梨状筋症候群を知り尽くす!原因や症状、痛みを治すストレッチを専門家が紹介

お尻から太ももの裏側、足先にかけて痛みやしびれがみられる際は「梨状筋症候群(りじょうきんしょうこうぐん)」が疑われます。
ハードな運動をしている方や仕事で長時間座っている方など、どなたにも梨状筋症候群は発症する可能性があります。

しかし、聞き慣れない傷病名であるため、「梨状筋症候群って何?」「どうすれば治るの?」と疑問に思われる方が多いのではないでしょうか?

そこで当記事では、梨状筋症候群のメカニズムや引き起こされる症状、痛みを改善するためのセルフケア(ストレッチ)を詳しく解説しています。

最後まで読むことで、梨状筋症候群への知識が深まり、症状への適切な対処や予防が行えるようになるでしょう。

そもそも梨状筋症候群とは?痛みのメカニズムを解説

梨状筋症候群とは、梨状筋によって坐骨神経が圧迫され、痛みしびれといった症状が生じた状態を言います。椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症と並んで、坐骨神経痛を引き起こす原因の一つに考えられています。

参考記事:【意外と知らない】坐骨神経痛とは?間違える病気と自宅でできるセルフチェック方法を解説

梨状筋はどこにある筋肉?

梨状筋は、お尻の深層にある筋肉です。仙骨(せんこつ:背骨の下部にある平たい骨)や尾骨(びこつ:仙骨の先端にある小さい骨)の前面から大転子(だいてんし:骨盤の側面、太もも外側にある骨の出っ張り)にかけて付着しています。

梨状筋の場所を示した図

梨状筋は骨盤の後面を横に走行しており、その下を坐骨神経が通過する形となっています。
この梨状筋がなんらかの原因で硬くなることで、すぐそばを走行する坐骨神経が圧迫され、梨状筋症候群が生じると考えられています。

ちなみに坐骨神経は、下半身の感覚や運動に関与している末梢神経のことです。梨状筋の下を通ってお尻に出たあと、太ももの裏側、ふくらはぎ、すね、足の先までつながっています。

これは梨状筋症候群?症状の特徴と自分でできるチェックの方法

ここからは、梨状筋症候群の症状と簡単にできるチェック方法を紹介します。現在お悩みの症状が梨状筋症候群かどうか判断する際の参考にしてみてください。

梨状筋症候群のおもな症状

梨状筋症候群の症状には、次の4つの特徴があります。

  • お尻の痛みがある
  • 座ると痛みが悪化する
  • お尻のえくぼ(中央のくぼんでいる箇所)あたりを押すと痛む
  • 仰向けに寝て、膝を伸ばしたまま足を上げていく動作に制限がある

また、お尻に限らず、太ももの裏側から膝下、足先にかけて痛みやしびれなどが出現する坐骨神経痛の症状がみられる場合もあります。
症状の感じ方には個人差があり「チクチクと痛む」「焼けるように痛む」「ジンジンとしびれる」などさまざまです。

セルフチェックの方法

股関節を内側にひねる動き(内旋)をした際、お尻や下肢の痛みが誘発される場合は梨状筋症候群の可能性があります。症状が悪化するのは、股関節の内旋によって硬くなった梨状筋が伸ばされ、坐骨神経の圧迫が強まってしまうためです。

股関節の動きを説明する図

また、梨状筋は股関節を外側にひねる動き(外旋)をする際に収縮しますので、股関節を外旋する方向に力を入れた際に筋緊張が強まり、梨状筋症候群の症状が誘発される場合もあります。

ちなみに梨状筋症候群を確定する診断方法はありません。上記で紹介した症状や痛みが強まる動作などから総合して「梨状筋症候群ではないか?」と判断する形となります。

【なぜ起こる?】梨状筋症候群の原因を知っておこう!

梨状筋症候群への適切なセルフケアが行えるよう、症状が起こる原因について理解を深めておきましょう。

オーバーユース(使いすぎ)

体を酷使することで筋肉に疲労がたまり、梨状筋の緊張を強めてしまう場合があります。股関節を動かす梨状筋に負担をかける運動としては、長距離のランニングや体幹を一方向にひねるスポーツ(ゴルフ、野球)などが挙げられます。

長時間の座った姿勢

長時間座った状態が続くことでお尻の筋肉が硬くなり、梨状筋症候群につながる例もあります。日常生活においては、デスクワークや車の運転などで休憩を入れないと、座った姿勢が長く続いてしまいます。

