しゃがんだ時やイスから立ち上がる際に、膝がポキポキ鳴ることはありませんか?
膝から発せられる音について思い当たる原因がなく、不安を感じる方もいるでしょう。実際のところ、膝の怪我や疾患が関係している場合もあるので注意が必要です。
当記事では、膝がポキポキ鳴る原因を中心に、すぐに対処すべきケースやおすすめのセルフケアについて解説します。
最後まで目を通すことで、膝が鳴る理由が把握でき、より安心して生活できるようになるはずです。ぜひ参考にしてみてください。
【痛くない場合】膝がポキポキ鳴る原因は気泡?
膝がポキポキ鳴る原因として考えられるのが、膝関節内に発生する「気泡(きほう)」です。
膝関節内は、関節をスムーズに動かしたり栄養を運んだりするために関節液で満たされています。そして、膝を曲げ伸ばしした際に関節液内の圧力が変わり、それによって気泡が発生し弾ける「キャビテーション」が生じるケースがあります。
つまり、膝から鳴るポキポキは、キャビテーションによって生じた音です。
したがって、膝を曲げ伸ばしても痛くない場合は、ポキポキ鳴ったとしてもそこまで心配する必要はないといえるでしょう。
ただし、膝が動くたびにポキポキ鳴る場合は注意が必要です。
また、音が鳴るのが面白いからと、わざと何度も膝をポキポキ鳴らすことは避けましょう。関節内に負担がかかり傷がついてしまうおそれがあります。
膝の痛みも伴う場合は要注意!変形性膝関節症かも
もし、膝が頻繁にポキポキ鳴るのに加えて、膝の痛みが現れている場合は注意が必要です。膝の痛みが発症する兆候、あるいは悪化しているサインかもしれません。
まず考えられるのが「変形性膝関節症」です。
変形性膝関節症とは、加齢や生活習慣などが原因で膝の関節が変形し痛みを生じる疾患を指します。20代前後で発症することはほとんどなく、50代以上の女性に発症しやすい傾向にあります。
「歩くと膝がポキポキ鳴る」「寝ている時に膝が痛い」「朝起きた時に膝がこわばっている」などの症状が見られる場合は、変形性膝関節症を疑ってみてください。
なお、膝がポキポキ鳴る方は変形性膝関節症になりやすい傾向にあるので注意してみてください。
参考記事:【40代・50代向け】膝の痛みを症状からチェック!膝痛に効くセルフケアも紹介
そのほかの膝の疾患もチェックしておこう
変形性膝関節症のほかに、可能性が考えられる疾患の例は以下の通りです。
- タナ障害(滑膜ひだ障害)
- 膝蓋大腿関節症
- 半月板損傷
「タナ障害」とは、スポーツなどが原因で膝関節内の「滑膜ひだ」に炎症が発生する疾患を指します。「膝蓋大腿関節症(しつがいだいたいかんせつしょう)」は、スポーツをはじめとした負荷がきっかけで、膝のお皿(膝蓋骨)がズレることで痛みを生じる疾患です。
そして「半月板損傷(はんげつばんそんしょう)」は、加齢やスポーツがきっかけで、膝関節の「半月板」が損傷することで発症します。
このように要因やきっかけによって、大人(とくに中高年)の方はもちろん、中学生・高校生の方にも膝の疾患が発症し得るので注意が必要です。
これらの膝の疾患の場合、「ポキポキ」というよりは「ミシミシ」「ピキッ」「ジャリジャリ」といった表現に近い音が鳴るケースがあるので気をつけてください。
参考記事:【膝の内側の痛み】4つの原因の見分け方と対処法・ストレッチをわかりやすく解説
参考記事:半月板損傷の症状をチェック!原因や膝の痛みを早く治す対処法・ストレッチも解説
膝に違和感がある場合は早めに病院を受診しよう
膝が痛む場合はもちろん、たとえ膝が痛くなくても違和感を覚える場合は、早めに病院を受診するのがおすすめです。
精密な検査によって膝の状態を正確に把握できれば安心ですし、その後に行うべきケア方法もより明確になるでしょう。
そのうえで、お医者さんに具体的なアドバイスを仰いでみてください。
膝の違和感・痛みを改善するためにおすすめのセルフケア
繰り返しになりますが、膝がポキポキ鳴る現象に加えて膝が痛む場合はそのまま放置するべきではありません。早めに対処することが大切です。
ここから、膝の痛みや違和感を改善するためにおすすめのセルフケアを解説します。ぜひ取り入れてみてください。
参考記事:【膝が痛い時の対処法】自宅で簡単!辛い痛みを改善するストレッチ3選
ストレッチ
空き時間を使って簡単に取り組めるのがストレッチです。
ストレッチには、膝周りの血流を良くする・関節の動きを滑らかにするといった効果が期待できます。毎日ストレッチを継続することで、膝の痛みや違和感を緩和できるでしょう。
では、おすすめのストレッチを2つ紹介します。
1つ目は、膝のお皿のマッサージになる「膝蓋骨(しつがいこつ)モビライゼーション」です。
STEP2:両手で膝のお皿をつまみます
STEP3:お皿を左右交互に動かしましょう
STEP4:お皿を上下交互に動かしましょう
こちらのストレッチを行うことで、膝のお皿(膝蓋骨)の動きが良くなります。
膝蓋骨には「膝の関節を保護する」「膝関節をスムーズに動かす」といったはたらきがあります。したがって膝の痛み緩和に有効なので、ぜひ実践しましょう。
