「鍼灸院のカルテには何を書けばよいのか」「自費施術でも記録を残す必要があるのか」「紙と電子カルテのどちらを選ぶべきか」と迷っている院長・鍼灸師も多いのではないでしょうか。
カルテや施術録は、患者情報を保管するだけの書類ではありません。施術前後の状態や実施内容、患者への説明、次回確認する事項を継続的に記録することで、経過説明やスタッフ間の引き継ぎ、院内業務の標準化に役立ちます。
ただし、院内で一般的に「カルテ」と呼んでいる記録と、療養費の受領委任に関する「施術録」では、求められる内容や保存上の扱いが異なる場合があります。
この記事では、鍼灸院の院長・経営者、開業予定の鍼灸師、鍼灸施術を提供する複合院の経営者に向けて、記載項目や書き方、記入例、保存・管理方法、記録媒体の選び方を解説します。制度に関する最終判断は、公開時点の公的資料や所属団体、専門家の確認も踏まえて行ってください。
鍼灸院のカルテ・施術録は必要?療養費を扱う施術と自費施術の違い
結論として、鍼灸院では「すべての施術に同じ形式のカルテが一律に必要」と考えるのではなく、療養費制度上求められる記録と、院内運用のために残す記録を分けて整理することが重要です。
療養費の受領委任を扱う場合は、受領委任に係る施術録を整備し、必要事項を遅滞なく記載することが求められています。一方、自費施術についても、施術経過や説明内容を確認できる記録を残しておくと、患者対応や引き継ぎに役立ちます。

問診票・カルテ・施術録の違い
院内では複数の書類をまとめて「カルテ」と呼ぶことがありますが、それぞれの役割は異なります。
| 種類 | 主な目的 | 主な記入者 | 更新するタイミング |
| 問診票 | 主訴、既往歴、生活状況などを患者から確認する | 主に患者 | 初回来院時、情報変更時 |
| 院内カルテ | 評価、施術内容、反応、説明、次回方針を院内で共有する | 施術者・スタッフ | 初回および施術ごと |
| 施術録 | 実施した施術や経過などを所定の運用に基づいて記録する | 施術者 | 対象となる施術ごと |
問診票だけでは、施術者がどのように状態を確認し、何を実施し、どのような反応があったのかまでは分かりません。そのため、患者が記入する問診票と、施術者が継続的に更新する記録は分けて設計すると管理しやすくなります。
療養費の受領委任を扱う場合に確認すべき記録
厚生労働省の受領委任の取扱規程では、受領委任に係る施術録をその他の施術録と区別して整理し、施術に関する必要事項を遅滞なく記載することが示されています。また、対象となる施術録と同意書等の写しは、施術が完結した日から5年間保存する取扱いです。
受領委任制度は、患者から療養費の受領を委任された施術者が、患者に代わって支給申請を行う仕組みです。制度への参加状況や具体的な取扱いは、保険者等によって異なる場合があります。
したがって、「保険を使う施術ではカルテが必要」とだけ説明するのではなく、受領委任を取り扱っているか、どの保険者に請求するか、どの記録が対象になるかを確認する必要があります。
自費施術でも記録を残すメリット
自費施術では、受領委任に係る施術録と同じ取扱いがそのまま適用されるとは限りません。ただし、院内運用の観点では、施術前後の状態や患者への説明を記録しておくことが望ましいと考えられます。
初回の状態と継続施術時の変化を比較できれば、患者へ経過を説明しやすくなります。担当者が変更になった場合も、前回までの施術内容や注意事項を確認できます。問い合わせや認識の相違が生じた際に、当時の対応を振り返る資料としても役立ちます。
自費施術記録の保存期間については、受領委任に係る記録の保存期間をそのまま流用するのではなく、院内規程、契約内容、個人情報の管理方針などを踏まえて決めましょう。
鍼灸カルテに記載する基本項目
鍼灸カルテは、初回にまとめて記録する情報と、施術のたびに更新する情報を分けると運用しやすくなります。項目を増やしすぎると記録が続かなくなるため、施術方針や患者層に合わせて必須項目を決めることが大切です。

初回に記載する項目
