【突然の痛み】尾てい骨にヒビが入ったときの症状や対処法、病院に行くべき目安とは?

尻もちをついたり、強くお尻をぶつけたりしたあと「尾てい(尾骨:以下尾てい骨)骨にヒビが入ったかも」と感じることがあります。動くたびに痛みが走ると「このまま放っておいて大丈夫なのかな?」と不安になる方も少なくありません。

本記事では、ヒビ(不全骨折)の具体的な症状、骨折や打撲との違いや自宅でできる応急処置、病院を受診すべきタイミングについて分かりやすく解説します。最後までお読みいただくことで、自己判断せず安心して回復に向かうための具体的な手がかりが得られるはずです。

尾てい骨の「ヒビ」とは?骨折との違い

尾てい骨が痛そうな女性の画像

尻もちをついた直後は、単なる打撲なのか、それとも骨に異常があるのかを自分で判断するのは難しいものです。特に尾てい骨は体の奥に位置し、外見から状態を確認しづらいため、不安を抱えやすい部位といえます。

ここではまず、尾てい骨の構造と役割を確認し、そのうえで「ヒビ」と「骨折」の違いを整理していきます。

参考記事:尾てい骨が痛いのはなぜ?尾骨の構造や不調の原因・すぐに実践できる対処法を解説

尾てい骨の構造と役割

尾てい骨は、背骨の一番下に位置する小さな骨の集合体です。脊椎の最終部分にあり、数個の椎骨が癒合してできています。見た目にはほとんど動かないように見えますが、靭帯や筋肉の付着部として重要な役割を担っています。

尾てい骨を説明した画像

たとえば骨盤底筋群やお尻まわりの靭帯は、尾てい骨に付着して姿勢保持や排便のサポートをしています。座るときには体重の一部が尾てい骨周囲にかかるため、この部位に損傷があると日常生活の動作に支障をきたしやすいのです。

骨盤底筋群の画像

ヒビ(不全骨折)の定義・程度

「ヒビが入った」とは、医学的には“不全骨折”を指します。骨が完全に折れて離れてしまうわけではなく、ひび割れのように部分的な損傷がある状態です。

レントゲンを撮っても線がかすかに見える程度のことも多く、外見からは判断しにくいのが特徴です。痛みは強いものの、骨の位置が大きくずれていないため、安静や保存療法で治癒が期待できるケースが少なくありません。

ただし、日常生活の中で尾てい骨は体重負荷を受けやすいため、放置すると治りが遅くなったり、慢性的な痛みに移行することがあります。

打撲・完全骨折との比較

尾てい骨の損傷を区別するためには、打撲・不全骨折(ヒビ)・完全骨折を比較して理解することが大切です。

  • 打撲の場合
    尾てい骨周囲の軟部組織が損傷している状態です。皮下出血や腫れを伴いますが、骨そのものに損傷はありません。数日から1週間程度で痛みが軽快することが多いです。
  • ヒビ(不全骨折)の場合
    打撲よりも痛みが長引き、座る・立つ・歩くなどの動作で強い痛みを感じやすくなります。見た目に大きな変形はないものの、尾てい骨そのものに細かい損傷があるため、治癒には数週間から数か月かかることがあります。
  • 完全骨折の場合
    尾てい骨が明らかにずれたり、動揺が見られるケースです。強い外力が加わった場合や高齢者の転倒などで起こることがあります。痛みが激しく、歩行や起き上がりが困難になることが多く、場合によっては手術が検討されることもあります。

このように「単なる打撲だと思って放置したら、実はヒビだった」というケースは珍しくありません。痛みが強く続く場合は自己判断せず、専門医に相談することが早期回復につながります。

ヒビが入ったときの主な症状

お尻を押さえて痛そうな女性の画像

尾てい骨にヒビが入った場合、日常生活の中でさまざまな動作に痛みや違和感が現れます。単なる打撲と区別するには、症状の特徴を押さえておくことが大切です。以下では代表的な症状を具体的に見ていきましょう。

