肩や指の脱臼を自分で戻すのは危険?脱臼の症状と正しい処置の方法も専門家が解説

脱臼(亜脱臼)は、関節に大きな外力が加わった際に起こるケガです。
突発的な事故で関節を脱臼してしまった場合、骨を引っ張って元に戻そうとする方は多いかもしれません。しかし、脱臼への処置として、自分で関節をはめようとすることは適切なのでしょうか?

そこで本記事では、肩や指の脱臼を自分で戻しても問題はないのか、その真相を解説していきます。

また、脱臼を早く治すための対処法も紹介していますので、ぜひご参照ください。

脱臼とはどんなケガ?

肩関節のレントゲン画像

はじめに、脱臼(だっきゅう)とはどういった症状なのか把握しておきましょう。

脱臼とは、関節を構成する骨が本来の位置からずれてしまったケガです。
関節が完全に外れて骨同士が離れてしまった状態の「完全脱臼」と、部分的に関節がずれている状態の「不全脱臼(亜脱臼)」の2種類があります。

コンタクトスポーツ時の接触や交通事故での転倒など、関節が強くひねられたり、伸ばされたりした際に脱臼が発生します。

脱臼しやすい部位

脱臼の発生がもっとも多いのは「肩関節」です。可動域が広い代わりに、関節が不安定な状態になっていることが、肩関節が脱臼しやすい要因に挙げられます。

さらに肩関節脱臼のほとんどが、肩甲骨に対して上腕骨(じょうわんこつ:腕の骨)が前側にずれる「肩関節前方脱臼」だと言われています。
肩関節脱臼を説明した画像

肩以外にも「指関節」や「顎関節」「肘関節」など、関節であればどこでも脱臼する可能性はあります。

脱臼のおもな症状

患部の痛み腫れ内出血関節の機能障害(正常に動かせなくなる)が脱臼のおもな症状です。 

また、他の外傷ではみられない脱臼の特徴的な症状としては、脱臼した位置で骨が固定されて動かなくなる「弾発性固定(だんぱつせいこてい)」や、関節の「変形」などがあります。

脱臼を自分で戻しても大丈夫なのか?

肩や指などの関節を脱臼した場合、絶対に自分では元に戻そうとしないでください。
外れた骨を無理に動かそうとした結果、神経や血管など周辺の組織を傷つけてしまうおそれがあります。

また、脱臼とともに骨折をしているケースも少なくありません。損傷を広げないよう、脱臼は必ず医療機関や接骨院・整骨院など専門家にみてもらうようにしてください。

【重要】脱臼への正しい対処法・治し方

繰り返しになりますが、状態をより悪くする可能性がありますので、脱臼を自分で戻そうとしないでください。
代わりに次のような処置を行い、症状の早期改善を目指していきましょう。

できる範囲でRICE処置を行う

三角巾で腕を吊るしている人の写真

腫れや内出血を抑えるためには「RICE処置」が重要になります。
具体的には、素早く次のような対処を行ってください。

  • Rest(安静):できるだけ患部を動かさない
  • Icing(冷却):氷水や氷嚢を当てて患部を冷やす
  • Compression(圧迫):包帯やテープ、ハンカチなどを巻いて患部を圧迫する
  • Elevation(挙上):できるだけ心臓よりも高い位置に患部を挙げておく

また、三角巾を使って腕を吊るしたり、テープを貼って関節を固定したりすることで、患部の安静を保ちやすくなります。

早急に病院や接骨院・整骨院に行く

可能な範囲でRICE処置を行ったら、早めに病院や接骨院・整骨院に行ってください。

「整復(せいふく)」と呼ばれる、関節を本来の位置に修復する施術を受けることで、短期間で痛みが軽減しやすくなります。また、関節の安定性を取り戻すために、包帯を巻いて固定を施します。
患部の状態にもよりますが、肩関節脱臼であれば、固定期間はおよそ3〜6週間ほどです。

参考記事:【接骨院・整骨院のかかり方】健康保険の適用範囲と注意事項を解説

適切なストレッチ・トレーニングを行う

腫れや痛みが引いてきたら、関節の可動域を回復させるストレッチや、関節周辺の筋力を鍛えるためのトレーニングを徐々に開始していきます。

痛めた関節により、リハビリの方法が異なります。症状の早期改善と再発防止を目指すためにも、専門家(医療機関、接骨院・整骨院)に指導されたリハビリをしっかりと行うようにしましょう。

脱臼や亜脱臼を放置するとどうなる?

脱臼をそのままにした場合、内出血による腫れや周辺の筋緊張が強まることで、整復がむずかしくなってしまいます。関節がどうしても動かないときには、整復を行ううえで麻酔が必要となってしまうでしょう。

また、外れた関節が神経や血管を長い時間圧迫しますので、感覚の喪失血行障害を生じるおそれもあります。

亜脱臼の場合であれば、自然と関節が元の位置に戻るケースもあります。しかし、関節がずれることで周辺の関節包(かんせつほう)や血管などを痛めてしまいますので、症状を早く改善するには固定やリハビリなどの対処が欠かせません。

放置することで痛みを長引かせるばかりか、関節が不安定な状態で残りやすくなります。
脱臼、亜脱臼はそのままにせず、早めに医療機関や接骨院・整骨院などで適切な処置を受けるようにしましょう。

まとめ

肩や指を脱臼した場合、決して自分で元に戻そうとしないでください。専門知識を持ち合わせていない方がうかつに患部を動かすことで、損傷を広めてしまうかもしれません。

RICE処置を行いましたら、できるだけ早期に病院や接骨院・整骨院で整復や固定といった処置を受けるようにしてください。
また、脱臼は再発しやすいケガになりますので、専門家の管理のもとリハビリもしっかり行っていくことが大切です。

それでは、本記事があなたのお悩みの解決に役立てば幸いです。