初回は、患者基本情報、主訴、発症時期、これまでの経過、既往歴、服薬状況、アレルギー、医療機関の受診状況などを確認します。
生活や仕事上の動作が症状に関係している場合は、職種、勤務姿勢、睡眠、運動習慣なども必要な範囲で記録します。ただし、施術に関係しない情報を目的なく収集することは避け、何のために確認する情報なのかを院内で整理しておきましょう。
患者へ施術内容や注意事項を説明した場合は、説明した内容と患者の反応も残します。書面による同意を取得する運用であれば、同意日や対象となる説明書類を確認できるようにします。
毎回の施術で更新する項目
継続施術では、来院日、当日の状態、前回からの変化、確認した所見、実施した施術、施術後の反応、患者への説明、次回確認する事項を記録します。
毎回同じ文章をコピーするのではなく、その日に確認した内容を残すことが重要です。「変化なし」と記載する場合も、何を確認した結果として変化がないと判断したのかが分かるようにします。
施術に使用した部位、方法、器具などを記録する場合は、院内で表記方法を統一します。担当者によって書き方が異なると、後から検索や比較がしにくくなります。
東洋医学的な評価項目
院の方針に応じて、脈状、舌の状態、腹部、皮膚の温冷、経絡に関する所見などを記録します。徒手検査の結果や筋緊張など、西洋医学的な観点から確認した情報と併記する院もあるでしょう。
すべての項目を毎回入力する必要はありません。施術方針の決定や経過確認に使用する情報を優先し、継続して記録できる様式にします。
次回方針と注意事項の残し方
施術内容だけでなく、「次回に何を確認するか」を記録しておくと、継続施術の目的が明確になります。
たとえば、特定動作時の状態、施術後の反応、自宅で伝えた注意事項、医療機関への相談を案内した事実などです。担当者が変わる可能性がある院では、患者の希望や避けるべき対応も分かるようにします。
鍼灸カルテの書き方と記入例
カルテは、記録した本人だけでなく、別のスタッフが後から読んでも施術の流れを理解できるように書く必要があります。患者の発言、施術者が確認した事実、施術者の評価を区別することが基本です。

記録するときの基本原則
- 患者の発言は「患者申告」と分かるように記載する
- 観察した事実と施術者の評価を分ける
- 院内で定義されていない略語を使用しない
- 実施内容、反応、説明、次回方針が追える形にする
「問題なし」「いつもどおり」といった表現だけでは、具体的な状態が伝わりません。どの項目を確認し、どのような状態だったのかを簡潔に記録します。
また、鍼灸師が医師による診断と誤解されるような表現を安易に使用しないよう注意します。医療機関への受診を勧めた場合は、その理由を断定的に書くのではなく、確認した状態と案内した内容を分けて残します。
初回カルテの記入例
以下は、記録形式を示すための架空例です。特定の施術方法や効果を推奨するものではありません。
患者情報
40代、デスクワーク。氏名・住所などは院内の患者基本情報欄で管理。
主訴
患者申告:「右肩周辺の重さが続き、腕を上げると気になる」
発症時期・経過
約1か月前から気になり始めた。業務が忙しい日に強く感じる。医療機関の受診状況を確認済み。
既往歴・服薬・注意事項
既往歴、服薬状況、アレルギーの有無を問診票と口頭で確認。
初回評価
姿勢、動作時の状態、左右差、圧痛や筋緊張など、院内で定めた項目を確認。患者の訴えと施術者が確認した所見を分けて記載。
実施した施術
実施部位、使用した方法・器具、刺激量などを院内様式に沿って記録。
施術後の反応
施術直後の患者申告と、再確認した動作の状態を記録。効果を断定せず、確認できた事実を残す。
説明・次回方針
施術後に起こり得る反応、自宅での注意事項、次回来院時に確認する動作を説明。
初回カルテでは、主訴から施術までの流れだけでなく、なぜその項目を確認したのかが分かるようにします。
継続施術時の記入例
来院時の状態
患者申告:「前回当日は軽く感じた。翌日は元に戻ったように感じた」
前回からの変化