座る時・立ち上がる時の痛み

尾てい骨は、座るときに体重を支えるポイントのひとつです。そのため、ヒビが入ると椅子に腰を下ろした瞬間や、座った状態から立ち上がる動作で鋭い痛みを感じやすくなります。

特に長時間のデスクワークや車の運転後には、尾てい骨に負担が集中し、痛みが増すことがあります。クッションを使っても和らがない強い痛みが続く場合は、ヒビの可能性を疑う必要があります。

参考記事:座るとお尻(尾てい骨)が痛いのはなぜ?痛みの原因・ストレッチなど実践しやすい対処法を解説

尾てい骨周囲の圧痛・触れると痛む

ヒビが入っている場合、尾てい骨周囲を指で押すと鋭い圧痛が走ります。これは骨そのものに損傷があるためで、単なる打撲の「鈍い痛み」とは違う性質です。

尾てい骨の真上や少し左右にずらした部分を押してみると、ピンポイントで強く痛むのが特徴です。このような場合は、動かさなくても安静時に痛みが出ることがあり、生活の質を大きく下げてしまいます。

歩行時や体重負荷による違和感

尾てい骨は直接体重を支える骨ではありませんが、骨盤の一部として下半身の動きに関与しています。そのため、歩行時や階段の昇り降りで骨盤が揺れると、尾てい骨のヒビに負荷がかかり、違和感や鈍い痛みを覚えることがあります。

「なんとか歩けるけれど、普段と違って歩幅が狭くなる」「腰をかがめると痛みが強まる」といった訴えは、不全骨折のサインである可能性があります。

排便・排尿時の痛み

尾てい骨の周囲には骨盤底筋群が広がり、排便や排尿をコントロールする働きがあります。尾てい骨にヒビが入ると、この筋肉群が緊張して肛門周囲や下腹部にまで痛みが響くことがあります。

特に排便時は腹圧がかかるため、尾てい骨周辺に大きな負荷が加わり、強い痛みを伴うことがあります。便秘が続くとさらに悪化するため、排便のしやすさを整える工夫も必要です。

腫れ・内出血・しびれなどの併発症状

外傷の直後には尾てい骨周囲に腫れや内出血が起こることがあります。皮膚表面に青紫色のあざが出たり、触ると熱を持っているように感じたりするのも特徴です。

また、尾てい骨は末梢神経の集まる部位に近いため、神経が圧迫されると足のしびれや坐骨神経痛に似た症状が出る場合もあります。これらが長引く場合は、放置せず整形外科を受診することが望まれます。

日常でできる応急処置・セルフケア

尾てい骨にヒビが入った疑いがあるとき、まず大切なのは「悪化させないこと」です。病院に行くまでの間や、治療の一環として日常で取り入れられるセルフケアを行うことで、痛みを和らげ回復を助けることができます。ここでは具体的な方法を紹介します。

安静の取り方と動かし方の工夫

尾てい骨に負担をかけない姿勢を意識することが、回復を早める第一歩です。無理に動かさず、できるだけ安静を保つことが基本ですが、完全に寝たきりでは筋力が落ちたり血流が悪くなったりします。

  • 立ち上がるときは手を支えに使う
  • 座る時間を短く区切り、こまめに体勢を変える
  • 仰向けではなく横向きで休む

こうした工夫を取り入れることで、痛みを軽減しつつ日常生活を続けやすくなります。

冷やすべき?温めるべき?

外傷直後の48時間程度は炎症が強いため、保冷剤や氷嚢をタオルで包んで患部を冷やすのが有効です。冷やすことで腫れや内出血を抑え、痛みの拡大を防ぐことができます。

一方、2~3日以降は血流を促すために「温めるケア」が有効になる場合もあります。温熱シートやぬるめのお風呂で体を温めると、筋肉の緊張が和らぎ回復が促されます。ただし、痛みや腫れが強く残っている段階では温めを避けた方がよいので、症状に応じて切り替えるのがポイントです。

