【胸や脇腹が痛む】肋間神経痛とは?原因や症状、自分でできる対処法を解説

胸や脇腹あたりが痛む場合は「肋間神経痛(読み方:ろっかんしんけいつう)」が疑われます。

肋間神経痛は強い痛みをともなうことが多く、日常生活にも支障が出やすくなっています。

症状を早期に改善するためにも、原因に沿った適切な対処を行うことが大切です。

本記事では、肋間神経痛の原因や症状の特徴、セルフケアの方法を詳しく解説しています。

胸や脇腹の痛みでお困りの方は、ぜひご参照ください。

肋間神経痛とは?メカニズムを確認

肋間神経の走行に沿って痛みが出ている状態が「肋間神経痛」です。

何か特定の病気を示すのではなく、「頭痛」や「腹痛」と同じように症状をあらわした言葉になります。

肋間神経痛の仕組みを理解するために、まずは「肋間神経」の位置や役割について把握しておきましょう。

肋間神経は、胸椎(背中の高さにある背骨)から出たあと、肋骨に沿って脇腹や胸のあたりまで伸びている神経です。胸から腹部にかけての筋肉の運動や、皮膚の知覚を司っています。

肋間神経の画像

その肋間神経が、なんらかの原因で圧迫や刺激を受けることにより、肋間神経痛が引き起こされるのです。

具体的な原因については、次項にて詳しくご紹介していきます。

【なぜ起こる?】肋間神経痛の原因

ひとくちに肋間神経痛といっても、原因は多岐にわたります。

対処法も変わっていきますので、ご自身に当てはまりそうな原因はないか、こちらで一度確認してみてください。

外傷によるもの

骨折や打撲といった肋骨、脊椎に起きた外傷により、肋間神経を痛めてしまう場合があります。

転倒や事故など、直接ぶつけて起こるケガに限りません。ゴルフや野球といった体を捻る運動を繰り返すことで、肋骨を疲労骨折してしまうケースもあります。

また、骨粗しょう症で骨がもろくなったご高齢の方が尻もちをつくことでも、脊椎を骨折する可能性があるため、注意が必要です。

参考記事:打撲ができたら病院に行くべき?骨折かもしれない危険な症状と対処法を紹介

脊柱に問題があるもの

椎間板(ついかんばん)や背骨の変性により、肋間神経が圧迫されてしまう場合があります。

肋間神経痛を起こしうる脊柱の病気には、椎間板の一部が本来の位置から飛び出し神経を圧迫する「胸椎椎間板ヘルニア」や、加齢にともない背骨を構成する組織が変形していく「変形性脊椎症」などが挙げられます。

なお、前屈の姿勢により症状が悪化しやすいことが、椎間板ヘルニアの特徴の一つです。

帯状疱疹によるもの

帯状疱疹(たいじょうほうしん)も、肋間神経痛を起こす原因の一つです。

帯状疱疹とは、体内に潜伏していた帯状疱疹ウイルスが活性化することで、皮膚の発疹や痛みを引き起こす病気になります。なお帯状疱疹ウイルスは、水ぼうそうの原因にもなっています。

加齢にともなう免疫力の低下により、帯状疱疹が発生するケースが多いです。もし帯状疱疹の症状が出ている場合は、薬による治療が行われます。

原因不明のもの(筋肉の緊張)

これまで肋間神経痛を起こす病気を紹介してきましたが、実際は原因が判明しない場合が多いです

レントゲンなどの検査で異常なしとされる、原因不明の肋間神経痛は、肋骨周辺の筋緊張が症状の引き金に考えられています。

硬くなった筋肉で周辺を走る肋間神経が圧迫され、痛みやしびれが起きてしまうのです。

日常生活において筋肉を硬くしてしまう要因には、以下のものが挙げられます。

  • ストレス
  • 不良姿勢
  • 過度な運動
  • 体の冷え

筋肉の凝りをともなうことが多いため、慢性的な「肩こり」の方は要注意です。

また、筋肉の緊張の他には、「妊娠(お腹が大きくなり、肋間神経が圧迫されてしまう)」「風邪(ストレスや免疫力の低下が影響)」「女性ホルモンの乱れ(生理前)」なども、肋間神経痛の原因に考えられています。

【症状をチェック】肋間神経痛の特徴について

以下の症状がみられる場合は、肋間神経痛が疑われます。

  • 背中にピリッとした痛みが一瞬走る
  • 深呼吸や咳、くしゃみをすると、肋骨周辺に痛みが響く
  • 脇腹を触ると痛みがある
  • みぞおちや足の付け根まで痛むことがある
  • 上半身を動かしたときに脇腹が痛む
  • 肋骨の痛みとともに息苦しさや吐き気をともなう

基本的に、右か左のどちらか片側に症状が出ます。両側に起こることは、めったにありません。

また、寝ているときに寝返りで痛みが出て、夜中に目が覚めてしまう方も中にはいらっしゃいます。

参考記事:咳をすると背中が痛いのはなぜ?何科を受診すべきかと自分でできる対処法を紹介

肋間神経痛はどれくらいで治るもの?

