気がついたら股関節が、それも右側だけ痛くなることがあります。
股関節が痛くなると、歩く・座るといった動作に支障が出ます。そのうえ、右股関節だけが痛くなる理由が分からず、不安を感じる方もいるでしょう。
早期改善のためにも、右股関節が痛くなる原因や要因について把握しておくのが大切です。
当記事では、右側の股関節だけが痛くなる理由や対処法について解説します。
最後まで目を通すことで、ご自身の股関節がなぜ痛むのか、おおよその見当がつくはずです。ぜひ参考にしてください。
【なぜ?】右側の股関節だけが痛む理由
さっそく、右側の股関節だけが痛む原因について解説していきます。
なお、以下より解説する股関節が痛む原因については、例外や個人差があるのにくわえ、正確に判断するには病院で検査を受ける必要があります。その点を前もって把握しておいてください。
参考記事:股関節痛の原因は何?痛みと関連する病気とストレッチ・筋トレ法を専門家が解説!
股関節の変形
まず考えられるのが、股関節の変形によって痛みが生じているケースです。
代表的な疾患が「変形性股関節症(へんけいせいこかんせつしょう)」で、40代から50代の中年女性に発症しやすい傾向にあります。原因としては、「加齢」「生まれつきの骨格の変形」「肥満や運動不足などの生活習慣」などです。
悪化すると「痛みで歩けない」「しゃがめない」など日常生活に大きく影響します。また右脚に発症後、左側の股関節に発症するケースもあるので、放置することはおすすめしません。
参考記事:【理学療法士監修】変形性股関節症の痛みを和らげる効果的なストレッチを紹介!
右股関節への過度な負担
スポーツや運動によって右股関節へ過度な負担がかかり、痛みが発症するケースも多いです。
スポーツなどが原因で発症する股関節の疾患には、「グロインペイン症候群」「股関節唇損傷(こかんせつしんそんしょう)」などがあります。なお、グロインペイン症候群は、「鼠径部(そけいぶ)」に近い股関節の内側が痛むという特徴があるので、念の為に認識しておきましょう。
サッカーやラグビーなど、「速く走る」「方向転換が多い」スポーツにおいて股関節を痛めやすいです。スポーツ中に右側の股関節だけが痛くなるという背景には、プレー中のフォームなどが影響しているのかもしれません。
それとは別に、「ヨガ」を行っている際に無理して右の股関節を伸ばしたり、開いたりした際に痛めるケースもあります。
言うまでもありませんが、股関節に痛みを感じたらすぐに運動を中止しましょう。
転んだ・固い物にぶつけた
転んだ際に右股関節を床に打ったり、固い物を右股関節にぶつけたりしていませんか?
コンタクトスポーツなどはもちろん、日常生活の中で股関節を打ってしまう場面は十分あり得ます。とはいえ、数日後には転んだりぶつけたりした事実を忘れることも少なくありません。
だからこそ、十分注意が必要だといえます。場合によっては股関節を骨折している可能性もあるからです。股関節の骨を押した際に強く痛む場合は、骨折の可能性を考えましょう。
生活習慣での悪い癖
乱れた生活習慣や悪い癖がきっかけで右股関節周りの筋肉が凝り固まり、痛みが発生している可能性も考えられます。
例えば、以下のような習慣や癖に心当たりはありませんか?
・座っている時にいつも足を組む
・立っている時に常に右足側に体重がかかっている
・「猫背」「反り腰」になっている
また悪い習慣とは異なりますが、普段から「あぐら」「正座」で座っていると、股関節を痛めやすいです。
なお、乱れた生活習慣や癖は、腰痛や膝痛の原因にもなり得るので、ぜひ改善するべきでしょう。
【注意】原因が解明されていない病気
原因が完全に解明されていない病気によって、股関節が痛くなるケースもあり得ます。例えば、「リウマチ性関節症」「特発性大腿骨頭壊死(とくはつせいだいたいこっとうえし)」などです。
「急に痛み出した」「発熱や食欲不振も現れている」といった場合はとくに注意してください。なお、股関節の痛み方はさまざまで、「右や左だけ痛い」といったケースもあれば、両側の股関節に痛みが現れるケースも見られます。
まずは病院の受診が最優先!
