鍼灸院にカルテは必要?導入するメリットや電子カルテについて

鍼灸院でカルテは必要?カルテのメリットや無料で実践できる活用法を紹介します

鍼灸院での施術前後に、患者さんの状況を細かく記載していくものが「カルテです。

鍼灸師の中には、「カルテを記入する必要はあるの?」と思う方もいるかもしれません。しかし、カルテは患者さんに対して質の高い施術を提供するために役立つツールです。

したがって、カルテを導入し活用するメリットは大いにあるでしょう。そこで当記事では、鍼灸院でのカルテについて解説します。

カルテが必要なケースや、また便利な電子カルテについてもお話ししました。

最後まで目を通すことで、カルテを活用して鍼灸院が提供する施術をいっそう良いものにできるでしょう。

鍼灸院におけるカルテとは?

カルテとは、施術に必要な情報を記入するツールです。また鍼灸院によっては施術録と呼ばれています。

多くのカルテは、患者さんが初回施術時に記入する「問診票」とセットになっています。施術の度にカルテを取り出し、確認するという流れが一般的です。

なお、カルテを記入するタイミングとしては、初回施術前に患者さんへ質問する形で記入したり、施術中・施術後に記入したりと様々です。

カルテに記入する基本的な内容

カルテに記入する内容は、おもに患者さんの身体や症状に関する情報です。

患者さんの主訴をはじめ、気になる症状既往歴現在服用している薬などを記入します。

加えて、「徒手検査の結果」「筋肉の張りが強い箇所」など施術者が触診した内容を記載します。いわゆる「東洋的な鍼灸施術」を行っている場合は、脈状や皮膚の温冷、舌の様子、関係すると思われる経絡なども書き残しましょう。

そもそも鍼灸院にカルテは必要?

そもそも、鍼灸院にカルテは必要なのでしょうか?

結論から言うと、保険適用の有無で変わってきます。詳しく見ていきましょう。

カルテを記載するセラピストの様子

自由診療の鍼灸院ではカルテ不要

自由診療(自費施術)のみを行っている鍼灸院であれば、原則としてカルテは必要ありません。

自由診療とは、保険を用いずに全額を患者さんの自己負担で行う施術を指します。カルテは日本語で「診療録」と呼ばれており、医師法第24条において、医師が診療を行った際に記入する義務があると定められています。

したがって鍼灸師は医師ではないため、施術を行ってもカルテに記入する義務はないというわけです。

ただし後ほど解説する通り、カルテを活用するメリットは多いので、記入してもらうことをおすすめします。

保険診療の鍼灸院ではカルテが必要

原則として鍼灸院でカルテの記入義務はありませんが、例外もあります。その例外が、保険を使って鍼灸施術を行っているケースです。

鍼灸院では、特定の症状(病気)に対して保険を用いた施術が認められています。保険を用いた施術が認められている疾患は以下のとおりです。

・神経痛(臀部、足先の痺れ)
・リウマチ(慢性的な関節痛みや動かしづらさ)
・腰痛症(慢性的な腰の痛み)
・五十肩(腕が上がらない)
・頚腕症候群(頚から肩、腕にかけての痛みや痺れ)
・頚椎捻挫後遺症(自動車事故によるむち打ち症など)

ただし、鍼灸院で保険を用いて施術を行う場合、あらかじめ鍼灸院で出している同意書に対し、医師から必要事項を書いてもらう必要があります。

参考:鍼灸院でも保険請求は可能?はり・きゅう施術における保険給付の概要

鍼灸院でカルテを活用するメリット

自費の鍼灸施術であればカルテの記入は不要ですが、鍼灸院でカルテを活用するメリットは多いです。

具体的なケースを紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。

症状変化を把握しやすい

鍼灸院でカルテを導入するメリットとしては、患者さんの症状変化を把握しやすいことが挙げられます。とくに自由診療の鍼灸院だからこそ、カルテを導入することに意味があります。

