接骨院・整骨院で保険施術を扱う場合、毎月のレセプト作成は経営や資金繰りにも関わる重要な業務です。一方で、患者情報の入力ミス、負傷原因と施術録の不一致、署名や添付書類の不足などにより、返戻や確認照会が発生することもあります。
正確に請求するには、算定項目を覚えるだけでは十分ではありません。受付時の資格確認から施術録の記載、柔道整復施術療養費支給申請書の作成、提出前点検までを、一連の院内業務として管理することが重要です。
本記事では、接骨院のレセプトの意味、健康保険を請求できる施術、請求前に必要な手続き、毎月の作成・提出の流れ、主な算定項目、返戻を防ぐ確認方法を解説します。開業準備中の方、初めて請求業務を担当する方、院内の業務を標準化したい経営者・施術管理者に向けた内容です。
なお、柔道整復施術療養費の算定基準や申請様式は改定されることがあります。本記事は2026年7月時点の厚生労働省資料を基にしていますが、実際の請求時には、最新の通知、疑義解釈、管轄の地方厚生局、保険者、加入している請求団体などの案内を確認してください。2026年7月施術分からは、初検料・再検料、多部位の取扱い、明細書などに関する改定が適用されています。
接骨院のレセプトとは
接骨院で一般に「レセプト」と呼ばれているものは、主に柔道整復施術療養費支給申請書を指します。患者が加入している健康保険へ療養費を請求するために、患者情報、保険資格、負傷名、施術日、施術内容、算定額などを記載する書類です。

柔道整復施術療養費支給申請書との関係
厚生労働省が示す正式な様式名は「柔道整復施術療養費支給申請書」です。受領委任用は様式第5号、患者自身が請求する償還払い用は様式第5号の2として掲載されています。
このほか、請求時には支給申請総括票が必要になる場合があります。患者に交付する書類には、領収証、明細書、領収証兼明細書、月まとめの意思確認様式などがあります。使用する様式は、厚生労働省が掲載する最新ファイルと照合することが大切です。(厚生労働省)
病院・診療所のレセプトとの違い
病院や診療所でいうレセプトは、一般に診療報酬明細書を意味します。一方、接骨院・整骨院の保険請求では、柔道整復施術療養費支給申請書を使用します。
どちらも保険者への請求に用いる書類ですが、根拠となる制度、記載項目、算定基準、請求の仕組みは同じではありません。院内マニュアルを作成するときは、医療機関の診療報酬請求で使われる用語を、そのまま柔道整復の請求業務へ当てはめないようにしましょう。
受領委任による保険請求の基本
療養費は、患者が施術費用をいったん全額支払い、後から保険者へ請求する償還払いが原則です。ただし、柔道整復では一定の手続きを行った施術管理者が患者から委任を受け、患者に代わって保険者へ請求する「受領委任」が認められています。
受領委任を利用する場合、患者は窓口で一部負担金を支払い、残りの金額を施術管理者が保険者へ請求します。患者に代わって請求するため、支給申請書の署名など、受領委任に必要な手続きも適切に行わなければなりません。(厚生労働省:柔道整復師等の施術にかかる療養費の取扱いについて)
接骨院で健康保険を請求できる施術・できない施術
レセプトを作成する前に、施術が療養費の支給対象となり得るかを確認する必要があります。症状名だけで判断するのではなく、負傷原因、外傷性、発生時期、他の医療機関での受療状況などを聴取し、施術録へ具体的に残すことが重要です。

保険請求の対象となる負傷の基本
接骨院・整骨院では、骨折、脱臼、打撲、捻挫などに対する施術が保険の対象となり得ます。いわゆる肉離れについても、挫傷として対象となる場合があります。
ただし、「足が痛い」「腰が痛い」といった症状だけでは、請求可否を判断できません。いつ、どこで、何をして、どのように負傷したのかを確認し、外傷性の負傷として説明できる状態にしておく必要があります。
慢性的な肩こり・腰痛など対象外となるケース
単なる肩こり、筋肉疲労、慢性的な痛み、慰安や疲労回復を目的とする施術は、柔道整復施術療養費の対象にはなりません。
ただし、「腰痛」という言葉だけで一律に対象外と判断するものでもありません。転倒や急な動作など、具体的な負傷原因がある場合には、捻挫や挫傷として個別に確認する必要があります。症状名ではなく、負傷の経緯と施術所見を基に判断してください。
骨折・脱臼や重複受療で確認が必要なケース