お尻のケガ

ケガにともなう腫れやしこりによって、坐骨神経が圧迫されてしまうケースもみられます。転倒や事故などによるお尻の打撲が梨状筋症候群を引き起こす要因の1つです。

つらい痛みを改善!簡単にできる梨状筋症候群への対処法

梨状筋症候群の症状を緩和するためには、次のようなセルフケアが有効と言われています。
どれも簡単にできるので、ぜひ実践してみてください。

痛みが強い場合は安静にする

痛みやしびれが強く出ている場合は、安静にしてください。症状が悪化する可能性があるため、無理に体を動かすことは控えましょう。

また、座った状態が続くと症状が出やすいため、デスクワーク中もこまめに立ち上がるようにすると良いでしょう。

お尻や足を温める

ホットパックやカイロなどを当てて、お尻や腰のまわりを温めましょう。温めることで梨状筋の緊張がゆるまり、坐骨神経の圧迫も緩和されやすくなります。

また、お尻に限らず症状を感じる箇所を温め、血流を良くすることでも神経痛の症状が軽減する場合があります。

マッサージ・ツボ押しで筋肉をゆるめる

梨状筋をほぐすには、テニスボールを使ったマッサージがおすすめです。
特に梨状筋が付着している仙骨のきわから大転子の間にトリガーポイント(ツボ)が多く存在します。

お尻のえくぼ部分(中央のくぼんでいる箇所)を中心に、押してみて気持ちよく感じる箇所を重点的に刺激すると良いでしょう。

簡単にできるマッサージの方法については、このあと動画付きで紹介いたします。

無理のない範囲でストレッチをする

梨状筋症候群の改善には、ストレッチが有効と言われています。ストレッチを行うことで、お尻や太ももの緊張がほぐれて、坐骨神経の圧迫も緩和されやすくなります。

ストレッチの方法についても、マッサージとあわせてこのあと詳しくみていきましょう。

参考記事:【腰から片側の足にかけての痛み】坐骨神経痛の原因と3つの対処法を専門家が解説!

【寝ながらでもできる】梨状筋症候群に効くストレッチ

それでは、梨状筋症候群を改善に導くストレッチ(マッサージ)を紹介します。筋線維を痛める可能性があるため、呼吸をしながらリラックスした状態でストレッチを行うようにしてください。

ボールマッサージ

テニスボールを使ったお尻のマッサージです。梨状筋やお尻の後面に付着する大臀筋(だいでんきん)をほぐすことができます。

ボールを転がしながら片方のお尻を5分ほどほぐしたら、反対側のお尻も同様にマッサージしていきましょう。

梨状筋ストレッチ

梨状筋症候群の原因となる、梨状筋の緊張をゆるめるストレッチです。

1日2回、30秒3〜5セットが目安になります。左右バランス良くストレッチしましょう。

梨状筋症候群が治るまでの期間はどれくらい?

梨状筋を含むお尻の緊張をゆるめる運動療法を行うことで、ほとんどの方が8週間以内に痛みやしびれの症状の改善が見られると報告されています。

しかし、治るまでの期間には個人差があります。
症状を長引かせないためには、しっかりとセルフケアを行うことが大事です。また、このあと紹介する「やってはいけないこと」にも、しっかり目を通しておくようにしましょう。

【要注意】梨状筋症候群の人がやってはいけないこととは?

梨状筋症候群の方にとって、やってはいけない注意点がいくつか存在します。状態が悪化することもありますので、以下の点には十分お気をつけください。

安静にしすぎる

症状が強く出ている時期は、体を休めることが大事です。しかし、安静にしすぎて長く体を動かさないと梨状筋の柔軟性が低下し、より症状が取れづらくなる可能性があります。

安静は48時間以内にとどめ、ストレッチやマッサージといったセルフケアを行うことが推奨されています。

参考記事:坐骨神経痛でやってはいけないことは?つらい症状を軽くする簡単ストレッチも紹介!

ハードな運動、筋トレをする

適度な運動は体の柔軟性を高めるため、梨状筋症候群の改善・予防につながります。しかし、運動や筋トレをやりすぎると、疲労をためて筋肉の緊張を生むおそれがあります。

とくに症状が出ている時期には、激しい運動はなるべく避けるようにしておきましょう。

長時間座った姿勢を続ける

大きく伸びをしている女性の写真

長く座りすぎると、腰部やお尻の筋肉を緊張させてしまいます。デスクワークや車の運転中も30分から1時間を目安に小休憩をとり、定期的に体を動かすことをおすすめします。

梨状筋症候群の症状が治らない場合は病院へ

坐骨神経痛の原因は、梨状筋症候群だけに限りません。

椎間板の一部が後方に飛び出す「腰椎椎間板(ようついついかんばん)ヘルニア」や、加齢にともない脊柱が変性する「脊柱管狭窄症(せきちゅうかんきょうさくしょう)」など背骨の病気も坐骨神経痛を引き起こす要因に挙げられます。

自己判断で対処をしていると、神経の障害を進行させるかもしれません。
とくに背骨の病気は中枢神経にも影響をおよぼす可能性があるため、早めの処置が重要です。

もしセルフケアで改善が望めない場合は速やかに整形外科を受診し、検査を受けるようにしてください。

参考記事:腰椎椎間板ヘルニアとは?痛みを和らげる方法をわかりやすく解説!
参考記事:【要注意】脊柱管狭窄症でやってはいけないことは?自宅で出来るストレッチも解説!

まとめ

今回の記事では、梨状筋症候群の概要と、症状をやわらげるためのセルフケアを中心に解説しました。

梨状筋症候群はストレッチやマッサージを行い、筋肉の緊張をほぐすことで、症状の改善を見込めます。しかし、痛みやしびれが脊柱の病気から起きている可能性もあるため、症状が治らないという方は、早めに医療機関を受診するようにしてください。

それでは、当記事があなたの痛み改善のお役に立てれば幸いです。

【参考文献】
1)Kevork Hopayian, Armine Danielyan:Four symptoms define the piriformis syndrome: an updated systematic review of its clinical features
2)Brandon L. Hicks; Jason C. Lam; Matthew Varacallo:Piriformis Syndrome
3)梨状筋症候群に対する運動療法の考え方とその成績