例えば、初めての来院時に伺っていた症状が2回目の来院時にどの程度改善しているのか、カルテを記入しておくことで容易に症状変化の把握が可能です。

よほど記憶力の良い方ならともかく、1日に何人もの施術を行っていると、どの患者さんにどのような変化があったのか、正確に把握することが難しくなるケースも少なくありません。

また、カルテを記入しておくことで、患者さんの「全然変わらない」という声を防げます。

例えば初回来院時に、腰痛により立った状態で靴を履くのも困難だったとしましょう。その患者さんが2回目に来院した際、立った状態で靴を履いているのに「全然変わらない」と言うかもしれません。

そのような時でも「でも前回は立ったまま靴を履くことができませんでしたよ」と患者さんが納得する形で施術効果を継続的に追うことが可能です。

スタッフ同士で必要な情報を共有できる

カルテを記入することで、スタッフ同士でスムーズに情報を共有することが可能です。

ある患者さんを担当していた鍼灸師が休みで、別の鍼灸師が施術を担当するケースもあるでしょう。そういった場合でも、患者さんの様子や前回までの施術の内容が記入されていれば、満足度が高い施術を提供できます。

使ったツボや、鍼の種類まで記入されていれば理想的です。

複数のスタッフで運営している鍼灸院ほど、カルテの重要度が高いといえるでしょう。

説得力が増す

患者に対して説明する様子

施術のたびにカルテを記入しておくことで、長いスパンでの症状変化を追うことが可能です。例えば、春先になると毎年調子が悪くなる患者さんがいるとします。

その際にカルテを見ながら「○○さんは4月にいつも体調を崩しているから、この期間はしっかりと施術に通ってみてください」と具体的なデータをもとに説明できますよね。つまり、施術の必要性に対する説得力が増します。

施術計画を立てやすい

定期的に来院してもらい、施術をした後の症状変化を記入しておくことで、施術計画が立てやすくなります。

自由診療の鍼灸院に訪れる患者さんにとって、最も気になることの1つが「いつになったらこの症状はよくなるのか」という点です。

そこで、気象予報士が天気図を見て今後の天気を予想するように、鍼灸師も施術による変化を追うことで、症状についての将来予想が可能となります。

患者フォローが容易になる

自費施術をメインに鍼灸院運営を軌道に乗せるためには、リピーターの確保が欠かせません。新規の患者さんも当然必要ですが、重要度でいうと繰り返し利用してくれる患者さんの方が上だといえます。

その際にカルテが無いと、患者さんの住所もメールアドレスも分からなければ、こちらから連絡を取る術が無いです。LINE(ライン)などに登録してもらう方法はあるものの、全員が登録してくれるわけではありません。

カルテに患者さんの住所や誕生日などを記載いただければ、初回の来院後に感謝の手紙やアフターケアの方法を書いたDMの送付もできますし、誕生日やお正月に割引券などの送付も可能となります。

ご存知かもしれませんが、患者さんが来なくなる理由で最も多いのが、単に「忘れていた」というものです。そのような事態を避けるためにも、カルテを記入してもらい、定期的に患者フォローする必要があるのです。

鍼灸院のカルテはどうやって用意するの?

これから開業を考えている鍼灸師の中には「鍼灸院のカルテはどうやって用意するの?」と思う方もいるでしょう。

鍼灸施術用のカルテは、鍼灸用品を扱っているネットショップで購入可能です。なお、PDFで無料ダウンロードできるカルテもわずかにありますが、接骨院や鍼灸院が発行している患者さん用の問診票であることが多いのでご注意ください。

電子カルテも便利でおすすめ

電子カルテを記載する様子

インターネットが主流となった昨今、電子カルテを導入する鍼灸院も増えてきています。

電子カルテを導入する最大のメリットは、ペーパーレスを実現できる点です。

紙のカルテの場合、年月を重ねるとどんどん増えていき、施術院のスペース圧迫したり、過去カルテの検索が大変になったりするもの。紛失のリスクもあります。

電子カルテであれば、そのような心配がありません。

また患者さんの情報をすべてデータベースに乗せられるため、必要な時に必要な情報を取り出すことが容易になります。もちろん、患者フォローを行う際にも強い味方となります。

