肉離れは、筋肉への急激な負荷が原因で筋線維が断裂もしくは損傷する、運動中に多いけがの一つです。
筋肉の硬さや水分不足、ウォーミングアップ不足などが原因1)となり、受傷部位の痛みや腫れなどの症状を引き起こします。太ももやふくらはぎの筋肉で発症しやすく、症状の程度によっては歩行困難となることも。
日常生活に支障をきたすため、治るまで何日かかるのか不安に思う方も多いでしょう。
さらに、スポーツを行う学生であれば、どのくらいで復帰できるのか焦りを感じている方もいらっしゃるはず。
そこで当記事では、肉離れが治るまでに必要な期間や、早く治すコツをわかりやすく解説していきます。当記事を参考にすることで、肉離れに関する疑問が解決できれば幸いです。
ぜひ最後までお付き合いください。
【重症度別】肉離れが完治するまでの平均的な期間とは?
肉離れになってから完治するまでに必要な期間は、おおよそ1週間から半年と言われています。
幅が広いと感じる方も多いと思いますが、重症度はもちろん、筋肉量や運動量、栄養状態によって完治するまでに必要な期間は大きく異なります。そのため、同等程度の症状であっても、治るまでの期間が同じとは限りません。
一般的に、肉離れの重症度は「I度(軽症)」「II度(中等症)」「III度(重症)」の3段階に分けられます。
ここからは、完治までに必要となる平均的な期間や見分け方を重症度別に説明します。仕事やスポーツ復帰への目安にしましょう。
I度(軽症):患部を押すと痛い
最も軽度な損傷であるI度の肉離れでは、完治までに1~2週間程度かかる場合が多いです。
軽症は筋肉の線維に小さな損傷ができ、筋肉内に出血がみられる程度の状態を指します。受傷した場所を押すと痛みを感じますが、痛みが軽度なため自分で歩くこともできます。
II度(中等症):歩けるけど痛い
中等症であるII度の肉離れの場合、完治するまでに1~3か月程度かかると言われています。
中等症では、筋膜や筋肉の線維が部分的に断裂した状態で、内出血や腫れがみられます。受傷した場所を押すと痛みが強く、いつも通りにうまく歩けないケースが多いです。
III度(重症):痛みが強く歩けない
最も重度であるIII度の肉離れでは、完治まで3〜6か月程度の期間を要します。
重症では、筋肉の線維や筋膜が完全に断裂した状態で、受傷した場所がへこんでみえる場合もあります。痛みはかなり強いため自力での歩行はできず、状態が悪ければ手術が必要です。
手術が必要となれば、受傷部位に負担がかかるスポーツへ復帰するには、さらに時間が必要となるでしょう。
肉離れを早期回復するために必要なこととは?
ここからは、一日でも早く肉離れを完治させるために効果的な対処法を解説します。受傷直後から行える方法を紹介するので、自分の状態を確認しながら試してみてください。
参考記事:肉離れを早く治すコツとは?痛みの原因に効くストレッチやマッサージ・食べ物を解説
早い段階で適切な応急処置を行う
肉離れを受傷した直後に適切な応急処置を行うことで、痛みの緩和や早期回復に効果があります。
肉離れ後は、筋肉の損傷により皮下出血が起こります。応急処置としては、出血を抑えるために「RICE処置」を行うことが重要です。
RICE処置とは「Rest(安静にする)」「Icing(冷やす)」「Compression(圧迫する)」「Elevation(患部を心臓より高くする)」の頭文字を指します。
自分でできる簡単な処置としては、患部の安静とアイシングが最適です。アイスバッグや保冷剤、冷湿布などを用いて患部を15分程度冷やしましょう。
整形外科病院を受診する
肉離れを早期に完治させるためには、応急処置を行った後に整形外科病院を受診しましょう。医師の診察や検査などを受けることで、損傷の状態や重症度を確認できます。
軽度な損傷の場合、病院へ受診せずに自己判断でスポーツや仕事へ復帰する方も多い2)です。ただし、肉離れは復帰後に再発するリスクも高く、早期に回復するためには肉離れの正確な状態を把握して、医師と相談しながら治療を行う必要があります。
もし、自宅の近くに整形外科病院がない場合は、整骨院に相談しましょう。
ビタミンやたんぱく質などの栄養バランスのよい食事を心がける
肉離れで損傷した筋肉の修復を早めるためにも、バランスのよい食事を意識しましょう。
筋肉の修復力を高める栄養素としては、「たんぱく質」と「ビタミンB6」の2つが挙げられます。たんぱく質は肉類や魚、豆腐や納豆などの大豆製品に多く、ビタミンB6はまぐろの赤身や鶏むね肉、バナナなどに多く含まれます。
