足に関する不調やトラブルはさまざまですが、「足の親指の付け根の痛み」に悩まされている方もいるのではないでしょうか。
足の親指の付け根が痛いと靴が履けなかったり、歩きにくかったり、日常生活に大きな影響が出ます。痛みが長期化する前に、改善を図ることが大切です。
当記事では、足の親指の付け根が痛む原因や、効果的な対処法について解説します。
最後までお読みいただくことで、足の痛みが緩和され、快適な生活につながるでしょう。ぜひお役立てください。
【最初に確認】足の親指の付け根ってどこ?
痛みの原因を見ていく前に、「足の親指の付け根」について確認しておきましょう。
足の親指の付け根とは、親指を曲げたり反らした際に動く(シワが寄る)、膨らみ部分を指すとお考えください。
なお、骨・関節でいうと、足の甲側に触られる「母趾中足趾節関節(ぼしちゅうそくしせつかんせつ)」と、指の裏側の「母指球(ぼしきゅう)」や「種子骨(しゅしこつ)」が足の親指の付け根に該当します。
余談ですが、足の指には「趾」という漢字が用いられます。したがって、足の親指は「母趾」と表記されるので、見分けるために覚えておいてください。
歩けない!足の親指の付け根が痛む原因と病名
足の親指の付け根が痛む原因としては「血液が関係する病気」「足の骨の病気」などが考えられます。ただし、なかには原因が解明されていない病気も存在するので注意してください。
足の親指の付け根が痛む際は、指周辺が腫れていないケースはほぼ無く、強い腫れや発赤(皮膚が赤くなる現象)が見られる場合がほとんどです。
ゆえに似た病気もありますが、症状の出方によっておおよその見当をつけられるでしょう。
それでは、詳しく見ていきます。
痛風
まず、血液に関係する病気を解説します。
突然、親指の付け根に耐え難い痛みが現れる病気が「痛風(つうふう)」です。日本国内における痛風の患者数は100万人近くにのぼるといわれており、痛風という名前には馴染みがあるのではないでしょうか。
血液中の尿酸値(老廃物の量)が上がることで、結晶(尿酸塩結晶:にょうさんえんけっしょう)ができます。そして、結晶が関節部分に付着することで激痛が発生します。
なお、足の親指以外の箇所(足首や膝など)にも痛風は発生し得るものの、実際は足の親指周辺が痛くなるケースが多いです。
痛風の原因、つまり尿酸値が上がる原因としては「暴飲暴食」「腎臓の不調」が考えられます。また男女比で見ると、男性の割合が圧倒的に多いです。
外反母趾
続いて痛風以外の、骨への負担が原因で発生する病気を解説します。
足の親指が外側(小指の方)に曲がってしまう病気が「外反母趾(がいはんぼし)」です。親指の変形が顕著なため、見分けがつきやすい病気といえるでしょう。
指の変形に加えて、腫れやズキズキした痛みが現れます。悪化すると、靴が履けなくなったり歩けなくなったりするケースも少なくありません。
外反母趾の原因は、「遺伝」や「靴」です。とくにハイヒールなどつま先が窮屈な靴を履き続けた結果、親指が変形するケースが多く見られます。
男女比で見ると、女性のほうが外反母趾になりやすい傾向にあります。
なお、外反母趾と足裏のアーチ(土踏まず)が消失する「扁平足(へんぺいそく)」は関係しているので、あわせて注意しましょう。
参考記事:歩くと足の裏が痛いのは足底腱膜炎?痛みの原因とセルフケアを解説
参考記事:扁平足にはどんなデメリットがある?扁平足の原因や自分でできる改善法も解説
母趾種子骨障害
スポーツに打ち込む小学生・中学生に見られるのが「母趾種子骨障害(ぼししゅしこつしょうがい)」です。
走ったり踏み込んだりした際の地面からの衝撃により、親指の付け根の地面側に付く「種子骨」に負担がかかり発症します。腫れや痛みだけでなく、骨折しているケースもあるので注意が必要です。
母趾種子骨障害により痛みがあるうちは、スポーツを休む必要があるでしょう。
強剛母趾
親指が曲がりにくくなる(反らしにくくなる)病気が「強剛母趾(きょうごうぼし)」です。
足の親指の軟骨がすり減ったり、骨棘(骨が尖った形に変形した状態)ができたりすることで、足の親指の痛み・曲げにくさが発症します。
遺伝や、母趾への負担の蓄積が関係していると思われますが、明確な原因は明らかになっていません。
症状が長期化するケースもあるので、注意が必要です。
関節リウマチ(原因不明)
他に考えられる病気が、関節リウマチです。
関節リウマチは、身体の免疫機能が異常を起こし発症する「自己免疫疾患」の1つで、原因は分かっていません。
関節リウマチの症状は、腫れやこわばり、発熱、足の親指の変形などで、30代から50代に発症しやすいと言われています。つまり決して高齢者に発症しやすい病気ではありません。
なお、関節リウマチは左右対称に症状が現れやすいという特徴があります。つまり、片足の親指だけに症状が出るケースは少ないといえます。
もし、関節リウマチが疑われる場合は、すぐに病院を受診してください。
足の親指の付け根が痛いまま放置するのはダメ!
