「半月板(はんげつばん)損傷」は、基本的にスポーツ中に起こりうる膝のケガです。
また、老化も影響してくるため、特別激しい運動をしていない方も半月板を痛める可能性があります。
膝に痛みを抱えていると、日常生活に大きな支障が出てしまいます。
できるだけ早期の改善を目指すためにも、受傷後に適切な処置を行うことが重要です。
そこで本記事では、半月板損傷を早く治すための対処法を分かりやすく解説します。
リハビリに効果的なストレッチ方法も紹介していますので、ぜひ最後まで目を通してみてください。
半月板損傷とは?症状の確認方法も解説
半月板(はんげつばん)と呼ばれる組織に傷がついた状態が「半月板損傷」です。
受傷後にスムーズな対応ができるよう、半月板損傷がどのようなケガなのか、原因や症状を把握しておきましょう。
半月板の役割
半月板は、膝関節内に存在する軟骨組織です。
おもに「膝関節にかかる負荷を分散する」「関節の位置を安定させる」といった役割があります。
なお、半月板は真上からみるとアルファベットの「C」のような形をしており、膝の内側と外側に一つずつ(合計2つ)あります。
半月板損傷の原因
半月板損傷の原因には、まず「スポーツによる外力」が挙げられます。
とくに膝に体重がかかった状態でひねるような外力が加わると半月板に強い負荷がかかり、損傷してしまう場合があります。
「ジャンプの着地」や「急な方向転換」「相手選手との接触」などが代表的な受傷状況に挙げられます。
また、「加齢」も半月板損傷の原因の一つです。年齢を重ねるごとに半月板の強度が低下し、日常生活中の負担で痛めてしまうのです。
加齢によるものでは、気づかぬうちに半月板を損傷しているケースが比較的よくみられます。
したがって、40代以降の方であれば、スポーツをしていない場合でも膝の痛みが半月板損傷の可能性があるため、注意が必要です。
半月板損傷の症状チェック
以下のような症状がみられる場合、半月板損傷の疑いがあります。
- 運動時に膝が痛む
- 膝が腫れて水が溜まっている
- 太ももの筋肉に力が入りにくい
- 膝を伸ばしにくい、または曲げにくい
- 膝を曲げ伸ばしするときに引っかかる感じがある(キャッチング)
- 膝の関節がロックされたように動かない(ロッキング)
そのまま使い続けることで、半月板の損傷を広めてしまうかもしれません。
よって半月板損傷が疑われる際は放置せず、早めに対処を行っていきましょう。
参考記事:半月板損傷の症状をチェック!原因や膝の痛みを早く治す対処法・ストレッチも解説
参考記事:【膝を曲げると痛い】突然の痛みの原因とあわせ3つのおすすめ対処法を解説!
参考記事:【膝を伸ばすと痛い】原因となる病気と4つのおすすめ対処法を解説!
【要チェック】半月板損傷を早く治す方法
半月板損傷を1日でも早く治すために、次のような対処を行っていきましょう。
病院で診てもらう
先述した原因や症状からみて、半月板損傷の可能性がある場合は、まず病院を受診してください。
軽度のものであれば、保存療法(固定、ストレッチ、筋トレなど)により手術をしないで治せる可能性はあります。
しかし、損傷の具合によっては、手術のほうが回復が早いケースも少なくありません。
とくにロッキング(膝が動かない)やキャッチング(曲げ伸ばしで引っかかる)などがある際は、重度の損傷が考えられるため注意が必要です。
いずれにせよ自己判断はむずかしいため、早めに医療機関での検査を受けることがおすすめです。
なお半月板損傷の手術には、損傷部位を縫い合わせる「半月板縫合術」と、損傷した半月板を切除する「半月板切除術」の2種類があります。
各々でメリットとデメリットがあるので、スポーツ活動の有無や年齢、患部の状態などから判断して、適切な術法を選択する形となります。
「半月板損傷 手術しないで治す」「縫合」
参考記事:【半月板損傷】膝のロッキングを自分で治すのは危険?適切な治療方法を解説
安静にして冷やす
痛みや腫れが強く出ている時期は、なるべく患部を安静にしましょう。無理に動かすことで、症状を悪化させてしまうかもしれません。
また急性期には、アイシングも有効です。氷嚢(氷水の入った袋)を当てて膝のまわりを冷やすと、痛みや腫れをやわらげる効果が期待できます。
サポーターで膝を保護する
膝の安静を保つには、サポーターの使用もおすすめです。サポーターの着用により関節を固定できるほか、圧迫を加えることで腫れの広がりも抑えられます。
さまざまなタイプのサポーターが市販されていますので、ぜひご自身にあったものを購入してみてください。
なお、サポーターは長期間つけていると、筋力や柔軟性の低下につながるおそれがあります。あくまでも補助として考え、他のセルフケアもあわせて実施するように気をつけてください。
食べ物に気をつける
