「股関節が硬すぎるかも」と焦った経験をお持ちではないですか?
例えば、いわゆる「開脚運動」を行った際に、開脚できる角度が想像よりも遥かに浅かったり。歩いている時や「あぐら」をかいた時に股関節あたりが痛くなったり。
10代・20代ならまだしも、40代に差し掛かる頃から股関節が硬くなりやすい傾向にあります。そして、放置するとさまざまな不調を招きかねません。
したがって、股関節を柔らかくすることには大きな意味があるといえます。
当記事では、股関節が柔らかくなるストレッチを中心に、役立つ知識を解説します。最後まで目を通すことで、股関節のエクササイズ方法がわかり、きっと股関節を柔らかくできるでしょう。
ぜひ参考にしてください。
股関節の特徴とは?柔らかくするためにまずは構造を知ろう!
最初に、股関節の構造について把握しておきましょう。股関節は、太ももの骨に該当する「大腿骨(だいたいこつ)」の先端「大腿骨頭(だいたいこっとう)」という部位が、骨盤の「臼蓋(きゅうがい)」という部位にはまり構成されます。
したがって、肩関節などと同様の「球関節」という形状になっているので、脚部をさまざまな方向に動かしたり、捻ったりといった動作が可能です。
股関節の運動には、深部に付く「腸腰筋(ちょうようきん)」や、お尻の筋肉である「臀筋群(でんきんぐん)」、太もも前面の「大腿四頭筋(だいたいしとうきん)」や内ももに付く「内転筋群(ないてんきんぐん)」が作用します。
また、股関節の周辺には「陰部神経」や「坐骨神経」「大腿神経」といった神経も通るほか、老廃物や異物の排除に重要な「鼠径リンパ節(そけいりんぱせつ)」が存在します。
なお、男女で骨盤や大腿骨頭の形状に若干の違いはあるものの、股関節の動きや働きそのものには差がありません。
股関節が硬くなるのはなぜ?生じるデメリット
ではなぜ、股関節が硬くなるのでしょうか。
まず考えられるのが、負荷のかかりすぎです。「歩く」「立ち上がる」といった動作時には、体重の3倍以上の負荷が股関節にかかると言われています。
「肥満」などが原因で体重が増えれば、それだけ股関節への負荷が増えるのはいうまでもありません。股関節に負荷がかかり続ければ、筋肉に疲労がたまり硬くなります。
次に考えられるのは「加齢」です。年齢を重ねるとともに筋肉が伸びにくくなると言われています。筋肉が伸びなくなれば、関節の動き(可動範囲)も小さくなってしまうでしょう。
そして、股関節が硬くなることのデメリットは多いです。
例えば、股関節がポキポキ鳴る「弾発股(だんぱつこ)」や、しびれを伴う「坐骨神経痛(ざこつしんけいつう)」など、痛みやしびれが生じる可能性があります。
日常動作に影響を及ぼすのはもちろん、運動のパフォーマンスが落ちたり怪我しやすくなったりすることも考えられるでしょう。
また、リンパの流れが悪くなることで代謝機能が落ち、太る・むくむというケースもあり得ます。
参考:【股関節痛の原因は何?】関連する病気を専門家が解説!
参考:【股関節が鳴る】弾発股の原因と治し方が知りたい!簡単ストレッチや筋トレを解説
股関節の柔らかさチェック方法
ここで、ご自身の股関節の柔らかさを確認してみましょう。3つのチェック方法をご紹介します。
1つ目は、あぐらのように座った姿勢から両足裏を合わせます。
そのうえで、両膝をゆっくり手で押してみてください。膝がどの程度まで床に近づくでしょうか。
もし、まったく近づかない場合は股関節が硬くなっていると思われます。
2つ目もあぐらをかいて座った姿勢から、片脚を抱えて胸の方へ引き寄せてみてください。この時、脛(すね)が床と平行になるくらい深く脚を引き付けられますか。
もし難しい場合は、股関節が硬くなっている可能性が高いです。
3つ目は、寝ながら行います。
両足を伸ばし、仰向けの姿勢から片膝を抱えてみましょう。この際、反対の脚の膝裏を床につけたままにできますか?
もし、どうしても膝裏が床から浮いてしまう場合は、股関節が硬くなっていると考えましょう。
「柔らかい股関節」にはメリットが多い!
