今回は一人院長の整骨院・接骨院で売上を上げるための方法について解説していきます。
一人整骨院・接骨院の現状
近年、接骨院・整骨院のニーズは安定して高い水準にあると言えます。若年層を中心に人々の暮らしにはスマートフォンやパソコンが欠かせないものとなり、光る画面を不自然な姿勢で見続けることによる目や肩への負担はもはや日常的なものとなっています。また、高齢層にもリハビリなどで定期的に施術を受けたい人が一定数存在します。高齢者の人口はまだしばらく増え続ける傾向にあり、こちらも根強い需要の一因となっています。
しかしながら、柔道整復師の業界は需要を上回る供給過多にあります。2016年、厚生労働省の調査によると接骨院・整骨院やマッサージ院、鍼灸院の数は13万6000ヶ所を超えました。全国のコンビニエンスストアの店舗数が約5万5000店であることを考えると、約2倍以上にのぼります。
需要はあるが、同業他社から一歩先んじるには工夫が必要。こうした状況下での開業はハイリスクハイリターンな選択となります。特に、一緒に独立してくれる仲間がいなければ最初の頃は一人で院を経営していくことになるでしょう。
【整骨院・接骨院】一人で開業した場合の売上と年収
本記事では自分で開業した場合について解説していきます。オーナーが別にいるいわゆる「雇われ院長」の場合、厳密に言えば一人院長の定義からは外れるためです。今回は施術・マネージメントからオーナーとしての経営まで含めたトータルの売上・年収として換算していきます。
一人接骨院・整骨院の売上について
売上は、単純計算で算出すると患者数×客単価となります。
例えば客単価5000円として一日8人に施術し、同じペースで月に25日間営業した場合、月の売上は100万円です。正確にはここから事務費や運営費(税金など)が差し引かれるため、上記で出た数字より手元に残るお金は少なくなります。
自分以外に人件費がかからない点は一人院長の大きなメリットと言えます。しかし、日によっては冠婚葬祭など避けられない用事によって院をお休みしたり、一人も患者が来なかったりすることもあり得ます。毎日の売上は上がり下がりがあるものです。目の前の数字に一喜一憂するよりかは、長期的な目で考えていくことが大事です。
一人接骨院・整骨院の年収はどれぐらい?
年収は千差万別です。院に雇われていた頃より稼げていないという人もいれば、年収1000万円以上を実現している人もいます。柔道整復師全体の平均年収がおよそ400万円ですが、一人院長の場合は平均よりやや低い300万円から、多くとも800万円の間が大半とされています。
また、院の売上や年収は立地にも左右されます。もし、あなたの接骨院・整骨院の近くに、昔から地元の患者に愛されている大きな院があったらどうでしょうか。固定ファンから新しい患者を呼び込むのも大変ですし、「やっぱり前の院の方がよかった」と戻られる可能性も低くありません。
年収は院長の評価をわかりやすく示す指標です。しかし施術の実力だけでなく、こうした外的な要因が影響を与えることも覚えておくとよいでしょう。
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一人整骨院・接骨院で安定的な経営を行うためには
安定した経営には、先ほどの「患者数×客単価」という式にコンスタントに数字を入れていくことが必須となります。患者数がゼロの日が続けばいくら客単価が高くても収益にはなりません。
一方で、一人院長ではどうしても一日に診られる患者の数に時間的・労力的な限界があります。上記の売上の計算では一日8人・月に25日(=月に200人)で計算しました。しかし、それぞれの患者にじっくり時間をかけたいから8人は診られないという院長も、副業をしたいから開業日数を減らしたい院長もいるでしょう。
売上は量×質で計算します。量に制限があるなら、「質」すなわち客単価を上げることも重要になってきます。
集客力を上げる
まずは、安定して来客を募る方法について紹介していきます。
集客の基本は宣伝にあります。口コミや紹介、地域での活動も立派な宣伝です。まずはあなたの接骨院・整骨院の存在を認知してもらうことが重要です。
また、より本腰を入れて患者を集めたい場合は、ウェブ広告も視野に入ります。Googleでの検索サービスで院のサイトが上位に表示されれば、気になって来店する人もいるかもしれません。最近では整骨院・接骨院の宣伝に特化した会社もあります。自分の予算や集客目標に合うなら、こうしたサイトの制作やSEO対策も考えてみてはいかがでしょうか。
リピート率を上げる
一回だけの来院では継続した売上や基盤の獲得には繋がりません。リピーターとなり、繰り返し通ってもらうことで初めて安定した経営が成り立ちます。
リピート率を上げるためには2回目から使えるクーポン券など、「また来たい」と思ってもらえる施策が有効です。特にSNSや口コミサイトに来院の感想を書いてもらった方にだけクーポンを渡せば、店の評判にもなると同時に患者の記憶にも残りやすくなります。