組織の修復を促すには、食事からの栄養摂取も欠かせません。
軟骨のケガには、「コラーゲン(牛すじ、豚バラ肉、手羽先など)」や「ビタミンC(果物、緑黄色野菜など)」が良いと言われています。
しかし、炎症を抑えたり、筋肉量を増やしたりする必要もあるため、何か特定の食品を摂れば良いというわけでもありません。なるべく好き嫌いはせず、バランスよく食べることが大切です。
また、体重はそのまま膝への負担となってしまいます。したがって、とくに肥満気味の方は食事量をコントロールして、減量に努めることも推奨しています。
ストレッチで膝を動かしていく
痛みや腫れがひいてきたら、ストレッチで膝の可動域を徐々に広げていきます。
膝関節自体のストレッチをはじめ、股関節や足首など周辺の柔軟性を高めることでも、膝にかかるストレスを軽減できます。
リハビリに効果的なストレッチは、このあと動画付きで詳しく解説していきますので、ぜひご参照ください。
トレーニングで太ももの筋肉を鍛える
半月板にかかる負担を減らすため、膝まわりの筋肉をつけていきましょう。
とくに膝の症状には、太もも前側に付着する「大腿四頭筋(だいたいしとうきん)」が重要だと言われています。
ストレッチと合わせて、予防につながるトレーニング方法もこのあと詳細をお伝えします。
なおストレッチや筋トレは、急に行うと再度半月板を痛めてしまうかもしれません。リハビリは医師の指導のもとで、慎重に行うように気をつけてください。
半月板損傷に効果的なストレッチ・トレーニング
それでは、半月板損傷のリハビリに有効なストレッチやトレーニングの方法をみていきましょう。
繰り返しになりますが、自己判断で始めるのではなく、必ずお医者さんに状態を確認してもらってから行うようにしてください。
お皿のマッサージ
膝の痛みに対しては、膝蓋骨(しつがいこつ:膝のお皿)を動かすマッサージが有効とされています。お皿を動かすことで関節内の潤滑が良くなるため、膝の曲げ伸ばしも楽になってくるはずです。
なおモビライゼーションとは、施術者もしくは患者自身の手を使って関節を繰り返し動かし、可動性を高めていくマッサージ方法を指します。
STEP1:片足を伸ばし両手で膝のお皿をつまみましょう
STEP2:お皿を左右交互に動かしましょう
STEP3:お皿を上下交互に動かしましょう
膝の曲げ伸ばし運動
膝の曲げ伸ばしを繰り返すことで、膝関節の可動域を広げていくストレッチになります。
無理をする必要はありませんが、手で補助しながら「曲げる」「伸ばす」範囲を広げるイメージを持って行うようにしてください。
STEP1:両脚を伸ばし太ももを支えましょう
STEP2:アシストしながら膝を曲げていきます
STEP3:ゆっくり膝を伸ばしていきましょう
STEP4:繰り返し膝を曲げ伸ばししましょう
※可能な範囲で大きく動かしましょう
タオルつぶし運動
大腿四頭筋の内側に位置する「内側広筋(ないそくこうきん)」を刺激するトレーニングです。
内側広筋を鍛えることで膝の安定性が増してくるため、半月板にかかる負担を軽減できます。
太ももの前側に力が入ることを意識して行いましょう。
STEP1:片膝を伸ばして座りましょう
STEP2:膝の裏にタオルを入れて膝を伸ばします
STEP3:膝裏でタオルを潰すように太ももに力を入れます
STEP4:数秒間力を入れ繰り返し実施します
※お皿を上に持ち上げるように意識しながら行いましょう
※なるべく姿勢は正して行いましょう
半月板損傷が治るまでの期間はどれくらい?
軽度の半月板損傷であれば、1ヶ月程度の保存療法で回復できるケースが多いです。
しかし治るまでの期間は、半月板の損傷した部位や断裂の仕方、年齢などによって大きく変わります。
もし手術が必要となった場合、最低でも日常生活に戻るまでに1〜2ヶ月、スポーツ復帰までに3〜6ヶ月ほど時間を要する場合が多いです。
また、症状の早期改善を目指すには「やってはいけないこと」もしっかり頭に入れておくことが大事です。
- 正座
- しゃがみ込み
- 方向の切り替えなど膝をひねる動作
- 階段の上り下り
- 長距離の歩行
症状の悪化につながりかねませんので、とくに痛みや腫れが残っている時期は、上記のような動作や姿勢はなるべく避けるようにしてください。
まとめ
半月板損傷は自己判断で対処をしていると、症状を余計に長引かせてしまうかもしれません。
運動時の痛みや膝の引っかかりなど違和感を覚えましたら、早めに医療機関で検査を受けてみてください。手術をはじめとした、状態に合わせた治療を受けられるはずです。
また、症状の改善を早めるためにも、ストレッチや筋トレなどリハビリも医師の指導のもとでしっかり行っていきましょう。
それでは本記事が、あなたを悩ませる膝の痛みの改善に役立てば幸いです。
参考文献