鍼灸院の電子カルテには2種類ある

鍼灸院で用いられる電子カルテは、オンプレミス型(自社運用型)と、クラウド型に分かれます。

オンプレミス型にはカスタマイズが自由で、グループ間のシステムとの連携が容易というメリットがあるものの、初期費用が高額となるデメリットがあります。

クラウド型は初期費用が安価で、災害復旧も比較的容易という点がメリットです。ただ、月額の費用が変動制であり、カスタマイズは制限付きとなっています。

そこで、個人で行っている鍼灸院ならクラウド型の方が使いやすいでしょうし、多店舗を運営するのであれば、オンプレミス型の方が後々便利でしょう。

鍼灸院でおすすめのカルテ活用方法を紹介

ではここから、鍼灸院の運営に役立つおすすめのカルテ活用法をご紹介します。

カルテの使い方を工夫することで、施術の質が向上するだけでなく患者さんに良いサービスが提供できるので、結果的に鍼灸院の売上向上につながるでしょう。

無料で実践できる方法ばかりなので、ぜひ参考にしてください。

施術中に交わした会話の内容もメモしておく

身体の状態だけでなく、施術中に患者さんと交わした会話の内容もカルテに残しておきましょう。

次回施術時の話題ができますし、患者さんとの間に信頼関係を築きやすくなります。また患者さんが何気なく話した言葉の中に、不調の原因につながる情報が含まれているケースもあります。

カルテに残すという手間はあるものの、役立つことは間違いありません。ぜひ実践してみましょう。

カルテの内容をもとに定期的にコンタクトを取る

先述したように、一度来院してくれた患者さんにメールや手紙で定期的にコンタクトを取ることが大切です。

その際、カルテに記入して頂いた内容を入れてみましょう。

例えば、「その後、◯◯の痛みはどうなりましたか?」「趣味の◯◯は続けられていますか」などです。

誰にでも当てはまるようなメッセージでは、患者さんの心は動きにくいもの。

個人に当てた言葉で、かつカルテに書かれた内容を盛り込むことで、患者さんの心が動き再来院につながります。

もちろん、あまりにも詳細にカルテの内容を記載することは逆効果です。十分に注意してください。

加えて、過去にいつ・どのようなコンタクトを取ったかをカルテにメモしておくことで、リピート対策に活かせます。

鍼灸院でカルテを扱う際の注意点

最後に、鍼灸院でカルテを扱う際の注意点を解説します。

まず、カルテの紛失には十分注意してください。

施術の際に取り出したカルテは、施術後にすぐ元の場所へ戻しましょう。「あとでまとめて戻せばいいや」とカルテを放置することが、紛失につながります。

また、紙のカルテに記入する際は、読みやすい字で書きましょう。あとから読んだ時に何が書いてあるのか分からなければ、カルテの意味がありません。

自身で読んで分からなければ、他のスタッフが読んで理解するのはより難しいですよね。

加えて、カルテには要点をまとめて記入することを心がけてみてください。

施術を行うなかで、カルテに残したい内容はたくさんあるものですが、記入スペースの関係上、全てを書き残すことは難しいです。

患者さんの症状にとって特に関係が強いと思われることをカルテに書き残しましょう。

まとめ

鍼灸院運営にとって、カルテは重要なツールです。自費施術の場合は記入が必須ではありませんが、できる限り記入するべきです。

「患者さんの身体の様子は記憶しているから大丈夫」と思っていても、実際は忘れてしまっているケースが多いもの。ご自身の記憶力を過信せず、患者さんの様子や症状の変化をカルテに残していくことが大切ではないでしょうか。

したがって、カルテは大切に取り扱うとともに、フォローなどにも積極的に活用しましょう。

紙のカルテの扱いが面倒な場合は、電子カルテを使うこともおすすめです。

当記事を参考に、鍼灸院でカルテを活用してみてください。

<参照元>
厚生労働省:はり師、きゅう師及びあん摩マッサージ指圧師の施術に係る療養費に関する受領委任の取扱いについて


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