鍼治療を受けた後に、発熱やだるさ、急激な眠気などを感じる場合があります。こういった現象は「好転反応(こうてんはんのう)」である可能性が高いです。
身体が痛みや不調を治そうと働く過程で起こる反応なので、悪化しているわけでも身体に害が及んでいるわけでもありません。とはいえ、反応の出方には個人差がありますし、「大丈夫なの?」と不安に感じるのも無理はないでしょう。
そこで当記事では、鍼治療後の好転反応について詳しく解説します。
最後まで目を通すことで、鍼を受けた後、ご自身に好転反応が出ても冷静に対処できるはずです。
【瞑眩(めんげん)】鍼治療後の好転反応とは?
好転反応とは、身体が良い状態になろうとする過程に見られる現象を指します。東洋医学では、好転反応を「瞑眩(めんげん)」と呼ぶこともあります。
身体の持つ「自然治癒力」を活性化させ痛みや不調を改善するのが鍼灸なので、治療後に好転反応が起こりやすいといえます。そしてこの好転反応には、個人の体質や施術時の刺激の強さが関係してきます。
また、初めて鍼治療を受けた方ほど好転反応が出やすい傾向にありますが、何度も鍼治療を受けている方は好転反応が少なくなりやすいです。
【チェック】鍼治療後に見られる好転反応の種類
鍼治療後に見られる好転反応には、さまざまな出方があります。ここからは、代表的な好転反応について詳しく解説していきます。
痛みが増す
鍼治療によって痛みが一時的に増す場合があります。この痛みは血流が良くなり筋肉が緩む過程で起こる現象で、長期にわたって痛みを我慢していた方に起こりやすいです。
「痛みを和らげるために鍼を打ったのに、逆効果ではないか」と思うのも無理はありません。
ですが一時的に痛みが増したあとは、すっと痛みが楽になり、結果的に施術前に比べて痛みの軽減が予想されます。したがって鍼治療後に痛みが増したとしても、冷静に様子をみてください。
めまいや吐き気
鍼治療後に、めまいや吐き気を催すケースも存在します。特に頚部(首の周り)に鍼を打った際に現れやすいので事前に把握しておいてください。
血液の巡りが良くなることで起こる現象ですが、「個人の体質」や「施術時の刺激が強すぎる」ことも関係してきます。もし、めまいや吐き気を催したら無理はせず、横になって休んでください。
急激な眠気
鍼治療を受けた後、急激に眠くなることがあります。鍼の刺激によって自律神経のバランスが整い、身体がリラックスすることによって起こる現象です。
普段から疲れが溜まっている方や、寝不足の日が続くという方は、鍼治療後に眠くなる可能性が高いでしょう。もし鍼の刺激で眠くなったら、10分だけでも良いので仮眠することをおすすめします。
また、車で治療院を訪れる場合、帰りの運転中に眠くなる可能性があるので注意してください。
鍼治療後に「夜眠れない」ケースもある
鍼治療を受けた日の夜に、眠れなくなる方もいます。やはり自律神経が整う過程で起こる現象です。
もし眠れない場合は、横になって目を閉じてリラックスすることを心がけましょう。また、寝床を使って軽いストレッチを行うこともおすすめです。
眠れないと不安になるのも無理はありませんが、「スマホを長時間眺める」「お酒を飲む」など、休息を妨げる行動はできるだけ避けてください。
発熱・頭痛
発熱や頭痛など、風邪に似た反応が現れるケースもあります。長い間、痛みを我慢していた方や血の巡りが悪くなっていた方に見られやすいです。
一時的な症状とはいえ、もし発熱や頭痛が辛い場合は薬を服用しましょう。加えて十分な水分補給を心がけてください。
だるさ
鍼治療後に筋肉が緩むことで、だるいと感じる方もいます。
鍼を打つ本数が多かったり、刺激量が強すぎたりすることが関係してきます。このだるさはマッサージや整体で起こる「揉み返し」に似ているといえるでしょう。
もし、だるさがひどい場合は氷や冷水シャワーで筋肉を冷やしてみてください。
下痢
鍼の刺激によって「排泄機能」が活発になり、下痢になる方もいます。他には「尿の色が変わる」「生理時の出血量が増える」というケースも存在します。
下痢になったり尿の色が変わったりすれば驚きますが、身体にとって良い反応なので、慌てず様子をみましょう。
ちなみに鍼治療の最中に強い尿意を催すケースも少なくありません。決して我慢せず、施術者に伝えてトイレにいくべきです。
発疹・ニキビが増える
鍼治療を受けた後に、一時的に発疹が増えるケースもあります。
前述した排泄機能が活発化することが理由です。また美容目的で顔に鍼を打った後に、ニキビが増える場合があるので、あらかじめ認識しておきましょう。
とはいえ、発疹もニキビも数日で消えるケースがほとんどなので、安心してください。
マッサージ後の「揉み返し」との違い