骨折・脱臼は、緊急時の応急施術を除き、原則として施術を継続する前に医師の同意が必要です。同意を得た日、医師名、医療機関名などは施術録と支給申請書の摘要欄へ適切に記載します。
また、同じ負傷について病院・診療所で治療を受けている期間は、接骨院で施術を行っても療養費の対象にならない場合があります。受付時に他院受診の有無を確認し、途中で受診先が変わった場合も情報を更新しましょう。
レセプト請求を始める前に必要な手続き
接骨院を開業しただけでは、受領委任による保険請求を始められません。制度上の申出や届出に加え、資格確認、施術録、レセコン、院内の役割分担を準備する必要があります。

受領委任の取扱いに必要な手続きを確認する
受領委任を取り扱う場合は、施術所所在地を管轄する地方厚生局などへ、所定の申出を行います。必要となる書類や提出方法は、施術所の形態、団体への加入状況、開設者と施術管理者の関係などによって異なります。
たとえば、個人で申し出る場合には、受領委任の取扱いに係る申出書、確約書、施術所開設届の写し、柔道整復師免許証の写し、施術管理者研修修了証の写し、実務経験を確認する書類などが求められます。書類名や提出先を過去の記事から転記せず、施術所所在地を管轄する地方厚生局の最新案内を確認してください。(地方厚生局:柔道整復師の施術に係る療養費の受領委任に関する申し出等)
施術管理者の要件と届出書類を確認する
受領委任の申出は、原則として施術管理者が行います。施術管理者には、研修の受講や実務経験など所定の要件があります。
開設者と施術管理者が異なる場合、複数の施術所を管理する場合、勤務する柔道整復師が変更になった場合などは、追加書類や変更手続きが必要になることがあります。開業時だけでなく、住所、施術所名、管理者、勤務者に変更があったときにも、届出の要否を確認しましょう。
オンライン資格確認に対応する
受領委任を取り扱う施術所では、2024年12月2日以降、オンライン資格確認の導入が原則として必要です。ただし、一定のやむを得ない事由に該当する施術所は、義務化の対象外となる場合があります。
「すべての施術所で例外なく義務」とはせず、自院が対象外要件に該当するか、適用期間を含めて最新資料を確認してください。対象外に該当しないにもかかわらず未導入の場合は、管轄機関から個別の働きかけなどが行われる可能性があります。
レセコン・施術録・院内担当者を準備する
レセコンを導入しても、受付情報や施術録が不正確であれば、正しい申請書は作成できません。請求開始前に、患者情報をどこへ登録するか、負傷原因を誰が確認するか、月末点検を誰が行うかを決めておきましょう。
受付担当は資格情報と患者基本情報、施術者は負傷原因・所見・施術内容、請求担当は申請書作成と添付書類、施術管理者は最終確認と請求責任を担う形が基本です。小規模院で一人が複数業務を担当する場合も、工程ごとの確認者を明確にすると見落としを防ぎやすくなります。
接骨院のレセプトを作成・請求する流れ
レセプト業務は、月末に申請書を出力する作業だけではありません。初回来院時の資格確認から、提出後の入金・返戻確認までを、一つの業務フローとして管理します。

| タイミング | 主担当 | 主な作業・使用情報 | 確認ポイント |
| 初回来院時 | 受付・施術者 | 本人・資格情報、負傷原因、他院受診歴を確認 | 氏名、生年月日、資格取得日、負傷経緯 |
| 毎回来院時 | 受付 | 資格変更と受療状況を確認 | 転職、扶養変更、保険者変更、他院受診 |
| 施術直後 | 施術者 | 所見、施術部位、施術内容を施術録へ記載 | 申告内容との整合、記載日の漏れ |
| 月中 | 請求担当 | 施術録を基にレセコンへ請求情報を入力 | 部位、施術日、算定項目、摘要 |
| 月末 | 請求担当 | 支給申請書を作成し、署名・添付を確認 | 最新様式、署名、医師同意、理由書 |
| 提出前 | 施術管理者 | 施術録、申請書、総括票を最終点検 | 資格・負傷・算定・合計額の一致 |
| 提出後 | 請求担当・施術管理者 | 提出、入金照合、返戻・照会への対応 | 未入金、返戻理由、再提出期限 |
1.受付時に患者情報と資格情報を確認する
初回来院時は、氏名、生年月日、住所、保険資格などを確認します。オンライン資格確認を行った場合も、患者の申告内容と画面上の情報に相違がないか確認してください。
