整骨院や接骨院の開業を決めてからオープン当日まで、やるべきことが山積みで混乱してしまう人も多いでしょう。事前に流れを知っておくことで、スムーズに準備を進められるかもしれません。
そこで今回は、開業を決意してからオープンまでに行うことを流れに沿って解説します。本記事を参考に、スムーズに開業準備を進めていきましょう。
整骨院・接骨院の開業とともに必要になるもの
整骨院や接骨院の開業を決意したとき、医療者としての技術や知識だけでなく、仕事を続けていくために経営者としてのビジネススキルも必要になります。
そこで、開業した整骨院や接骨院を軌道に乗せるには、施術院を多くの人に知ってもらうためのマーケティング力や集客力なども身に着けなくてはなりません。また、開業までの資金繰りなども事前にリサーチしておく必要もあるでしょう。
あわせて、開業にあたり必要になるのが柔道整復師の国家資格です。以前は柔道整復師の資格があれば開業可能でしたが、平成30年4月以降は資格取得後、最大3年の実務経験と2日間の施術管理者研修の受講が義務付けられました。
国家資格と同時にこれらの義務をクリアしなければ、療養費(健康保険)の受領委任の取り扱いを管理する、「施術管理者」の資格を取得できません。そのため開業を決意したら要件を満たしているかを確認しましょう。
参考記事:整骨院・接骨院が潰れる理由〜3つの対策とあわせポイント解説〜
開業のために事業計画や資金計画を立てる
整骨院や接骨院の開業にあたり必要な要件を満たしていることを確認したら早速、開業に向けて準備を進めていきましょう。そこで大事になってくるのが事業計画と資金計画になります。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
整骨院・接骨院の事業計画について
開業するにあたり大切なのが、事業計画を立てることです。事業計画とは「事業の目標を実現するための具体的な行動を示すもの」を指し、今後の経営を進める上での落とし穴やリスクを探るために必要となります。
コンセプト、ターゲット層、どのような施術内容にするのか、集客方法、売上目標とその期間など多角的な目線で作成しましょう。
資金計画と資金の集め方
整骨院や接骨院を開業するには1,000万円前後の資金が必要と言われています。そのため資金計画を立てて、開業するにあたり必要なものや費用を計算しておきましょう。工事費、医療機器、備品、家賃や人件費などが開業に必要となる資金です。
そして一般的に、全額を自己資金でカバーするのは、早く開業を目指す方にとっては現実的ではありません。
そこで事業計画とあわせ、資金計画を立てておけば金融機関へ融資相談もしやすくなります。とくに、日本政策金融公庫は新しく開業する方が融資を受けやすい傾向にありますので、一度相談に伺ってみるとよいでしょう。
整骨院・接骨院を開業する場所の調査を行う
整骨院や接骨院を開業するのに立地や周辺施設を把握して、自分のコンセプトに沿う物件選びが何よりも重要です。それぞれをよく吟味した上で、開業する場所を決定しましょう。
立地を決める
ご自身がイメージする施術院のターゲット層に合わせた土地・テナント選びも大切です。集客しやすいであろう駅の近くや、子どもから大人まで幅広く対応できる住宅街など、検討しているエリアがどのような層に強いのかリサーチしておくと良いでしょう。
また若者が多い地域、家族が多い地域、高齢者の多い地域などエリアごとに特徴があります。そういった点もリサーチして、ご自身のターゲット層に合うエリアでの開業を目指しましょう。
周辺施設の把握
整骨院や接骨院は全国に5万軒を超えており、コンビニエンスストアと同じくらいの多さです。さらに近接業界の整体院・カイロ・マッサージなどの整体は約6万軒あります。そのため大体のエリアが決まったら、競合となる近くの整骨院や整体がどのくらいあるかを把握して、他施設との差別化を図りましょう。
開業の前に整骨院・接骨院のコンセプト設計を行う
開業する場所や周辺の調査が進んだら、施設のコンセプト設計を行いましょう。どのような人に来院してほしいか、保険請求以外の自費メニュー決めや、他施設にはない自院の特色などを決定していきます。
立地に応じたターゲット顧客層
自身が得意とする症状や年齢層によって、物件や場所を決めることが大切です。整骨院や接骨院を経営して行くにあたって、定期的に来院する顧客を獲得しなければいけません。