肋間神経痛が治るまでは、1週間〜1ヶ月ほどかかると言われています。

しかし、原因や症状によって期間は変わってくるため、「何日くらいで治るか」を詳しく知りたい場合は、お医者さんに一度確認してみてください。

肋間神経痛を放っておくとどうなる?

脇腹が痛がる女性の画像

脇腹周辺の痛みが心臓や肺などの病気から起きているケースも中にはあります。

とくに、左胸に圧迫感や締め付けられるような痛みがある場合は「狭心症(きょうしんしょう)」の可能性もあるため、注意が必要です。病気を放っておくと命に関わるおそれがあります。

自然治癒する肋間神経痛も多いのですが、自己判断で放置することは避けるべきです。肋間神経痛が疑われる際は、早めの対応を心がけましょう。

参考記事:背中の左側が痛いのは内臓の病気かも?考えられる原因と対処方法を解説

参考記事:背中の右側の痛みは内臓が原因!?考えられる原因と適切な対処法

これは肋間神経痛?まずは病院を受診しよう

背中や脇腹、胸の痛みが続いている際は、まず医療機関で原因を特定することが大事です。検査をした上で、痛み止めの薬や注射など原因にあわせた治療を行い、症状の改善を目指していきます。

なお「何科」を受診したら良いかは、以下の点を参考にすると良いでしょう。

「体を動かして痛みが変化する」「痛む箇所が比較的はっきりしている」場合は、脊柱の問題が考えられるため「整形外科」を受診してみてください。

また、「持続的な痛みがある」「痛む箇所がはっきりしない」場合は、帯状疱疹や狭心症など内科的疾患が考えられるため「内科」の受診を検討してみてください。

【すぐに始めよう】肋間神経痛の対処法・治し方

肋間神経痛の症状を緩和するには、以下のセルフケアが有効です。医師ともよく相談しながら、無理のない範囲で行うようにしてください。

体を温める

ホットパックやカイロなどをあてて、症状が出ている箇所を温めましょう。体を温めることで筋肉の緊張がほぐれ、肋間神経の圧迫もやわらいでいきます。

また、体を温める方法としては、お風呂にゆっくり浸かることもおすすめです。入浴には筋緊張をほぐす効果のほか、ストレスを軽減するリラクゼーション効果も期待できます。

ただし熱いお湯では刺激が強いため、リラックスできるよう38〜40度ほどの湯船に時間をかけて浸かりましょう。

姿勢に気をつける

背中が丸くなった「猫背」になっていると、前側にずれた重心を支えるために、背中や肩まわりの筋肉に過度な負担をかけてしまいます。

筋緊張を強める要因になりますので、顎を軽く引いて、背中をまっすぐ伸ばした姿勢を普段から意識しておきましょう。

参考記事:【簡単】姿勢を良くする方法4選!猫背や反り腰を改善して正しい姿勢を保つには

参考記事:猫背を治す方法とは?姿勢改善にオススメのストレッチ・筋トレを詳しく紹介!

湿布を貼る

肋間神経痛を緩和するには、湿布も効果的です。背中や脇腹など、痛みを感じる箇所に湿布を貼りましょう。

痛みを長く抱えていると、「痛みがストレスになる→筋肉のこわばりが強くなる→より痛みが悪化する」といった悪循環に陥る可能性があります。よって、痛みが強く出ている際は無理に我慢せず、湿布で痛みを抑えることも大切です。

マッサージをする

肋間神経痛には、胸椎周辺や背中のマッサージが有効です。

仰向けに寝て、肩甲骨の間あたりにテニスボールをおきましょう。軽く体重をかけながら背中でテニスボールを転がすことにより、背骨のきわから背中の筋肉を簡単にマッサージできます。

