普段スポーツをされている方で、運動開始時に膝のお皿付近が痛む場合は「ジャンパー膝」が疑われます。
ジャンパー膝は名前が示す通り、ジャンプの繰り返しが引き金となり発生する膝の痛みです。
ジャンパー膝への対処法としてテーピングが有効とされています。
しかし、普段テーピングを貼り慣れておらず「どのような巻き方をすれば良いのかよく分からない」と悩まれている方は多いのではないでしょうか?
そこで本記事では、ジャンパー膝の早期改善・予防が期待できるテーピングの使用方法を解説しています。
また、テーピング以外にできるセルフケアも紹介していますので、膝の痛みでお困りの方はぜひ参考にしてみてください。
【先に確認】ジャンパー膝の症状と簡単なチェック方法
テーピング方法についてみていく前に、まずはジャンパー膝がどのようなケガなのか、メカニズムや症状を理解しておきましょう。
ジャンパー膝とは、膝蓋腱(しつがいけん)に小さな傷が蓄積して炎症を起こした状態と言われています。正式には膝蓋腱炎(しつがいけんえん)と呼ばれています。
なお膝蓋腱とは、膝蓋骨(しつがいこつ:膝のお皿)と脛骨粗面(けいこつそめん:膝下にある骨の出っ張り)をつなぐ腱のことです。膝蓋骨下部分を触ると筋状の組織に触れられると思いますが、それが膝蓋腱となります。
膝蓋腱は、太もも前側にある大腿四頭筋(だいたいしとうきん)が腱に移行する部位です。
ジャンプのような膝を伸ばす動作で大腿四頭筋が強く収縮します。
大腿四頭筋の収縮で膝蓋腱が繰り返し引き伸ばされることで、損傷や炎症につながると考えられています。
症状の特徴
ジャンパー膝のおもな症状は、膝前面の痛みです。また、症状には次のような特徴があります。
- ジャンプ動作で痛みが誘発される
- 安静にしていると痛みが落ち着く
- 膝蓋骨下を押すと圧痛がある
- 反対側の足と比較して膝蓋腱が太くなる
ジャンパー膝は、膝のお皿の下部分に痛みが出現するケースがほとんどです。また、割合は少なくなっていますが、膝蓋骨の上端や中央部分に痛みがみられる場合もあります。
チェック方法
基本的には、膝蓋腱の圧痛(押したときの痛み)と、先ほど紹介した症状の特徴からジャンパー膝かどうかを判断します。
膝のお皿の下を押してみて痛みがあったり、ジャンプや階段を上るような動作で膝下の痛みが誘発されたりする場合は、ジャンパー膝の可能性が高いです。
しかし、上記のチェックはあくまでも目安になります。ジャンパー膝かどうかを確定するには、医療機関で超音波やMRIによる検査を受ける必要があります。
参考記事:膝の皿の下が痛い原因とは?痛みを治す方法や予防にも効果的なストレッチを紹介
参考記事:ジャンパー膝(膝蓋腱炎)とは?痛みの原因と症状・ストレッチなどの予防方法について解説
テーピングの目的や効果を知っておこう
テーピングは、おもに「固定」を目的として使用されています。テープを貼り関節の動きを制限することで、痛みをやわらげたり、ケガを予防したりするのです。
また、テープの種類によっては固定以外の効果も期待できます。中でもキネシオテープを使用すると、筋肉のコンディションを整えたり、貼った箇所の血流を良くしたりすることも可能です。
ジャンパー膝をはじめとした使いすぎによる痛みに対しては、キネシオテープを貼ることが一般的です。
【巻き方】ジャンパー膝におすすめのテーピング方法
それでは、ジャンパー膝の改善・予防が期待できるテーピングの巻き方を紹介していきます。
さまざまな巻き方がありますが、以下の方法であれば、ご自身でも簡単にテープを貼れるでしょう。まずは5cm幅のキネシオテープをご用意ください。
- 20cmほどの長さにテープをカットします
- ベッドや台の上に足を乗せ、膝を最大限曲げます
- テープの端を5cmほどはがします
- はがした部分を膝蓋骨下の骨が出っぱっている箇所に貼ります
- テープの残り部分をはがします
- 上方向に引っ張りながら、膝蓋骨の上にテープを貼ります
- 膝蓋骨の上端まで貼ったら、引っ張るのをやめて残りの部分を太もも前側に貼ります
膝を伸ばした際、太もも前側部分にシワが寄るかと思います。そのシワ部分の皮膚が持ち上げられることで、筋肉の緊張がゆるまる仕組みになっています。
さらに、もう一枚テープを貼っていきましょう。
- 25cmほどの長さにテープをカットします
- 膝を90度程度に曲げます
- テープの中央部分をはがします
- 引っ張りながらテープ中央部分を膝蓋骨下に横方向に貼ります
- 膝蓋骨下部分に貼ったら、引っ張るのをやめます
- 残りの端部分は、太もも方向に向けて軽く流すように貼ります
こちらのテープには、お皿の動きを固定して、膝蓋腱にかかるストレスを緩和する効果が期待できます。
なおテープ端の角の部分を丸くカットしておくと、テープがはがれにくくなります。テープがどうしてもはがれてしまうという方は、ぜひ試してみてください。
【要確認】ジャンパー膝にテーピングを貼るうえでの注意点
肌がかぶれるおそれがあるため、テープは貼りっぱなしにしないようにしてください。長くとも3日経過したら、一度はがして肌を休ませるようにしましょう。(かゆみを感じる際は、すぐにはがしてください)
また、貼った後にきつさや違和感を覚える際には、テープをはがして再度貼り直してみることをおすすめしています。
テーピング以外にできるジャンパー膝への対処法
ジャンパー膝の症状を早期に改善するために、テーピングとあわせて次のような対処も行っていきましょう。
痛みが強い場合は運動を休止する
