膝の周りには多くの筋肉が存在しています。中でも、膝裏にある「膝窩筋(しつかきん)」は、非常に小さいながら、膝裏の痛みに関係する重要な筋肉です。
しかし膝窩筋がどういった働きをする筋肉なのか、そしてなぜ膝窩筋が膝裏の痛みと関係しているのかを理解している方は少ないでしょう。
そこで当記事では、膝裏が痛む原因と治し方、ストレッチなどの予防方法について、わかりやすく解説します。当記事を参考にすることで、膝裏の痛みが少しでも楽になれば幸いです。ぜひ最後までお付き合いください。
膝窩筋(しつかきん)とは?どのような働きがあるの?
膝窩筋(しつかきん)は膝裏にある小さな筋肉で、太ももの骨と半月板(膝の関節の組織)の外側から、脛(すね)の骨の後面に掛けて斜めに走行しています。また腓腹筋(ひふくきん)と呼ばれるふくらはぎの筋肉よりも奥にある筋肉です。
膝窩筋は以下の二つの働きを持ちます。
- 膝を曲げる(膝関節屈曲)
- 脛の骨を内側にねじる(下腿内旋)
膝窩筋の作用と深く関係しているのが、スクリューホームムーブメントという働きで、膝を安定させたり、膝の組織に負担を掛けずに動かしたりするために必要です。
膝窩筋の機能が正常でないと、このシステムが破綻し膝の曲げ伸ばしがスムーズに行われず、膝に負担が掛かってしまいます。
【簡単に解説】膝裏の痛みと膝窩筋の関連性
結論から述べると、膝裏の痛みには膝窩筋の凝り・機能の低下が関係している場合が多いです。
膝窩筋が正しく働いていないと、膝を曲げる際に太ももと脛(すね)の骨の適合性が悪くなり、インピンジメント(半月板の挟み込み)が起こり痛みにつながることも。
また膝窩筋には痛みの引き金となるトリガーポイントがあり、痛みやコリの原因となるほか、関連する痛みが膝裏全体に起こるとも言われます。そして、膝窩筋が伸ばされることで膝裏の痛みにつながるとの報告もあります。1)
さらにランニングやジャンプなどの膝の使いすぎで膝窩筋に負担が掛かり、損傷・炎症が起こる膝窩筋腱炎の可能性もあるのです。
参考記事:膝裏が痛いのはなぜ?痛みや腫れの原因と自分で行える治し方(ストレッチ等)を解説
【動画付き】膝窩の痛みを和らげるストレッチ&トレーニング方法2選
膝をまっすぐ伸ばした時に最後まで伸びにくい(伸展制限がある)場合は、膝窩筋やその周囲の滑液包(かつえきほう)や関節包(かんせつほう)が硬くなっている可能性があります。
その場合、膝裏の硬さが痛みを引き起こしていると考えられるため、膝裏のストレッチやリリース(皮膚を伸ばすこと)がおすすめです。
ただし、「熱感がある」「我慢できない程の痛みが続く」「自分では判断できない」といった場合には、整形外科や接骨院・整骨院などで専門家に相談することを推奨します。
参考記事:【膝が痛い時の対処法】自宅で簡単!辛い痛みを改善するストレッチ3選
腓腹筋(ひふくきん)ストレッチ
膝窩筋の上には、腓腹筋(ふくらはぎの筋肉)が覆い被さっています。腓腹筋をストレッチすることで、膝窩筋の柔軟性も一緒に向上させていきましょう。
STEP1:壁に手をつきましょう
STEP2:足を大きく前方に開きます
STEP3:前方の足に体重を乗せましょう
STEP4:ふくらはぎが伸びた状態を保持します
STEP5:ゆっくりと戻し、繰り返し実施しましょう
※踵が床から離れないように注意しましょう
ボールマッサージ
膝窩筋は奥の方にあるため触ることが難しいという特徴があります。また周りの組織も硬くなりやすいです。
そこで、ボールを使って硬くなった部位を全体的に緩めていきましょう。
強く当てすぎると組織を痛める危険性があるため注意しながら行ってみてください。方法がわからない方は専門家の指示のもと行うことを推奨します。
STEP1:テニスボールを準備しましょう
STEP2:膝裏にボールを当てます
STEP3:ボールで圧迫を加えマッサージしましょう
【要注意】膝裏が痛いときにやってはいけないこと
痛みが出ると不安になり、症状がある部位を動かしたり揉んだりしたくなるでしょう。しかし、自己判断で対処すると、場合によっては症状の悪化につながることがあり危険です。
以下にやってはいけないことを紹介します。ぜひ痛みが出た際に参考にしてください。
痛みが出てすぐ無理に動かすこと
痛みが出てすぐの時期は、炎症が起きている場合もあります。その時期に無理に動かすと、症状が長引くこともあるので注意が必要です。痛みが出てから1〜3日程度は、安静にして無理な運動は避けましょう。
スポーツなどの競技者は、症状が落ち着くまでは休養を勧めますが、やむ終えず競技をする際はサポーターやテーピングなどを行い、膝の負担を軽減すると良いでしょう。
もし熱を持っているようであれば、氷嚢(氷を入れる袋)などで冷やし炎症を鎮静させることもおすすめです。2)3)
自己流でのマッサージや筋膜ローラー
炎症が落ち着いたら正しいストレッチやトレーニングを行うことで、症状の緩和や再発予防になります。
しかし、膝の周りには痛みの原因にもなる滑膜などの組織が多く存在するため、ほぐし方によっては再び痛める危険性があります。
「無理して膝を伸ばす」「強い力で膝周りを揉みほぐす」「筋膜ローラーで膝をグリグリ圧迫する」といった方法は避けるべきです。
もし、正しいストレッチ方法や加減がわからない場合は、接骨院や整骨院など専門家の指導のもと治療を行うと良いでしょう。
まとめ
今回は、膝裏の痛みに関係する膝窩筋について解説しました。
膝窩筋は非常に小さくあまり知られていない筋肉ですが、日常的によく行う膝の曲げ伸ばし動作に大きく関わる筋肉です。変形性膝関節症とも関連があり、痛みがある場合は念入りにケアをしたい部位になります。
動画を見ながら簡単に行えるストレッチを紹介しましたので、ぜひ今日から取り入れてみてください。
それでは本記事を活用し、膝裏の痛みの改善にお役立ていただけますと幸いです。
【参考文献】
1)国中優治:膝窩筋の機能と位置関係から見た膝窩部痛の発生機序,骨・関節系理学療法31,448
2)Knight KL: Effects of hypothermia on inflammation and swelling. Athl Train, 11: 7-10, 1976.
3)一般社団法人日本整形外科スポーツ医学会:スポーツ外傷の応急処置,スポーツ損傷シリーズ