新しい患者を集め続けることも重要ですが、二度目以降の来院者を増やす方が一般に広告の費用対効果が高いと言われています。一人院長はかけられるコストに上限があるため、リピート率を上げることで効率のよい集客を目指しましょう。
客単価を上げる
先の2つは量を増やすための考え方ですが、やはり一人ではこなせる量にも限りがあります。ある程度固定客が集まった時点で客単価を上げる方向にも舵を切りましょう。
ひとつのアイデアとしては、裁量のある地位を活かして、自費診療など自由度と収益率が高いメニューに取り組んでみるのはいかがでしょうか。患者それぞれの悩みに寄り添ったプランであれば顧客の満足度やリピートにも繋がります。
客単価を上げる具体的な方法については後ほどさらに詳しく述べていきます。
【整骨院・接骨院】一人経営者の注意点
一人院長として働くにあたり、気を付けなければいけない点について解説していきます。
施術に集中できる環境を作る
院長として一人で院を回していくのはもちろん大変な仕事です。しかし、大変なのは単純に仕事量が多いからというだけではありません。そもそも、一人院長は経理から患者のサポートまで全てを一人で行わないといけません。やることも多いし業務内容も幅広い。これでは、いずれ疲弊して働けなくなってしまうかもしれません。
解決策としては、やはりできるだけ施術に集中できる環境を整えることです。複雑な経理業務を税理士にお願いするなど、施術には直接関わらないが重要な業務を外部に委託することも有効です。
あるいは、環境を改善して業務の効率化を図ってもいいでしょう。店舗の内装から営業時間まで自分で決められる決定スピードの速さは、やはり一人院長ならではの魅力です。自分と患者にとって快適な環境を構築することは、施術のクオリティだけでなく最終的な患者の満足度にも関係します。
相談できる相手がいない
大きな接骨院であればメンバーにもある程度の多様性が出てきます。院長としての悩みも、現場を取り仕切るチーフや他の院で働いたこともあるベテランとの相談である程度解決できるかもしれません。
しかし、一人で経営していると相談できる相手がすぐ身近に見つかるとも限りません。近隣施設の経営者も患者とのコミュニケーションといった面では相談できるかもしれませんが、経営状況といった踏み入った事情は話しにくいでしょう。一人で経営の舵を握れることは雇われる側では実現できない自由とやりがいを得られます。一方で、相談できる人間がいない孤独感は想像以上に重いものです。
こちらの解決法としては、オンラインセミナーなど近い悩みを抱えた同業者が集まるイベントに参加してみること。近隣の地域にはいなくても、全国には一人で院を経営するにあたって同じような課題を抱えた経営者は少なくありません。こうした相談・学習の場でパネリストや参加者に意見を聞いたり相談したりすることで、「一人ではない」という安心感が生まれ、ひいては安定した気持ちで施術に臨めるでしょう。
【整骨院・接骨院】患者様一人当たりの売上を上げるためには
先ほど少し解説しましたが、売上を上げる要因の一つは客単価です。施術費は患者に施したサービスに対する対価として得られるもの。このサービスの価値を上げる具体的な手法について説明していきます。
顧客満足度を上げる
施術の質を上げ、「また来たい」と思ってもらえることが肝心です。しかしながら、顧客の満足度は純粋に施術だけでなく院の雰囲気や知りたい情報へのアクセスのしやすさなど、複合的な要因によって決まります。
例えば、予約の方法。最近はウェブ上での予約も一般的になってきました。サイトが使いにくかったり見にくかったりすれば、いくら院長の腕がよくてもなんとなく客足は遠のいてしまいます。
施術の技術を上げることはもちろんですが、プロモーションやアフターケアなど細かいところの差が最終的な顧客満足度に繋がります。
専門的な施術を行う
先ほどが患者の心理面での強化とするなら、こちらは施術面での強化です。「他で受けられない」けど「どうしても受けたい」「受けた場合のメリットが大きい」施術はそれだけ価値が上がります。
例えば、スポーツをしている学生に特化して怪我を減らすための動きを教える運動療法や、産後のママさんを対象にした骨盤ケアが挙げられます。先ほど述べた自費診療もこちらに含みます。こうした独自のメニューは院の立地やアプローチしたい顧客層に大きくかかわります。自分の院の特性や集めたい客層をしっかりと見極めてプランを構築してください。
一人接骨院・整骨院の売上についてのまとめ
一人で院を経営していくことは並大抵の苦労ではありません。院の運営だけでなく宣伝・広告、そしてなにより柔道整復師としての実力がシビアに問われる世界です。しかしながら、一国一城の主として院を担い、患者と充実した交流をしていくことは、雇われている身では得難い経験でしょう。
一人院長としてやっていこうと決意したなら、自分の強みや予算・限界を理解し、目標に向かって進んでいってください。