たとえば、若いファミリー層が多くいる地域で高齢者向けの施術メニューでは、十分な集客はできずせっかくの優れた技術を提供することができません。長く経営を続けていくために、あらかじめ施術メニューと立地に応じた顧客層をかけ合わせておくことも考慮しておきましょう。
イチオシの自費メニュー
整骨院経営にあたり、整骨院の療養費は年々減少し、保険申請できる範囲はますます厳しくなっていくはずです。
そのために、自費比率を高めて黒字経営を続けられる仕組みを作る必要があります。現在では整骨院ごとに自費メニューを取り入れるなどして、自費比率を高めている施設も多くあります。
そこで、世間のトレンドにも目を向けながら良質な施設運営を心がけていきましょう。現在は痛みなどの根本的な部分に施術をする運動療法が注目されております。
参考記事:一人接骨院・整骨院の現状や売上を出す方法とは?安定的な経営を行うための情報をお伝えします
他施設との差別化
新たに整骨院や接骨院を開くためには、周辺の他施設との差別化が大事です。
まずは、他施設がどのような症状に特化した整骨院なのか、患者さんにはどのようなメニューを提案できるのかなどの洗い出しを行います。他施設のリサーチをした上でご自身の整骨院の特色を明確化し、それに合わせた戦略を立てることが大切です。
近年、柔道整復師数の増加に伴い、接骨院・整骨院の施設数は年々増えています。しかし、ここ数年倒産件数も増加しており、2018年の接骨院等の倒産件数は98件にものぼり、過去10年で最多の件数に。
このような状況下の中で現在、接骨院・整骨院[…]
外装・内装工事、備品の準備をする
物件を決めた後は、外装・内装工事や備品の準備を行いましょう。外装や内装は患者さんが快適に施術を受けてもらえるように入念な打ち合わせが欠かせません。また、備品などはオーダーから搬入までに時間を要するため、早いうちから選定しておきましょう。
外装・内装工事でやるべきこと
施術中に患者さんに快適に過ごしてもらうためにも、こだわりたいのが内装です。また、新規の顧客を増やすには看板や外装など通りすがりの人が目を引くものにしたいと思うでしょう。
そのためにも業者と十分に時間を設けて入念な打ち合わせを行い、レイアウトの決定や必要な看板の手配などを、開業日から逆算して余裕を持って行うとよいです。
備品準備で必要なもの
レイアウトや看板などと合わせて、院内の備品の準備も始めましょう。整骨院や接骨院で必要になるのは、医療機器や施術具に加え、ベッドやタオル類など備品が多くあり、医療機器や施術具は、購入かリースにするかでも初期にかかる費用が変わります。
あらかじめ決めた予算に収まるようにそれぞれを決定しましょう。
また、備品を決定してから搬入までに時間がかかる場合もあります。備品が届くまでに時間がかかると予想されるものは早めに決定し、開業日までに余裕をもって備品の調整ができるとよいです。
開業申請の手続きはなるべく早めに対応する
整骨院開業のためには複数への届け出が必要です。というのも、届け出が遅れてしまうと保険請求のできない施術をしてしまうこともあります。開業準備中はタスクが山積みになり、申請を後回しにしたり、忘れてしまったりしやすいです。具体的な申請日を決めておくなどして申請漏れの内容に準備しておきましょう。
施術所開設届
開設届は、開設後10日以内に必要添付書類と合わせて管轄の保健所に提出します。書類の不足や不備があれば、その日に届出ができないこともありますので、以下に箇条書きで記載した内容等をきっちり揃えましょう。
【主な必要書類】
・開設届
・施術所の平面図
・施術所の周辺図※賃貸の場合は、店舗賃貸契約書の写しが必要な場合もあります
・柔道整復師免許証の原本と写し
・本人確認できる書類(運転免許証・パスポートなど)など※法人開設の場合は登記簿謄本の写しが必要です
必要書類は自治体によって異なることがありますので、事前に保健所に問い合わせ、必要な提出書類の確認しておくと良いです。
受領委任の取り扱いに関わる申し出
保険請求を行う場合は、開設届を提出した後に管轄の地方厚生局への以下に記載の必須書類など届出が必要です。
【必要書類】
・確約書(様式第1号)
・柔道整復施術療養費の受領委任の取扱に係る届け出(様式第2号)
・実務経験期間証明書
・施術管理者研修修了証の写し
・保健所開設届の写し(※保健所の受理印のあるもの)
・施術管理者の柔道整復師免許証の写し など
