40代から50代にかけて現れやすい不調が「膝の痛み」です。
膝関節は複雑な構造になっており、いくつもの筋肉や靭帯が付き、多くの神経が通ってます。したがって、現れる症状もさまざまです。
とはいえ、症状の出方によって「膝のどこを痛めているか」「どのくらいの重症度か」がある程度は見分けられます。おのずと、どういった対処をするべきなのかが見えてくるでしょう。
そこで当記事では、膝が痛い時にチェックすべき症状と、考えられる膝の痛み(病気)について解説します。そのほか、膝痛に効くセルフケアも紹介しました。
最後まで目を通すことで、あなたの膝が痛む原因について、おおよその見当がつくでしょう。ぜひお役立てください。
膝の痛みの原因(病名)は?チェックすべき症状
さっそく、膝が痛む際にチェックすべき症状を紹介します。
その前に、40代・50代の方に発症するケースが多い膝の病気は以下のとおりです。
- 変形性膝関節症(へんけいせいひざかんせつしょう):膝の骨の変形
- 半月板損傷(はんげつばんそんしょう):膝関節内にある半月板の損傷
- 前十字靭帯損傷(ぜんじゅうじじんたいそんしょう):大腿骨からスネにかけて付く靭帯の損傷
ご自身の膝の痛みも、上記の中のどれかに該当するかもしれません。
ただし例外もありますし、 交通事故の経験やスポーツ習慣の有無などによっても変わってきます。
痛みの原因を正確に知るためには病院での検査が必要です。そのうえで、チェックするべき症状を詳しく見ていきましょう。
1.膝が腫れている(発赤している)
まず、膝が腫れていないかチェックしてみてください。
どういった原因であれ、膝の痛みには腫れもみられる場合がほとんどです。痛む方の膝と痛くない方の膝を見比べれば違いが分かりやすいでしょう。
なお、腫れの程度には個人差があります。
2.膝に水が溜まる
膝の痛みとともに、膝に水が溜まるケースも多いです。
膝に近い太もも部分を片手で挟み、もう片方の手で膝のお皿を上から押してみてください。その際「お皿が浮いている」感覚がある場合、水が溜まっている可能性が考えられます。
なぜ膝に水が溜まるのかというと、炎症が起こることで膝関節内の水(関節液)の量が増えるからです。
そして、膝に水が溜まる症状は、「変形性膝関節症」や「半月板損傷」で多く見られます。
参考記事:半月板損傷の症状をチェック!原因や膝の痛みを早く治す対処法・ストレッチも解説
3.膝を動かすと音が鳴る
続いて、膝を動かした際の音をチェックしてみましょう。「ポキポキ」と鳴っていませんか?
もし膝が痛くない場合は、膝関節内の軟骨が擦れた音だと思われます。ですが、膝の痛みとともに音も鳴っている場合は、変形性膝関節症の可能性が考えられます。
4.膝を曲げる・伸ばすと痛い
イスから立ち上がる時や、しゃがんだ時に膝は痛みますか?
もし、膝を曲げ伸ばした際に痛む場合、原因によって痛みが出る部位が変わってきます。チェックしてみましょう。
まず、膝のお皿の上が痛む場合、「膝蓋大腿関節症(しつがいだいたいかんせつしょう)」が考えられます。反対に、膝のお皿の下が痛む場合は「膝蓋下脂肪体炎(しつがいかしぼうたいえん)」の可能性が高いです。
そして、膝の内側・外側が痛い時は、「変形性膝関節症」や「半月板損傷」だと考えられます。
なお、膝の裏が痛むケースでは、筋肉の硬さが痛みの原因かもしれないとお考えください。
参考記事:【膝を曲げると痛い】突然の痛みの原因とあわせ3つのおすすめ対処法を解説!
参考記事:【膝を伸ばすと痛い】原因となる病気と4つのおすすめ対処法を解説!
参考記事:【膝の外側が痛い】痛みの原因とストレッチなどの対処法について詳しく解説!
