あなたは「お尻や太もも、ふくらはぎ、足の先がビリビリする」といった症状を経験したことはありますか?
こういった、腰から足にかけて痛みやしびれの原因は「坐骨神経痛(ざこつしんけいつう)」かもしれません。
坐骨神経痛になってしまった時、「どのようなことに注意して過ごせば良いのだろうか」と不安に思われている方もいるのではないでしょうか?
そこで当記事では、坐骨神経痛になったらやってはいけないことと、症状が軽くなる効果的なストレッチをわかりやすく解説していきます。
当記事を参考にすることで、つらい坐骨神経痛が解決できれば幸いです。ぜひ最後までお付き合いください。
そもそも坐骨神経痛とは?痛みのメカニズムを解説!
坐骨神経痛とは、腰から足にかけて走っている「坐骨神経」がなんらかの原因により圧迫を受け、お尻から太ももの裏、また外側にかけて痛みやしびれが出る症状のことを指します。1)
そして坐骨神経は背骨から下半身の広範囲に渡り伸びているため、発症する部位も広範囲になりやすいです。主に背骨や骨盤、お尻などの部分で神経の圧迫が起こります。
なお、坐骨神経痛は症状の名称であって病気の名称ではありません。したがって、腰や臀部が関係する複数の病気において坐骨神経痛が発症します。あらかじめ把握しておきましょう。
参考記事:【腰から片側の足にかけての痛み】坐骨神経痛の原因と3つの対処法を専門家が解説!
参考記事:【妊婦さん要注意】お尻が痛い坐骨神経痛とは?妊娠中に起こりやすい原因と対処法を解説!
坐骨神経痛の原因となる代表的な病気とは?
坐骨神経痛の原因となる代表的な病気には、腰の背骨が関係している「腰椎椎間板ヘルニア」「腰部脊柱管狭窄症」「腰椎すべり症」、またお尻の筋肉が関係している「梨状筋症候群」などがあります。
それでは、それぞれどのような病気なのか解説していきます。
【腰を前屈みにすると痛い】腰椎椎間板ヘルニア
「腰椎椎間板(ようついついかんばん)ヘルニア」とは、背骨の間にあるクッション(椎間板)が潰れ、なかの組織(髄核)が飛び出すことで、背骨を走る神経(脊髄神経)と背骨から枝分かれした神経(坐骨神経)が圧迫される病気です。
この背骨から枝分かれした坐骨神経が圧迫されることで、お尻から太ももにかけて痛みが出現します。とくに前屈み姿勢になることで髄核が飛び出しやすくなり痛みが増強されることが特徴的です。
以下の症状に当てはまる場合は、腰椎椎間板ヘルニアが原因となっている可能性があります。2)
- 前屈みになることで痛みが出現する
- 咳、くしゃみなどで痛みが悪化する
- 足の力が入りにくい
- 足の感覚が鈍い
参考記事:腰椎椎間板ヘルニアとは?痛みを和らげる方法をわかりやすく解説!
参考記事:【腰椎椎間板ヘルニア】やってはいけないこと5つ!予防に効果的なストレッチも紹介
【腰を反らすと痛い】腰部脊柱管狭窄症
「腰部脊柱管狭窄症(ようぶせきちゅうかんきょうさくしょう)」とは、腰の背骨(腰椎)の中の管(脊柱管)が狭くなり、脊髄神経や坐骨神経を圧迫している病気です。
主に「加齢」や、重い荷物を持つなどの「負荷」が繰り返し掛かることで背骨が変形し、結果として神経が圧迫されてしまいます。
以下の症状に当てはまる場合は、腰部脊柱管狭窄症が原因となっている可能性があります。3)
- 腰を反らすことでお尻から太ももにかけての痛みが悪化する
- 座ったり、前屈みになると症状が軽減する
- 歩いていると症状が悪化して、少し休むとまた歩き始められる
- 歩くよりも自転車の方が楽に移動できる
なお、症状が両足に出る場合もあれば、片足のみに現れる場合もあります。
参考記事:【要注意】脊柱管狭窄症でやってはいけないことは?自宅で出来るストレッチも解説!
