。また、関節の動きも適度に制限されるのでしびれが緩和されます。
肘用サポーターは通販サイトやドラッグストアで購入可能です。形状やサイズはさまざまなので、ご自身に合うサポーターを選びましょう。
ただし、いつまでも着用することはおすすめしません。しびれなどが減ってきた段階で、サポーターを外してみてください。
肘部管症候群はどのくらいで改善するの?
肘部管症候群が改善するまでの期間については、一概にはいえません。症状の程度には個人差があるからです。
とはいえ、一般的にしびれや手の動かしにくさが改善されるまで数か月を要する場合が多いといえます。症状が重いと、1年近くかかるケースもあります。
職種によっては、仕事を休む必要も出てくるかもしれません。
お医者さんにアドバイスを仰ぎながら、長い目で見ながら改善に取り組む必要があるでしょう。
肘部管症候群になった時にやってはいけないこと
最後に、肘部管症候群になった際にやってはいけないことを解説します。避けるべきは、「肘へ負担がかかること」です。
まず、肘を酷使する運動や作業はできるだけ避けましょう。
どうしても肘に負担がかかる運動や作業を行わなければならない場合は、サポーターを着用したり適度に休憩を入れたり、細心の注意を払ってみてください。
また、就寝時の姿勢(寝相)にも気をつけましょう。できるだけ仰向けの姿勢で眠るのがおすすめです。
横向きで寝る・うつ伏せで寝ると肘へ負担がかかりやすくなるので、できるだけ避けるべきです。
ほかには、乱れた食生活や不規則な生活も、肘への負担が増える理由になります。
身体の状態をコントロールする「自律神経」が乱れることで血流の悪化を招き、結果的に肘周りの筋肉を緊張させるからです。
ストレッチやセルフマッサージとあわせて、生活習慣にも注意していきましょう。
まとめ
肘部管症候群は、加齢やスポーツ、あるいはスマホ操作がきっかけで発症します。
そのまま放置すると、長期化するおそれがあるので、早めに改善するのがおすすめです。
まずは病院で検査を受け、その後にご自身でセルフケアを続けてみてください。あわせて肘の酷使を避けたり姿勢を整えたり、日常生活の中でも注意しましょう。
時間がかかるかもしれませんが、手の不調を和らげることが可能だといえます。
それでは当記事が、少しでもあなたのお役に立てば幸いです。
【参考文献】
1)福田 宣義, 石河 利之, 永田 純一, 内藤 正俊:10代の肘部管症候群の2症例
2)安岡 寛理, 中野 哲雄, 越智 龍弥, 稲葉 大輔, 立石 慶和, 平井 奉博, 問端 朋:稀な原因による肘部管部尺骨神経障害の2例
3)仲西 知憲, 小島 哲夫, 小川 光, 石河 利之, 村田 大:若年者の肘部管症候群の治療経