当然ですが、股関節を柔らかくするメリットは大きいです。
まず、股関節にかかる負荷が減り、股関節周りの痛みが改善されやすくなります。
そして、股関節の柔軟性が上がれば運動時のパフォーマンスがアップし、日常動作も楽になるでしょう。
また、股関節周辺の代謝が上がりやすくなり、脚やウエストが痩せるケースも考えられます。
まずはストレッチを続けてみるのがおすすめ
股関節を柔らかくするために、もっとも簡単に取り組める方法はストレッチです。
股関節周りのストレッチを行うと柔軟性が増えるのはもちろん、股関節周辺の血流が良くなったり、関節の動きがスムーズになったり、さまざまな効果が期待できます。
例え50代・60代からでも、股関節を柔らかくするのは可能です。
【実践】股関節を柔らかくするおすすめストレッチ
ここから、股関節を柔らかくするために効果的なストレッチを紹介します。
いずれも簡単で、すぐに始められるストレッチです。ぜひ参考にしてみてください。
大殿筋ストレッチ
1つ目は「大殿筋(だいでんきん)ストレッチ」です。
STEP2:膝を抱え反対側の肩へ引き寄せます。
STEP3:元の姿勢に戻ります。繰り返し実施しましょう
※腰が丸まらないように注意してみてください
上記のストレッチを行うことで、お尻の横に付く「大殿筋(だいでんきん)」が伸びます。「歩く」「走る」といった動作が楽になるでしょう。
腸腰筋ストレッチ
2つ目は「腸腰筋(ちょうようきん)ストレッチ」です。
STEP2:元の姿勢に戻ります。繰り返し実施しましょう
※股関節の付け根の伸びを感じながら実施しましょう
※腰を反らさないように注意してみてください
こちらのストレッチによって、股関節前面深層に付く「腸腰筋(ちょうようきん)」を伸ばせます。「足を上げる動作が楽になる」「体幹が安定する」といった効果が期待できます。
股関節外旋・内旋ストレッチ
3つ目は「股関節外旋・内旋ストレッチ」です。
STEP2:膝を倒し股関節を内側・外側に捻りましょう
STEP3:繰り返し実施しましょう
STEP4:身体をなるべく正面に向けた状態で行ってみてください
上記のように、股関節の「外旋(がいせん)」「内旋(ないせん)」という運動を行うことで、股関節の動きをスムーズにできます。
股関節ストレッチを行う際のポイント・注意点
ストレッチを行う際は呼吸を止めず、ゆっくり行うことを意識してみてください。できるだけ力を抜くのがポイントです。
そのうえで、20秒間から30秒間のストレッチを1セットとして、3セットほど行うことをおすすめします。
ストレッチは、一定期間継続することで初めて本格的な効果が現れます。「一瞬で股関節を柔らかくする方法」や「1日で股関節を柔らかくする方法」は、残念ながらありません。
もちろん、即時的に柔らかくなる(股関節の可動範囲が増える)ことはありますが、継続しなければすぐ元に戻るでしょう。
まずは3か月、毎日ストレッチを続けてみてください。きっと効果が出てくるはずです。
【ストレッチ以外】股関節を柔らかくする運動・セルフケア
ここからは、ストレッチ以外で股関節を柔らかくする方法を紹介します。
以下より解説する運動やセルフケアを実践することで、より効率的に股関節が柔らかくなるでしょう。
股関節の筋力トレーニング
股関節を柔らかくするために、適度な筋力トレーニングが効果的です。
筋トレを行うと「筋ポンプ作用」が活性化するので、血液の流れが良くなり筋肉を柔らかくできます。
ほかには、股関節周りの筋力が増えることで安定性が増すので、股関節への負荷を減らせます。
おすすめの筋トレが「ヒップヒンジ」です。
STEP2:股関節を90度程度曲げましょう
STEP3:元の姿勢に戻ります
STEP4:繰り返し実施しましょう
※腰を丸めないように注意してみてください
ヒップヒンジを行うことで、お尻の「大殿筋」や、太もも裏の「ハムストリングス」といった筋肉が刺激できるほか、股関節の動きがスムーズになります。
ストレッチと併せて実践することで、より効果が高くなるでしょう。
股関節周りに付く筋肉のセルフマッサージ