押してみて気持ちよく響く箇所は、「トリガーポイント(痛みの原因部分)」であるケースが多いため、長めに刺激すると良いでしょう。

また、足の甲あたりで親指と人差し指の間にあるツボ「太衝(たいしょう)」はストレスを軽減する効果が期待できます。

足の甲のツボ「太衝」の画像

患部から離れていますが、日常でストレスを感じやすいという方は、太衝もぜひ刺激してみてください。

ストレッチをして筋肉をやわらかくする

ストレッチで背中や肩、脇腹周辺の筋肉をやわらかくすることで、肋間神経の圧迫、刺激が軽減されていきます。

肋間神経痛に効果的なストレッチについては、このあと動画付きでやり方を紹介しています。ぜひ参考にしてみてください。

参考記事:背中のコリをほぐしたい!凝りやすい場所とおすすめストレッチ・気持ち良いツボを解説

肋間神経痛に効くストレッチ3選

それでは、肋間神経痛の改善が期待できるストレッチをみていきます。

デスクワークや肉体労働などで筋肉が凝りやすい方は、予防としてもストレッチを継続して行いましょう。

呼吸は止めず、ゆっくり筋肉を伸ばすように意識してください。

胸椎伸展運動

肋間神経の根元にあたる、胸椎の硬さをとるストレッチになります。胸椎周辺の緊張をゆるめることで、猫背の改善にもつながります。

胸椎伸展運動
STEP1:丸めたタオルを準備しましょう
STEP2:肩甲骨の下にあてるように仰向けとなりましょう
STEP3:可能な限り万歳をしましょう
STEP4:ゆっくりと下ろし、繰り返し実施しましょう
※腰を反らさないように注意しましょう

次に内ももの筋肉を伸ばすストレッチを紹介します。この運動を行うことで、股関節の可動域も広がり、足を前後に動かす際の痛みも軽減するでしょう。

胸椎回旋運動

こちらも、胸椎の動きをやわらかくするストレッチです。できる限り上半身を大きく捻るように意識しましょう。

胸椎回旋運動
STEP1:両手を胸の前で組みましょう
STEP2:足を閉じたまま体を捻りましょう
STEP3:元の姿勢に戻りましょう
STEP4:繰り返し実施しましょう
※上半身をなるべく大きく捻りましょう
※足が開かないように注意しましょう

 

胸張り運動

背骨から肩甲骨、肩まわりにかけて付着している、僧帽筋中部線維(そうぼうきんちゅうぶせんい)菱形筋(りょうけいきん)をやわらかくするストレッチです。

背中の緊張をゆるめることで、肋間神経の圧迫も軽減されてくるでしょう。

胸張り運動
STEP1:両手を前方へ伸ばしましょう
STEP2:胸を張りながら肩甲骨を内側へ寄せましょう
STEP3:背中を丸めながら両手を前方へ伸ばしましょう
STEP4:繰り返し実施しましょう
顎を引きながら運動を行いましょう

【要注意】肋間神経痛の方がしてはいけないことは?

肋間神経痛の方がやってはいけない注意点がいくつか存在します。症状悪化につながりかねませんので、以下の項目をしっかり確認しておきましょう。<h3>症状をそのままにする

繰り返しになりますが、脇腹や胸の痛みを放置するべきではありません。症状が悪化するおそれがあります。

また、自己判断で痛み止めの薬を飲むことも控えてください。

まずは医療機関を受診して、適切な処置を受けるようにしましょう。

前屈みで重たいものを持つ

前屈みで荷物を持つ女性の画像

前屈みの姿勢をとることで、椎間板にかかる圧力が増加すると言われています。

また、背中や脇腹の筋緊張も強めてしまうので、肋間神経痛の方はなるべく前屈みの姿勢は避けることをおすすめしています。

ハードな運動をする

ハードに体を動かすことで、肋間神経の圧迫を強めてしまう場合があります。とくに体を強く捻る動きは患部に負担がかかるため、なるべく避けたほうが良いでしょう。

しかし、安静にし過ぎるのもよくありません。運動不足では体の柔軟性が低下し、血流も悪くなってしまうためです。

過度な運動は控えるべきですが、肋間神経痛を改善・予防するためにも、体への負担が少ない適度な運動を日常に取り入れることをおすすめしています。

不規則な生活を送る

不規則な生活は体へのストレスとなり、肋間神経痛を悪化させる可能性があります。また、寝不足は疲労がしっかり取れず、肋骨まわりの筋肉を硬くしてしまうかもしれません。

そのため、肋間神経痛を改善・予防するには毎日規則正しい生活を送るように心がけてください。加えて、寝不足にならないよう6〜8時間はきちんと睡眠時間を確保することも推奨しています。

まとめ

肋間神経痛の原因は、ケガによるものから病気によるもの、生活習慣によるものまで多岐にわたります。

したがって、自己判断で対処するのではなく、まず医療機関で検査を受けるようにしてください。体の状態を正確に把握した上で、適切な対処を行なっていきましょう。

また、肋間神経痛の改善には、日常生活を見直すことも大事です。姿勢が悪くなっていないか、ストレスを溜めていないかを確認し、ストレッチも継続して行うことをおすすめします。

それでは、本記事があなたを悩ませる痛みやしびれの症状の改善に役立てば幸いです。

【参考文献】
1)中島 大介, 白石 元, 杉 基嗣, 住浦 誠治:スポーツによって生じた第1肋骨疲労骨折の3例
2)公益社団法人 日本整形外科学会「胸椎椎間板ヘルニア」
3)公益社団法人 日本皮膚科学会「ヘルペスと帯状疱疹」