毎回すべてを登録し直す必要はありませんが、転職、退職、扶養変更、住所変更などが生じていないか、定期的に声をかける運用が必要です。
【ケース例:資格情報の更新漏れ】
月初に転職した患者について、前月までの資格情報のまま請求すると、資格喪失を理由に返戻される可能性があります。受付時に「健康保険や勤務先に変更はありませんか」と確認し、変更がある場合は施術前に登録情報を更新します。
2.負傷原因と施術内容を施術録に記載する
負傷原因は、「自宅で」「階段を踏み外し」「右足首をひねった」のように、場所、動作、負傷に至った状況が分かるように記載します。
2026年7月の疑義解釈でも、負傷原因について、どこで、どうして、どうなったかが分かる記載が示されています。請求上の記載が必要となるケースだけでなく、施術録には受付時から具体的に残しておくと、月末の確認がしやすくなります。
【ケース例:記載内容が一致しない】
問診票には「自宅の階段で転倒」とある一方、施術録には「歩行中に負傷」、支給申請書には「運動中」と記載されている場合、負傷原因の整合性を説明できません。入力時に推測で補わず、患者への再確認と施術者の記録修正を行います。
3.施術録をもとに請求情報を入力する
請求情報は、記憶や予約履歴ではなく、施術録を基に入力します。負傷名、負傷年月日、施術日、施術部位、施術内容、転帰、医師同意、往療の理由などを照合してください。
レセコンに警告機能があっても、入力された負傷原因や医師同意の内容まで自動で正否を判断できるとは限りません。自動チェックと人による確認を組み合わせることが重要です。
4.療養費支給申請書を作成する
月内の施術情報を確定したら、柔道整復施術療養費支給申請書を作成します。患者情報、資格情報、負傷名、施術日、算定額、摘要欄、施術管理者情報などが最新様式の項目と一致しているか確認します。
2026年7月施術分からは新しい申請書様式の使用が望ましいとされています。従前様式を修正して使用できる経過的な取扱いも示されていますが、レセコンや印刷設定を含め、原則として最新様式への切り替えを進めましょう。
5.患者の署名と添付書類を確認する
受領委任では、患者に代わって施術管理者が請求するため、支給申請書の署名など、患者の意思を確認する手続きが必要です。内容を確認してもらわないまま、施術所側が一律に署名を代行する運用は避けてください。
骨折・脱臼の医師同意、長期施術継続理由書、施術情報提供書の写しなど、請求内容に応じた添付書類も確認します。必要書類は算定項目や個別事情で異なるため、院内で「どの条件なら何を添付するか」を整理しておくと安全です。
6.提出前に請求内容を点検する
提出前点検では、申請書だけを見るのではなく、資格確認結果、問診票、施術録、同意情報、添付書類と照合します。
特に、患者氏名、生年月日、保険者情報、負傷原因、負傷年月日、施術部位、施術日数、摘要欄、署名、合計額を重点的に確認します。前月データを複製して作成する場合は、治癒・中止した部位や資格変更が残っていないかにも注意が必要です。
7.保険者・請求団体等へ提出する
支給申請書の提出先や提出方法は、保険者へ直接請求するか、柔道整復師会などの請求団体を通すかによって異なります。締切日、総括票の作成方法、並べ方、添付書類の扱いも提出ルートごとに確認してください。
正当な理由なく請求を遅らせることは認められないとする取扱いも示されています。月末に一人へ作業が集中しないよう、月中から不備を確認する運用にしておきましょう。
8.入金結果と返戻の有無を確認する
提出後は、入金額と請求額を照合し、返戻、査定、保険者からの照会がないか確認します。返戻が届いた場合は、理由を確認し、申請書だけでなく元となった受付情報や施術録までさかのぼって修正します。
同じ理由の返戻が繰り返される場合は、担当者個人の注意不足として終わらせず、入力画面、受付質問、点検表、承認工程のどこに原因があるかを分析してください。
【ケース例:初回来院から月末提出まで】
架空の患者Aさんが月初に足関節を負傷して来院した場合、受付で資格情報と他院受診の有無を確認し、施術者が負傷原因と所見を施術録へ記載します。月中は来院ごとに施術日と内容を記録し、月末に請求担当が支給申請書を作成します。患者の署名、算定内容、施術録との整合を施術管理者が確認した後、所定の提出先へ提出します。
レセプトに記載・確認する主な項目
支給申請書を正確に作るには、「どの項目を入力するか」だけでなく、「何と照合するか」を決めておく必要があります。