腰骨の不安定性が起こる】腰椎すべり症
「腰椎すべり症」とは、腰の背骨(腰椎)のズレによって脊髄神経や坐骨神経を圧迫し、痛みを伴う病気です。
加齢で背骨の間のクッション(椎間板)が変形することや、スポーツなどの激しい動作を行うことで、腰の背骨がズレてしまうことで起こります。
とくに、反り腰の方は腰の背骨(腰椎)に負担が掛かりやすく、腰椎すべり症になりやすいと言われているので注意しましょう。
腰椎すべり症では、以下のような腰部脊柱管狭窄症と似た症状が出現します。4)
- 腰を反らすことでお尻から太ももにかけての痛みが悪化する
- 座ったり、前屈みになると症状が軽減する
- 歩いていると症状が悪化して、少し休むとまた歩き始められる
- 歩くよりも自転車の方が楽に移動できる
参考記事:反り腰を改善!原因から治し方を簡単なストレッチをまじえ解説
【筋肉の硬さが痛みを引き起こす】梨状筋症候群
「梨状筋(りじょうきん)症候群」は、お尻の筋肉である「梨状筋」が硬くなったり、使いすぎることで痛みを引き起こす病気です。
なぜこの筋肉が坐骨神経痛と関係しているかというと、梨状筋は坐骨神経の上(人によっては中)を通っており、筋肉が硬くなることで坐骨神経を圧迫してしまうためです。
以下の症状に当てはまる場合は、梨状筋症候群が原因となっている可能性があります。
- お尻の外側から太ももにかけて痛みがある
- ずっと座っていると痛みが強くなる
- 歩くと症状が軽減する
参考記事:梨状筋症候群を知り尽くす!原因や症状、痛みを治すストレッチを専門家が紹介
意外と知られていない!坐骨神経痛と間違えやすい病気
坐骨神経痛の原因となる病気がわかったところで、次に坐骨神経痛と間違えやすい病気についてみていきましょう。
以下より紹介する病気は、坐骨神経痛と判別するのが難しいので、詳しく把握するには医療機関の受診が必要です。把握して頂いたうえでご覧ください。
【ピンポイントで痛みが出る】仙腸関節障害
先述の通り、坐骨神経痛の場合は神経に反って広範囲に痛みを伴うことがほとんどです。
もし痛みが広範囲ではなく、ピンポイントに出ている場合は、仙腸(せんちょう)関節という骨盤(お尻)の関節が原因となっている可能性があります。
そもそも仙腸関節とは骨盤を構成している関節で、通常はあまり動きのない部分です。しかし、仙腸関節にズレるようなストレスが掛かることで、痛みが発生します。
仙腸関節のズレによって生じる病気が「仙腸関節障害」です。
以下のような症状が出ている場合は、仙腸関節障害の可能性があります。
- 痛みの部位が指一本で指せる
- 妊娠・出産を機に痛みが出現した
- コルセットや骨盤ベルトをつけると痛みが軽減する
参考記事:産後に腰が痛い〜原因と適切な腰痛の対処法を詳しく解説〜
参考記事:【真ん中】おしりの骨が痛い原因とは?痛み改善に効くストレッチ・筋トレを解説
【血管に問題がある】血流障害
血管に問題があるため血流が悪くなり、お尻から太ももに痛みが出ている可能性もあります。
代表的なものとして「末梢動脈疾患(まっしょうどうみゃくしっかん)」が挙げられます。足の血管が動脈硬化により狭くなったり、つまったりする病気です。
なぜ血流障害が痛みを引き起こすかというと、血液が不足すると神経に行き渡る酸素の量も不足します。そうすると神経は脳に対して電気信号を送り、酸素が足りていないことを知らせます。その電気信号を痛みやしびれとして感じるのです。
以下に当てはまる場合は、血流障害による痛みの可能性があります。
- しばらく歩いているとお尻や太もも、腿裏に痛みが出現し、休むとまた歩けるようになる
