手の指を曲げ伸ばしする際、痛みや引っかかりを感じる場合は「バネ指」の可能性が考えられます。指をスムーズに動かせなくなるため、仕事や日常生活で不便を感じる機会も多いのではないでしょうか。
本記事では、バネ指で避けるべき「やってはいけないこと」を詳しく解説しています。状態が悪化しかねませんので、バネ指が疑われる方は詳細をしっかり確認することをおすすめします。
また、バネ指を改善できる対処法も紹介していますので、ぜひ最後まで目を通してみてください。
バネ指とは?まずはメカニズムと症状を確認
バネ指は腱鞘炎(けんしょうえん)の一種で、腱を包み込んでいる腱鞘に炎症が起きた状態とされています。指がカクカクと弾かれるように動くため「弾発指(だんぱつし)」と呼ばれる場合もあります。
参考記事:腱鞘炎(指・手首の痛み)の治し方とは?自分で行えるマッサージ・ストレッチを解説
バネ指の症状
「指を曲げ伸ばしする際の引っかかり」がバネ指のおもな症状です。炎症によって腱鞘が肥厚(ひこう:太くなること)してしまい、腱がスムーズに動けなくなることが要因に考えられています。
そのほか、バネ指には次のような症状がみられる場合もあります。
- 関節部分の腫れ、硬結(こうけつ:硬くなる状態)
- 朝の手のこわばり
- 筋力の低下
- ロッキング(指が突然動かなくなる)
なおバネ指は、利き手の親指と薬指に起こりやすい傾向があります。
しかし症状には個人差があり、人差し指や中指、小指などがバネ指になる方もいらっしゃいます。
なぜ起こる?バネ指の原因について
バネ指のおもな原因としては「手の使い過ぎ」が考えられています。手の酷使によって腱鞘と腱とが摩擦を繰り返し、炎症を起こしてしまうのです。
したがって、スポーツや仕事などで手をよく使う方にバネ指が起こりやすい傾向があります。
そのほか、バネ指のリスクを高める要因は以下の通りです。
- 加齢による腱や腱鞘の変性
- ホルモンバランスの乱れ(更年期、妊娠中、産後)
- 透析、リウマチ、糖尿病などの病気
加齢やホルモンバランスの影響が強いためか、バネ指で悩まれている方の多くが「更年期の女性」だと言われています。
【要チェック】バネ指でやってはいけないことは?
バネ指の方がやってはいけないのは、「症状を放置して手を使い続ける」ことです。引っかかりのある指を過度に動かしたり、強く握るなど力を入れたりしないように注意しましょう。
指に負担をかけ続けることで炎症が強まり、症状を悪化させてしまうかもしれません。
また、痛みや腫れが出ている部位を強くマッサージしたり、動かない指を無理にストレッチしたりすることも避けるべきです。
保存療法(手術以外の治療法)で手のこわばりや引っかかりが取れない場合は、手術が必要になる可能性もあります。症状の進行を防ぐためにも、バネ指が疑われる際は、素早い対処を心がけてください。
【自分でできる】バネ指の治し方・ケアの方法
こちらでは、バネ指を自分で治すためのセルフケアを紹介していきます。どれも簡単にできますので、すぐに実践してみてください。
手をなるべく休める
バネ指の症状を改善するには、手をなるべく休ませることが大事です。手を使う頻度を減らすことで、腱鞘や腱に起きた炎症も落ち着きやすくなります。
もし仕事や家事などで手をなかなか休められない場合は、サポーターの着用がおすすめです。手の動きを制限することで、痛みや腫れの軽減を図れます。
ただし、サポーター自体が症状を治しているわけではありません。ゆえに、サポーターをつけたとしても、できる限り手にかかる負担を減らしていくように努めてください。
熱があるときは冷やす
痛みや熱感がある箇所に氷水を当てて、アイシングしてください。冷却することで、炎症を抑える効果が期待できます。
ただし、手のこわばりがあるときは、温めたほうが良いケースもあります。痛みが強い場合は「冷やす」、朝のこわばりがある場合は「温める」など、状態に合わせて冷やす・温めるを使い分けてみると良いでしょう。
痛みのない範囲でマッサージする
痛みのない範囲で、手のマッサージを行いましょう。手のひらや指を中心に、指の関節の硬くなっている箇所も優しくもみほぐしていきます。
また、バネ指の症状を和らげるには「労宮(ろうきゅう)」と呼ばれるツボが有効です。
ちょうど手のひらの中央あたりに労宮がありますので、少し痛いけど気持ちが良い強さで5秒間×5回ほど刺激してみてください。
コツコツ継続することで、ツボ押しの効果を実感できるはずです。
指や手首のストレッチをする
ストレッチを行い、筋肉の柔軟性を高めることで、腱や腱鞘にかかる負担を軽減できます。バネ指に対しては、前腕(手首と肘の間部分)や指自体のストレッチがおすすめです。
具体的なストレッチ方法をこのあと紹介しますので、ぜひ詳細を確認してみてください。
参考記事:ばね指の改善や予防に効果のあるストレッチとは?その他セルフケア方法も紹介!
