「ぎっくり腰」は、朝起きた時や重いものを持った瞬間に「ピキッ」と強い痛みが出ます。予測できるならまだしも、「いつ起こるかわからない」のがぎっくり腰の特徴の1つです。
もし仕事前に強い痛みが出てしまったら、その日は休まざるを得ません。したがって、「これから仕事だから即効で痛みを無くす方法が知りたい」という方もいるでしょう。
そこで当記事では、ぎっくり腰を即効で治す方法があるのか探るとともに、ぎっくり腰を1日でも早く治す適切な対処法をお伝えします。
他にも、ぎっくり腰の再発を予防するために、日常生活で注意するべきポイントも解説していますので、ぜひ最後までお付き合いください。
ぎっくり腰を即効で治す方法はあるのか?
まず結論からいうと、ぎっくり腰を「即効で」治す方法はありません。
なぜかというと、ぎっくり腰とは急激な動作により筋肉や関節が損傷し、強い痛みが出ます。痛みのある部分は炎症状態となり、ぎっくり腰になってから2〜3日は強い痛みが続いてしまうからです。1)
さらに炎症状態であるにもかかわらず、痛みを取ろうとするあまりマッサージやストレッチを行うと、かえって痛みが悪化するケースも。
以上の理由により、ぎっくり腰を即効で治す方法はないので、少しでも早く治すためには、ぎっくり腰の正しい理解と適切な対処が必要になります。
ぎっくり腰とはどのような状態?痛みの原因を解説!
先ほど、ぎっくり腰は即効で治す方法はないと説明しましたが、では1日でも早く治すにはどのようにすればよいのでしょうか?
その説明をする前に、まずは正しい対処法をより理解するため、ぎっくり腰になる原因や症状を解説していきます。
はじめに、ぎっくり腰とは筋肉や関節や靭帯などに急激な負荷がかかり、強い痛みが出ている状態です。
なお、正しい病名は「急性腰痛症(きゅうせいようつうしょう)」です。加えて、ぎっくり腰は画像診断(レントゲンなど)では明確な原因がなかなか分かりません。
したがって、ぎっくり腰になる原因は明確に断言できませんが、重いものを持ち上げる・腰をひねる動きによって、レントゲンではわからない筋肉の肉離れや、腰の関節のわずかなズレが生じ、痛みが出ると言われています。
参考記事:これってぎっくり腰!?腰椎捻挫の症状と自分でできるリハビリ方法をわかりやすく解説!
ぎっくり腰を1日でも早く治すには?経過別の適切な対処法
では、ぎっくり腰の基礎を説明したところで、1日でも早く治すための適切な対処法を解説していきます。
なお、ぎっくり腰は痛みに合わせた3つの時期に分けられます。
それぞれで適切な方法を解説しているので、あなたがぎっくり腰になってからどのくらい経過しているのかに合わせて確認してみましょう。
最も痛みが強い急性期(目安:発症〜2日目)
ぎっくり腰になってから2日間は、最も痛みが強く出ている状態です。
急性期は炎症が強いため、早く治そうとマッサージをしたり、無理に動かすと痛みが悪化する可能性もあります。まずは、無理をせず安静にすることが大切です。
他にも、以下の対処をしてみましょう。
- 痛みのある部分をアイシング(冷やす)する
- 動くときはコルセットをして腰への負担を軽減する
- 鎮静剤(ロキソニンなど)を服用する
徐々に動き出せる亜急性期(目安:3日目〜6日目)
多くの場合、ぎっくり腰になってから2日目以降は炎症が引いてくるため、徐々に動けるようになります。
まだ安静にしていたい気持ちはあると思いますが、ぎっくり腰は4日以上安静にしていても治りが早くなるわけではありません。1)
しかし、痛みを無視して動きすぎても、ぎっくり腰が悪化する場合もあります。2)痛みの状況により活動量を調整することが、1日でも早く治すために必要なことです。
ご自身の状況に合わせて少しずつ日常生活へ復帰していきましょう。
違和感が無くなる慢性期(目安:7日目以降)
最も違和感なく動きやすくなるのは、ぎっくり腰から1週間以上が経ってからです。違和感がなくなったら、再発予防に向けて活動量を増やしたり、ストレッチを積極的に行っていきましょう。
また慢性期には、痛みが繰り返さないか不安でコルセットを着用し続ける方もいらっしゃるかと思います。
とはいえ、コルセットの役割は腰が不安定な方の筋肉を補助し、負担を軽減するものです。したがって、使い続けると本来使われるはずの筋肉が衰えてしまい、根本的な解決にはなりません。
今後の予防のためにも、ご自身の筋肉で体を支える力を身につけ、コルセットを手放すことにチャレンジしていきましょう。
参考記事:コルセットは寝る時に外すべき?就寝時・寝起きの腰痛を改善するセルフケアも紹介
【予防にも効果的】ぎっくり腰の経過別オススメストレッチを紹介!