症状が軽いうちは、運動を続けながらジャンパー膝の改善を図っていくことは可能です。
しかし、痛みが悪化してパフォーマンスにも影響が出るようであれば、運動の休止が必要となります。
症状を進行させないためにも、膝の痛みが続く場合は、早い段階からジャンプやダッシュなど膝蓋腱にストレスのかかる運動は控えるようにしてください。
痛む箇所をアイシングする
運動後、氷水や保冷剤などを当てて、痛みのある箇所を冷やしましょう。アイシングを行うことで、炎症を抑える効果を期待できます。
10分ほど冷やしてみて、痛みや熱が戻るようであれば、再度アイシングを繰り返してみてください。
痛みの様子をみてストレッチやトレーニングをする
太ももの筋肉を中心にストレッチしていきましょう。ストレッチを行い筋肉の柔軟性を高めることで、膝の痛みが緩和しやすくなります。
また、体の使い方が悪くなっていることで、太もも前側の筋肉に余計なストレスをかけているケースもあります。したがって、ジャンパー膝を改善するには、ストレッチとともに体を正しく使えるようにするトレーニングも欠かせません。
ジャンパー膝に対してどのようなストレッチやトレーニングを行えば良いのか、具体的な方法は、このあと動画付きで詳しく解説いたします。
【再発防止】ジャンパー膝を改善・予防するストレッチ、トレーニング方法
ここからは、ジャンパー膝の改善・予防が期待できる、ストレッチやトレーニングの方法をご紹介します。
筋肉を痛める可能性がありますので、ストレッチは呼吸をしながらゆっくり行うようにしてください。
大腿四頭筋ストレッチ
太もも前側に位置する大腿四頭筋を伸ばすストレッチです。大腿四頭筋をやわらかくすると、膝蓋腱にかかるストレスが緩和してくるため、ジャンパー膝の予防につながります。
STEP2:下の足を直角に曲げ、もう一方の足を後方から掴みましょう
STEP3:後方へ引っ張りましょう
STEP4:元の姿勢に戻り、繰り返し実施しましょう
※腰を反らさないように注意しましょう
太もも前面がしっかり伸びていることを意識してください。片側を30秒ほど伸ばしたら、反対側も同じように伸ばしていきましょう。
ジャックナイフストレッチ
太もも後面に位置するハムストリングスを伸ばすストレッチです。ハムストリングスの柔軟性を高めると、股関節や膝の動きがスムーズになるため、ジャンパー膝の予防に効果的です。
STEP2:お腹と太ももを離さずに膝を伸ばしましょう
STEP3:太もも後面が伸びた状態を保持しましょう
STEP4:元の姿勢に戻り、繰り返し実施しましょう
※太ももとお腹を離さないように注意しましょう
ヒップヒンジエクササイズ
ヒップヒンジエクササイズは、スクワットに似た動きを繰り返すトレーニングです。
こちらのトレーニングを行うと、股関節の動きがやわらかくなります。
また、骨盤の後傾(骨盤が後ろに倒れた状態)が改善されて姿勢が良くなりますので、大腿四頭筋に頼らない体の正しい使い方も合わせて覚えられるでしょう。
STEP2:股関節を90度程度曲げましょう
STEP3:繰り返し実施しましょう
※腰を丸めないように注意しながら実施しましょう
背中は伸ばしたままで、骨盤を前に倒すようにイメージして行ってください。ヒップヒンジエクササイズは、スポーツのパフォーマンス向上も期待できるため、運動前のウォーミングアップに最適です。
【危険】ジャンパー膝の人がやってはいけないこととは?
ジャンパー膝の方がやってはいけないのは、痛みを無視してそのままハードな運動を続けることです。
ジャンパー膝の原因にはオーバーユース(使いすぎ)が考えられているため、激しいスポーツを行っていては症状が改善しません。
そればかりか、膝蓋腱の損傷をさらに積み重ねることで、最終的には腱の断裂につながるおそれもあります。手術が必要になると、スポーツへの復帰をより遅らせてしまうでしょう。
テーピングをすると、患部にかかる負担は確かに軽減されます。しかし重症化を防ぐためにも、テーピングだけに頼るのではなく、運動量の調整やストレッチなどセルフケアもしっかりと行うようにしてください。
ジャンパー膝はどれくらいで治るもの?
軽度のジャンパー膝であれば、8週間程度で回復が見込めます。しかし、ジャンパー膝は長期化しやすい傾向があり、数ヶ月から半年以上スポーツの休止が必要となるケースも少なくありません。
無理をするほど状態を悪化させてしまいますので、ジャンパー膝が疑われる際は、放置せず早めの処置を心がけてください。
まとめ
今回の記事では、ジャンパー膝に効果的なテーピングの巻き方について解説しました。
膝のお皿から太ももにかけてテープを貼ることで、ジャンパー膝の改善・予防が期待できます。
また、スポーツへの早期復帰を目指すには、テーピングと合わせてストレッチを中心としたセルフケアを行うことも大切です。
それでは、本記事があなたを悩ませる膝痛の改善に役立てば幸いです。
【参考文献】
1)A Ferretti, G Puddu, P P Mariani, M Neri:The natural history of jumper’s knee. Patellar or quadriceps tendonitis
2)Peter Malliaras, Jill Cook, Craig Purdam, Ebonie Rio:Patellar Tendinopathy: Clinical Diagnosis, Load Management, and Advice for Challenging Case Presentations