患者情報・保険資格情報
氏名、生年月日、住所、保険者情報などは、資格確認結果と患者の申告内容を照合します。漢字の字体、家族区分、資格取得・喪失日なども返戻の原因になりやすいため、変更があった月は特に注意してください。
負傷名・負傷原因・負傷年月日
負傷名は施術者の評価と一致させ、負傷原因は問診票・施術録・支給申請書で表現が食い違わないようにします。複数部位を請求する場合は、どの動作でどの部位を負傷したのかを区別できるよう記録します。
施術日・施術部位・施術内容
来院日と実際に施術を行った日が一致しているかを確認します。予約だけが入っていた日、キャンセル日、自費施術のみを行った日を、保険施術日として入力しないようにしてください。
算定額・摘要欄・添付書類
時間外施術、往療、医師同意、長期施術など、補足説明が必要な項目は摘要欄へ記載します。申請書の記載だけで足りるのか、理由書や紹介書の写しが必要なのかも確認します。
患者署名・施術管理者情報
患者署名は、患者が請求内容を確認したうえで行うことが基本です。施術管理者の氏名、登録記号番号、施術所情報なども、届出内容と一致しているか確認します。
接骨院の主な算定項目と注意点
算定項目は、それぞれに対象となる場面と条件があります。金額だけをレセコンへ登録するのではなく、算定できる理由と施術録上の根拠を説明できる状態にしておきましょう。

| 算定項目 | 主な対象場面 | 申請書・施術録上の注意 | 2026年7月時点の確認事項 |
| 初検料・再検料 | 初検時、初検後の後療 | 過去の治癒・中止日、同一施術所での受療歴を確認 | 初検料の3月ルール、再検料を算定できる後療日が改定 |
| 初検時相談支援料・時間外等加算 | 初検時の説明、時間外・休日・深夜の施術 | 説明内容や時間外施術に至った経緯を記録 | 初検料に代えて再検料を算定する場合の記載方法に注意 |
| 骨折・脱臼・打撲・捻挫等 | 負傷の種類に応じた整復・固定・施療・後療 | 負傷原因、応急施術、医師同意を明確にする | 骨折・脱臼は応急時以外の医師同意を確認 |
| 往療・罨法・電療 | 通院困難時の往療、温冷罨法、電気施術 | 往療が必要な理由、実施日、併算定条件を記録 | 患者希望のみの往療や単独算定の可否を確認 |
| 固定材料・施術情報提供・運動後療 | 固定材料の使用、医療機関への紹介、機能回復支援 | 使用日、交換日、紹介書の写し、実施内容を保存 | 算定日、回数、対象負傷、添付書類を最新通知で確認 |
| 複数部位・近接部位 | 複数の負傷部位を施術 | 各部位の負傷原因、治癒日、施術部位数を照合 | 2部位目にも逓減が導入。4部位目以降の一部料金は3部位目までに含む |
| 長期施術・明細書等 | 3月を超える施術、明細書の交付 | 継続理由、負傷部位、症状、患者の月まとめ意思を記録 | 長期理由書、明細書発行加算、月まとめ様式を確認 |
2026年7月施術分から、初検料は、負傷が治癒した日または患者が任意に施術を中止した日の翌日から起算して3月内に、同じ施術所で施術を行った場合、当初と異なる負傷・部位であっても原則として算定できない取扱いとなりました。再検料は、初検料を算定した初検後の初回および2回目の後療日に算定する仕組みに変更されています。個別ケースや経過措置は、改定通知と疑義解釈で確認してください。(厚生労働省:「柔道整復師の施術に係る療養費の算定基準の実施上の 留意事項等について(通知)」の一部改正について PDF)
複数部位では、2026年7月から2部位目の後療料にも逓減が導入されました。疑義解釈では、新様式への移行まで従前様式を修正する場合、2部位目の逓減率欄を「80」、多部位欄を「0.8」とする方法が示されています。複数部位を請求する場合は、レセコンのマスターと申請書様式が改定後の設定になっているか確認しましょう。
初回に確認する算定項目
初回は、初検料、初検時相談支援料、整復料・固定料・施療料、時間外等の加算などを確認します。初検料については、過去の施術終了日や中止日を確認し、従来の「1か月空けば再び初検として扱う」という認識のまま請求しないよう注意が必要です。
2回目以降に確認する算定項目
後療日には、再検料、後療料、罨法料、電療料などを確認します。再検料は2026年改定で算定対象日が変更されているため、レセコンの設定だけでなく、施術録の日付と照合してください。