受領委任取り扱いの届出が受理された日から保険を取り扱えるようになりますが、不備のある場合は保険請求ができない施術になる可能性もあります。そのため、開業届提出の際に保健所の受理印をもらっているかなど、漏れがないことを確認しましょう。
共済番号の取得
国家公務員・地方公務員・防衛省関係の保険を取り扱うには、共済番号の取得が必要です。対象となる管轄機関に必要書類を揃えて申請しましょう。
税務署への届け出
個人事業主として開業する場合は、開業する地域の所轄する税務署に「個人事業の開業・廃業等届出書」を提出する必要があります。事業の開始の事実があった日から1月以内に提出するよう定められていますので、こちらも忘れずに届を出しましょう。
労災保険
開業する整骨院や接骨院で労災保険を取り扱うためには、管轄の都道府県労働局に以下の通り必要な書類を提出して、局長による指定を受ける必要があります。
【必要書類】
・申出書(様式第1号)
・確約書
・指定・指名機関登録(変更)報告書
・開設届
・施術所の平面図
・施術所の周辺図
・柔道整復師免許証の写し
これらの書類作成には時間がかかる場合がありますので、できるだけ早めに準備しておくことをおすすめいたします。
施設の広告宣伝・人材採用
内装や必要な備品の準備と並行して、集客のためにホームページやSNSなどを開設して、近隣住民や周囲に整骨院をオープンすることを伝えましょう。また必要なスタッフ数の確保やマニュアルも作成します。
HPやSNSの開設・DM作成
地域の方に整骨院を知ってもらうためには、HPやSNS、DM、チラシなどを作成しましょう。DMやチラシであれば近隣住民の目に留まりやすいです。また開業後もHPやSNSを定期的に更新することで、院内の様子や特色を多くの人に伝えることができます。できれば開業前に準備して周知させましょう。
整骨院・接骨院の広告は、法律によって定められています。
もし、法律を知らずに間違った広告を世に掲載してしまうと不正行為とみなされるケースも。整骨院・接骨院の広告ガイドラインは厚生労働省でさまざまな議論が行われており、最新情報を随時入手[…]
スタッフの確保と院内マニュアル作成
経営していくにあたりスタッフを確保しなければいけない場合には、早いうちから求人サイトなど利用してスタッフの募集を行いましょう。同時に院内で使用するマニュアルを作成し、開業日までに研修や講習を行い当日からスムーズに勤務できるような準備をしておくとよいでしょう。
鍼灸師として鍼灸院を開業する場合、資金や立地などさまざまな疑問点が浮かんでくるのではないでしょうか。これから開業をお考えの方は、多角的な視点から計画を練ることが大切です。
そこで今回は、
鍼灸院を開業する前におさえておきたい[…]
【接骨院・整骨院】開業に関するまとめ
以上、接骨院・整骨院の開業について解説しました。
人生にとって独立は大きなチャレンジとなりますが、準備をしっかりすることで万が一のリスクが避けられ、成功にも近づくことでしょう。決してあせらず、着実に準備を積み重ねてください。
それではあなたの接骨院・整骨院の開業が成功するよう、心より応援しています。
なお、最後になりますが開業とあわせ自費施術を作成するにも、何から手を付けたらよいかわからないこともあるはず。そこで、自費施術の作成や差別化でお悩みなら、弊社が開発する運動療法システム・リハサクがおすすめです。500種類の運動メニューの中から患者さんの症状に応じて、すぐにメニューが提案できます。
<参照>
- https://www.freee.co.jp/kb/kb-kaigyou/osteopath/#content1https://www.zenjukyo.gr.jp/service/opening_flow/
- https://www.jusei-sinkyu.com/judo/capacity/independent.php
- https://www.mhlw.go.jp
- https://www.e-shugi.jp/
- https://www.city.osaka.lg.jp
- https://kouseikyoku.mhlw.go.jp/kantoshinetsu/shinsei/shido_kansa/judo/index.html
- https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/shinkoku/annai/04.html