腕を上げる動作について、前回と同じ条件で確認。仕事中に気になる時間帯も聞き取った。
当日の施術内容
前回の反応を踏まえ、実施した部位と内容を記録。前回と変更した点があれば理由も残す。
施術後の反応・説明
施術前後で同じ動作を確認。患者へ伝えた内容と、次回までに確認してもらう事項を記載。
継続施術では、前回との比較が重要です。同じ施術を行った場合でも、当日の状態や反応を確認せず、前回の文章をそのまま複製する運用は避けましょう。
担当者が変わる場合の記録例
担当者変更時は、前回までの施術内容だけでなく、禁忌・注意事項、刺激に対する反応、患者の希望、説明済みの内容、次回確認する事項を明確にします。
たとえば、「前回は施術後に一時的なだるさを申告」「強い刺激を避けたいとの希望あり」「次回は起床時の状態を確認」と記載されていれば、新しい担当者も必要な情報を確認したうえで対応できます。
会話内容を残す場合も、施術や患者対応に必要な範囲に限定します。患者の私生活に関する情報を、目的なく詳細に記録しないようにしましょう。
記載を訂正・追記するときの注意点
紙カルテを訂正する場合は、元の記録が読めなくなる方法で消去せず、訂正内容と訂正者、訂正日を確認できる運用にします。修正液などで元の記録を完全に隠すと、修正前の内容を確認できません。
電子カルテでは、上書き後も修正履歴が残るかを確認します。追記日時、追記者、変更前後の内容を確認できる機能があると、複数スタッフで運用する際の管理がしやすくなります。
紙・Excel・電子カルテの違い
紙、Excel・スプレッドシート、電子カルテには、それぞれ利点と注意点があります。費用だけで決めるのではなく、検索性、共有方法、権限管理、バックアップ、修正履歴まで含めて比較しましょう。

| 比較項目 | 紙カルテ | Excel・スプレッドシート | 電子カルテ |
| 費用 | 用紙・保管設備が必要 | 導入費を抑えやすい | 初期費用・月額費用が発生する場合がある |
| 入力・検索 | 手書きしやすいが検索に時間がかかる | 項目設計により検索可能 | 患者検索や履歴確認がしやすいものが多い |
| 共有・権限 | 同時閲覧しにくい | 共有設定を誤るリスクがある | スタッフ別の権限設定が可能な製品がある |
| 保管・バックアップ | 保管場所と災害対策が必要 | 複製・バックアップのルールが必要 | 提供会社の保存方法と院側の責任範囲を確認 |
| 修正履歴 | 訂正跡を残す運用が必要 | 上書きで履歴が失われる場合がある | 変更履歴を確認できる製品がある |
| 画像・他システム連携 | 別管理になりやすい | ファイル管理が複雑になりやすい | 画像、予約、会計等と連携できる場合がある |
| 主なリスク | 紛失、持ち出し、災害、判読困難 | 誤削除、共有範囲、個人アカウント利用 | 不正アクセス、障害、端末紛失、移行困難 |
紙カルテが向いている院
紙カルテは、手書きで身体図や所見を書き込みたい場合や、現在の運用を大きく変えずに記録様式を整えたい場合に選択肢になります。
一方で、保管場所の確保、検索の手間、持ち出し管理、廃棄方法を決めなければなりません。スタッフ数が少ないという理由だけで紙を選ぶのではなく、将来の患者数や保管量も考慮します。
Excel・スプレッドシートを使う場合の注意点
Excelやスプレッドシートは、項目を自院で設計しやすく、初期費用を抑えやすい方法です。ただし、無料または低価格で使えることと、患者情報を安全に管理できることは別の問題です。
個人アカウントで共有していないか、閲覧者を限定できているか、退職者のアクセスを停止できるか、誤削除時に復元できるかを確認します。ファイルを端末内やUSBメモリに保存する場合は、紛失や持ち出しへの対策も必要です。
同時編集による上書きや、患者ごとにファイルが分散する運用にも注意しましょう。
電子カルテが向いている院
電子カルテは、患者数が多い院、複数スタッフで記録を共有する院、複数拠点から情報を確認したい院に適している場合があります。