それでは、ぎっくり腰の再発予防にも効果的なストレッチを紹介していきます。
発症からの時期によって適したストレッチが異なります。痛みの様子を見ながら、ぜひ実践してみてください。
最も痛みが強い急性期(目安:発症〜2日目)
ぎっくり腰になってから2日間は、炎症により痛みが強く出ている状態です。ですので、基本的には安静にし、痛みが出ていない筋肉の柔軟性や筋力が低下しないよう、無理のない範囲で運動することをオススメします。
それでは、寝た状態で無理なく行えるストレッチを解説していきます。
まずは股関節周りのストレッチから
最初に、腰や背中と連動して動く骨盤や股関節周りの筋肉を柔らかくしていきましょう。
とくに、お尻の筋肉である「大殿筋(だいでんきん)」は、立ったり歩いたりすることで負荷がかかりやすく、硬くなりやすい筋肉です。
したがって、大殿筋の柔軟性が低下すると、背中や腰をスムーズに動かせず腰への負担が大きくなります。
大殿筋の柔軟性を高めることが、ぎっくり腰の再発防止に効果的です。
STEP1:片足をお腹に引き寄せましょう
STEP2:反対側に肩に向けてひねります
STEP3:姿勢を保持しましょう
STEP4:お尻が伸びた状態を感じましょう
※痛みのない範囲で行いましょう
腹式呼吸で筋力低下を予防
「腹式呼吸」を行うことで、腹横筋(ふくおうきん)と呼ばれる筋肉が鍛えられます。
一般的に、腹横筋はインナーマッスルとして知られており、体幹の安定性を高める働きがあります。ですので、腹横筋の力が低下すると、体幹を支える力が弱くなり、背中や腰の骨や関節に大きな負荷がかかるのです。
ぎっくり腰の再発を防ぐため、腹横筋を鍛え体幹の安定性を高めましょう。
STEP1:あお向けとなり両膝を立てましょう
STEP2:お腹に触れ筋肉の収縮を確認しましょう
STEP3:息を吐きながらお腹に力を入れましょう(6秒)
STEP4:繰り返し実施しましょう
※腰を動かさないように注意しましょう
徐々に動き出せる亜急性期(目安:3日目〜6日目)
ぎっくり腰になってから3日目以降は、痛みが徐々に落ち着き動けるようになっていると思います。
回復を早めるために、亜急性期からは安静にするのではなく、痛みが出ない範囲で動くことが大切です。
少しずつ腰のストレッチや筋トレを行い、ぎっくり腰の再発予防をしていきましょう。
少しずつ腰のストレッチを
まずは、無理のない範囲で背中のストレッチを行ってみましょう。
背中にある大きな筋肉は脊柱起立筋(せきちゅうきりつきん)と呼ばれ、腰の痛みを感じている方は、脊柱起立筋が硬くなっていることも多いです。
脊柱起立筋は、背中を反らせる働きがあるため、硬くなると反り腰になり姿勢が崩れます。ですので、脊柱起立筋のストレッチで正しい姿勢を作りましょう。
おすすめが「膝抱えストレッチ」です。
STEP1:両足を抱えましょう
STEP2:腰を丸めるようにお腹に引き寄せます
STEP3:姿勢を保持しましょう
STEP4:腰が伸びるのを感じながら行いましょう
※丸めたタオルを入れるとさらに伸びます
お尻の筋肉を鍛え身体の安定性を強化
