自身で取り組みやすい筋力トレーニング(筋トレ)の一つが「腕立て伏せ」です。
「厚い胸板を手に入れたい」「運動不足を解消したい」といった理由で続けている方も多いでしょう。
しかし、腕立て伏せをした後に肩の周りが痛くなる場合があります。肩を痛めることで腕立て伏せが続けられなくなったり、日常生活に支障が出てしまったりすれば元も子もありません。
そこで当記事では、腕立て伏せをしたら肩が痛くなってしまう場合の原因やセルフケア方法を紹介します。
最後まで目を通すことで、腕立て伏せで肩が痛くなる原因が分かり、安全に筋トレを行えるでしょう。
腕立て伏せで肩が痛くなる原因とは?
基本的に腕立て伏せは、胸の筋肉(大胸筋)と上腕、体幹を鍛えるトレーニングです。したがって、メインは肩を鍛えるために行うものではありません。
しかし「腕立て伏せを行ったら肩が痛くなった」という声が多く見られます。なぜ腕立て伏せで肩が痛くなるのでしょうか。
考えられる原因を3つご紹介します。
原因①腕立て伏せのフォームに問題がある
まず考えられるのが、誤ったフォームで腕立て伏せを行っているケースです。
「腕立て伏せ」という名前から、単にうつ伏せで腕を立て、肘を曲げ伸ばしすればよいと考えるかもしれません。しかし実際は、手を置く位置や肘の角度、体幹部位の姿勢が大変重要です。
誤ったフォームで腕立て伏せを続けてしまうことで、肩に過度な負担がかかり痛めてしまいかねません。
正しいフォームに関しては後ほど詳しく説明しますので、ご自身の方法と照らしあわせてみてください。
参考記事:腕立て伏せ(プッシュアップ)は効果大!正しいフォームと回数の目安を解説
原因②【筋肉痛】腕立て伏せをやりすぎた
腕立て伏せのやり過ぎも、肩を痛める原因になります。
「始めたからには毎日続けたい」という思いから、1日も休まず腕立て伏せを継続する方がいます。しかし筋肉を休ませないと、疲労が溜まり筋線維の損傷(筋肉痛)が改善しません。
次第に胸や腕の筋肉が伸びなくなり、各関節の可動範囲も狭くなるので、結果的に肩の痛みに繋がります。
筋トレのやり過ぎを自分で気づけないケースが思いのほか多いもの。自分に厳しい方ほど、無理をしていないかしっかりチェックしましょう。
原因③もともと肩の筋肉を負傷していた
他には、以前に肩を負傷した、あるいは気づかないうちに肩を負傷していたケースも存在します。
肩の関節は、さまざまな筋肉や腱が合わさった複雑な構造です。一度痛みが無くなっても、ふとした動きで痛みがぶり返す場合もあります。
したがって、腕立て伏せがきっかけで肩の古傷が悪化したり、痛みが顕在化しても不思議ではありません。
腕立て伏せで痛めやすい肩の部位
個人差があるものの、腕立て伏せによって「肩の前方(腕の付け根)」が痛くなるという方が多いです。腕立て伏せを行うことで肩関節周辺の骨や靭帯がぶつかり、痛みが出ると考えられます。
こういった症状を「インピンジメント症候群」と呼びます。
正しいフォーム、正しい強度で腕立て伏せを行うなら、インピンジメント症候群を心配する必要はほとんどありません。
しかし先述したように、誤ったフォームで腕立て伏せを行ったり、腕立て伏せをやりすぎたりして肩に負荷がかかれば、インピンジメント症候群が発生する可能性が高くなります。
【セルフケア】腕立て伏せで肩を痛めた時の対処法
腕立て伏せで肩を痛めてしまった場合に、どのように対処すればよいか分からない方もいらっしゃるでしょう。
ここから、ご自身でできる対処法とセルフケアを紹介します。
痛みがなくなるまで休む
痛みが改善するまで腕立て伏せを休むことは重要です。我慢して腕立て伏せを続ければ、痛みが悪化することは言うまでもありません。
