腱鞘炎(指・手首の痛み)の治し方とは?自分で行えるマッサージ・ストレッチを解説

パソコン作業をしている時やスマホを操作している時に、「手が痛い」と感じることはありませんか?

もしかしたら「腱鞘炎(けんしょうえん)」の症状かもしれません。

腱鞘炎になると、指や手首が動かしにくくなったり、曲げると痛みが発生したりします。そのまま放置すると症状が進行して、仕事やプライベートに大きな影響を及ぼすことも。

そこで当記事では、腱鞘炎の治し方や手軽にできるケア方法について詳しく解説します。

最後まで目を通すことで、腱鞘炎とはどういった症状なのかが分かり、適切に対処できるようになるでしょう。

「腱鞘炎」とは?手首や指の痛みが出る症状

パソコン作業中に手首の痛みが気になる

腱鞘炎とは、関節の動きに関わるの通り道である「腱鞘(けんしょう)」と呼ばれる部位が炎症を起こし、腫れてしまう症状です。

したがって腱鞘炎になると、膨らんだ腱鞘によって腱の通りが悪くなるので、指や手首をスムーズに動かせなくなったり、動かした際に痛みが発生したりします。

腱鞘炎のメカニズムを解説した図

そして腱鞘炎は、男性よりも女性の罹患率が高いのも特徴の一つです。理由として「筋肉や腱の強さ」「ホルモン分泌」などが関係していると考えられています。

なお、腱鞘炎は手だけに発生するわけではありません。腱鞘が存在する足首足の甲二の腕でも腱鞘炎は起こり得ます。

なぜ腱鞘炎になるの?

腱鞘炎になってしまう大きな原因は、指や手首の使いすぎです。長時間にわたり手先を酷使した結果、腱鞘が腫れて腱がスムーズに動かなかったり、痛みが発生したりします。

毎日キーボードやマウスを操作する方や、楽器を演奏される方、手を使うスポーツに打ち込んでいる方は、腱鞘炎になる可能性があるので注意しましょう。

その他、女性ホルモンの分泌の増減も腱鞘炎になる原因の一つです。

妊娠・出産期に分泌量が多くなる「プロゲステロン」には、腱鞘を収縮させる働きがあり、腱鞘炎につながりやすくなります。

また更年期(45歳〜55歳)に、腱の動きを滑らかに保つ働きを持つ「エストロゲン」の分泌量が減ることも腱鞘炎の原因になります。

こういったことから、腱鞘炎になる原因には「指や手首の使いすぎ」「ホルモン」が大きく関係しているといえるでしょう。

ただ最近はスマホの使いすぎで腱鞘炎になるケースも増えており、職業や性別など関係なく誰でも腱鞘炎になり得るともいえます。

腱鞘炎の様々なタイプ「ドケルバン病」「ばね指」

腱鞘炎は、発症する位置と症状の出方によって名称が変わるのでおさえておきましょう。

手首を動かす時や、親指を曲げたり広げたりする際に痛む腱鞘炎は「ドケルバン病(狭窄性腱鞘炎)」と呼ばれます。痛む部位は主に手首の外側(親指側)です。

ドケルバン病を解説した図

そして指の曲げ伸ばしがスムーズにできない腱鞘炎を「ばね指(弾撥指)」と呼びます。ドケルバン病と異なり、人差し指、中指にも発症するのが特徴です。

ばね指(弾発指)を解説した図

また、ドケルバン病とばね指が併発する場合もあるので、十分注意しましょう。

参考記事:ばね指の改善や予防に効果のあるストレッチとは?その他セルフケア方法も紹介!

「腱鞘炎」が悪化したまま放置しているとどうなる?

腱鞘炎をそのまま放置すると、少しずつ症状が悪化していきます。

進行が続くと痛みが強くなったり、指がさらに動かしにくくなったりします。すると「キーボードを叩けない」「瓶の蓋を回せない」「バッグなどを持てない」など、日常生活に大きな影響を及ぼしかねません。

また手首から先のしびれなど、別の症状が発生する可能性もあります。できるだけ早い段階で、腱鞘炎の治療を始めることがおすすめです。

腱鞘炎を自分で治す!おすすめのケア方法

腱鞘炎は、日頃からケアを続けることで症状を予防したり緩和したりすることが可能です。

ここから、腱鞘炎におすすめのケア方法を紹介します。

すぐに実践できる方法が多いので、ぜひ試してください。

まずは安静を心がける

腱鞘炎をケアするために、まずは安静を心がけましょう。

指や手首は使う機会が多いものですが、できるだけ使わずに負担を減らすよう心がけることが大切です。

もしスポーツをする中で腱鞘炎を発症した場合、プレーを休むことを検討する必要があるかもしれません。

また長時間パソコン作業を行う場合は、休憩時間をしっかり設けましょう。休憩する際は、なるべく腕時計や指輪などを外すことをおすすめします。

セルフマッサージを行う

ご自身で指や手首をセルフマッサージすることもおすすめです。マッサージを行うことで、手の血流やリンパの流れが良くなるので、手先が軽くなり腱鞘炎の緩和が期待できます。

片方の指や手首を、反対側の指で押したり揉みほぐしたりしてみましょう。マッサージする際、指先で押すと痛いので指の腹の柔らかい部位で優しくじっくり押してみてください。

