激しい痛みとともに、肩を動かせる範囲が狭まる症状が「四十肩(しじゅうかた)」です。
四十肩になってしまうと、夜眠れなくなったり着替えがしにくくなったり、日常生活に大きな影響が出ます。ゆえに「四十肩を早く治す方法が知りたい」という方もいらっしゃるはず。
そこで当記事では、四十肩の概要や一般的な治療期間、そして四十肩の改善に役立つセルフケア方法を紹介します。
最後まで目を通すことで、四十肩を早く改善する方法がわかるでしょう。
【最初に確認】四十肩はどういった症状?五十肩との違いは?
四十肩という名称はいわゆる俗称で、正式名称は「肩関節周囲炎(かたかんせつしゅういえん)」です。他には「凍結肩」や「拘縮肩」と呼ばれる場合もあります。
その名の通り、肩関節周辺に炎症が生じ、肩の激痛と動かせる範囲の制限(可動域制限)が現れます。
「夜寝ているときの肩の痛み(夜間痛)」や「肩を頭の高さまで挙げられない」「手を背中側に回せなくなる」などの症状が出るので、日常生活に大きな影響を与えかねません。
また四十肩は症状の進行によって、以下のように段階が分かれます。
- 急性期(痛み期):肩の激痛が発生する時期
- 回復期:激痛は収まり、肩の可動域制限が現れる時期
段階ごとに対処法は異なるので、あらかじめ把握しておきましょう。
なお、似た名称を持つ症状として「五十肩」が知られていますが、四十肩と五十肩は同じ症状(肩関節周囲炎)を指します。一般的に発症した年齢が40代の場合は四十肩、50代の場合は五十肩と呼ばれることが多いです。
参考記事:五十肩(肩関節周囲炎)を早く治す方法とは?痛みの改善に効果のあるストレッチや体操を紹介
四十肩になる原因とは?
なぜ、四十肩を発症するのでしょうか。
「肩の酷使」「老化」「筋力の低下」「怪我」などが要因として挙げられるものの、明確な原因は未だ分かっていません。したがって、なんの心当たりもないのに四十肩を発症するケースもあります。
なお、肩関節の骨折や腱板損傷、糖尿病と合併する形で四十肩が発症するケースも存在します。
参考記事:腕を上げると肩が痛い場合の対処法!『五十肩』や『腱板断裂』など原因別に解説!
四十肩と肩こりの見分け方
四十肩と似ている症状が「肩こり」です。どちらも肩に不調が現れる症状ということで、混同されていらっしゃる方も少なくありません。
四十肩と肩こりの違いは、痛みの強さや可動域制限の有無といえます。
一般的な肩こりの場合、痛みより重だるさが顕著です。また、肩の動かしにくさはそこまで明確に現れません。
対して四十肩の場合は、耐え難いほどの激痛と、肩の可動域制限が明確に現れます。
とはいえ、症状の程度には個人差があるもの。肩こりなのか四十肩なのか見分けがつかない場合もあるでしょう。
したがって肩に不調が出たら、早めに医療機関に受診することをおすすめします。
参考記事:肩こりを一瞬で治す方法とは?ストレッチやマッサージで辛い肩こりを解消する方法!
