ぎっくり背中の治し方は?どうしたら楽になるの?原因と対処法について専門家が解説!

「ふと立ち上がったときに、背中にピキっとした痛みが出た」

あなたはぎっくり背中を起こし、思うように動くことができず日常生活に支障をきたしてしまったことはありませんか?

少しでも楽にしたいと思うものの正しい治し方がわからず、かえって悪化させてしまったことがある方も多いでしょう。

そこで当記事では、ぎっくり背中が起こった際の治し方を専門家がわかりやすく解説していきます。

原因や具体的な時期別の対処法も解説しているので、ぜひご自身の症状を見比べながら読み進めていただき、症状の改善につなげていただけたら幸いです。ぜひ最後までお付き合いください。

ぎっくり背中の症状と痛みのメカニズム

腰を押さえる写真

ぎっくり背中は、急に背中に走るような痛みや寝違えに近い症状が起こります。ぎっくり背中は俗称であり、正式には「筋筋膜性疼痛症候群(きんきんまくせいとうつうしょうこうぐん)」と言われます。レントゲンなどの画像ではとくに異常がないものの、痛みなどの症状を持つことが特徴的です。

痛みのメカニズムとしては、背中の筋肉や筋肉の周りを覆っている膜(筋膜)が傷つくことで炎症が起こり、症状が出現します。

いわゆる「肉離れ」のような状態をイメージするとわかりやすいでしょう。

参考記事:ぎっくり背中を見分ける症状チェックリスト!ぎっくり腰との違い・要注意の病気も解説
参考記事:背中の筋が痛いのはなぜ?原因と対処法や危険な症状の見分け方も解説

ぎっくり背中の原因とは?

ぎっくり背中の痛みが起こるのは、筋肉や筋膜に傷がつくことだとわかりましたね。

ではなぜ筋肉や筋膜に傷がつき、炎症が起こってしまうのでしょうか。そこで以下、日常生活に潜んでいるぎっくり背中の原因を解説していきます。

原因を知ることで今後の再発予防にもつながるため、ぜひポイントを押さえていきましょう。

【現代人の多くが当てはまる】運動不足

男性がソファで寝ている写真

日頃から運動不足の場合、筋肉の血流は悪くなっている可能性があります。

筋肉は血流が悪くなると柔軟性が低下し、伸び縮みがスムーズに行われなくなります。

その結果、体を大きく動かそうとした際に、筋肉の伸び縮みがスムーズにいかずに傷がつき、炎症が起こってしまうのです。

【デスクワーカーは要注意】長時間の同じ姿勢

デスクワークをしている女性の写真

長時間の同じ姿勢を取っている場合にも、筋肉の柔軟性を低下させる可能性があります。

筋肉は伸び縮みを繰り返すことで柔軟な状態を保っているため、同じ姿勢を取り続けることで、伸びにくい筋肉になってしまうのです。

さらに伸びにくくなった筋肉が何かの衝撃で急激に伸ばされた際に、筋肉や筋膜の線維に傷がつき、ぎっくり背中は起こりやすくなります。

【知らないうちになっている】猫背や反り腰などの悪い姿勢

猫背と反り腰などの悪い姿勢と正しい姿勢を説明する図

猫背や反り腰姿勢などの悪い姿勢では、必要以上に筋肉に負担が掛かり、緊張状態になっている可能性も。

背骨は本来、S字状のカーブを描くことによりさまざまな衝撃を吸収し、周りの筋肉に負担のかかりにくい状態となっています。しかし、猫背や反り腰などの悪い姿勢により背骨のS字カーブが乱れていると、背骨を支える筋肉に過剰な負担が加わってしまいます。

このように度重なる筋肉の負担により筋肉の疲労が起こることで、筋肉の線維が伸び縮みしにくい状態となります。その結果、ぎっくり背中を引き起こしやすくなるのです。

参考記事:【簡単】姿勢を良くする方法4選!猫背や反り腰を改善して正しい姿勢を保つには

【時期別】症状をチェックしてぎっくり背中の適切な対処法を理解しよう

ぎっくり背中は痛みが出てからの日数をもとに、大きく分けて3つの時期に分けられます。

時期別に対処法を変えることで、回復までの期間を短縮できるため、ご自身の発症からの日数と見比べながら読み進めていきましょう。

最も痛みが強い急性期(目安:発症〜2日目)

痛みが出てから2日間は、炎症が強い時期です。痛みが強い急性期に無理をすると、症状が改善するまでに時間を要することがあります。そのため、以下のポイントを意識していきましょう。

