ゴルフ肘の原因と対処法|セルフケアで痛みを軽減する方法

ゴルフをする方で、「肘の内側が痛む」という症状に悩んでいる方は少なくありません。この症状は「ゴルフ肘」と呼ばれております。

放置すると慢性化してしまう可能性があります。

本記事では、ゴルフ肘の原因や対処法をわかりやすく解説するとともに、自宅でできるセルフケア方法もご紹介します。

最後までお読み頂くことで、ゴルフ肘の概要をご理解頂き、この痛みに対して適切な処置を行えるようになることを想定しております。ぜひお役に立てれば、と思います。

ゴルフ肘とは?症状と特徴を知ろう

まずはゴルフ肘の基本を押さえておきましょう。この症状を理解することで、早期発見や適切な対処が可能になります。

ゴルフ肘は、肘の内側に痛みを生じるスポーツ障害です。正式には「上腕骨内側上顆炎(じょうわんこつないそくじょうかえん)」と言います。

上腕骨内側上顆炎について説明した画像

なお上腕骨内側上顆とは、肘内側の骨が出っぱっている箇所のことを指します。

ゴルフ肘の定義とメカニズム

ゴルフ肘(内側上顆炎)は、繰り返しの負荷で、肘の内側(上腕骨内側上顆)に付着する筋肉や腱に炎症が起きることで発症します。

とくに手首の掌屈(しょうくつ:手の平がわに曲げる動き)や、回内(内側に回す動き)を過度に繰り返した結果、筋肉や腱の損傷が積み重なり、修復が追いつかなくなることで炎症につながってしまうのです。

テニス肘との違い

肘に痛みを感じるケガに「テニス肘」もありますが、ゴルフ肘とは肘の痛む部位が異なります。

肘の内側が痛むゴルフ肘とは違い、テニス肘では肘の外側が痛みます。また、テニス肘の場合は「手首を反らせる動き」にて、痛みが誘発されやすいことが特徴です。

テニス肘について説明した画像

ストレッチの方法やマッサージをする部位も変わってきますので、両者の違いをしっかりと理解しておきましょう。

参考:【テニス肘の治し方】痛みの原因と症状を改善する対処法・ストレッチを紹介

発症しやすい人の特徴

ゴルフ肘は特にゴルフなどのスポーツを定期的に行う方に多く見られます。しかし、日常生活の中でも発症することがあります。例えば、パソコン作業や料理などの反復動作を伴う仕事に従事する方も発症リスクが高まります。また、筋力不足や柔軟性の低下も、ゴルフ肘の発症を招きやすい要因の一つです。

ゴルフ肘の主な原因

ゴルフ肘の原因を把握することで、症状を未然に防ぐことができます。ここでは、主な原因について解説します。

反復動作

ゴルフのスイングやラケットスポーツにおける特定の動作が繰り返されると、内側上顆に負担がかかり炎症の原因となります。また、日常的な家事や職場での作業など、手首や肘を多用する動作も原因となり得ます。

間違ったスイングフォーム

ゴルフでは、正しいスイングフォームを習得しないと、必要以上に肘に負荷がかかることがあります。例えば、腕に頼りすぎたスイングや、不自然な体勢でのショットは、ゴルフ肘を引き起こすリスクを高めます。

筋力不足や柔軟性の低下

肘周辺の筋肉や腱の柔軟性が低いと、動作時に衝撃を吸収する力が弱まります。その結果、内側上顆に直接的な負担がかかり、炎症を招く原因となります。

ゴルフ肘を放置するとどうなる?

基本的にゴルフ肘は、患部を触ったり、腕を動かしたりしなければ痛みは生じません。しかし、何も対処せずに放置すると、炎症が慢性化し、痛みが持続する可能性があります。これにより、肘を動かすたびに痛みを感じたり、日常生活の中で不便を感じる場面が増える可能性があります。

また、ゴルフ肘による痛みをかばおうと、肘以外の関節や筋肉に負担がかかることがあります。これにより、肩や手首に痛みが生じたり、新たな障害が発生する可能性も考えられます。適切なケアを行わないことで、体全体のバランスが崩れる危険性が高まります。

オーバーユースが原因となりますので、そのまま使い続けていてはゴルフ肘が自然と回復することはありません。したがって、状態を悪化させないよう、ゴルフ肘が疑われる際は早めのケアを行うことが重要です。