食事の栄養バランスに気をつける
ビタミンなどの栄養が不足していると、自己治癒力(炎症や損傷を治す力)が低下する可能性があります。
「これさえ食べていれば大丈夫」という食品はありませんが、バネ指を早期改善するには以下の栄養素を中心に、バランスの良い食事を心がけましょう。
- コラーゲン(腱や腱鞘の構成要素):鳥の皮、軟骨、豚バラ肉など
- ビタミンC(コラーゲンの生成、抗炎症):野菜、果物類など
- 鉄分(コラーゲンの生成、組織の修復促進):レバー、しじみ、あさりなど
また、大豆に含まれる「イソフラボン」には、女性ホルモンと似た効果があると言われています。
したがって、女性ホルモンのバランスが乱れてくる更年期(45〜55歳あたり)の女性は、豆腐や納豆といった大豆製品を意識的に取り入れてみると良いでしょう。
バネ指を改善・予防するおすすめストレッチ3選
それでは、バネ指の改善が期待できるストレッチ方法をご紹介します。予防にもつながりますので、ぜひ日常のセルフケアとして実施してみてください。
プーリーストレッチ
筋肉を伸ばすというよりも、腱の滑走性(動き)を良くしていくためのエクササイズになります。こちらの運動を行うことで腱の動きが滑らかになるため、指を曲げ伸ばしした際に生じる腱と腱鞘の摩擦を和らげられます。
STEP2:反対側の手のひらに指を当て押し合いましょう
STEP3:力を抜きましょう
STEP4:繰り返し数秒間実施しましょう
※痛みのない範囲で実施しましょう
前腕前面ストレッチ
指を曲げるための筋肉は、おもに前腕の前面に付着しています。したがって、前腕前面をストレッチすることで腱の動きがスムーズとなり、腱鞘炎やバネ指の改善へとつなげられるでしょう。
STEP2:反対側の手を添えましょう
STEP3:手を手前に引きましょう
STEP4:元の姿勢に戻り、繰り返し実施しましょう
※腕の前面が伸びている状態を保持しましょう
※手首に痛みがある場合は肘を曲げてもOKです
虫様筋エクササイズ
虫様筋(ちゅうようきん)は、親指以外の4本の指に付着している筋肉で、「指の付け根の関節を曲げる」「指の第一、第二関節を伸ばす」働きがあります。
虫様筋を鍛えることで指全体の動きが滑らかとなり、腱や腱鞘にかかる負担を軽減できます。
STEP2:指の付け根の関節を曲げましょう
STEP3:元に戻しましょう
STEP4:繰り返し動かしましょう
※指の第1関節が曲がらないように注意しましょう
バネ指が良くならない場合は整形外科を受診
軽度のバネ指であれば、ストレッチやマッサージなどで自然に治るケースもあります。
しかし、セルフケアを継続しても指の痛みや動かしにくさが改善しない場合は、一度医療機関に相談してみてください。
注射や湿布、リハビリなど状態に合わせた治療を受けることで、症状の早期改善につなげられるでしょう。
繰り返しになりますが、そのまま手を使い続けていると痛みや動かしにくさが悪化して、日常生活に支障が出てくるかもしれません。2週間を目安にセルフケアの効果がみられない場合は、早めに受診することをおすすめしています。
まとめ
バネ指のおもな原因には「手の使い過ぎ」が考えられています。したがって、普段から手をよく使っている方であれば、なんらかの対処をしない限り症状は進行していく可能性が高いです。
指の痛みや引っかかりなどを感じましたら、本文で紹介したセルフケアをできるだけ早めに始めていきましょう。軽症のうちから対応できれば、症状もその分早期に改善しやすくなります。
また、セルフケアの効果がみられない場合は医師に一度相談して、専門的な治療を受けるようにしてください。
それでは本記事が、あなたのお悩み解決に役立てば幸いです。
参考文献
1)公益社団法人 日本整形外科学会「ばね指(弾発指)」
2)Dianna Lunsford 1, Kristin Valdes 2, Selena Hengy 2:Conservative management of trigger finger: A systematic review