まずは安静にしよう

発症して2日程度は、まず安静が第一です。無理に動かしてしまうと、炎症をさらに悪化させてしまい、改善が遅くなってしまいます。

痛みが気になると、マッサージやストレッチなどをしたくなってしまうと思いますが、初期の段階では避けましょう。

また、「体をひねる」「腰を曲げて床のものをとる」などの動作にも注意が必要です。物を取る際は体は無理にひねらず、股関節を曲げてしゃがみこむようにして行いましょう。

ロキソニンなどの鎮痛剤の使用はOK

痛みが強い場合は医師や薬剤師に相談のうえ、ロキソニンなど鎮痛剤の使用を検討しても良いでしょう。

ロキソニンは炎症を引き起こす「プロスタグランジン」と呼ばれる物質を抑える働きがあります。

プロスタグランジンは血流を促進する働きもあるため、過度に抑えることは避けたいところです。しかし強い痛みを我慢してしまうと、脳内に記憶され痛みが慢性化してしまう可能性もあります。1)

よって急性期の我慢できない痛みには、ロキソニンなどの鎮痛剤を使うことも一つの手段としては良いでしょう。

サポーターの使用も推奨

家事や仕事をしていると、安静にしたくてもできなかったり、ふとした動作で再び痛みが出たりしてしまうこともあるでしょう。

一時的にサポーターを使用することで、症状のある部位を休められるため、早期の回復につながります。ただし、きつく締めすぎると血流が悪化する可能性もあるため、締め過ぎには注意が必要です。

また、長期間に渡り装着していると筋力が低下してしまうため、痛みの強い急性期を過ぎたら徐々に外すことも考慮していきましょう。

徐々に動き出せる亜急性期(目安:3日目〜6日目)

3日目を過ぎると、少しずつ動けるようになっていきます。炎症も落ち着き始める時期です。

徐々に動き始めよう

過度に安静にしていると筋肉や筋膜が硬くなり、血流も悪くなってしまいます。よって、亜急性期では少しずつ体を動かしていくことが推奨されます。

しかし急に動き始めると、また背中に負担を掛けてしまう可能性があるため、軽いウォーキングなど無理ないものを選択すると良いでしょう。

違和感がなくなる慢性期(目安:7日目以降)

7日目以降は炎症も落ち着いてくる時期なので、痛みや違和感も減ってくるでしょう。

しかし過度に安静期間が長くなると、筋肉や筋膜の動きが悪くなり、再発しやすくなってしまいます。そのため慢性期では、以下の点に注意していきましょう。

積極的に動き始めよう

動かない時間が長くなると筋肉や筋膜は硬くなり、ぎっくり背中が再発しやすくなってしまいます。

そのため違和感がなくなる慢性期には、積極的に動き始めましょう。
具体的には、ストレッチを行うことで柔軟性を向上させたり、有酸素運動を行うことで血流を改善させたりして柔軟な筋肉をつくります。

慢性的な痛みには温めるのが適切

7日目以降になっても痛みがある場合は、症状の出ている部位の温めを推奨します。
湯船に浸かったり、湯たんぽのようなものを痛みのある部分に当てたりする方法がおすすめです。

体を温めると血流が改善され、痛みの物質が取り除かれることで症状が緩和します。また温める刺激そのものが、痛みを感じさせる神経の活動を抑えるとも言われています。2)

参考記事:【背中のつるような痛み】ぎっくり背中を早く治すための対処法とストレッチを紹介

ぎっくり背中のおすすめセルフケア・ストレッチ方法を時期別に紹介!

それでは、ぎっくり背中におすすめのセルフケア・ストレッチを紹介します。

時期別に筋肉や筋膜の状態も変わるため、行うべきケアやストレッチも異なります。ご自身の時期と見比べながら、取り組んでいきましょう。

急性期:ヒップロール

発症から2日以内の急性期には、まだ炎症が起こっているため痛みの出ている部位は動かさないことが重要でした。

ただし、症状のある背中以外の部分は痛みのない範囲で動かすことが推奨されます。
不用意な体の安静は、かえって痛みの改善を遅らせてしまう可能性もあります。そのため背中以外のお尻から腰回りの関節を、この時期から少しずつストレッチしていきましょう。

それでは以下、お尻から腰回りにかけての筋肉のストレッチを紹介します。

ヒップロール

STEP1:仰向けとなり両手を真横へ広げましょう
STEP2:両膝を閉じたまま片側へ倒しましょう
STEP3:元の姿勢に戻ります
STEP4:繰り返し実施しましょう
※肩が床から離れないように注意しましょう!

亜急性期:菱形筋ストレッチ

次に3日目以降の亜急性期は、徐々に動けるようになってくる時期です。痛みが強くなければ少しずつ動かしていくことで、ぎっくり背中の早期改善につながります。

菱形筋(りょうけいきん)は背骨と肩甲骨の間にあり、ぎっくり背中の原因になる筋肉です。普段から猫背姿勢の方は、負担が掛かっている方も多いでしょう。

菱形筋を説明する図

緊張状態になっている背中の筋肉をストレッチし、柔軟性を向上させていきましょう。

菱形筋ストレッチ

STEP1:両手を繋いで前方へ伸ばしましょう
STEP2:お臍を覗き込みながら背中を丸めましょう
STEP3:数秒間姿勢を保持しましょう
STEP4:元の姿勢に戻ります

※背中の後面が伸びるのを感じながら行いましょう!