痛みを避ける座り方・寝方

尾てい骨のヒビは座るときに最も痛みが出やすいため、座り方の工夫が欠かせません。

  • ドーナツ型クッションの活用:中央に穴が空いているクッションを使うと、尾てい骨への直接の圧迫を避けられます。
  • 少し前傾姿勢で座る:背もたれに深くもたれかからず、骨盤を少し前に倒すと痛みが和らぎます。
  • 寝るときは横向き:仰向けでは尾てい骨に体重がかかるため、横向きやうつ伏せで寝るのがおすすめです。

こうした姿勢の工夫だけでも、痛みを和らげる効果が期待できます。

鎮痛薬・湿布の使い方と注意点

市販の鎮痛薬(アセトアミノフェンやNSAIDs)を適切に使用することで、痛みのストレスを軽減できます。また、炎症が強い時期には冷湿布、それ以降は温湿布を使うと回復を助けます。

ただし、胃腸が弱い方や持病で薬を制限されている方は使用に注意が必要です。自己判断で長期間使用せず、必要があれば医師や薬剤師に相談しましょう。

排便をスムーズにするための工夫

尾てい骨にヒビが入ると、排便時のいきみが強い痛みを引き起こします。便秘を防ぐ工夫をしておくことは、痛みを和らげるうえで非常に重要です。

  • 食物繊維を多く含む食事をとる(野菜・果物・海藻類など)
  • 十分な水分補給を心がける
  • 必要に応じて便を柔らかくする薬を使用する

便通を整えることで、尾てい骨への負担を大きく減らすことができます。

整形外科に行くべき目安と検査内容

尾てい骨の痛みが数日続く、座る・立つ動作に支障がある、排便や歩行で強い痛みを感じる、腫れやあざが広がる、足のしびれが出るといった場合は整形外科の受診が必要です。

病院では問診・触診に加え、レントゲンで骨の状態を確認し、必要に応じてCTやMRIで詳細を調べます。治療は多くが安静と保存療法で、鎮痛薬や湿布、クッション使用などが中心です。自己判断せず受診することで、骨折か打撲かを区別でき、治療期間や適切なケアが明確になり、安心して回復を目指せます。

ヒビが治るまでの期間と注意すべきこと

尾てい骨のヒビは軽度なら2~4週間、中等度で6~8週間、重度では3か月以上かかることもあります。治癒を遅らせる要因には、長時間の座位、便秘、無理な運動、加齢や骨粗しょう症、肥満などがあります。

回復を助けるには、ドーナツ型クッションや横向きでの就寝、食物繊維や水分の摂取、軽い運動、禁煙と栄養管理が有効です。慢性化や再受傷を防ぐため、痛みが長引くときは再受診し、生活習慣を整えて治癒を促すことが大切です。

まとめ

尾てい骨のヒビは、強い痛みや日常動作の不自由を伴いやすいものの、多くは安静とセルフケアでヒビの回復を助けます。座る・立つ・排便時の痛みやしびれが続く場合は、自己判断せず整形外科を受診しましょう。治癒には数週間から数か月かかることもあり、姿勢や生活習慣の工夫が回復を左右します。早めの対応と正しいケアで、慢性化や再発を防ぎましょう。

【参考文献】
1)Raj MA, Ampat G, Varacallo MA. 仙腸関節痛. [2023年8月14日更新]. StatPearls [インターネット]. Treasure Island (FL): StatPearls Publishing; 2025年1月-.入手先: https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK470299/
2)Thawrani DP, Agabegi SS, Asghar F. Diagnosing Sacroiliac Joint Pain. J Am Acad Orthop Surg. 2019 Feb 1;27(3):85-93. doi: 10.5435/JAAOS-D-17-00132. PMID: 30278010.
3)杏林大学医学部整形外科学臨床専攻医 山下和夫:尾骨のX線学的検討

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桐内 修平
理学療法士資格保有:http://www.japanpt.or.jp/
【経歴】
  • 医療法人社団紺整会 船橋整形外科病院
  • 株式会社リハサク
理学療法士免許取得後、国内有数の手術件数・外来件数を誇る整形外科病院に7年間勤務。多種多様の症状に悩む患者層に対し、リハビリテーションを行う。その後、株式会社リハサクに入社。現在はマーケティングに従事し、より多くの方へリハサクの魅力を届ける。