骨折・脱臼に関する算定
骨折・脱臼では、応急施術か、医師の同意を得た後療かを区別します。同意を得た場合は、同意日、同意した医師、医療機関などを施術録と摘要欄へ記載します。
施術情報提供料や固定材料に関する加算を算定する場合は、紹介書の交付日、医療機関の受診結果、固定材料の使用・交換日など、算定の根拠となる情報を残してください。
往療・罨法・電療・運動後療等の算定
往療料は、患者の希望だけで出張施術を行った場合に算定できるものではありません。通院が困難である理由と、往療の必要性を施術録へ記載します。
罨法料、電療料、運動後療料には、対象負傷、実施時期、併算定、実施内容などの条件があります。旧記事やレセコン内の説明文だけで判断せず、改定後の算定基準を確認してください。
複数部位・近接部位・長期施術の注意点
複数部位を請求する場合は、各部位について具体的な負傷原因を確認し、施術の経過と治癒日を部位ごとに管理します。近接部位は、すべてを独立した部位として算定できるとは限りません。
打撲・捻挫の施術が初回の施術日から3月を超えて継続する場合は、負傷部位、症状、施術継続が必要な理由を明らかにした長期施術継続理由書を添付する取扱いが示されています。
【ケース例:長期施術理由の確認】
架空の患者Bさんについて、同じ負傷部位の施術が3月を超える場合、「痛みが残るため」のような抽象的な記載だけで済ませず、現在の症状、日常生活への影響、施術継続が必要と判断した理由を施術録と理由書で整合させます。支給可否は保険者等の判断を含むため、「理由を書けば必ず支給される」とは限りません。
医師の同意・施術情報提供に関する注意点
医師の同意が必要な施術では、口頭同意か書面同意か、同意の範囲、同意日などを確認します。施術情報提供料については、応急施術後に医療機関への受診が必要と判断し、患者が実際に受診したことなど、所定の条件があります。
レセプトの返戻を防ぐ提出前チェックリスト
返戻防止では、請求担当だけに確認を任せないことが重要です。受付、施術者、請求担当、施術管理者が、自分の工程で情報を完成させる運用にします。

受付担当が確認する項目
- 患者氏名、生年月日、住所、資格情報に相違がない
- 資格取得・喪失、転職、扶養変更の有無を確認した
- 同じ負傷に関する医療機関・他施術所の受療状況を確認した
- 患者の署名や月まとめの意思確認が必要な箇所を案内した
施術者が確認する項目
- 負傷年月日と具体的な負傷原因を施術録に記載した
- 負傷名、施術部位、所見、施術内容が整合している
- 骨折・脱臼の医師同意や応急施術の経過を記録した
- 長期施術、往療、加算などの算定根拠を記録した
請求担当・施術管理者が確認する項目
- 資格情報、施術録、支給申請書の内容が一致している
- 初検料・再検料と複数部位の設定が改定後の基準に合っている
- 摘要欄、患者署名、医師同意、添付書類に漏れがない
- 最新様式、総括票、提出先ごとの並べ方・締切を確認した
- 請求額と提出後の入金額を照合できる状態にした
返戻された場合の確認手順
返戻が届いたら、まず返戻理由と対象患者、対象月を確認します。次に、支給申請書と施術録、資格情報、添付書類を照合し、修正してよい箇所と患者・施術者への再確認が必要な箇所を分けます。
修正後は所定の方法で再提出し、院内では返戻理由を記録します。同じ原因が複数回発生している場合は、受付質問や入力画面、点検手順を見直してください。
レセコン・請求団体・代行サービスの選び方
請求業務の方法は、自院の患者数、担当者数、請求知識、予算によって選びます。費用だけでなく、制度改定への対応、問い合わせ先、返戻時の役割分担まで確認しましょう。

自院で請求業務を行う場合
自院で請求する方法は、患者情報や施術情報を院内で管理しやすく、業務の進捗を把握しやすい点がメリットです。一方で、制度改定の確認、マスター更新、返戻対応、担当者教育を自院で行う必要があります。
担当者が休職・退職したときに業務が止まらないよう、月次スケジュール、確認項目、データ保存場所をマニュアル化しておきましょう。
請求団体を利用する場合
柔道整復師会などの請求団体を利用すると、申請書の取りまとめ、提出、請求に関する相談などの支援を受けられる場合があります。
ただし、支援内容は団体によって異なります。加入費・手数料だけでなく、提出前点検の範囲、制度改定時の情報提供、返戻時の相談対応、提出期限を確認してください。
