10代のスポーツ選手に起こる症状のひとつが「分裂膝蓋骨」です。
分裂膝蓋骨は膝のお皿に現れる症状で、とくに「走る」競技に支障を及ぼす可能性があります。
より良いパフォーマンスを発揮するため、長く競技を続けるためにも、分裂膝蓋骨について把握しておくのがよいでしょう。
そこで当記事では、分裂膝蓋骨の原因や対処法について詳しく解説します。
最後まで目を通すことで、分裂膝蓋骨の概要や取り組むべきセルフケア方法がわかります。
分裂膝蓋骨に悩んでいる方はもちろん、「子供が分裂膝蓋骨で、対処法を探している」という方はぜひ最後までお読みください。
分裂膝蓋骨とはどういった症状?
はじめに、分裂膝蓋骨について解説します。
分裂膝蓋骨の読み方は、「ぶんれつしつがいこつ」です。通常は1つである「膝蓋骨=膝のお皿」が2つ以上に分かれる症状を指します。
分裂膝蓋骨は、「痛みを感じないケース」と「痛みを伴うケース(有痛性分裂膝蓋骨)」が存在し、治療対象は痛みを伴うケースです。したがって、分裂膝蓋骨には必ず治療が必要というわけではありません。
なお、膝のお皿の割れ方にはいくつか種類があり、外側上方が欠ける場合が最も多いです。
【原因】分裂膝蓋骨はなぜ起こる?
現在のところ、分裂膝蓋骨の詳しい原因については不明です。
「生まれつき膝のお皿が割れている」という説や、「スポーツで膝に負荷や衝撃が加わることで発症する」という説が存在します。
なお、痛みを伴わない分裂膝蓋骨も多いため、X線などの検査によって偶然見つかるという場合が多いです。
成長期のスポーツ選手が有痛性分裂膝蓋骨を発症しやすい
有痛性分裂膝蓋骨は、スポーツに取り組む10歳から17歳の男子が発症しやすいです。
「走る」「ジャンプ」「膝の屈伸」などの動作で痛みを生じるので、とくにバスケットやサッカーなど脚を使う競技に影響を及ぼします。
10歳から17歳はちょうど成長期ということで、無理をすれば将来に影響を及ぼしかねません。もし痛みが増していくようなら治療を検討してみてください。
まずは病院(整形外科)への受診を忘れずに!
膝のお皿に違和感を覚えた際は、最初に整形外科を受診しましょう。
成長期に膝の痛みが出た場合、「オスグッド病」「ジャンパー膝」など他の症状である可能性も考えられます。したがって、痛みの原因となる症状が判明しなければ対処のしようがありません。
レントゲンやCTといった精密な検査を行い、膝の状態を正確に把握するべきです。
参考記事:オスグッド・シュラッター病とは?痛みの原因と対処法を解説
参考記事:ジャンパー膝(膝蓋腱炎)とは?痛みの原因と症状・ストレッチなどの予防方法について解説
分裂膝蓋骨はどのくらいで治る?スポーツ復帰はいつ頃?
一般的に2か月〜3か月の治療期間が必要です。その間は競技を休み、有痛性分裂膝蓋骨の改善に専念する必要があるでしょう。
もし改善が見られなければ、医師の判断によっては膝の手術が検討される場合もあり得ます。
なお、分裂膝蓋骨の手術は「欠けた骨を除去する方法」と「分かれた骨がくっつくように処置する方法」の2種類が存在します。
多くの場合、手術後6か月ほどで競技への復帰が可能です。ただし相応の時間と手術費用が必要になってくるでしょう。
分裂膝蓋骨に効果のあるセルフケア
ここから、比較的軽症である分裂膝蓋骨に効くエクササイズを紹介します。どれも、ご自身で手軽に行えるケアやエクササイズです。
毎日継続すれば、膝の痛みの軽減が期待できるので、ぜひ実践してください。
運動後の入念なアイシング
運動によって生じた熱を冷ますために、アイシング(冷却)が有効です。競技の練習後に毎回膝を冷やすことで、痛みや腫れを抑えられます。
痛みが強い時ほど、膝のお皿周辺を入念にアイシングしてみてください。
なお、アイシングには氷を入れる「氷嚢(ひょうのう)」を用いるのがおすすめです。冷湿布などは十分な冷却効果を望めない場合があるので注意しましょう。
ストレッチを続ける
太ももの筋肉が伸びるストレッチも効果的です。練習の前後に取り入れてみてください。
すぐできるストレッチを紹介します。
1つ目は「大腿四頭筋(だいたいしとうきん)ストレッチ」です。
STEP2:下の足を直角に曲げ、もう一方の足を後方から掴みます