検索、画像管理、予約・会計との連携などにより業務を整理できる可能性がありますが、導入すれば自動的に安全になるわけではありません。アカウント管理、端末の保護、バックアップ、障害時の対応、契約終了時のデータ移行を確認する必要があります。
自院に合ったカルテの選び方
記録媒体を選ぶ前に、自院で何を記録し、誰がどの場面で閲覧・編集するのかを整理しましょう。機能数の多さよりも、院内の記録ルールに合っているかが重要です。

選定前に整理する院内要件
まず、スタッフ数と拠点数、月間の患者数、現在の保管量を確認します。そのうえで、画像・動画を扱うか、身体図への書き込みが必要か、予約・会計・患者管理との連携を求めるかを整理します。
操作に不慣れなスタッフがいる場合は、入力の分かりやすさやサポート体制も重要です。入力項目が多すぎるシステムを選ぶと、記録時間が増え、必要な情報が未入力になる可能性があります。
電子カルテ選定時のチェック項目
- テンプレートを編集でき、鍼灸院で使う記録項目や身体図を設定できるか
- スタッフ別の閲覧・編集権限を設定でき、修正履歴を確認できるか
- 患者情報を出力でき、契約終了時や他システム移行時に利用できるか
- バックアップ方法と障害時の復旧手順が明確になっているか
- 予約・会計等との連携可否と、導入後のサポート窓口を確認できるか
特にデータ出力は、導入時には見落としやすい項目です。解約時にどの形式で、どの範囲のデータを受け取れるかを契約前に確認しましょう。
クラウド型とオンプレミス型の選び方
クラウド型は、インターネットを通じてサービスを利用する方式です。院外や複数拠点から利用しやすい一方、通信障害時の運用や提供会社の管理体制を確認する必要があります。
オンプレミス型は、院内などにサーバーやシステムを設置して運用する方式です。個別の構成に合わせやすい場合がありますが、導入・保守費用や、バックアップ・障害対応を担う体制が必要です。
「個人院はクラウド、多店舗はオンプレミス」と単純に分けることはできません。費用、外部アクセスの必要性、院内のIT担当者、システム連携、バックアップの責任範囲を踏まえて選びます。
カルテの保存・個人情報管理で注意すること
カルテには、氏名や連絡先だけでなく、身体の状態、既往歴、服薬状況などの情報が含まれます。紙か電子かにかかわらず、閲覧できる人を限定し、紛失・漏えい・消失を防ぐ管理が必要です。

保存期間は対象となる記録と根拠を確認する
受領委任に係る施術録と同意書等の写しについては、厚生労働省の取扱規程で、施術が完結した日から5年間保存することが示されています。(厚生労働省)
ただし、この「5年間」を自費施術を含むすべての院内カルテへ一律に適用できると断定することは避けましょう。自費施術の記録については、適用される法令、所属団体の規程、患者との契約、問い合わせ対応上の必要性などを踏まえて、院内の保存方針を決めます。
保存期間を定める際は、起算日、廃棄の承認者、廃棄方法、保存期間を延長する条件も規程に含めておくと運用しやすくなります。
紙カルテの保管ルール
紙カルテは、施錠できる場所に保管し、閲覧できるスタッフを限定します。受付や施術スペースに放置せず、院外への持ち出しは原則禁止または承認制にします。
保存期間を終えたカルテを廃棄するときは、一般ごみにそのまま出さず、内容を復元できない方法を選びます。水害や火災に備え、保管場所や重要書類の複製方針も検討しましょう。
電子カルテの権限・バックアップ管理
個人情報保護委員会の医療・介護関係事業者向けガイダンスでは、個人データの漏えい・滅失・毀損を防ぐため、組織的、人的、物理的、技術的な安全管理措置を講じることが示されています。ID・パスワード等による認証、業務に応じたアクセス制御、アクセス記録の保存なども対策例として挙げられています。(PPC)
院内では、次のような運用を組み合わせます。
- スタッフごとにアカウントを発行し、IDとパスワードを共有しない
- 受付・施術者・管理者で閲覧または編集できる範囲を分ける
- 端末ロックや多要素認証を設定し、院外持ち出しのルールを決める