2つ目は、太ももの筋肉を伸ばす「大腿四頭筋(だいたいしとうきん)ストレッチ」です。
STEP2:下の足を直角に曲げ、もう一方の足を後方から掴みます
STEP3:足を後方へ引っ張ります
STEP4:太もも前面の伸びを感じながら繰り返しましょう
※腰を反らさないように注意してみてください
上記のストレッチによって、太もも前側に付き、膝を安定させる・膝を伸ばす際に作用する「大腿四頭筋」を効率的に伸ばせます。膝の痛みや違和感の改善に効果が期待できるでしょう。
適度な運動
運動不足による、膝周りの筋力低下や体重増加(肥満)も膝の痛みの原因になり得ます。ぜひ、適度な運動を実施しましょう。
これまで運動した経験がない方は、まずは軽いウォーキングなどから始めてみてください。忙しくてウォーキングの時間が取れない方は、「用事の際はできるだけ歩いて出かける」「最寄り駅から1駅分歩いてみる」という方法がおすすめです。
初めから強度が強い運動を行うと、すぐに挫折してしまいかねません。「長く続ける」ことを念頭に、ご自身のペースで運動を続けましょう。
膝に負荷がかかる運動には注意しよう
もちろん膝周りの筋力トレーニングも有効です。
ただし、「スクワット」など膝の屈伸を伴う運動には十分注意しましょう。負荷が大きすぎたり、誤ったフォームで行ったりすると、逆に膝を痛めてしまうリスクがあるからです。
したがって、最初は筋トレの専門家にチェックしてもらうのが良いかもしれません。そして、膝の痛みが強くなったら、すぐに運動を中止してください。
参考記事:スクワットで膝が痛い原因とは?正しいフォームと膝痛に効く代わりの運動法を紹介
靴を見直す
普段履いている靴をあらためて見直してみるのも有効です。足に合っていない靴を履き続けることで、結果的に膝に負担がかかり痛みを生じるケースがあります。
サイズや形状をチェックし、歩きにくさやしゃがみにくさを感じる場合は、靴を新調することを検討しましょう。
また、足裏の土踏まずが消失する「扁平足(へんぺいそく)」も膝の痛みにつながりやすいです。そこで、扁平足の方はインソール(中敷き)を使用してみてください。
参考記事:扁平足にはどんなデメリットがある?扁平足の原因や自分でできる改善法も解説
膝用サポーターを着用する
膝の痛みが強く、生活に支障が出ている場合は、膝用サポーターの着用がおすすめです。サポーターを着用することで膝周りの安定性が増し、痛みの緩和に役立ちます。
ドラッグストアやネットで購入可能なので、ご自身に合うサポーターを探してみましょう。なお、サポーターを選ぶ際は「サイズ」「固定力」「通気性」をチェックするのがおすすめです。
ただし、サポーターはあくまで補助として役立つアイテムであって、痛みを改善する効果はありません。したがって、サポーターに頼りすぎていると、いつまで経っても痛みが改善されない可能性があるので注意してください。
まとめ
膝がポキポキ鳴るのは、膝関節内の気泡が原因だと考えられます。そして痛みの有無によって、取るべき対応が異なります。
もし膝が鳴っても痛みがないのであれば、まずは様子をみましょう。
逆に頻繁に音が鳴ったり、膝の痛みが伴ったりする場合は早く対処するべきです。早めに病院を受診して原因が判明した後に、膝のストレッチや運動などを続けましょう。
それでは当記事が、あなたのお悩み解決に少しでも役立てば幸いです。
【参考文献】
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3)Andrew J Kittelson 1, Steven Z George, Katrina S Maluf, Jennifer E Stevens-Lapsley:Future directions in painful knee osteoarthritis: harnessing complexity in a heterogeneous population
4)変形性膝関節症診療ガイドライン策定委員会:変形性膝関節症診療ガイドライン 2023
5)Natalie J Collins, Bill Vicenzino, Rianne A van der Heijden, Marienke van Middelkoop:Pain During Prolonged Sitting Is a Common Problem in Persons With Patellofemoral Pain
6)Richard W Willy, Lisa T Hoglund, Christian J Barton, Lori A Bolgla, David A Scalzitti, David S Logerstedt, Andrew D Lynch, Lynn Snyder-Mackler, Christine M McDonough:Patellofemoral Pain
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