STEP3:後方へ引っ張りましょう
STEP4:元の姿勢に戻ります
STEP5:太もも前面の伸びを感じながら繰り返しましょう
※腰を反らさないように注意してみてください。
こちらのストレッチを行うことで、太ももに付く「大腿四頭筋」を効率的に伸ばせます。とくに陸上やサッカー、バスケットといった「走る」競技に取り組む方は入念に行ってみてください。
2つ目は「大腿筋膜張筋(だいたいきんまくちょうきん)ストレッチ」です。
STEP2:乗せた足の方向へ身体を捻ります
STEP3:姿勢を保持しましょう
STEP4:ゆっくり戻します
STEP4:股関節の外側の伸びを感じながら繰り返しましょう
※股関節の外側の伸びを感じながら
上記のストレッチによって、股関節外側に付く大腿筋膜張筋が伸びます。身体のバランスを保持する重要な筋肉でもあるので、入念に伸ばしましょう。
いずれも練習場や自宅で簡単に実施できます。十分に時間をかけてストレッチしてみてください。
筋力トレーニングを行う
競技のトレーニングとは別に、膝の痛みに対して効く筋力トレーニングを取り入れてみましょう。
また膝の痛みで競技の練習ができない場合に、リハビリをかねて行うこともおすすめです。
ここから、すぐにできる筋トレを紹介します。
1つ目は「タオルつぶし運動」です。
STEP2:膝の裏にタオルを入れて膝を伸ばします
STEP3:膝裏でタオルをつぶすように太ももに力を入れましょう
STEP4:数秒間力を入れ繰り返し実施しましょう
STEP5:力を入れる際はお皿を上に持ち上げるように意識してください
※なるべく姿勢を正して行いましょう
上記の運動によって、太ももに付く「内側広筋(ないそくこうきん)」を刺激できます。
2つ目は「股関節外転運動(こかんせつがいてんうんどう)」です。
STEP2:片足を斜め後方へ開きましょう
STEP3:元の姿勢に戻ります
STEP4:繰り返し実施しましょう
※骨盤が開かないように注意してみてください
こちらの運動を行うことで、お尻に付く「中殿筋(ちゅうでんきん)」が刺激されます。
上記で紹介した筋トレは、じっくり筋肉に効かすという意識でゆっくり行ってみてください。
サポーターを着用する
練習時に膝サポーターを着用することで、膝の痛みを軽減できます。ご自身に合ったサポーターを購入しましょう。
目安として、激しく動く場合は膝周りががっちり固まるタイプのサポーター、安静時や日常生活では動きやすい小さめのサポーターの使用がおすすめです。
したがって取り替えができるように、サポーターは2つ以上用意することを検討してみてください。
他には、テーピングを巻くという方法もあります。ただし、膝へのテーピングにはある程度技術を要します。
ご自身で膝を保護する場合は、まずはサポーターの着用がおすすめです。
まとめ
スポーツ少年にとって、膝の痛みは深刻な問題だといえます。
痛みを我慢すればパフォーマンスや成績に響き、治療するとなると貴重な時間を割かなければなりません。
記事本文で触れたように、治療の対象になるのは有痛性分裂膝蓋骨です。もし痛みが増していく場合は、保護者や指導者と十分に話し合ったうえで、競技への取り組み方を話し合いましょう。
もちろん痛みが軽症なら、アイシングやストレッチでカバーできる場合もあります。当記事を参考に、ご自身でできるセルフケアを始めてみてください。
【参考文献】
1)野中雄太 ・ 増田一太:Saupe 分類Ⅱ型有痛性分裂膝蓋骨の一症例 ─ 分裂骨片への影響を考慮した保存療法 ─
2)Yoshikazu Oohashi, Tomihisa Koshino & Yoshinori Oohashi Knee Surgery, Sports Traumatology, Arthroscopy volume 18, pages1465–1469 (2010)Cite this article:Clinical features and classification of bipartite or tripartite patella
3)浦 野 公 一, 白 倉 賢 二 木 村 雅 史, 茂 原 重 雄:有痛性分裂膝蓋骨の2症 例