股関節周りのセルフマッサージも有効です。
ご自身の指や手のひらを使って股関節周りをマッサージすることで、筋肉がほぐれて柔らかくなります。
セルフマッサージを行う際は、筋肉が硬くなっている部位や疲れている部位を見つけたうえで、「一定時間押し続ける」「さするように動かす」など変化をつけながら揉みほぐしてみてください。
もし、自身の手で揉みほぐすのが難しいという場合は、器具を使うのも効果的です。
「グリッド」という筋膜を伸ばす器具や、「マッサージガン」も人気なので、比較しながら購入を検討してみましょう。
押すと気持ち良い!股関節周りのツボ
セルフマッサージを行うにあたって、「ツボ」を使うのもおすすめです。
股関節の周りにはいくつものツボが点在しています。こういったツボを狙ってセルフマッサージを行うことで、より効率良く股関節が緩むケースがあります。
それでは、おすすめのツボを2つ紹介するので、参考にしてみてください。
1つ目は、股関節の前側に存在する「脾関(ひかん)」というツボです。
まず、太ももの上部真横に「大転子(だいてんし)」という出っ張りがあるので見つけましょう。なお、膝から下を回すように動かすと大転子も動きます。
そして、大転子から水平に股関節の前側まで指を滑らせていくと、太い筋が触れるはずです。
膝を曲げながら上げると筋が動くので目印にしてみてください。この筋のすぐ内側が「脾関(ひかん)」に該当します。
2つ目は、お尻側に存在する「承扶(しょうふ)」というツボです。
お尻の膨らみの下側に「殿溝(でんこう)」という名の溝があります。この溝の中央が「承扶(しょうふ)」というツボに該当します。
なお、承扶を深くまで押すと、「坐骨結節(ざこつけっせつ)」という骨が触れるので目印にしてみてください。
姿勢を見直す
「猫背」や「反り腰」など、悪い姿勢が股関節が硬くなる要因になり得ます。重心バランスが崩れ、股関節への負荷が増えるからです。
また座った姿勢が悪いと、股関節周りの筋肉が縮みやすくなってしまいます。
したがって、ご自身の姿勢をあらためて確認してみたうえで、姿勢が崩れていたら修正しましょう。
適度に胸を張り、頭を若干後ろ方向に引くように心がけてみてください。肩と耳が縦に並ぶように頭を置くのがコツです。
最初は意識する必要がありますが、そのうち頭の位置が把握でき、自然と良い姿勢になれるでしょう。
参考:猫背を治す方法とは?姿勢改善にオススメのストレッチ・筋トレを詳しく紹介!
参考:反り腰を改善!原因から治し方を簡単なストレッチをまじえ解説
まとめ
もちろん個人差があるので一概には言えませんが、股関節の柔軟性は、身体の調子を図る1つの指標です。
そして、硬い股関節が、さまざまな痛みや不調の原因になり得ます。早い段階で股関節のセルフケアを始めませんか。
そこで、本文で紹介したストレッチや筋トレをぜひ実践してみてください。短い時間でもコツコツ続けることで、きっと股関節の柔軟性が増し、よりアクティブに動けるようになるでしょう。
それでは当記事が、少しでもあなたのお役に立つことを願います。
【参考文献】
1)Sandra I. Sulsky ,Laura Carlton,Frank Bochmann,Rolf Ellegast,Ulrich Glitsch,Bernd Hartmann,Dirk Pallapies,D. Seidel,Yi Sun:Epidemiological Evidence for Work Load as a Risk Factor for Osteoarthritis of the Hip: A Systematic Review
2)北九州市立小倉病院整形外科 萩 原 博 嗣 北九州市立総合療育センター整形外科 佐 伯 満:大腿四頭筋拘縮症 にみ られる弾撥股 について
3)倉田 直紀, 清野 浩希, 梅原 弘基, 仲島 佑紀:主観的伸張感で実施時間を設定した静的ストレッチングにおける有効なセット数の検討
4)相澤 杏莉, 齋 綾乃, 長井 幸美, 堀井 旺歩, 山田 佳奈, 佐々木 誠:身体の柔らかさはスポーツ障害・外傷の発生にどう影響するか?