食事のみでの摂取が難しい場合は、プロテインやサプリメントを活用してもよいでしょう。ただし、あくまでプロテインやサプリメントは補助食品であるため、基本的には食事での摂取が望ましいです。
セルフマッサージを行う
痛みや腫れなどの炎症症状が落ち着いてきたら、損傷した部位のマッサージが効果的です。マッサージを行うことで筋肉の柔軟性が改善され、血行がよくなるため早期修復を促せます。
ただし、刺激の強いマッサージは逆効果となり得るため、痛みを感じない程度の力で、無理なく行いましょう。
無理のない範囲でストレッチを行う
筋肉の柔軟性低下は、肉離れを受傷する原因の一つに挙げられます。スポーツや仕事へ復帰した後の再発を予防するためにも、徐々にストレッチで筋肉を伸ばしましょう。
次項では、部位別のストレッチ方法を紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。
参考記事:【肉離れの治し方】痛みを早く治すための応急処置やストレッチの方法を解説
【部位別】予防にも効果あり!肉離れの症状改善にオススメのストレッチ4選
ここからは、肉離れの症状改善や予防に効果的なストレッチを部位別に紹介します。発生率が高い4つの部位のストレッチを紹介するので、自分の症状に合ったものを試してみましょう。
ハムストリングスのストレッチ
まずは、太ももの裏側につく筋肉である「ハムストリングス」のストレッチを紹介します。最も発生頻度が多い筋肉なので、運動後にストレッチを習慣化してけがを予防しましょう。
STEP1:仰向けで片足を抱えます
STEP2:可能な限り膝を伸ばします
STEP3:もも裏の筋肉が伸びるのを感じながら実施しましょう
STEP4:元の姿勢に戻り繰り返し実施しましょう
※太ももがお腹から離れないように実施しましょう
下腿三頭筋のストレッチ
次に、ふくらはぎの筋肉である「腓腹筋(ひふくきん)」のストレッチを紹介します。
STEP1:タオルをつま先にかけ引っ張りましょう
STEP2:ふくらはぎが伸びた状態を数秒間保持しましょう
STEP3:力をゆるめましょう
STEP4:繰り返し実施しましょう
STEP5:痛みのない範囲で行いましょう
大腿四頭筋のストレッチ
次に、太ももの前側につく筋肉である「大腿四頭筋(だいたいしとうきん)」のストレッチを紹介します。
STEP1:横向きの姿勢となりましょう
STEP2:下の足を直角に曲げ、もう一方の足を後方からつかみましょう
STEP3:後方へ引っ張りましょう
STEP4:元の姿勢に戻りましょう
STEP5:繰り返し実施しましょう
STEP6:太もも前面の伸びを感じながら行いましょう
※腰が反らないように注意しましょう
内転筋のストレッチ
次に、太ももの内側につく「内転筋(ないてんきん)」のストレッチを紹介します。
STEP1:両脚を大きくひらきましょう
STEP2:上半身をねじりながら骨盤を前方へ倒しましょう
STEP3:元の位置に戻ります
STEP4:繰り返し実施しましょう
※腰を丸めないように注意しましょう
仕事や学校は何日休むとよい?
肉離れによる筋肉の損傷状態は、人によってさまざまです。また、デスクワークや重労働などの仕事内容も人によって異なるため、一概に何日仕事や学校を休めばよいとは言えません。
ただし、歩いても痛みのある炎症症状が強い状態では、足へ負担がかからないように工夫する必要があります。仕事をなかなか休めない場合も、松葉杖を使用したり、デスクワークへ業務内容を変更したりと足へ負担がかからないように注意しましょう。
また、安静期間を守らずに早い段階で復帰すると、悪化や再発するリスクも高くなります。自己判断で仕事や学校へ復帰はせず、医師と相談しながら慎重に治療を進めることが重要です。
まとめ
今回は、肉離れが治るまでに必要な期間や、早く治すコツについて解説しました。
肉離れの治療に必要な期間は、重症度や筋肉量、栄養状態などによって異なります。痛みが軽度であっても自己判断はせずに、医療機関を受診して医師と相談しながら治療を進めることが重要です。
また、肉離れはスポーツ中に多いけがの一つです。スポーツを楽しむ学生はもちろん、指導者や保護者の方も応急処置などの対処法を理解しておきましょう。
それでは、当記事があなたの疑問解消のお役に立てれば幸いです。
参考文献
1)財団法人 日本体育協会スポーツ医・科学専門委員会:肉離れに関する最新の指針,2008
2)木村 護郎,今野宏亮,他:大腿四頭筋ならびに内・外側ハムストリングの筋力比と大腿部肉離れの発生との関係,理学療法化学,19(4)323-329.2004