参考:ゴルフ肘を自分で早く治すには?すぐできるストレッチや予防法まで紹介

【自分で治す】ゴルフ肘への対処法

ゴルフ肘をできるだけ早く治すために、次のようなセルフケアを行いましょう。

手をなるべく休ませる

ゴルフ肘が疑われる際は、手や肘を使う機会をできるだけ減らしましょう。無理に使い続けることで、炎症を悪化させる可能性があります。

スポーツをされている方であれば、ランニングや体幹のトレーニングなど腕に負担のかからない運動メニューに切り替えることもおすすめです。

軽症のうちから安静にできると、その分痛みも早期に改善しやすくなります。

運動後にアイシングをする

アイシングについて説明した画像

スポーツや仕事などで腕を使った後は、氷水を当てて肘をアイシングしましょう。冷やすことで血管が収縮し、腫れや炎症を抑える効果が期待できます。

ただし、冷やしすぎると血行が悪化してしまうため、一度の冷却時間は10分程度に抑えるようにしてください。

肘に湿布を貼る

ゴルフ肘の痛みには、湿布を貼ることも効果的です。湿布に含まれる薬の成分が働き、痛みを鎮める作用を期待できます。

なお、ゴルフ肘だからといって、特別な湿布の貼り方はありません。肘内側の痛みがある箇所に湿布を貼るようにしましょう。

サポーターやテーピングで肘を保護する

ゴルフ肘に対しては、肘から前腕にかけてのテーピングが有効です。テーピングが筋肉の働きをサポートするため痛みが軽くなり、肘の曲げ伸ばしも楽になってくるでしょう。

ただし、慣れていない方が貼ると、十分な効果を得られない可能性があります。もし、テーピングを貼ることに自信がない場合は、サポーターの着用をおすすめします。

サポーターを着用することで筋肉の動きが制限されるため、肘の痛みも軽くなるでしょう。肘専用のサポーターは市販もされていますので、ゴルフ肘に悩まれている方は、ぜひ購入を検討してみてください。

運動フォームを見直してみる

もし肘の痛みを繰り返していたり、運動後に腕の筋肉に強い張りを感じたりする場合は、一度ご自身の体の使い方を見直してみましょう。

肘を痛めやすい方は、とくに以下の点に着目してみてください。

  • 肘が脇から離れすぎていないか
  • ゴルフクラブを強く握りすぎていないか
  • 手首の力でボールを遠くに飛ばそうとしていないか
  • 全体的に力みがないか

もし上記に当てはまるものがあれば、長くゴルフを続けるためにも、丁寧にフォームをチェックして修正に努めましょう。

前腕の筋肉をストレッチする

「手首から肘の内側(上腕骨内側上顆)にかけて付着する筋肉」がゴルフ肘に強く関連しています。頻繁に手首を動かすことで、肘内側の筋肉の付着部が繰り返し引っ張られ、炎症を起こしてしまうのです。

したがってゴルフ肘の緩和には、前腕部分(手首と肘の間部分)をストレッチして筋肉をやわらかくすることが効果的です。

このあと、動画付きでストレッチの方法を解説しますので、ぜひご参照ください。

また、ゴルフ肘には、肩や腕の筋力強化も有効と言われています。みなさんにも馴染み深い「腕立て伏せ」で簡単にトレーニングできますので、ゴルフ肘を改善・予防する目的で筋力も鍛えておきましょう。

参考:腕立て伏せ(プッシュアップ)は効果大!正しいフォームと回数の目安を解説

ゴルフ肘を改善するおすすめストレッチ

それでは、ゴルフ肘に効くストレッチを3つご紹介します。

コツコツ継続することで、効果を実感できるはずです。どれも簡単にできますので、ぜひ日常に取り入れてみてください。

前腕前面ストレッチ

ゴルフ肘との関連が強い、前腕前面の筋肉を伸ばすストレッチです。呼吸をしながら、じっくりと筋肉を伸ばしていきましょう。

前腕前面ストレッチ
STEP1:手を前方に伸ばし手の平を上に向けましょう
STEP2:反対側の手を添えましょう
STEP3:手を手前に引きましょう
STEP4:元の姿勢に戻り、繰り返し実施しましょう
※腕の前面が伸びている状態を保持しましょう
※手首に痛みがある場合は肘を曲げてもOKです

前腕内側マッサージ

前腕の内側をほぐすマッサージ方法です。つまむ箇所は上下や内側・外側など動かしてみて、硬さを感じる箇所を重点的にほぐしていきましょう。

前腕内側のマッサージ
STEP1:腕の内側を反対側の手でつまみましょう
STEP2:腕をつまみながら外側へ回しましょう
STEP3:痛みのない範囲で実施しましょう

胸郭回旋運動

患部のみならず、ゴルフ肘の改善には胸郭(きょうかく)の動きも重要です。

こちらの運動を行うことで、体幹をひねる動作がスムーズになります。それにより、腕の力に頼らない正しい運動フォームを習得しやすくなるでしょう。

胸郭回旋(きょうかくかいせん)運動
STEP1:片膝を90度に曲げて床につけましょう
STEP2:両手を伸ばして合わせましょう
STEP3:上半身を捻り片手を反対側の床につけましょう
STEP4:元の姿勢に戻り、繰り返し実施しましょう
※背中をしっかりと捻りましょう
※膝が床から離れないように注意しましょう

まとめ

ゴルフ肘は、適切な対処と予防策を講じることで改善し、再発を防ぐことができます。

原因を理解し、セルフケアや医療機関でのサポートを上手に活用しましょう。また、日常生活やゴルフ中に肘への負担を減らす習慣を身につけることで、快適なプレーを楽しむことができます。

この記事を参考に、ゴルフ肘の症状が改善することを願っています。

参考文献
1)Rahman Shiri 1, Eira Viikari-Juntura:Lateral and medial epicondylitis: role of occupational factors
2)Karen Walker-Bone 1, Keith T Palmer, Isabel Reading, David Coggon, Cyrus Cooper:Occupation and epicondylitis: a population-based study
3)J K Sluiter 1, K M Rest, M H Frings-Dresen:Criteria document for evaluating the work-relatedness of upper-extremity musculoskeletal disorders
4)安倍幸雄 髙橋洋平 済生会下関総合病院 :上腕骨内側上顆炎に対する直視下手術の経験