参考記事:肩こりの重症度レベルをチェックしたい!ひどい肩こりに効くセルフケア方法も紹介
四十肩はどのくらいで治る?【1年以上かかるケースも】
四十肩に悩む方からしたら、どのくらいで治るかは気になるでしょう。
肩の激痛は、1か月から2か月といった比較的短い期間で収まります。ただし、回復期に現れる肩の可動域制限が改善するまでには、1年から2年かかる場合が多いです。
もちろん例外はあり、1年以内に可動域制限まで改善されるケースも存在します。とはいえ、四十肩の改善までには、ある程度の時間を要すると考えておくべきでしょう。
なお、四十肩が改善した後に再発する確率は少ないです。ただし、まれに四十肩が再発するケースは存在します。また、反対側の肩が炎症を起こし四十肩になってしまう可能性もあるので注意しましょう。
四十肩になったらやってはいけないこと
四十肩を悪化・長期化させないためにも、やってはいけないことを把握しておきましょう。
まず、痛む肩周辺への強いマッサージは炎症を広げてしまうので避けてください。
また、横向きで眠ることは避けるべきです。
痛む肩を下にして寝ると負荷が増えますし、痛む方を上にして寝ても睡眠中に肩が前に流れて、結果的に負担がかかるケースが考えられます。
就寝時は比較的安定しやすい仰向けで眠っていただくか、または横向きで眠る場合は、肩が前方へ動かないように大きな抱き枕を抱え、安定した姿勢を作りましょう。
そして四十肩急性期の運動は、肩の炎症を広げてしまいかねません。激痛が治まるまで運動は止めましょう。
まずは医療機関(整形外科)で診てもらうことが大事
「もしかしたら四十肩かも」と思ったら、早めに整形外科などの医療機関を受診しましょう。精密な検査によって、肩の状態が正確にわかるからです。
四十肩とは別の症状や病気が、肩の激痛を引き起こしている可能性もあります。医療機関へ受診しなかった場合、より重篤な病気を見逃してしまうリスクも。
検査の結果、四十肩だと診断が出た段階で、対処法を考えていきましょう。
したがって、最初から接骨院や整体院に足を運ぶことは避けるべきです。まずは医療機関で検査を受けることを忘れないでください。
【時期別】自分でできる!四十肩セルフケアを解説
ここから、四十肩に効くセルフケア方法を段階ごとに紹介します。
四十肩を早く治すためには、適切なセルフケアを続けることが欠かせません。ご自身で実践できる方法ばかりなので、ぜひ参考にしてください。
急性期(痛み期)
急性期は激しい痛みが現れるので、無理に動かすべきではありません。
できるだけ安静にすることを心がけながら、いかに痛みを抑えつつ日常生活を送れるかを考えましょう。
寝方を気をつける
四十肩の急性期では、夜中に肩が痛くなる「夜間痛」が現れます。痛みのために睡眠が浅くなるケースが少なくありません。
肩への負担を減らす姿勢として「肩関節安静肢位背臥位(かたかんせつあんせいしいはいがい)」があります。以下の動画で解説しています。
※肩が前方に出ないように注意してみてください
上記の姿勢で眠ることで、睡眠中の肩への負担を減らせるでしょう。慣れるまで時間はかかるかもしれませんが、ぜひ取り入れてみてください。
鎮痛消炎剤を使う
もし痛みが強くて我慢できない場合は、市販されている外用鎮痛消炎剤を使用することを検討しましょう。
「貼る」「塗る」「飲む」など鎮痛剤消炎剤のタイプはさまざま。ご自身の好みで選びましょう。
ただし、使用上の注意を必ず守ったうえで使用することが重要です。
回復期
急性期を過ぎると回復期に移行します。
回復期になると激痛は治まりますが、肩の可動域制限によって「髪を洗う」「服を着る」といった動作に支障が出ます。
肩を動かせる範囲を早く戻すために、ストレッチや筋トレによって積極的に肩を動かしましょう。
ストレッチを行う
四十肩の回復期には、重点的にストレッチを行ってみてください。肩のストレッチを続けることで、肩の可動範囲が広がりやすくなるでしょう。
おすすめのストレッチを3つ紹介します。
1つ目は「肩関節外旋(かたかんせつがいせん)ストレッチ」です。
STEP2:脇を閉じた状態で棒を外側に動かしましょう
STEP3:外側へ動かした状態を数秒間保持します
STEP4:ゆっくりと元の姿勢に戻ります
STEP5:繰り返し実施しましょう
※肩に痛みがある場合は脇にタオルを挟みましょう
※脇が開かないように注意してみてください
上記のストレッチによって、肩の深い部分にある筋肉が効率よく伸びます。
2つ目は「結帯(けったい)エクササイズ」です。
STEP2:タオルを背中側へ回し片手で掴みましょう
STEP3:タオルを上方へ引っ張ります
STEP4:元に戻します
STEP4:肩前面の伸びを感じながら繰り返しましょう
※腰を反らさないように注意しましょう