請求代行を利用する場合
請求代行は、データ入力や申請書作成、点検などを外部へ委託する方法です。院内の工数を減らせる可能性がありますが、施術録の作成や請求内容の最終責任まで外部へ移るとは限りません。
どこまで代行されるのか、患者情報をどのように共有するのか、返戻時に誰が患者へ確認するのかを契約前に整理する必要があります。
比較するときの確認項目
比較時は、初期費用と月額費用だけでなく、制度改定への反映速度、複数端末対応、バックアップ、操作サポート、返戻管理、データ出力、解約後のデータ取扱いまで確認します。
「レセコンを導入すれば請求ミスがなくなる」「代行へ依頼すれば院内確認が不要になる」と考えず、院内と外部サービスの責任範囲を明確にしましょう。
接骨院のレセプトに関するよくある質問

接骨院でいうレセプトとは何ですか
一般に、柔道整復施術療養費支給申請書を指します。患者情報、保険資格、負傷名、施術日、算定額などを記載し、受領委任では施術管理者が患者に代わって保険者へ請求します。
病院のレセプトと同じですか
同じではありません。病院・診療所では主に診療報酬明細書を使用しますが、接骨院では柔道整復施術療養費支給申請書を使用します。適用される制度や算定基準も異なります。
肩こりや慢性腰痛は保険請求できますか
単なる肩こり、筋肉疲労、慢性的な症状は、原則として柔道整復施術療養費の対象ではありません。ただし、具体的な外傷性の負傷がある場合は、負傷原因や所見を基に個別に確認します。
請求を始める前にどのような手続きが必要ですか
受領委任を扱う場合は、施術所所在地を管轄する地方厚生局などへ所定の申出が必要です。施術管理者研修や実務経験を確認する書類なども求められるため、管轄機関の最新案内を確認してください。
患者の署名はいつ確認しますか
受領委任では、患者が申請内容を確認したうえで署名することが基本です。署名を受ける時期や取扱いは、受領委任の取扱規程、保険者、請求団体の案内に沿って院内ルールを定めます。
レセプトはどこに提出しますか
保険者へ直接提出する方法と、柔道整復師会などの請求団体を通して提出する方法があります。提出先、締切、総括票、添付書類は請求ルートによって異なります。
返戻された場合はどう対応しますか
返戻理由を確認し、支給申請書、施術録、資格情報、添付書類を照合します。必要な修正や患者への再確認を行い、指定された方法で再提出します。同じ原因が続く場合は院内フローも見直しましょう。
レセコンを使わずに請求できますか
制度上の条件と提出先の取扱いに対応できれば、必ずしもレセコンがなければ請求できないとは限りません。ただし、患者数が増えると転記や集計の負担が大きくなるため、正確性と業務工数を踏まえて判断します。
請求団体と代行サービスは何が違いますか
請求団体は申請書の取りまとめや提出、制度情報の提供などを行う場合があります。代行サービスは入力・作成・点検など特定の実務を請け負う形が中心です。具体的な支援範囲は各団体・事業者によって異なります。
オンライン資格確認への対応は必要ですか
受領委任を取り扱う施術所では、2024年12月2日以降、原則として導入が必要です。ただし、一定の対象外要件があります。自院への適用可否は、最新通知や管轄の地方厚生局へ確認してください。
まとめ
接骨院のレセプト請求では、算定項目を理解するだけでなく、保険請求の対象となる負傷か、受領委任や資格確認の準備が整っているかを最初に確認する必要があります。

日々の受付情報と施術録を正確に記録し、月末には支給申請書、署名、摘要欄、添付書類を照合しましょう。受付・施術者・請求担当・施術管理者の役割を分けることで、返戻の防止と担当者変更時の引き継ぎにつながります。
また、2026年7月からは初検料・再検料、複数部位、明細書などの取扱いが改定されています。過去の院内マニュアルやレセコン設定をそのまま使用せず、厚生労働省の最新通知、疑義解釈、申請様式を定期的に確認してください。(厚生労働省:「柔道整復師の施術に係る療養費の算定基準の実施上の 留意事項等について(通知)」の一部改正について PDF)
レセプト業務を整えても、患者への説明、運動指導、継続フォローなどの業務が属人化していると、院内全体の負担は残ります。請求業務の標準化とあわせて、患者支援をどのように仕組み化するかも検討するとよいでしょう。