- 退職・異動時にアカウントを速やかに停止する
- バックアップの頻度、保存先、復旧方法を定期的に確認する
バックアップは、保存しているだけでなく、必要なときに復元できるかを確認することが重要です。障害時に紙で仮記録するのか、復旧後に誰が入力するのかも決めておきましょう。
写真・動画を保存するときの注意点
姿勢や動作の確認を目的として写真・動画を撮影する場合は、撮影目的、使用範囲、保存場所、閲覧者、保存期間を患者に説明します。
施術記録として取得した画像を、WebサイトやSNS、症例紹介へ二次利用する場合は、院内記録とは利用目的が異なります。本人を識別できない加工を行う場合も含め、公開方法と同意取得について専門家の確認を受けましょう。
患者フォローに情報を使う場合の注意点
カルテに記録された連絡先や施術内容を、来院後の体調確認などに利用する場合は、院内で定めて公表した利用目的の範囲内かを確認します。
個人情報保護委員会のガイダンスでは、個人情報の利用目的を患者へ分かりやすく説明し、個人情報の取扱規則や責任体制を整備することが求められています。(PPC)
施術に関する連絡と、キャンペーンや割引案内などの販促連絡を同じものとして扱わないようにしましょう。利用目的、連絡手段、配信停止方法を明確にし、必要に応じて同意を取得します。
カルテ運用を院内に定着させる手順
記録様式や電子カルテを導入しても、スタッフごとに記載内容が異なれば、必要な情報を共有できません。導入前に最低限のルールを決め、運用開始後に見直すことが大切です。

記録ルールを決める
- 誰が記載し、施術後いつまでに入力するか
- 初回と継続施術で必須とする項目は何か
- 使用できる略語と記載表現をどう統一するか
- 訂正・追記を誰がどの方法で行うか
- 未記入、誤入力、情報漏えいがあった場合に誰へ報告するか
記載期限は「時間があるとき」ではなく、「原則として施術終了後」「当日の営業終了まで」など、実行できる基準にします。
スタッフ間で記載方法を統一する
新人研修やシステム導入時には、操作方法だけでなく、良い記入例と不十分な記入例を共有します。
たとえば、「変化なし」という記載だけでは不十分であり、「前回確認した動作について患者申告と施術者所見の双方に大きな変化なし」のように、確認した項目が分かる形へ統一します。
定期的な記録確認は、個人のミスを責めるためではなく、情報の抜けや表現のばらつきを減らす目的で実施します。
導入後に見直す
運用開始後は、入力に時間がかかりすぎていないか、不要な項目が多くないか、担当者変更時に内容を理解できるかを確認します。
入力されない項目が続く場合は、スタッフの意識だけを問題にせず、その項目が本当に必要か、入力場所が分かりにくくないかを見直しましょう。
電子カルテの場合は、権限設定、退職者アカウント、バックアップ、データ出力手順も定期的に確認します。
カルテを施術品質と患者対応に活用する方法
カルテは保管すること自体が目的ではありません。継続的に記録した情報を、患者への経過説明、担当者間の共有、再評価に活用することで、院内の対応をそろえやすくなります。

症状や反応の変化を説明する
患者へ経過を説明するときは、初回来院時の状態、患者の発言、確認した動作、施術後の反応を時系列で振り返ります。
「良くなっています」と一方的に評価するのではなく、「初回はこの動作で気になっていましたが、今回はここまで動かせるとお話しされています」のように、患者自身が確認できる情報を使って説明します。
カルテの記録は、施術効果を保証するためではなく、患者と現状認識を共有するために使用します。
スタッフ間の引き継ぎに活用する
複数スタッフが勤務する院では、患者の希望、注意事項、前回の反応、説明済みの内容、次回確認する事項を共有します。
単に使用した部位や方法だけを残しても、なぜその対応を行ったのかが分からない場合があります。施術者の判断過程を簡潔に記録することで、担当者が変わっても対応の一貫性を保ちやすくなります。
再評価と施術方針の見直しに活用する