右股関節が痛むまま、放置することはおすすめしません。痛みがさらに重症化する可能性が高いからです。
痛みの大きさに関わらず、右側の股関節に違和感を覚えた時点で、一度病院を受診し詳しく診てもらいましょう。先ほどお話ししたように、痛みの正確な原因は医療機関でないと分かりません。
痛みの原因が特定されれば、その後に気をつけるべき点や取り組むべき対処法が見えてくるでしょう。
なお、何科にかかれば良いか判断できない場合、まずは「整形外科」を受診することがおすすめです。
右股関節の痛み緩和に効くおすすめセルフケア
では以下より、右側の股関節の痛み緩和に効果が期待できるセルフケア方法を解説します。ほとんどが特別な準備の必要がない方法なので、すぐに実践できるでしょう。
ただし、痛みの原因によっては効果が期待できない場合もあります。そのうえでご覧ください。
痛みが強いうちは安静にする
股関節の痛みを緩和するには、負荷を減らすことが大切です。
そこで、痛みが強いうちはできるだけ安静にするように心がけましょう。重い物を持ったり、立つ・しゃがむ動作を繰り返したりする作業は控えるよう考慮すべきです。
また外出時も、長時間の歩行は避けるようにしてみてください。ハイヒールなどの靴であればなおさら、股関節への負荷が増えてしまいかねません。
そして痛みが強いうちは、運動も一旦止めて様子を見ましょう。
痛みが和らいだ段階で軽い運動を始めよう
股関節の痛みが和らぎ、ある程度動かせるようになった段階で、軽い運動を始めてみるのがおすすめです。
スポーツ選手の場合は、種目ごとの軽い練習や軽度の筋トレを行うのが良いでしょう。詳しくはコーチや監督の判断に委ねられると思いますが、試合練習などは避けたほうが良いかもしれません。
そしてスポーツをされない方の場合、まずは軽いウォーキングやトレーニングバイク、水中歩行などがおすすめです。また、支えを用いた負荷の軽いスクワットを行ってみるのも良いでしょう。
なお、スクワットを行う際、膝を深くまで曲げる必要はありません。浅く膝を曲げる方法でも十分効果が期待できます。
参考記事:スクワットで膝が痛い原因とは?正しいフォームと膝痛に効く代わりの運動法を紹介
股関節周辺を冷やすor温める
股関節周辺を冷やしたり温めたりするのも効果的です。
「冷やす」には炎症を早く引かせる効果があり、「温める」には血流を良くする効果を期待できます。
そこで、右股関節の痛みが現れてから間もない段階では冷やすように心がけ、痛みが発症してからある程度時間が経っている段階では温めてみましょう。
なお、冷やす際は「氷や氷嚢」「冷水シャワー」を使い、温める場合は「ホットパック」「温水シャワー」を使用するのが効率的です。
日常生活での座り方・姿勢に注意する
先述したように「あぐら」や「正座」で長時間座っていると、股関節への負担が増えてしまうので、できるだけ避けるのが望ましいといえます。したがって、椅子に座るよう心がけてみましょう。
また「猫背」「反り腰」などの悪い姿勢も、股関節への負担を増やしてしまいます。適度に胸を張り、横から見た時に肩と耳が縦に並ぶように意識してみてください。
良い姿勢を保つことで、股関節への負荷を軽減できます。
参考記事:【足を開くと股関節が痛い】それって変形性股関節症?痛みの原因と対処法をわかりやすく解説!