5.正座ができない
「正座できるか」「正座した際に痛みはあるか」も重要なチェックポイントです。
正座は膝を曲げる姿勢になるので、膝への負担が避けられません。したがって、正座に関連する膝の症状(病気)は多岐にわたります。
そのうえで、まず考えられるのは「変形性膝関節症」です。または「半月板損傷」「前十字靭帯損傷」の可能性もあります。
なお、正座ができない原因には、「股関節の病気」「足首の病気」も関係するケースがあるので注意しましょう。
参考記事:痛みで正座ができない!膝が曲がらない原因と効果的なストレッチを解説
参考記事:膝靭帯損傷を早く治す方法は?ケガを早期に治す対処法やストレッチを解説
6.膝が抜ける感じがする(膝崩れ)
歩いている時などに、「膝がガクガクする」「急に膝が抜ける」といった感覚はありませんか?
膝崩れ(ひざくずれ)とも呼ばれるこの症状は、「半月板損傷」や「前十字靭帯損傷」などで見られます。
歩行運動に大きな支障が出るので、放置するべきではありません。
7.膝が曲げられない・伸ばせない(ロッキング)
急に膝が曲げられなくなる・伸ばせなくなるといった症状が現れていませんか?
こういった症状は「ロッキング」と呼ばれ、半月板損傷で見られます。
そして、ロッキングが起こるということは、半月板損傷が重症化しているサインです。したがって危険を伴うので、決して放置せず病院で診てもらいましょう。
参考記事:【半月板損傷】膝のロッキングを自分で治すのは危険?適切な治療方法を解説
膝が痛くなる原因とは?
膝の痛みの原因はさまざまですが、10代・20代の若年層と40代・50代の中高年では事情が異なります。
10代から20代の方が膝を痛める原因は、主にスポーツ(膝の酷使)や事故です。
対して40代から50代の場合、スポーツや事故に加え、加齢による骨の変形や筋力低下も含まれます。加えて「肥満」による膝への負担増も考えられます。
【平均】膝の痛みはどのくらいで改善する
一概には言えませんが、膝の痛みは改善まで時間がかかる傾向にあります。
先ほど触れたように膝の構造は複雑で、また日常生活の中で負担がかかりやすいからです。
そのため、痛みが気にならない程度まで改善されるまでに、半年もしくは1年かかるケースも少なくありません。
病院(整形外科)への受診を忘れずに!
膝の痛み方や症状は多種多様です。改善を目指すには、まずは膝が痛む原因(病名)を正確に把握しなければなりません。
したがって痛みをそのままにせず、できるだけ早く病院を受診してください。膝の痛みであれば、整形外科に足を運びましょう。
精密な検査を受けたうえで、今後の生活についてお医者さんからアドバイスをもらえるはずです。もしかしたら手術が必要だと診断されるかもしれません。
膝痛の正確な原因が分かったうえで、ご自身で行えるケアについて考えましょう。
膝の痛み改善に効果的なセルフケアを紹介
ここから、膝の痛みを改善するために有効なセルフケア方法を解説していきます。
繰り返しになりますが、病院で膝の痛みの原因が分かったあとに実践してみてください。
どれも簡単に実践できる方法です。継続することで膝の痛みの緩和が期待できるでしょう。
ストレッチ
膝の痛みにはストレッチが有効です。
膝周りの筋肉を伸ばすことで血流が良くなります。結果的に痛みが和らぎ、膝が動かしやすくなるでしょう。
それでは、おすすめのストレッチを紹介します。
1つ目は「膝関節屈曲伸展運動」です。
STEP2:アシストしながら膝を曲げていきます
STEP3:ゆっくり膝を伸ばしていきましょう
STEP4:繰り返し膝を曲げ伸ばしします
※可能な範囲で大きく動かしてみてください
上記のストレッチによって、太ももの「大腿四頭筋(だいたいしとうきん)」や太もも裏の「ハムストリングス」を伸ばせます。継続して実践することで膝の曲げ伸ばしがスムーズになるでしょう。
2つ目は「ハムストリングスストレッチ」です。
STEP2:骨盤を倒すように前方に体を傾けます
STEP3:もも裏が伸びた状態を保持しましょう
STEP4:ゆっくり元の状態に戻ります
※足首を反らせて踵を地面につけてみてください
※腰が丸まらないように注意しましょう。
筋力トレーニング
膝周りの筋力トレーニングも大切です。
筋トレによって血流が良くなるほか、膝の安定性が上がり負担が減るという効果が期待できます。