好転反応に似た現象が「揉み返し」です。揉み返しは、マッサージや整体で「揉みほぐし」を受けた際に筋線維が損傷することによって起こる筋肉痛に似た痛みです。
好転反応と揉み返しには、以下のような違いがあります。
- 好転反応は自身の身体が起こす反応なのに対して、揉み返しは施術者の刺激量やほぐし方が原因で起こる
- 好転反応の出方は多岐に渡るのに対して、揉み返しでは筋肉の痛みやアザができる
- 好転反応後は身体がスッキリするのに対し、揉み返し後はすっきりしないことが多い
ただし、揉み返しはマッサージや整体のみで起こるわけではありません。
鍼施術であっても、刺激が強い場合は揉み返しになることが考えられますし、「鍼+整体」といった施術を受けた後も揉み返しになる場合があります。
参考記事:揉み返しとはどんな痛み?原因と対処法・好転反応との違いまで詳しく解説
好転反応と「副作用」の違い
好転反応と似た意味で使われる言葉が「副作用」です。主に医薬品に関して用いられ、薬の服用によって本来の目的とは異なる好ましくない反応が起こる状態を指します。
副作用の種類としては「飲み始めに出る」「薬の量が多いことで出る」というタイプや、「アレルギー反応によって出る」タイプが存在します。
実際のところ鍼治療の好転反応と副作用には、似ている部分が多いといえるでしょう。しかし、違いとしては「慣れの有無」「重症化するかしないか」があります。
アレルギーによる副作用の場合などは、慣れにより症状が少なくなることはほとんどなく、副作用を止めるには薬の服用をやめるしかありません。対して鍼の好転反応では、慣れるにしたがって症状が減っていくケースがほとんどです。
また、薬の服用による副作用はまれに重症化するケースも存在します。一方、鍼治療の好転反応が重症化するケースはほとんどありません。
鍼治療による好転反応はいつまで続く?
「鍼治療の好転反応っていつまで続くものなの?」と考える方もいるでしょう。
通常は施術から1日〜2日以内におさまります。好転反応が長い期間続く(3日以上など)ケースは少ないので、過度に心配する必要はありません。
好転反応がおさまった後に鍼の効果が本格的に出始めるケースも多いので、焦らず様子をみましょう。
もし鍼治療による好転反応がおさまらない場合は、施術を受けた治療院の先生に相談してみてください。また明らかに重症な場合は、病院で検査してもらいましょう。
好転反応が出た場合の対策・過ごし方を紹介!
鍼治療を受けた後は、「効果を高める」「好転反応に対処する」この2つを頭に入れつつ、治療後の過ごし方を考えるべきです。
まず鍼治療を受けた当日は、水を多めに飲むことを心がけましょう。水を飲むことで身体中が潤うので鍼の効果が高まりやすくなるとともに、発熱やめまい、だるさといった好転反応も和らぎます。
また、鍼を打ってもらった日の夜は、十分に睡眠をとってください。睡眠時に身体がリセットされることで、翌朝以降に鍼の効果が出やすくなります。
加えて、十分な睡眠によって好転反応がおさまりやすくなるでしょう。もし「夜眠れない」場合も、目を閉じてできるだけリラックスしてみてください。
さらに鍼治療後に避けるべき行動もおさえておくとよいです。
たとえば、「飲酒」や「長風呂」はできるだけ避けてください。なぜなら、身体に負担がかかるので鍼の効果が半減したり、好転反応が強くなったりするからです。また、鍼治療後の激しい運動(筋トレ)も控えましょう。
鍼治療後のひどい咳や息苦しさには要注意!
鍼治療後からひどい咳が続いたり、息苦しさを覚えたりする場合は注意が必要です。好転反応ではなく、肺を包む胸膜に穴が開くことで起こる「気胸(ききょう)」であることが考えられます。
肺尖部や肋骨部など、「鍼を打ってはいけない場所」または「細心の注意を要する部位」に対して鍼を打つことで気胸が起こる可能性があり、放置することで重傷につながってしまいかねません。
したがって、鍼を受けた後にひどい咳や息苦しさが続くようなら、すぐに病院に足を運び受診するべきです。
まとめ
鍼治療を受けた後に好転反応が出ることは、決して珍しくありません。
治療前より症状が悪化しているようにも見えますが、身体の状態が良くなる前兆でもあるので、落ち着いて様子を見ましょう。
通常、2日以内に好転反応は収まります。そして鍼を受けた後は水を多く飲んで、十分な睡眠をとってください。また長時間の入浴や過度な飲酒、激しい運動は避けるべきです。
好転反応が収まってくれば、症状の緩和や改善が期待できるでしょう。ただし、ひどい咳や息苦しさを覚えた場合は、好転反応ではなく気胸の可能性が考えられるので、すぐに病院を受診してください。
それでは当記事を参考にして、安心して鍼治療を受けましょう。
【参考文献】