慢性期:CAT&DOGエクササイズ

痛みが落ち着いてくる7日目以降の慢性期には、徐々に大きな動きを行なっていきます。

背中の筋肉だけでなく、肩甲骨や背骨、腰回りの筋肉までダイナミックに動かし、痛みの恐怖心を取り除いていきましょう。

どこか一部でも動かしにくい場所があると、負担が集中してしまいます。よって背骨全体をストレッチして柔軟性を取り戻すことで、ぎっくり背中の再発を予防する効果もあります。

CAT&DOGエクササイズ

STEP1:四つ這い姿勢となりましょう
STEP2:肩甲骨を寄せながら背中を反らせましょう
STEP3:肩甲骨を離しながら背中を丸めましょう
STEP4:2つの動きを繰り返し実施しましょう
※肘が曲がらない様に注意しましょう!

参考記事:背中の痛みをストレッチで改善!体の硬さチェックから対策方法を紹介

ぎっくり背中で痛みが辛い時はどうする?楽な姿勢・寝方とは?

ここでは、痛みが辛い時にどのような姿勢を取れば楽になるのか解説していきます。

まず第一に、人それぞれ楽な姿勢は異なります。よって、あなたにとって痛みが緩和する姿勢を取ることが最優先です。

一般的には立っている際、少し背中を丸めてかがむような姿勢を取ることで痛みが軽くなると感じる方が多いでしょう。

さらに寝る際には、背中を丸めて横向きになり、股関節や膝を曲げるようにすると負担が軽減します。なかには、うつ伏せの方が楽という方もいるでしょう。

また、寝方だけでなく寝る時の環境も影響します。

マットレスは硬すぎず、柔らかすぎない適度な硬さのものを選ぶことがポイントです。枕の高さは以下の点を意識して選びましょう。3)4)5)

  • 寝返りがスムーズに行える
  • 硬すぎたり、柔らかすぎたりしない(沈みすぎないものが良い)
  • 形はなるべく平らなものを

正しい寝方を説明する図

参考記事:腰が痛い時の寝方とは?腰の痛み別に正しい寝姿勢を紹介

ぎっくり背中を即効で治す方法はあるのか?

結論から言うと、ぎっくり背中を即効で治す方法はありません。
なぜならぎっくり背中は、筋肉や筋膜が炎症を起こしている状態であり、炎症はすぐには引かないからです。

しかし、炎症に対して正しく対処することで、なるべく早く治すことは可能です。逆に順番を間違え、急性期から背中のストレッチやマッサージをしてしまうと、長引いてしまうこともあります。

そのため、当記事で紹介した時期別の対処法やセルフケアを、順番通りに行っていきましょう。

また、ご自身での判断に迷われる時には整形外科や整骨院、整体に行くことも一つの方法です。専門家の力を借りることで正しい処置を受けられるため、症状の早期改善につながります。

参考記事:即効性のある腰痛の治し方とは?再発予防にオススメのストレッチや体操も紹介

まとめ

今回は、ぎっくり背中が起こった場合の治し方や対処法を解説していきました。

ぎっくり背中は筋肉や筋膜の炎症が原因となるため即効で治すことはできませんが、時期に合わせて正しく対処することでなるべく早く痛みを改善することは可能です。

また、ご自身での判断に迷われる時には、整形外科や整骨院、整体などの専門家の手を借りることも一つの正しい治し方になります。

さらに、再発を予防するためにも日頃からのセルフケアが重要になりますので、ぜひ紹介した動画を参考にしながらストレッチを継続してみてください。

それでは本記事が、あなたの痛みを予防・改善するのにお役立ていただけますと幸いです。

参考文献
1)渡辺正仁:痛みのメカニズム と鎮痛,保健医療学雑誌 8 (1): 50-63, 2017
2)篠原英紀:温熱・寒冷療法,理学療法学 第22巻 第6号 407-410,1995
3)Chun-Yiu JP, Man-Ha ST, Chak-Lun AF. The effects of pillow designs on neck pain, waking symptoms, neck disability, sleep quality and spinal alignment in adults: A systematic review and meta-analysis. Clin Biomech (Bristol, Avon). 2021

4)Ren S, Wong DW, Yang H, Zhou Y, Lin J, Zhang M. Effect of pillow height on the biomechanics of the head-neck complex: investigation of the cranio-cervical pressure and cervical spine alignment. PeerJ. 2016
5)勝呂徹.あなたの枕は合っていますか?正しい眠りのための枕調整.Pharmaceutical Society of Japan.46巻11号 1063-1067.2010