就寝時の姿勢にも気をつけよう
就寝時の寝方(寝相)にも注意をはらってみてください。できるだけ睡眠中の股関節への負荷を減らすように工夫しましょう。
股関節への負荷を考えた場合、うつ伏せで眠ることはあまりおすすめしません。
うつ伏せで眠ることで、布団によって股関節が太もも前側から圧迫され、動かせる範囲が限定されてしまうからです。
したがって、就寝時は仰向けか横向きで眠るのがおすすめです。なお、横向きで眠る際は痛む方(右側)の股関節が上になるように心がけてみてください。
また、クッションを使用するのも効果的です。仰向けで膝の下にクッションを入れたり、横向きで膝の間にクッションを挟んだりしてみましょう。
睡眠中は無意識なので寝方の調整は難しいですが、できる範囲で実践してみてください。
ストレッチを続ける
股関節のストレッチも効果的なセルフケアの1つです。
股関節周りに付く筋肉をゆっくり伸ばすことで血液の流れが良くなり、筋肉がほぐれて柔らかくなります。ストレッチをコツコツと継続することで、股関節の痛みを緩和できるでしょう。
ではここで、おすすめのストレッチ方法を3つご紹介します。
ただし、痛みの原因によってはストレッチを行っても十分な効果が得られないケースもあるのでご注意ください。
1つ目は「大殿筋ストレッチ」です。
STEP2:お尻を斜め後方へ動かしましょう
STEP3:元の姿勢に戻ります
STEP4:お尻の筋肉の伸びを意識しましょう
こちらのストレッチには、おしりの後面に付き、股関節を反る動きや歩行の際の蹴り出しに作用する「大殿筋(だいでんきん)」を柔らかくする効果があります。
2つ目は「座位四股(ざいしこ)ストレッチ」です。
STEP2:上半身を捻りながら骨盤を前方に倒しましょう
STEP3:元の姿勢に戻ります
STEP4:繰り返し実施しましょう
※太ももの内側が伸びるのを感じながら実施してみてください
上記のストレッチを行うことで、足を内側に閉じる動作や、片足立ちで安定するために作用する「内転筋群(ないてんきんぐん)」が柔らかくなります。
3つ目は「腸腰筋ストレッチ」です。
STEP1:片脚を前方に大きく開きます
STEP2:膝を曲げて前方の足に体重をのせましょう
STEP3:元の姿勢に戻ります
STEP4:股関節の付け根の伸びを感じながら実施してみてください
※腰を反らさないように注意しましょう元の姿勢に戻ります
このストレッチは、股関節前面に付き、足を持ち上げる動作や体幹を安定させる際に働く「腸腰筋(ちょうようきん)」を柔らかくするために効果的です。
右股関節の痛みはどのくらいで改善する?
右側の股関節の痛みは、できるだけ早く改善したいですよね。「どのくらいの期間で改善するの?」と気になる方も多いでしょう。
改善までにかかる期間は、原因によって大きく異なります。
筋肉の軽い凝りであれば、1週間ほどで痛みが引くケースもあります。ただ、それ以外の原因で股関節の痛みが出ていれば、改善までに数か月、症状によっては1年以上かかる場合もあり得るとお考えください。
より詳しい期間については、病院で検査を受けたうえでお医者さんに聞くのが最適です。
いずれにしても、股関節の痛みは長引く可能性があるといえるでしょう。とはいえ、セルフケアを続けることで痛みが緩和されたり、改善までの期間を短くすることは可能だといえます。
まとめ
本文でご覧頂いたように、右側の股関節だけが痛くなる原因は多岐にわたります。ご自身に当てはまる原因は見つかりましたか?
どういった原因であれ、また痛みの大小に関わらず、まずは早めに病院で検査を受けることが大切です。
そして診断が出た後に、股関節の痛みが緩和するセルフケアを続けてみてください。姿勢矯正やストレッチなどを続けることで、徐々に効果が現れるでしょう。
それでは当記事が、あなたのお悩み解決に少しでも役立てば幸いです。
【参考文献】
1)変形性膝関節症診療ガイドライン策定委員会:変形性膝関節症診療ガイドライン 20232)Megan M. Grohcorresponding author and Joseph Herrera:A comprehensive review of hip labral tears