先ほど、大殿筋のストレッチを紹介しました。
動けるようになった段階で大殿筋の筋トレを行うことで、腰や背中への負担をより軽減し、正しい姿勢に近づけることもできます。
ただし、お尻をあげる運動は腰に負担をかけやすいので注意してください。下の動画を見ながら、無理をせず正しい姿勢で行うようにしましょう。
STEP1:仰向け姿勢となり両膝を曲げましょう
STEP2:お尻を持ち上げましょう
STEP3:繰り返し実施しましょう
STEP4:体が一直線になるまでお尻を持ち上げましょう
※腰を反らさないうよう注意しましょう
違和感が無くなる慢性期(目安:7日目以降)
ぎっくり腰になってから1週間以上経つと、違和感や痛みはなくなり普通に動かせるようになります。
ここからは、よりダイナミックなストレッチや筋トレによって、腰や背中を積極的に動かしていきましょう。
腰の運動で恐怖心を取り除こう
腰の痛みがなくなったとしても、「腰を動かすことにまだ怖さがある」「普通に動かしたら、また痛くなりそうで不安」というように、腰を動かすことに対する恐怖心は中々消えないものです。
ですので、座った状態からゆっくりと腰を曲げたり伸ばしたりして、腰を動かすことへの恐怖心を取り除いていきましょう。
STEP1:体を前傾させ両手で足の甲を触りましょう
STEP2:体を可能な限り後方へ傾けましょう
STEP3:元の姿勢に戻りましょう
STEP4:店頭に十分注意して実施しましょう
※背中を丸めないように注意しましょう
股関節の動かし方を覚えよう
股関節は、人体の中でも一番動きが大きい関節です。股関節が正しく動くことで骨盤や背骨もスムーズに連動します。
すると、立ったり歩いたりするときの衝撃を緩和し、腰や背中にかかる負担が軽減されるのです。
逆に、股関節が正しく動かないと骨盤や背骨の動きもスムーズには動きません。骨盤や背骨がスムーズに動かないことで、腰への負担が増えてしまいます。
したがって、ぎっくり腰を再び起こさないためには、股関節を正しく動かし骨盤や背骨の動きをスムーズにすることが大切です。
STEP1:両足を開き腕を頭の後ろにおきましょう
STEP2:股関節を深く曲げ体を前傾させましょう
STEP3:繰り返し実施しましょう
STEP4:膝を軽く曲げながら行いましょう
※腰を丸めないように注意しましょう
ぎっくり腰を繰り返さないための5つの注意点
ぎっくり腰の再発防止や予防のためには、ストレッチで柔軟性を高め、筋トレで背骨や腰周りの安定性を保つことが大切です。
ですが前段階として、柔軟性の低下や筋力低下を引き起こさないために日常で気をつけるポイントもあります。
それでは、ぎっくり腰を繰り返さない5つの注意点を解説していきますので、あなたの生活様式と照らし合わせてチェックしてみてください。
正しい姿勢を心がける
ぎっくり腰は、筋肉や関節に負担が蓄積することも原因の1つと考えられます。したがって、悪い姿勢で生活を送っていると、いつの間にか腰に負担がかかりぎっくり腰になるケースも多いです。
たとえば、以下のような癖や習慣がありませんか?