- 腰の痛みは感じていない
- 足が青白く、冷たい感じがする
【要注意】坐骨神経痛でやってはいけないこと
坐骨神経痛がある際に、さらに痛みを悪化させてしまう動作や習慣があります。
以下より、坐骨神経痛でやってはいけないことを解説します。日常生活の中で無意識のうちに行っていないか確認していきましょう。
長時間の同じ姿勢
長時間の同じ姿勢は、腰への負担を強めます。
背骨のクッション(椎間板)の一部に負荷が掛かり続けることにより、ヘルニアや脊柱管狭窄など腰の病気を悪化させるリスクが高くなります。
また、動かないことで腰回りや足の筋肉の血流が悪くなり、筋肉や坐骨神経の柔軟性を低下させる恐れも。
こまめに姿勢を変えることで、腰への圧を分散し、筋肉や神経の柔軟性の低下を防ぎましょう。
重たいものを持つ
重たいものを持つことも腰に負担が掛かります。
特に、中腰の状態で重いものを持つと、椎間板が潰れて髄核が飛び出し、坐骨神経痛の原因でもある腰椎椎間板ヘルニアを悪化させる危険性があります。
正しい持ち方は以下の通りです。
- 膝を曲げて、腰をしっかりと下ろします
- 背中をなるべくまっすぐにした状態で荷物を持ち上げましょう
合わない寝具で寝ること
自身の身体に合わない寝具で寝ると、腰の背骨の弯曲が長時間にわたり変形した状態となり、腰に負担が掛かってしまいます。結果として腰椎椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症、すべり症を悪化させ、坐骨神経痛を増悪させる可能性があります。
正しい寝具の選ぶポイントは以下の通りです。5)6)
- 寝返りしやすいか
- 仰向けの姿勢で違和感がないか
- 腰と寝具の間が4~6cm程度で、S字のカーブが潰れていない
悪い姿勢でのデスクワーク
猫背で背もたれに腰を預けるような悪い座り姿勢では、立っている姿勢に比べて背骨の間のクッション(椎間板)に掛かる圧が1.85倍に上昇すると言われています。7)
椎間板の圧が高まることで、腰椎椎間板ヘルニアを悪化させたり、腰椎すべり症を引き起こす要因にもなります。
坐骨神経痛を悪化させないためにも、デスクワークの際には正しい姿勢を意識しましょう。
正しい座り方は以下の通りです。8)
- 骨盤を立てて座る
- 膝と股関節の高さが合う椅子に座る
- 目線の高さにディスプレイを合わせる
激しい運動
坐骨神経痛の原因が腰にある場合、腰周りの筋肉が弱くなっている可能性も。
腰が不安定な状態のまま激しい運動をすると、背骨に大きな負担が掛かり痛みを悪化させる危険性があります。
坐骨神経痛に悩んでいる方は、ジャンプやランニング、コンタクトスポーツなどの激しい運動を避け、ストレッチや体幹の安定を目的としたトレーニングをおすすめします。
痛みが悪化するストレッチ
ストレッチは有効ですが、やり方が間違っていたり負荷が大きすぎたりすると、神経の圧迫や炎症を悪化させるリスクがあります。
ストレッチをして症状が悪化する場合は自己流で続けることは控え、専門家の指導を受けながら行うことをおすすめします。
次より、おすすめの坐骨神経痛改善ストレッチを解説しますので、ぜひ参考にしてみてください。
つらい坐骨神経痛を軽くする!自宅でできる簡単ストレッチ3選
坐骨神経痛を軽減させるためには、筋肉の柔軟性を改善し坐骨神経の圧迫を解除したり、神経の滑りをよくすることが効果的です。
自宅で簡単に行えるストレッチを紹介しますので、動画を見ながらぜひ一緒に取り組んでいきましょう。
参考記事:坐骨神経痛を早く治す方法はこれ!痛みの原因とオススメストレッチ3つを解説!