一定期間ごとに初回評価と現在の状態を比較します。施術を継続すること自体を目的にせず、患者が求める状態に近づいているか、評価方法や説明内容を見直す必要がないかを確認します。
医療機関への相談を案内した場合は、案内した日、確認した状態、患者へ伝えた内容を記録します。
患者フォローに活用する
来院後の体調確認や、自宅での注意事項の案内にカルテを活用する方法もあります。ただし、施術目的で取得した情報を、そのまま販促連絡に使えるとは限りません。
フォローの目的と送信内容を定め、患者が連絡を希望しない場合の停止方法を用意しましょう。記録を活用することで説明や継続支援の質を整えられる可能性はありますが、再来院や売上の向上を保証するものではありません。
鍼灸カルテに関するよくある質問

鍼灸院のカルテと施術録は同じものですか
院内では同じ意味で使われることがありますが、必ずしも同一ではありません。カルテは患者情報や評価、施術内容をまとめた院内記録の総称として使われることがあります。一方、施術録は、療養費制度など特定の運用における記録を指す場合があります。記事や院内規程では、どちらを指しているのかを明確にしましょう。
問診票とカルテには何を分けて書けばよいですか
問診票には、患者が把握している主訴、既往歴、服薬状況、生活状況などを記入してもらいます。カルテには、問診で確認した内容に加え、施術者が確認した所見、実施内容、施術後の反応、説明、次回方針を記録します。
自費施術だけでもカルテを作成した方がよいですか
院内運用の観点では、作成を検討する価値があります。初回からの経過確認、患者への説明、スタッフ間の引き継ぎ、問い合わせ時の確認に役立つためです。ただし、記録する項目や保存期間は、自院の施術内容と管理方針に合わせて設計してください。
施術録は何年間保存すればよいですか
受領委任に係る施術録と同意書等の写しは、厚生労働省の取扱規程で、施術が完結した日から5年間保存することが示されています。自費施術の院内記録など、別の記録へ一律に適用できるとは限らないため、対象と根拠を確認してください。(厚生労働省:はり師、きゅう師及びあん摩マッサージ指圧師の施術 に係る療養費に関する受領委任の取扱いについて PDF)
Excelやスプレッドシートで管理してもよいですか
利用自体だけで可否を判断するのではなく、共有範囲、閲覧権限、修正履歴、バックアップ、個人アカウントの使用、退職者のアクセス停止などを確認する必要があります。患者情報を扱う環境として十分かを評価したうえで使用しましょう。
紙カルテを電子化するときは何に注意すべきですか
移行対象となる期間と項目、紙の原本を残す期間、画像の読みやすさ、患者との紐付け、移行後の閲覧権限を決めます。電子化後に紙を廃棄する場合は、制度上の保存要件や証拠性について専門家へ確認してください。
カルテを訂正するときはどうすればよいですか
元の記録を確認できる状態を保ち、訂正日、訂正者、訂正内容が分かるようにします。電子カルテでは、変更履歴や追記者を確認できるかが重要です。療養費に関する施術録の訂正方法は、最新の取扱いも確認してください。
電子カルテはどの機能を基準に選べばよいですか
テンプレートの編集、身体図・画像管理、スタッフ別権限、修正履歴、バックアップ、障害時対応、データ出力、既存システムとの連携を確認します。特に、解約時に患者情報をどの形式で取り出せるかは契約前に確認しましょう。
まとめ

鍼灸院のカルテは、単に患者情報を保存するためではなく、施術内容、反応、説明、次回方針を継続的に記録し、患者対応と院内連携を支えるための基盤です。
療養費の受領委任を扱う場合は、対象となる施術録の記載・保存方法を公的資料に基づいて確認する必要があります。自費施術についても、経過説明や引き継ぎに必要な範囲で記録項目と保存方針を定めましょう。
紙、Excel、電子カルテのどれが適しているかは、院の規模だけでは決まりません。記録項目、利用者、権限管理、バックアップ、データ移行まで整理したうえで、自院に合う方法を選ぶことが大切です。