痛みや凝りなどとともに、体の不調の一つに挙げられるのが「痺れ(しびれ)」です。とくに指先の痺れがあると、仕事や家事などに集中できず、日常生活に支障を感じることもあるでしょう。
原因を把握して、できるだけ早く痺れを治していきたいですよね。
そこで当記事では、指先が痺れる原因と、自身でできる対処法を詳しく解説しています。
最後まで目を通すことで、痺れが起こるメカニズムを理解でき、症状への適切な対応ができるようになるでしょう。ぜひお役立てください。
指先の痺れは何が原因?メカニズムを解説
痺れの原因としてまず考えられるのが「神経の圧迫」です。そして手や指先が痺れている場合、首や肘、手首のあたりで神経が圧迫されている可能性があります。
多くは神経圧迫による一時的な痺れとなります。
ただし、中には病気による痺れもあるため、自己判断は避けるべきです。指先に痺れを感じる病気については、このあと詳細を紹介していきます。
指先に痺れを起こすおもな病気
ここからは、指先の痺れをともなう代表的な病気をみていきます。
症状の特徴を挙げていきますので、ご自身に当てはまるものがないか一度確認してみてください。
手根管症候群
手根管(しゅこんかん)にて、神経が圧迫されて起こる病気が「手根管症候群」です。手根管とは、手首の手のひら側にある、靭帯や骨に囲まれた狭いトンネルのことを指します。
手の使いすぎやホルモンバランスの乱れなどが原因で手根管が狭くなり、手首の中を通る「正中(せいちゅう)神経」が圧迫されてしまうのです。
手根管症候群では、おもに人差し指と中指に痺れが生じます。ただし症状が悪化した場合、親指や薬指(親指側の半分)まで痺れが広がるケースも。
また、寝起きに痺れが出やすいことも、手根管症候群の特徴です。症状とともに、手根管症候群かどうかをチェックできる簡単なテスト法があります。
肩の高さに肘をあげたまま、指先を下にして、左右の手の甲を合わせてください。その際、人差し指や中指が痺れてくる場合は、手根管症候群の可能性を考えましょう。
なお、上記のテスト方法は「ファーレンテスト」と呼ばれています。
参考:手根管症候群の痛みを自分で治すには?効果的なストレッチ方法を専門家が解説
肘部管症候群
肘の内側にある肘部管(ちゅうぶかん)にて、神経が圧迫されて起こる病気が「肘部管症候群」です。手根管と同様、肘部管も骨や靭帯、筋肉などに囲まれたトンネルのことを指します。
加齢にともなう肘の変形や、最近では長時間のスマホの使用(筋肉の緊張)などで、肘部管の中を通る「尺骨(しゃっこつ)神経」が圧迫されてしまいます。
肘部管症候群のおもな症状は、小指と薬指の痺れや筋力低下による動かしにくさがあります。肘部管症候群は「フロマン徴候」によりチェックが可能です。
まずは1枚の紙を用意し、両手の人差し指と親指でつまみましょう。そして、左右に紙を引っ張った際に親指の第一関節が曲がる場合は、肘部管症候群の可能性が考えられます。
参考:【指のしびれ】肘部管症候群を自分で治す方法とは?簡単ストレッチや筋トレを解説
胸郭出口症候群
胸郭出口(きょうかくでぐち)症候群は、鎖骨の下から腕にかけて走る神経や血管が圧迫されて起こる病気です。
指先の痺れとともに、「吊り革を持つ」「洗濯物を干す」などの長時間腕を上げたときに腕の痛みが悪化する場合は、胸郭出口症候群の可能性が高いです。
胸郭出口症候群は「なで肩の女性」や「重たいものを持ち運ぶ労働者」などに発生が多い傾向があります。
参考:鎖骨の下が痛いのは胸郭出口症候群なの?痛みの原因と簡単なセルフケア方法を紹介
頚椎症
頚椎症(けいついしょう)とは、加齢にともなう頚椎(背骨の首部分)の変形により、周辺の神経が圧迫されて起こる病気です。
首の痛みや肩こりとともに、指先の痺れを生じる場合があります。
頚椎症では、片側の手に症状がみられることが多いです。しかし、神経の圧迫される箇所によっては両手や足に痺れが生じるケースもあります。
参考:頚椎症で効果があるストレッチ&してはいけないことを解説
頚椎椎間板ヘルニア
頚椎にある椎間板(ついかんばん)の一部が本来の位置から飛び出し、神経を圧迫して起こる病気が「頚椎椎間板ヘルニア」です。
椎間板とは、背骨を構成する椎骨(ついこつ)と椎骨の間にある組織のことで、背骨にかかる衝撃をやわらげるクッションのような役割があります。
椎間板ヘルニアでは、頭を斜め後方に倒すと指先の痺れが強まりやすいです。
頚椎症と同様、ヘルニアにおいても神経が圧迫される箇所によって、両手や足に痺れの症状がみられる場合があります。
参考:頚椎(くび)椎間板ヘルニアの改善に効果的なストレッチ・筋トレ3選を紹介
脳の障害
脳出血や脳梗塞など、脳の病気(脳血管障害)によっても痺れの症状が出現します。脳に何らかの異常が起きている場合は、手だけではなく、足を含めて体の半分側が痺れることが多いです。
脳血管障害の前兆・初期症状には「意識障害」や「吐き気、嘔吐」「これまで体験したことのない激しい頭痛」「呂律が回らない」などがあります。命に関わるケースもあるため、早急に医療機関に搬送してもらいましょう。
糖尿病
糖尿病の症状の一つに痺れがあります。血糖の上昇によって血管が痛み、血行が悪化することで痺れを生じてしまう状態です。
糖尿病の場合、おもに足の指や足裏から痺れが始まると言われています。そして症状が進行すると、手の指の痺れにつながるケースもあります。
指先が痺れているときはまず医療機関を受診
指先が痺れている場合は、先に原因を特定することが大事です。そのため、まずは病院を受診してください。