40代・50代の方は膝周りの筋肉が衰えやすいので、ぜひ継続して取り組みましょう。それではおすすめの筋トレを紹介します。
1つ目は「タオルつぶし運動」です。
STEP2:膝の裏にタオルを入れて膝を伸ばします
STEP3:膝裏でタオルを潰すように力を入れます
STEP4:数秒間力を入れて繰り返し実施しましょう
※膝のお皿を持ち上げるように意識してみてください
※なるべく姿勢を正して行いましょう
上記の筋トレは、膝を伸ばす・膝を安定させる働きを持つ「内側広筋(ないそくこうきん)」に効きます。
2つ目は「両脚スクワット」です。
STEP2:腰を深く落としましょう
STEP3:元の姿勢に戻ります
STEP4:繰り返し実施しましょう
※膝は90度程度まで曲げてみてください
※膝が内側に入らないように注意しましょう
コルセット・サポーターを着用する
膝の痛みが強く生活に支障がある場合は、膝用コルセット・サポーターを着用するのもおすすめです。
コルセットやサポーターの着用によって膝周りの安定度が増すので、日常動作が楽に行えるでしょう。
サポーターやコルセットを購入する場合は、デザインやサイズ、固定力を重視して選んでみてください。
ただし、コルセットやサポーターそのものに痛みを改善する効果はありません。また、長期間の着用によって筋力が低下してしまうリスクも考えられます。
したがって、膝の痛みが減ってきた段階で、コルセットやサポーターは外しましょう。
膝へ負担をかけないように注意する
普段の生活の中で、無意識に膝へ負担をかけてしまっているかもしれません。ご自身の習慣をあらためて見直してみてください。
たとえば、座り方に注意しましょう。
先述の通り、正座は膝への負担が大きいので可能な限り避けるべきです。どうしても正座しなければならない場面では、お尻の下に立てる「正座用のイス」を使ってみてください。
また、体重増加も膝への負担増加につながります。暴飲暴食など不規則な生活は改めるべきでしょう。
他にも「座った時に足を組まない」「長時間立ち姿勢を続けない」など、膝への負担を減らすように工夫してみてください。
まとめ
膝の痛みは生活に大きな影響を及ぼします。
たとえ膝の痛みが軽くても、放置すべきではありません。早めに病院で診てもらうのが大切です。
その前の参考として、本文で紹介した症状をチェックしてみてください。ご自身の膝の症状を把握できれば、診察の際に痛みの様子を正確に伝えやすくなるでしょう。
それでは当記事が、あなたの悩み解決に役立てば幸いです。
【参考文献】
1)木藤 伸宏, 金村 尚彦, 小澤 淳也, 徳森 公彦, 岡西 奈津子, 山崎 貴博, 田中 亮, 阿南 雅也:K-016 運動器疾患における理学療法診療ガイドラインからみた最新知見と課題 : 変形性膝関節症
2)N J Manek 1, N E Lane:Osteoarthritis: current concepts in diagnosis and management
3)David J Hunter 1, Leena Sharma, Tyler Skaife:Alignment and osteoarthritis of the knee
4)DAVID Y. GAITONDE, MD, ALEX ERICKSEN, MD, AND RACHEL C. ROBBINS, MD:Patellofemoral Pain Syndrome
5)Donald C Pompan:Pes Anserine Bursitis: An Underdiagnosed Cause of Knee Pain in Overweight Women
6)David S Logerstedt, David A Scalzitti, Kim L Bennell, Rana S Hinman, Holly Silvers-Granelli, Jay Ebert, Karen Hambly, James L Carey, Lynn Snyder-Mackler, Michael J Axe, Christine M McDonough:Knee Pain and Mobility Impairments: Meniscal and Articular Cartilage Lesions Revision 2018
7)公益社団法人 日本医療機能評価機構:Mindsガイドライン