お尻の筋肉を柔らかくする梨状筋ストレッチ
お尻の筋肉(梨状筋)が硬くなると、坐骨神経を圧迫して痛みにつながります。梨状筋をストレッチすることで、坐骨神経の圧迫を軽減していきましょう。
STEP1:片脚を反対側の太ももの上に乗せましょう
STEP2:骨盤を前方へ倒し姿勢を保持しましょう
STEP3:元の姿勢に戻りましょう
STEP4:繰り返し実施しましょう
※腰が丸まらないように注意しましょう!
神経の動きを改善する坐骨神経モビライゼーション
筋肉の硬さなどが原因で神経が圧迫を受けている場合、神経に行き渡る血液の量が減少します。そして血液不足になることで神経に十分な栄養が行き届かず、坐骨神経自体の滑りも悪くなるのです。
その結果、さらに痛みやしびれを引き起こす可能性があるので、神経の動きを改善するストレッチを行っていきましょう。
STEP1:両手を後ろに回しましょう
STEP2:上を向きながら膝を伸ばし足首を反らせます
STEP3:姿勢を戻し下を向きます
STEP4:上を向きながら膝を伸ばし足首を反らせましょう
STEP5:痛みのない範囲で無理せず、繰り返し実施しましょう
※膝の伸展(伸ばす動き)と足の背屈(反らす動き)を意識しましょう!
腰の安定性を高めるクロスエクステンション
腰の安定性が低下していると、ヘルニアや脊柱管狭窄症など腰の背骨(腰椎)の病気を起こしやすくなります。
腰やお腹の筋肉を鍛え、腰の病気の悪化を防ぐことで坐骨神経痛を軽減していきましょう。
STEP1:四つ這いになりましょう
STEP2:肩の真下、股関節の真下に手と膝をつきます
STEP3:対角線上の手足を伸ばしましょう
STEP4:元の姿勢に戻ります
STEP5:繰り返し実施しましょう
※腰を反らさないように注意しましょう!
【すぐにでも治したい】坐骨神経痛を早く治す方法はあるのか?
坐骨神経痛を早く治すための近道は、本記事で紹介しているやってはいけない動作を避けることが第一です。まずは、日常生活の中で腰に負担の掛からない動作を心がけていきましょう。
もし痛みが我慢できる程度であれば、過度な安静は根本的な解決には繋がらないため、お伝えしたストレッチを実施することで症状を軽減させましょう。
また我慢できないほど痛みがある場合は、整形外科の受診も早く治すために重要な選択肢となります。無理せず受診することも検討してください。
まとめ
今回は、坐骨神経痛の際にやってはいけないことと、症状軽減のためのストレッチについて解説していきました。
腰に負担の掛かる動作や同じ姿勢を長時間取ることで、坐骨神経を圧迫し痛みが出現します。よって、腰の負担を軽減する動作やこまめに動くよう意識することで、症状の悪化を予防していきましょう。
さらに、坐骨神経痛の原因となっている症状別に効果的なストレッチも紹介しました。習慣化して取り組むことで、改善や再発の防止に努めましょう。
それでは本記事が、あなたの坐骨神経痛を改善する為にお役立ていただけますと幸いです。
参考文献
1)社団法人日本整形外科学会「坐骨神経痛」
2)腰椎椎間板ヘルニア診療ガイドライン改訂第3版
3)腰部脊柱管狭窄症診療ガイドライン2021(改訂第2 版)
4)日本整形外科学会「腰椎変性すべり症」
5)木暮貴政,寝具と睡眠,バイオメカニズム学会誌 Vol.29,No.4,2005
6)厚生労働省 e-ヘルスネット
7)Nachemson AL. The lumbar spine: An orthpaedic challenge. Spine. 1976 ; 1 : 59–71.
8)青木一治,腰痛の理学療法腰椎椎間板ヘルニアに対する腰 椎伸展運動療法,理学療法学第27巻 第 871−329−333,2000