このエクササイズは、背中に手が回らないときに有効なので、ぜひ実践しましょう。
3つ目は「テーブルサンディング」です。
STEP2:タオルを滑らせ手を前方に動かしましょう
STEP3:痛みのない範囲で繰り返し実施してみてください
※背中を丸めないように注意しましょう
こちらのエクササイズは、肩が挙がりにくい場合に行ってみてください。
いずれのストレッチも無理をしないようにゆっくり行いましょう。毎日継続することで、少しずつ効果を実感できるはずです。
軽い筋力トレーニングを行う
筋力トレーニングを行って、筋肉に刺激を与えることも効果的です。
筋力アップが目的ではないので、負荷は軽くても問題ありません。簡単にできる筋トレを紹介します。
「僧帽筋下部エクササイズ」です。
STEP2:伸ばした手を上方へ挙げましょう
STEP3:ゆっくり下ろします
STEP4:繰り返し実施しましょう
※腕を可能な限り高く挙げてみてください
※肘が曲がらないように注意してください
上記のエクササイズによって、肩の動きに関係する筋肉を刺激できるので、肩の可動域回復につながります。
寝るスペースがあれば取り組めるので、ぜひ継続しましょう。
肩に効く「ツボ」を刺激する
肩の可動域を広げるために、人体に点在するツボを刺激するのも効果的です。
ただし場合によっては、肩のツボを刺激することで炎症が広がり痛みがぶり返す可能性もあります。
リスクを減らすために、肩から少し離れた部位にあるツボを刺激してみましょう。ここで、おすすめのツボを2つ紹介します。
1つ目は「欠盆(けつぼん)」というツボです。
鎖骨に存在しており、このツボを刺激することで肩が挙がりやすくなります。
2つ目は「臀臑(ひじゅ)」というツボです。
肩の膨らみに存在するこちらのツボを刺激することで、手を後ろに回す動作が楽になるでしょう。
ツボを刺激する際は、指の腹や手のひらで素早くさすってみてください。ツボに該当する部位が次第に温かくなってくるはずです。
毎日コツコツ続けることで、効果を実感できるでしょう。
四十肩を予防するために大切なこと
先述したように、四十肩が起こる原因については詳しく分かっていません。つまり、どんなに気をつけていても四十肩が発症する可能性があるということ。
とはいえ、良い姿勢を意識したり巻き肩を改善したりすることが、肩の負担軽減や血流改善に有効なのは間違いありません。結果的には四十肩の予防効果も期待できるはずです。
ぜひ普段から「肩に負担がかかりすぎていないか」「肩関節周辺の血流が悪くなっていないか」など注意を払ってみてください。
参考記事:巻き肩を治す方法はある?効果的な寝方やグッズの使い方・おすすめストレッチを解説
参考記事:【簡単】姿勢を良くする方法4選!猫背や反り腰を改善して正しい姿勢を保つには
まとめ
四十肩になってしまう明確な原因は不明です。つまり、誰でも四十肩になり得るということに他なりません。
急性期はまず痛みに対する対処法を講じ、回復期に入ったら積極的にストレッチや筋トレを行って肩の可動範囲を広げることに努めてみてください。こういった努力が、四十肩を早く治すことにつながるからです。
当記事を参考にしながら、四十肩の早期改善のために行動を始めましょう。
きっと肩の痛みが解消され、肩を自由に動かせる日が来るはずです。
【参考文献】
1)Joseph D Zuckerman 1, Andrew Rokito:Frozen shoulder: a consensus definition
2)K Nobuhara 1, D Sugiyama, H Ikeda, M Makiura:Contracture of the shoulder
3)Xiaofeng Jia 1, Jong-Hun Ji, Steve A Petersen, Jennifer Keefer, Edward G McFarland:Clinical evaluation of the shoulder shrug sign
4)Jing-lan Yang 1, Chein-wei Chang, Shiau-yee Chen, Jiu-jenq Lin:Shoulder kinematic features using arm elevation and rotation tests for classifying patients with frozen shoulder syndrome who respond to physical therapy
5)E W Emig 1, M E Schweitzer, D Karasick, J Lubowitz:Adhesive capsulitis of the shoulder: MR diagnosis
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