原因に沿った治療やセルフケアを行うことで、症状の改善を目指していきます。
手の痺れについては、「整形外科」を受診すると良いでしょう。また、頭痛や吐き気など痺れ以外の症状が出ている際には「脳神経内科・神経内科」を受診することを検討してください。
なお「運動障害(手や足に力が入らない、動かしにくい)」や「膀胱直腸障害(尿や便の排出がスムーズにできない)」などがみられる際は重度の神経障害が起きている可能性が高いので、放置せず緊急でお医者さんに診てもらうようにしてください。
【実践】指先の痺れの治し方
指先の痺れを放っておくと症状が進行し、手に力が入りにくくなったり、細かい動きができなくなったりするおそれがあります。
医師ともよく相談しながら、手の痺れに対しては、以下のようなセルフケアを行っていきましょう。
痺れが強い時期は安静にする
痺れが強く出ている時期は、症状が悪化する姿勢や動作はなるべく避けて安静を心がけてください。安静にすることで痺れの原因となる手首や肘、首まわりの緊張や腫れがおさまり、しびれも軽減されてくるでしょう。
また、手根管症候群や肘部管症候群については、手の安静を図るために手首や肘のサポーターを使用することもおすすめです。
痺れている箇所を温める
カイロを当てたり、ぬるま湯に浸けたりするなどして、手を温めましょう。温めると血流が良くなり、痺れもやわらいでくることが期待できます。
マッサージで筋肉をほぐす
マッサージも、血流を良くする方法の一つです。
指の痺れについては、反対側の手を使って前腕(肘から手首の間部分)を重点的にほぐすと良いでしょう。
首や肩まわりの筋肉をストレッチする
ストレッチで筋肉をやわらかくすることにより、神経や血管の圧迫が緩和する場合があります。指先の痺れを改善するには、首や肩、腕の筋肉のストレッチがおすすめです。
このあと簡単にできるストレッチ方法をご紹介しますので、ぜひご参照ください。
参考:手のしびれの治し方は?原因と症状別の効果的な対処法を専門家がわかりやすく解説!
指先の痺れを改善するおすすめストレッチ
それでは、指先の痺れに効果的なストレッチを、原因別にご紹介します。
頚椎が原因の場合は背骨のストレッチが最適
体幹を左右にひねることで、背骨の動きをやわらかくするストレッチです。脊柱全体の硬さをとることで、頚椎周辺の神経の圧迫を緩和していきます。
STEP2:両膝を閉じたまま片側へ倒しましょう
STEP3:元の姿勢に戻りましょう
STEP4:繰り返し実施しましょう
※肩が床から離れない様に注意しましょう
胸郭出口症候群には肩甲骨周りの筋トレを
胸郭出口症候群の方は、猫背で首や肩まわりの筋肉が硬くなっている傾向があります。
正しい姿勢を維持する筋力をつけるためにも、背中の広範囲に付着する僧帽筋(そうぼうきん)を鍛えていきましょう。
STEP2:伸ばした手を上方へ挙げましょう
STEP3:ゆっくり下ろしましょう
STEP4:繰り返し実施しましょう
※可能な限り高く挙げましょう
※肘が曲がらない様に注意しましょう
肘部管症候群には腕のストレッチが効果的
小指や薬指が痺れる肘部管症候群には、前腕の筋肉のストレッチが有効です。筋肉の緊張がほぐれて神経の圧迫がやわらいでくるため、痺れも軽くなってくるでしょう。
なお、こちらのストレッチは手根管症候群の方にもおすすめです。
STEP2:反対側の手を添えましょう
STEP3:手を手前に引きましょう
STEP4:元の姿勢に戻り、繰り返し実施しましょう
※腕の前面が伸びている状態を保持しましょう
※手首に痛みがある場合は肘を曲げてもOKです
手根管症候群には手首の運動が効果的
手根管症候群の方には、「腱グライド」が有効です。グライドとは、手根管の中を通る腱の滑走性を改善する運動・ストレッチのことを指します。
人差し指、中指の痺れにお困りの方は、ぜひお試しください。
STEP2:指の付け根の関節を曲げましょう
STEP3:第1関節を伸ばしその他の関節を曲げましょう
STEP4:全ての関節を曲げてグーにします
※4つの動きを繰り返し実施しましょう
まとめ
一口に「指先の痺れ」といっても、一時的な神経圧迫によるものから、病気によるものまでさまざまな状態が考えられます。
適切な対処が行えるよう、まずは病院に足を運び検査を受けることが大切です。その上で、お医者さんと相談しながら、ストレッチをはじめとしたセルフケアを行なっていきましょう。
中には重篤な病気が隠されているケースもありますので、頭痛や吐き気、意識障害など痺れ以外の症状が出ている際は、とくにご注意ください。
それでは、本記事があなたを悩ませる痺れの改善に役立てば幸いです。
【参考文献】
1)社団法人日本整形外科学会「しびれ(病気によるもの)」
2)J Brüske 1, M Bednarski, H Grzelec, A Zyluk:The usefulness of the Phalen test and the Hoffmann-Tinel sign in the diagnosis of carpal tunnel syndrome
3)社団法人日本整形外科学会「胸郭出口症候群」
4)Xavier Demondion 1, Pascal Herbinet, Serge Van Sint Jan, Nathalie Boutry, Christophe Chantelot, Anne Cotten:Imaging assessment of thoracic outlet syndrome
5)社団法人日本整形外科学会「頸椎症」
6)社団法人日本整形外科学会「頚椎椎間板ヘルニア」