痛みの原因が何であれ、痛みをそのまま放置するべきではありません。
日常生活を送るうえで大きな負担になるからです。普段、仕事などで長距離を歩く方や運動を日課にしている方はなおさらでしょう。
また、足の親指周辺の痛みをかばうあまり、他の箇所に負担がかかり、別の痛みや不調が出る場合もあり得ます。
もちろん一概には言えませんが、母趾の付け根の痛みが自然に緩和されることはほとんどないとお考えください。
【重要】まずは病院で検査を受けよう
足の親指の付け根あたりが痛みだしたら、我慢せず、できるだけ早く病院を受診するべきです。
先述のように、痛みの原因はさまざまで判断が難しい場合もあります。したがって、医療機関での精密な検査が必要です。痛みの原因が分かったうえで、医師と話し合いながらその後の対処法について考えましょう。
なお、何科にかかるべきかわからない時は、「整形外科」もしくは「内科」を受診してみてください。
【セルフケア】足の親指の付け根が痛む際の対処法
ここから、足の親指の付け根の痛みを緩和するために有効なセルフケアやエクササイズを紹介します。
簡単に実践できる方法が多いので、ぜひ取り入れてみましょう。
ただし、痛みの原因(痛風や関節リウマチ等)や症状の程度によっては効果が期待できないケースもあります。あらかじめ把握しておいてください。
指周辺を冷やす
身体の痛みを和らげるために、冷やしたり温めたりする方法が一般的です。あなたも実践したことがあるかもしれません。
では、足の親指の付け根の痛みに対してはどうすれば良いのか迷いがちですが、まずは冷やすことを意識してみてください。足の親指周辺に炎症が起こっているケースが多く、まずは炎症をおさえるのが先決だからです。
なお、冷えやすさの点から、冷湿布より氷嚢(氷を入れる袋)の使用をおすすめします。
痛みが引いてきた段階で温めるのも有効です。冷やす・温めるを切り替える適切なタイミングは症状によるので、お医者さんに相談してみてください。
足の親指のストレッチ・運動
足の親指のストレッチや運動も有効な場合があります。ストレッチや運動によって血液の流れが良くなるので、痛みの改善に効果が期待できるでしょう。
ここで、おすすめのストレッチ・運動を2つ紹介します。
ただし、紹介するストレッチや運動によって効果が期待できるのは「外反母趾」だけです。他の症状(種子骨障害や強剛母趾など)の場合、逆に痛みが悪化してしまう可能性もあるのでご注意ください。
1つ目は「足趾(そくし)ストレッチ」です。
STEP2:後ろ足のつま先を立て体重を乗せましょう
STEP3:足裏の筋肉が伸びた状態を保持します
STEP4:痛みのない範囲で行いましょう
※腰を反らさないように注意してみてください
STEP2:足裏のアーチを持ち上げるように地面を掴みます
STEP3:座った状態で繰り返し実施しましょう
※指を曲げないように注意しましょう
指にゆとりがある靴を履く
足の親指への負担を減らすために、指にゆとりがある靴を履きましょう。
歩きやすく、素材が柔らかいスニーカーを選んでみてください。つま先が尖った靴やハイヒールはできるだけ避けることをおすすめします。
また、外反母趾用のインソール(中敷き)を使用するのも効果的です。ご自身の足のサイズに合うインソールを選びましょう。
サポーター・パッドを着用する
サポーターやパッドの使用も検討してみてください。親指への衝撃を緩和する効果が期待できます。
靴下のように履くタイプのものから、指に挟むタイプや指にはめるタイプなど、形状はさまざまです。お手頃な価格の商品が多いので、いくつか購入して比べてみるのもありかもしれません。
足の親指の付け根の痛みはどのくらいで改善する?
おそらく、足の親指の付け根が痛む方は、「どのくらいの期間で痛みが改善するか」が気になるはずです。
当然ながら、症状の程度や個人差があるので一概には言えません。
そのうえで、母趾種子骨障害は3か月ほどで改善するケースが多いです。外反母趾や強剛母趾は、改善まで半年から1年近くかかるケースが多いとお考えください。
そして、痛風や関節リウマチが改善するまでの期間については、お医者さんに聞かないとわかりません。病院を受診した際に尋ねてみましょう。
少なくとも、数日や数週間で親指の痛みは改善しない場合がほとんど。ぜひ根気よくセルフケアを続けてみてください。
まとめ
足の親指の付け根は地面に接している箇所で、体重も乗りやすいです。ゆえに、痛みが出ると大きなストレスになりかねません。
本文で触れたように、放置するとそれだけ痛みは長期化しやすいです。ぜひ、早めに医療機関を受診し、原因が分かったうえでセルフケアを始めてみてください。
足の親指へ負担をかけないように注意しながら生活していくことで、徐々に痛みが緩和されて、楽に歩けるようになるでしょう。
それでは当記事が、少しでもあなたのお役に立てば幸いです。
【参考文献】
1)谷口 敦夫:ガイドラインに基づく高尿酸血症・痛風の治療
2)箱田 雅之, 笠置 文善:我が国における痛風患者数の今後の動向について
3)Sheree Nix 1, Michelle Smith, Bill Vicenzino:Prevalence of hallux valgus in the general population: a systematic review and meta-analysis
4)一般社団法人 日本足の外科学会:母趾種子骨障害
5)一般社団法人 日本足の外科学会:強剛母趾
6)一般社団法人 日本リウマチ学会:第1部 関節リウマチの基礎