突然、肩に激痛が現れて動かすことも困難になる病気が「四十肩(しじゅうかた)」「五十肩(ごじゅうかた)」です。四十肩や五十肩になった場合、「少しでも早く改善したい」と思いますよね。手を使う仕事に従事されている方ならなおさらです。
その際に思いつく手段が、肩周りのストレッチかもしれません。そこで気になるのは、「四十肩や五十肩にストレッチが効くのか」ではないでしょうか。
結論からいうと、時期によって大きく異なります。
当記事では、四十肩や五十肩を緩和するためにストレッチを行う際の注意点・おすすめのストレッチ方法について解説します。最後まで目を通すことで、四十肩・五十肩においてストレッチを行う際のポイントがわかり、早期改善につなげられるでしょう。
ぜひ参考にしてください。
【肩こりとは違う】四十肩・五十肩とはどういった痛み?
最初に、四十肩・五十肩とはどういった痛みなのか把握しておきましょう。
四十肩・五十肩の正式名称は「肩関節周囲炎(かたかんせつしゅういえん)」です。その名の通り肩関節周辺に炎症が起こり、「突然現れる肩の激痛」「肩が動かしにくくなる」などの症状が現れます。
また、二の腕あたり(肩の付け根から肘にかけて)が痛むケースが多いのも特徴です。
したがって肩が重だるくなる、いわゆる「肩こり」とは異なります。一概には言えないものの、四十肩や五十肩の方が日常生活への影響は大きいといえるでしょう。
そして、四十肩・五十肩の詳しいメカニズムについては分かっていません。
さらに、四十肩や五十肩は長期化する傾向があり、痛みが無い状態へ戻るまでに1年以上かかるケースもあるので注意が必要です。
なお、四十肩と五十肩は呼び方が違うだけで、どちらも肩関節周囲炎を指しています。一般的に40代で発症する肩関節周囲炎を「四十肩」と呼び、50代で発症した場合は「五十肩」と呼ぶので、あらかじめ認識しておいてください。
参考記事:「五十肩(肩関節周囲炎)を早く治す方法とは?痛みの改善に効果のあるストレッチや体操を紹介」
参考記事:「四十肩を早く治す方法が知りたい!痛み緩和に有効なストレッチや寝方・ツボを解説」
「急性期」と「回復期」に分かれる
四十肩・五十肩のもう1つの特徴が、時期によって痛みの度合いや肩の動かしやすさが明確に変わる点です。
四十肩・五十肩は、「急性期(痛みの発症から約1か月以内)」と「回復期(痛みの発症から1か月以降)」に分かれます。
急性期に現れるのは、おもに肩の激痛です。就寝中も疼痛が続く「夜間痛」が現れるケースも多く、眠れなくなる場合もあります。
そして回復期になると肩の激痛は若干和らぐものの、肩の動かしにくさが現れます。「腕を背中側に回せない」「服が着られない」など日常生活において困る場面も多いです。
四十肩・五十肩にストレッチは有効!ただし時期に注意しよう
では、四十肩や五十肩にストレッチは有効なのでしょうか。四十肩・五十肩を和らげるためにストレッチは効果的だといえます。ただし、回復期に行うことが重要です。
もし、急性期にストレッチを行うと、炎症が広がり余計に痛みを悪化させてしまいかねません。
ご自分で肩の痛みを緩和するためにも積極的にストレッチを行うべきですが、実施する時期には十分注意しましょう。
ストレッチを行うことで得られるメリット
ここで、ストレッチを行うことで得られるメリットについて見ていきましょう。
まず、ストレッチを行い筋肉を伸ばすことで血流が良くなります。すると十分な酸素や栄養素が肩に送られたり、老廃物が効率よく回収されたりします。結果的に肩の痛みが改善されやすく、回復が早くなるのです。
また、ストレッチを行うことで肩関節の動きがスムーズになります。
先述した通り、四十肩・五十肩の回復期には、肩や腕の動かしにくさが顕著になります。そこでストレッチを行うことで、肩や腕を動かせる範囲が改善されやすいです。
このように、ストレッチには「血流改善による痛みの緩和」「肩の可動範囲の改善」の2つの効果が期待できます。したがって、四十肩・五十肩の予防としてもストレッチはおすすめだといえます。
四十肩・五十肩が改善したあとに、反対側の肩に再発するケースも存在するので、肩の不調が改善されたあともストレッチを継続する価値はあるでしょう。
なお、効果という面での利点とは少し異なりますが、「気軽に行える」のもストレッチが持つメリットの1つです。回復期になり痛みが軽減したら、ぜひ積極的にストレッチに取り組んでみてください。
四十肩・五十肩を早期改善!おすすめストレッチを紹介
ここからは、四十肩・五十肩の緩和効果が期待できる、おすすめのストレッチを動画とともに3つ紹介します。
準備が必要なストレッチもありますが、どれもご自宅にいながら実践可能です。ぜひ参考にしてください。
テーブルサンディング
1つ目は「テーブルサンディング」です。