「ツボ」を狙って揉みほぐすのも効果的

セルフマッサージを行う際、手首や手のひらに存在するツボを狙って揉みほぐすことも効果的です。

ここで、おすすめのツボを2つ紹介します。

1つ目は「陽谿(ようけい)」というツボです。手首の親指側に存在するツボで、親指を外側に開いた際にできる窪みを目印にしましょう。

手首の「陽谿(ようけい)」というツボ

2つ目は「労宮(ろうきゅう)」というツボです。手のひらに存在するツボで、指を握り込んだ時に人差し指と中指が触れる部位に取りましょう。

手のひらにあるツボ「労宮(ろうきゅう)」

手首や指のストレッチを行う

腱鞘炎を改善するために、手首や指のストレッチも効果的です。毎日継続することで、痛みや動かしにくさが緩和されるでしょう。

パソコン作業の合間、スポーツを行う前後に取り入れてみてください。ここから、おすすめのストレッチを2つご紹介します。

1つ目は、手首のストレッチです。

前腕前面ストレッチ
STEP1:手を前方に伸ばし手のひらを上に向けます
STEP2:反対側の手を添えましょう
STEP3:手を手前に引きます
STEP4:元の姿勢に戻ります
STEP5:腕の前面が伸びた状態を保持しましょう

※手首に痛みがある場合は肘を曲げて行ってみて下さい

このストレッチを行うことで、手首が軽くなるでしょう。スポーツ前のウォーミングアップにも取り入れてみてください。

2つ目は、指のストレッチです。

手指伸展ストレッチ
STEP1:第2指〜第5指を数秒間反らせます
STEP2:痛みのない範囲で行ってみて下さい

このストレッチを行うことで、ばね指の緩和が期待できます。

ストレッチにはある程度時間をかけてゆっくり行いましょう。また強く動かすことはせず、徐々に動きの角度を足していくように心がけてみてください。

各種グッズを用いる

腱鞘炎の緩和に効果のある各種グッズを用いることも効果的です。

症状の根本的な改善にはならないかもしれませんが、改善を補助する・緩和を助けるという点では十分効果的だといえるでしょう。

ご自身の生活の中で使用可能なグッズを選んでみてください。

テーピング・湿布(シール)

腱鞘炎の痛みを改善するためにはテーピングも効果的です。

テーピングを貼ることで手首の負荷を減らし、血流改善することが可能です。また頑丈で剥がれにくいので、一度貼れば数日間過ごせます。

ただし「巻き方が良くわからない」という方もいるでしょう。

そういった方は、湿布鎮痛シールを用いることがおすすめです。手首や指など痛む箇所に貼ることで、症状の緩和が期待できます。

サポーター

手袋のように装着できるサポーターが多く販売されています。色や形状はさまざまで、磁気が入っているサポーターもあります。

どれも比較的お手頃な価格なので、気に入ったサポーターを購入して装着してみましょう。

また、ばね指向けのリング状のサポーターも販売されています。指輪のようなおしゃれなリングもあるので、より気軽に装着できるのではないでしょうか。

痛みが酷い場合は整形外科を受診しよう

整形外科で医者に腱鞘炎を診察してもらう様子

腱鞘炎になり手首や指の痛みが酷い場合は、すぐに整形外科を受診しましょう。

医療機関でしか対応できない場合も多いですし、腱鞘炎ではない別の症状や病気にかかっている可能性もあります。

医療機関では固定投薬注射といった治療が行われることが多いです。

もし腱鞘炎の再発が続いたり、手を使えないほど強い痛みを伴ったりする場合は、手術の必要が出てくるかもしれません。

症状に応じて整体院や鍼灸院を利用するのもあり

整形外科での治療の補助として、整体院や鍼灸院を利用することも検討しましょう。

身体全体をほぐすことで結果的に腱鞘炎が改善する場合もありますし、手首周辺への鍼やお灸で痛みが和らぐ場合もあります。

もちろん施術者との相性なども関係してきますが、腱鞘炎の改善が早まる可能性もあるので、利用を検討してみてください。

ただし保険適用はされず自費での施術になるので、費用はある程度かかります。あらかじめ把握しておきましょう。

参考記事:整体は効果ある?効果なし?整体院へ行くべき人の特徴や料金の目安を解説
参考記事:整体で保険適用ができない理由を解説!例外的に整体院でも保険が使える条件とは
参考記事:鍼(針)治療はなぜ効果がある?痛みを改善するメカニズムや効き目が出るまでの期間を解説

まとめ

腱鞘炎は、指の腱が通る「腱鞘」という部位の炎症です。症状によって「ばね指」と「ドケルバン病」に分かれます。

腱鞘炎になる原因は「指や手首の使いすぎ」や「ホルモン分泌」などです。治療をせずに放置することで症状が悪化し、手術が必要になるケースも存在します。

まずは指や手首を使いすぎないように適度に休ませながら、ご自身でセルフケアを続けてみてください。セルフマッサージやストレッチをはじめ、テーピングや鎮痛シールも効果的です。

それでも改善しない場合は整形外科で診てもらいましょう。

手は生活するうえで大切です。しっかりケアを行ってください。それでは当記事を参考に、腱鞘炎への対策を行いましょう。

【参考文献】
1)日本整形外科学会:症状・病気をしらべる
2)大正製薬:腱鞘炎(けんしょうえん)の症状と原因
3)千葉県医師会:「腱鞘炎」は早期に正しい治療を行いましょう
4)第一三共ヘルスケア:腱鞘炎の原因
5)味の素株式会社:カラダを動かす「立役者」:筋肉の力を動きに変える「関節」と、力を伝える「腱」が、「理想の動き」を支える!
6)大塚製薬:女性ホルモンの働き