「口を開けるとカクカク音がする」「あくびをすると顎が痛い」「なんとなく噛みにくい気がする」——そんな顎の違和感や痛みに悩まされていませんか?
もしかすると、それは顎関節症のサインかもしれません。
顎関節症は、日常のちょっとしたクセやストレスの影響で誰にでも起こりうる身近なトラブルです。しかし、「病院に行くほどではないけど気になる」「できれば自宅で改善したい」と感じている方も多いのではないでしょうか。
本記事では、顎関節症の主な原因や症状をやさしく解説したうえで、自宅で簡単にできるマッサージやストレッチ方法をご紹介します。つらい症状を悪化させないためにも、早めのセルフケアで快適な毎日を取り戻しましょう。
顎関節症の症状と原因を知ろう
顎関節症は、放っておくと痛みが慢性化し、食事や会話など日常生活に支障をきたすこともあるため、まずはその症状と原因を正しく理解することが大切です。
よくある症状:痛み・開口障害・音が鳴る
顎関節症の主な症状には、次のようなものがあります。
まず最も多いのが、顎の痛みです。食事中に噛む動作で痛みを感じたり、口を大きく開けた際に違和感や鋭い痛みを伴うことがあります。
また、開口障害も顎関節症の特徴です。通常よりも口が開けにくくなり、指2~3本分しか開かない場合は注意が必要です。朝起きた時に開きにくいと感じる人も多くいます。
さらに、口を開閉する際にカクカク、ミシミシといった音が鳴ることもあります。これは関節のずれや、関節内部のクッションである「関節円板」の位置異常が原因とされます。
これらの症状は単独で現れることもあれば、複数同時に現れるケースもあるため、自覚がある場合は早めの対策が必要です。
原因① 噛み合わせの乱れや歯ぎしり
顎関節症を引き起こす一因として、噛み合わせの悪さが挙げられます。上下の歯が適切にかみ合っていないと、顎に余計な負担がかかり、関節や周囲の筋肉にストレスが溜まってしまいます。
また、歯ぎしりや食いしばりも大きなリスク要因です。就寝中、無意識のうちに強く歯を噛み締める癖があると、顎関節に過剰な圧力がかかり、痛みや違和感の原因になります。
歯ぎしりは自覚しにくいため、「朝起きたときに顎がだるい」「歯がすり減っている」といったサインがある場合は、注意が必要です。
原因② ストレス・姿勢の悪化・スマホ使用
顎関節症の発症には、身体的な要因だけでなく、精神的なストレスも関与しています。ストレスによって無意識に歯を食いしばるクセがついたり、筋肉の緊張状態が続くことで、顎に負担がかかりやすくなります。
さらに、現代人に多い問題として、姿勢の悪化が挙げられます。スマホやパソコンを長時間使うことによって、首や肩が前に出た姿勢(いわゆる「スマホ首」)になり、顎の位置がずれてしまうのです。
このように、日常生活の中に潜む習慣が顎関節症のリスクを高めていることを認識し、早めの予防と対策を心がけることが重要です。
参考:顎関節症はストレッチが効果的!顎の痛みを解消するセルフケア方法を専門家が解説
顎関節症を自分で治す!基本セルフケア方法
顎関節症は、生活習慣を見直しやセルフケアを実践することで症状の改善が期待できます。
ここでは、毎日の暮らしの中で取り入れられる簡単なケア方法について詳しく紹介します。無理なく続けられることから始めて、顎の健康を取り戻しましょう!
生活習慣の改善ポイント
顎関節症を悪化させないためには、まず日常生活での負担を減らすことが基本です。次のポイントを意識しましょう。
姿勢を整える
長時間のデスクワークやスマホ操作で前かがみになりやすい現代人にとって、正しい姿勢の維持は非常に重要です。背筋を伸ばし、顎を引いた状態を意識するだけでも、顎への負担を軽減できます。
特に座るときは、骨盤を立てて椅子に深く腰掛けることがコツです。猫背や顎を突き出した姿勢は、関節への圧力を高めるため注意が必要です。
歯を食いしばらない工夫
無意識に歯を食いしばっている人は、リラックスを心がけましょう。目安として、上下の歯は通常、軽く離れているのが自然な状態です。
「口を閉じていても歯はつけない」という意識を持つことで、関節への負担を減らすことができます。緊張しているときほど、意識的に口周りの力を抜くようにしましょう。
食事・睡眠・ストレスケアのコツ
生活習慣の中でも、食事・睡眠・ストレス管理は、顎関節症のセルフケアに直結します。
食事はやわらかいものを中心に
顎に負担をかけないためには、硬い食べ物を避けることが基本です。フランスパンやステーキ、ナッツなど、強く噛む必要のある食品は、症状が落ち着くまでは控えましょう。
代わりに、煮物やスープ、柔らかいごはんなど、顎に優しい食事を選ぶことで、回復を促進できます。
また、食事中の噛む回数を減らすため、小さめに切ったり、柔らかく調理する工夫も有効です。
質の良い睡眠を確保する
寝ている間に食いしばりが起こる人は、特に睡眠環境を整えることが大切です。枕の高さを見直したり、リラックスできる音楽をかけて眠るなど、心身を緩める工夫を取り入れましょう。
また、就寝前に軽いストレッチや深呼吸を行うと、筋肉の緊張が緩和され、食いしばりの予防につながります。
ストレス発散法を見つける
ストレスが溜まると、無意識に顎周りに力が入りやすくなります。日々のストレスを軽減するためには、自分なりのリフレッシュ方法を持つことが大切です。