- デスクワークで長時間悪い姿勢で過ごすことがある
- スマホ操作するとき、常に下を向いている
- 立っているとき、歩くときに反り腰になる
上記のような悪い姿勢が背中や腰に大きな負担をかけるため、ぎっくり腰になりやすいです。
普段の作業環境の見直しやストレッチや筋トレを定期的に行い、正しい姿勢で過ごしましょう。
参考記事:【簡単】姿勢を良くする方法4選!猫背や反り腰を改善して正しい姿勢を保つには
参考記事:反り腰を改善!原因から治し方を簡単なストレッチをまじえ解説
適度な運動で筋肉を落とさない
運動習慣のない方は筋力が落ちやすく、腰や背中への負担も大きくなります。なお、先ほど解説した悪い姿勢も、筋力低下が原因の1つです。
そこで、筋トレやストレッチ、ウォーキングなどの有酸素運動で、全身の筋力を保つことが有効です。
また、ぎっくり腰は数週間で良くなるとされていますが再発リスクもあるため、無理のない範囲でこまめに運動することを心がけましょう。
重いものの持ち方に気をつける
ぎっくり腰は、重いものを持った瞬間に「ギクッ」と強い痛みが出るケースも多いです。ですので、重いものを持つことは控えた方が良いでしょう。
しかし、どうしても重いものをもつ必要がある場合もあるでしょう。そのときは以下のポイントに注意してください。
- 腕の力だけで持ち上げたりしない
- 膝をしっかり曲げ、背中が丸くならないように注意する
- 荷物は体にしっかり近づける
寝るときの姿勢を見直す
ぎっくり腰は悪い姿勢によって、背中や腰に負担がかかることで痛みが出ます。
さらに、悪い姿勢は起きているときだけでなく、寝ている姿勢が悪くても腰に負担がかかるのです。とくに、あお向けは腰が反りやすく負担も大きくなります。
正しい寝方としては
- 横向きに寝る
- あお向けのときは膝下にクッションを入れる
など、腰への負担を減らす工夫が必要です。
他にも、寝具が柔らかすぎたり、枕が高すぎたり低すぎると負担が大きくなります。ですので、マットレスはある程度硬さのあるものを選び、枕は以下のポイントに注意して選びましょう。3)4)
- 横向きに寝て、顔の中心線と胸の中心線が一直線になる
- 一直線になった中心線とマットレスが平行になっている
- 両側ヘスムーズに寝返りが行える
参考記事:【ぎっくり腰】これでひと安心!楽な姿勢(寝方・座り方)と対処法を解説!
参考記事:腰が痛い時の寝方とは?腰の痛み別に正しい寝姿勢を紹介
ストレスを溜め込まない
実は、心理的ストレスはぎっくり腰のリスクを高めることがわかっています。5)ですので、仕事や家庭でのストレスなどはなるべく溜め込まず、発散しましょう。
ストレス発散には、ウォーキングなどの有酸素運動が良いとされています。また意外に思われるかもしれませんが、読書もストレス発散には効果的です。
なぜなら、6分間の読書でストレスが68%軽減することもわかっており、忙しい方でも簡単にチャレンジできるからです。6)
ただし、興味のない本や難しい本を読むのはストレス発散に適しません。ですので、あなたがおもしろいと感じ、没頭できる本を読み日々のストレスを発散しましょう。
まとめ
今回は、ぎっくり腰が即効で治らない理由と1日でも早く治すための対処法を解説しました。
当記事をまとめると
- ぎっくり腰は、2日間は痛みが強く出て炎症しているため、即効で良くなることはない
- 多くは1週間以内に動かせるようになるが、無理をすると痛みが悪化する
- ぎっくり腰を繰り返さないためには、ストレッチや筋トレの他に、普段の姿勢や寝方などにも注意が必要
となります。
以上の理由からぎっくり腰の再発・予防には、日々の生活環境を見直し、適度な運動習慣を身につけることが大切です。
それでは、当記事があなたの痛み軽減に役立てば幸いです。
参考文献
1)Acute Lower Back Problems in Adults,Clinical Practice Guideline.95-0642:1994
2)Marmivara, Antti, et al. “Is bed rest, exercise, or usual activity the treatment for acute low back pain?” New England Journal of Medicine 332.6 (1995): 351-355.
3)勝呂徹.あなたの枕は合っていますか?正しい眠りのための枕調整.Pharmaceutical Society of Japan.46巻11号 1063-1067.2010
4)Radwan A, Fess P, James D, Murphy J, Myers J, Rooney M, Taylor J, Torii A. Effect of different mattress designs on promoting sleep quality, pain reduction, and spinal alignment in adults with or without back pain; systematic review of controlled trials. Sleep Health. 2015 Dec;1(4):257-267. doi: 10.1016/j.sleh.2015.08.001. Epub 2015 Oct 19. PMID: 29073401.
5)松平 浩 (2013)ホントの腰痛対策を知ってみませんか 労災保険情報センター
6)五十嵐良雄 (2019)読む薬 アチーブメント出版