こちらのストレッチを行うことで、肩関節の可動域を広げられます。椅子に座りながら行えるので、仕事や作業の合間に行うのも良いでしょう。
STEP2:タオルを滑らせ手を前方に動かしましょう
STEP3:繰り返し実施しましょう
STEP4:痛みのない範囲で手を伸ばしてみてください
※背中を丸めないように注意しましょう
棒を用いた肩関節外旋ストレッチ
2つ目に、棒を用いた「肩関節外旋ストレッチ」を紹介します。
このストレッチで、腕を内側に回す・肩関節を安定させる働きを持つ「肩甲下筋(けんこうかきん)」を伸ばせます。
また、肩甲下筋は「肩を上げる」動作においても大切な筋肉なので、しっかり伸ばしてみましょう。
STEP2:ゆっくりと元の姿勢に戻ります。繰り返し実施しましょう
※肩に痛みがある場合はタオルを挟みましょう
※脇が開かないように注意して行ってみてください
結帯エクササイズ
3つ目は、棒を用いた「結帯(けったい)エクササイズ」です。
こちらのストレッチは、肩関節の動きをスムーズにする効果があります。
四十肩・五十肩になると、手を背中側に回す「結帯動作(けったいどうさ)」が難しくなります。そこで、上記のストレッチを行うことで、より早期に結帯動作ができるようになるでしょう。
STEP2:痛くない方の手で棒を外側へ動かしましょう
STEP3:ゆっくりと戻します。繰り返し実施しましょう
STEP4:元の姿勢に戻します
※痛みのない範囲で実施してみてください
※可能な方は手首を返して棒を握りましょう
四十肩・五十肩の改善のためにストレッチを行う際のポイント
ここで、四十肩・五十肩をより効率よく改善するために、ストレッチを行う際の注意点やポイントについて解説します。
まず繰り返しになりますが、痛みが強い急性期ではなく、痛みが引き肩の動かしにくさが現れる回復期にストレッチを行うように、くれぐれも注意してください。
また、ストレッチを行う際に、無理に伸ばそうとしたり力んだりすると、痛みが悪化しかねません。呼吸を止めずに、リラックスしながらゆっくり動かすように心がけましょう。
そして、筋肉が柔らかくなっているお風呂上がりにストレッチを行うのがおすすめです。ストレッチのバリエーションを増やすなら、「ストレッチポール」を取り入れるのも有効です。
四十肩・五十肩が改善しない場合は病院で診察を受けよう
もし、四十肩・五十肩が思うように改善しない場合は、すぐに病院(整形外科)を受診してください。
肩関節周囲炎の様子を詳しく把握するのが大切ですし、別のより重篤な病気が関係しているケースもあり得るからです。
精密な検査を受けたうえで、お医者さんのアドバイスを守り、早期改善に努めましょう。
まとめ
四十肩・五十肩の大きな特徴は、痛みが強い「急性期」と、痛みが和らぐ「回復期」に分かれる点です。ストレッチを行う際は、痛みが若干和らぐ回復期に行うようにしましょう。
ストレッチを継続することで、肩関節を動かせる範囲が広がり、より早く日常生活に戻れるでしょう。
もちろん無理なストレッチは禁物です。本文で紹介したストレッチを参考に、ゆっくり肩を伸ばすように心がけてみてください。
それでは当記事が、あなたが抱える肩の痛みの改善に役立つことを願います。
【参考文献】
1)Joseph D Zuckerman 1, Andrew Rokito:Frozen shoulder: a consensus definition
2)K Nobuhara 1, D Sugiyama, H Ikeda, M Makiura:Contracture of the shoulder
3)村木 孝行:肩関節周囲炎 理学療法診療ガイドライン
4)Xiaofeng Jia 1, Jong-Hun Ji, Steve A Petersen, Jennifer Keefer, Edward G McFarland:Clinical evaluation of the shoulder shrug sign
5)S Carbone 1, S Gumina, A R Vestri, R Postacchini:Coracoid pain test: a new clinical sign of shoulder adhesive capsulitis
6)Eric J Hegedus 1, Adam P Goode, Chad E Cook, Lori Michener, Cortney A Myer, Daniel M Myer, Alexis A Wright:Which physical examination tests provide clinicians with the most value when examining the shoulder? Update of a systematic review with meta-analysis of individual tests