例えば、ウォーキング、読書、入浴、趣味の時間を作るなど、意識的にリラックスタイムを設けるようにしましょう。心が落ち着くと、自然と顎の緊張も緩みます。
今すぐできる!効果的なマッサージ・ストレッチ
顎関節症のセルフケアには、顎周りの筋肉をほぐして関節の動きをスムーズにするマッサージやストレッチが効果的です。
ここでは、自宅ですぐに実践できる方法を紹介します。毎日少しずつ続けて、顎の負担を減らし、快適な動きを取り戻しましょう。
顎周りの筋肉マッサージ法
顎周囲の筋肉が硬くなっていると、関節への負担が増し、痛みや開口障害の原因になります。優しくマッサージを行い、筋肉をリラックスさせましょう。
咬筋(こうきん)マッサージ
STEP1:指4本を合わせましょう。
STEP2:4本の指を左右のえらの部分に当てましょう。
STEP3:円を描くようにマッサージを行いましょう。
Gold Fish(軽度開口)
STEP1:舌を口の中の上方につけましょう。
STEP2:指先で顎関節の動きを確認しましょう。
STEP3:口を軽く開いた状態でもう一方の手を顎につけましょう。
STEP4:顎を後方へ押し込みましょう。繰り返し実施しましょう。
首・肩周辺のほぐし体操
実は、顎関節症は顎周りだけでなく、首や肩のコリとも深い関係があります。首・肩周りの筋肉を緩めることで、間接的に顎への負担を減らすことができます。
斜角筋ストレッチ
STEP1:手を腰に回しましょう。
STEP2:鎖骨を抑えましょう。
STEP3:首を斜め後ろに反らせましょう。首の前方が伸びている状態を保ちます 。
STEP4:元の姿勢に戻ります。繰り返し実施しましょう。
胸張り運動
STEP1:背中を丸め手を前方に出しましょう。
STEP2:胸を張り肩甲骨を寄せるように、手を後ろに引きましょう。
STEP3:背中を丸め手を前方に出しましょう。
STEP4:胸を張り肩甲骨を寄せるように、手を後ろに引きましょう。
整体・マウスピースは必要?セルフケアで治らない場合
セルフケアを続けても改善が見られない場合や、痛みが強くなる場合には、専門家のサポートを受けることが大切です。
ここでは、整体や理学療法、歯科でのマウスピース治療について詳しく解説します。適切なタイミングで受診することで、症状の悪化を防ぐことができます。
整体・理学療法でできること
整体院や理学療法士のサポートを受けることで、顎関節症の症状を軽減できる場合があります。特に筋肉や姿勢のバランス調整に効果的です。
ただし、顎関節症に対するリハビリはまだ国内で十分に普及しているとは言えず、正しい知識と技術を持った施術者や施設は限られています。
そのため、安易に選ばず、顎関節症への対応経験があるかどうかを確認したうえで、専門性の高い施設を探すことが大切です。
筋肉の緊張緩和
整体では、首・肩・背中の筋肉をほぐし、全身の血流を改善する施術が行われます。これにより、顎周りの筋緊張が緩和され、関節への負担が軽減します。
また、理学療法士によるリハビリでは、関節可動域を広げるための専門的なエクササイズ指導を受けられます。正しい運動指導により、日常動作もスムーズになり、痛みの再発防止にもつながります。
姿勢指導・生活指導
施術だけでなく、日常生活で気をつけるべき姿勢や動作についてのアドバイスも受けられます。例えば、座り方、立ち方、スマホやパソコンの使用姿勢など、普段の癖を見直すことが、症状改善に大きな影響を与えます。
歯科でのマウスピース治療とは
歯科医院では、顎関節症に対してマウスピース(スプリント)療法が行われることがあります。これは、夜間に装着することで、関節や筋肉への負担を軽減する治療法です。
マウスピースの効果
- 歯ぎしり・食いしばりの力を分散
- 顎関節への圧力を軽減
- 咬み合わせの調整による負担の均等化
個人の歯並びに合わせたオーダーメイドのマウスピースを作成するため、フィット感が良く、違和感も少ないのが特徴です。
また、症状に応じて「ハードタイプ」「ソフトタイプ」など種類があり、医師と相談しながら選択できます。
マウスピース治療の注意点
ただし、マウスピースはあくまで症状を軽減するための補助的な手段であり、根本原因(姿勢や生活習慣など)を改善しなければ、再発するリスクがあります。歯科治療と並行して、セルフケアや生活改善にも取り組むことが重要です。
病院に行くべきタイミング
次のような場合には、早めに病院を受診することをおすすめします。
- 顎の痛みが強く、食事や会話に支障が出ている
- 口がほとんど開かなくなった
- 顎を動かすたびに強い音や違和感がある
- セルフケアを1ヶ月以上続けても症状が改善しない
顎関節症の症状が長期化すると、関節の変形や慢性痛につながることもあります。自己判断で放置せず、適切な診断と治療を受けることが、早期回復への近道です。
まとめ
顎関節症は、早期に原因を見極めてセルフケアを取り入れることで、症状の悪化を防ぐことが可能です。マッサージやストレッチ、生活習慣の見直しを習慣にし、無理のない範囲で取り組んでいきましょう。
セルフケアで改善が見られない場合は、整体や歯科での専門的なサポートを受けることも選択肢の一つです。顎の違和感を放置せず、日常生活の中で小さな工夫を重ねることが、健康な顎を取り戻す第一歩となります。
焦らず、自分のペースで改善を目指していきましょう!
【参考】
1)顎関節症治療ガイドライン 一般社団法人日本顎関節学会