ストイックな方ほど「休めば筋肉が衰えてしまう」と考えますが、休むこともトレーニングのうちと心がけ、決して無理はしないようにしましょう。
腕立て伏せを休むかわりに、別の種目を行ったり別の筋肉を鍛えたりすることもできます。
参考記事:腕の付け根が痛い原因とは?症状に合ったストレッチなどの対処法について解説
腕立て伏せのフォームを見直す
腕立て伏せのフォームを改めて見直すことも大切です。肩を痛めることなく胸や上腕、そして体幹に効かせられるようにしましょう。
まず手の位置に注目します。
両手は肩幅に開き、床に対して垂直(90°)に置いてみてください。
そして肘を曲げて沈む際に肩・肘・手首が線上に並ぶように意識します。脇が空き、肘が外に開いてしまうと同じ線上には並びません。したがって、脇はできるだけ開けないことをおすすめします。
続いて、肩甲骨の動きをチェックします。
肘を曲げて沈む時に、左右の肩甲骨を内側に寄せることが大事です。もし肩甲骨を内側に寄せないと背中が丸まり、肩の前方に余計な負荷がかかってしまいます。
最後に、体幹(腹筋と背筋)部分もチェックしましょう。
横から見て姿勢(体幹部)がまっすぐになっていないと、肩に余計な負担がかかるだけでなくトレーニングの効果も半減します。そこで腕立て伏せを行う際、顎(あご)を引いてお尻(殿部)の筋肉に力を入れてみてください。
顎を引き、お尻に力を入れるだけで姿勢がまっすぐに保たれるので、肩を痛めるリスクも減りトレーニング効果も上がります。ぜひ意識しましょう。
腕立て伏せは一見単純な動作ですが、意識すべきポイントが多くあります。ぜひ一度フォームを見直してみてください。
正しいフォームは以下の動画も参考にしてください。
腕立て伏せの負荷を減らす
もし通常の腕立て伏せができない場合は、負荷を減らすことを考えましょう。無理して腕立て伏せをすれば、フォームが崩れたり必要以上に力んだりして、肩が痛む原因になります。
そこで以下の方法がおすすめです。
- 両膝を床につけて腕立て伏せを行う
- 台の上に手を置いて腕立て伏せを行う
- 床ではなく壁に向かって腕立て伏せを行う
上記の方法によって腕立て伏せの負荷が大幅に減るので、トレーニング初心者の方はぜひ実践してみてください。
膝つき腕立て伏せの方法は、以下を参考にしてみてください。
肩のストレッチを行う
できれば腕立て伏せを行う前後にストレッチを入れましょう。ストレッチを行うことで筋肉が温まったり、乳酸などの老廃物を排出したりする効果が期待できます。
腕立て伏せで肩を痛めた場合は、よりじっくり時間をかけて肩のストレッチを行ってみてください。
加えて手首と肘もストレッチすることをおすすめします。手首・肘に痛みがあると腕立て伏せの動作に支障が出て、肩の痛みに繋がりかねません。
安心して腕立て伏せを行うために、肩・肘・手首をストレッチしましょう。
参考記事:【ガチガチ肩こり解消】寝ながらできる肩甲骨ストレッチを動画で解説!
参考記事:【動画で解説】座ったままで肩こり解消!簡単にできる肩甲骨ストレッチを紹介
まとめ
腕立て伏せで肩を痛める大きな原因は「誤ったフォーム」です。
間違ったフォームで腕立て伏せを行うことで、肩に効いてしまいます。そして肩に負担がかかることで肩関節が痛くなるのです。
まずは腕立て伏せをする際の手の位置や肘の角度、体幹部を再チェックしましょう。これだけで肩が痛くなる頻度は減るはずです。それでも肩が痛む場合は、腕立て伏せのやり過ぎも考えられます。
痛むうちは腕立て伏せを休むことも大切です。また、別のメニューを行うことも検討しましょう。そのうえで、腕立て伏せの前後に肩周辺のストレッチを入れてみてください。
それでは当記事を参考に、安全に腕立て伏せを行いましょう。
【参考文献】
1)厚生労働省:ストレッチングの効果