ランニングなどの運動時に脛(すね)の骨が痛むケガが「シンスプリント」です。ほとんどの場合で、シンスプリントは患部を安静にすることで症状の改善を望めます。
しかし、大事な試合や大会前などであれば、できる限りスポーツを休むことなくシンスプリントを治していきたいですよね。
そこで当記事では、運動を続けながらシンスプリントを改善する方法を解説しています。
また、普段からできる予防法も紹介していますので、ぜひ最後まで目を通してみてください。
シンスプリントとは?まずは原因を確認
シンスプリントは、脛骨(すねの骨)を覆っている骨膜(筋肉の付着部)に炎症を起こした状態であり「脛骨過労性骨膜炎(けいこつかろうせいこつまくえん)」とも呼ばれています。
一般的にシンスプリントというと、脛骨の内側、中央より下部分(遠位1/3)の後方が痛むタイプを指します。
症状への適切な対応が行えるよう、シンスプリントの原因をまずこちらで把握しておきましょう。
オーバーユース(足首の使い過ぎ)
シンスプリントのおもな原因には「運動にともなう足首の使い過ぎ」が考えられています。
ランニングやジャンプなどの運動で、脛骨に付着する筋肉が繰り返し引っ張られます。それにより骨膜にストレスが加わり、炎症を起こしてしまうのです。
運動選手の中でも、とくに長距離ランナーにシンスプリントは多い傾向があります。
また、運動量や質の急な変化も影響してくるため、新入生やシーズンの開始時期にシンスプリントを訴える方が増えてきます。
足首の硬さ・筋力不足
下腿部(膝下)に付着する「腓腹筋(ひふくきん)」や「後脛骨筋(こうけいこつきん)」といった筋肉が硬くなっていると、同じ運動でも骨膜に牽引のストレスが加わりやすくなります。
筋肉を硬くする要因には、疲労の蓄積やストレッチ不足などが挙げられるでしょう。
また、ふくらはぎの筋力低下も、シンスプリントのリスク要因の一つです。筋力不足から運動フォームが乱れ、脛骨への負担を強めてしまうことが考えられます。
足の形態異常(扁平足・回内足)
足の裏が平たくなった「扁平足(へんぺいそく)」や、足首が内側に倒れた「回内足(かいないそく)」の方は、シンスプリントになりやすいと言われています。
足の構造が崩れることで、後脛骨筋などすねに付着する筋肉が伸びた状態となります。それにより、骨膜が余計に引っ張られて、炎症を起こしやすくなるのです。
参考記事:「扁平足にはどんなデメリットがある?扁平足の原因や自分でできる改善法も解説」
練習環境の問題
普段の練習環境により、シンスプリントのリスクを高めてしまう場合があります。
とくにアスファルトや道路など、硬い路面の上でランニングやジャンプなどの運動を行うと脛骨に強い衝撃がかかってしまいます。
また、練習時に使用するシューズにも注意が必要です。靴底が薄く、クッション性が低い靴を使用していると、その分脛骨への負担を強めてシンスプリントを発症しやすくなります。
シンスプリントは走りながら治せるもの?
運動開始時や運動後の痛みに限られるのであれば、スポーツを続けながら痛みを軽減できるケースが多いです。このあと紹介するセルフケアをぜひ続けてみてください。
ただし、安静時も痛んだり、痛みでスポーツパフォーマンスに影響が出たりする場合は、重度のシンスプリントが考えられます。走りながらでは回復が追いつかないため、運動の制限が必要となります。
そのまま使い続けることで症状が進行し、普段の生活に支障が出るばかりか、疲労骨折につながりかねません。よりスポーツ復帰まで時間がかかってしまいますので、くれぐれも無理はし過ぎないように気をつけてください。
【走りながら治す】シンスプリントを改善する対処法
それでは、シンスプリントの改善が期待できる対処法をみていきましょう。
運動後にアイシングをする
運動後にアイシングを行いましょう。痛みが出ている箇所を中心に、氷水を5〜10分ほど当てて冷やしてください。
冷却には炎症を抑える効果のほか、筋肉の温度を下げることで疲労回復を促す効果も期待できます。
テーピングを貼る
シンスプリントの改善を図るには、運動時のテーピングがおすすめです。
テーピングを貼ることで、後脛骨筋の働きをサポートしたり、アーチ構造(土踏まず)を支えたりできると言われています。
シンスプリントには、5cm幅のキネシオテープと7.5cm幅のバンテージを使った貼り方があります。自分で貼ることはむずかしいため、以下の動画を参考に周りの方に貼ってもらうようにしましょう。
STEP2:同様の場所から開始し1/2ずらして貼りましょう
STEP3:圧痛部位を確認しその上で交わるようにクロスさせます
STEP4:1/2程度重ねて再度クロステープを貼りましょう
STEP5:クロスさせたテープの上にバンテージテープを巻きましょう
※立方骨は、外くるぶし前方のくぼみから、指2本分ほど前方・指1本分ほど下方に指を滑らせたところあたりにある骨のことです。
足の筋肉をマッサージをする
マッサージを行い筋肉や筋膜の柔軟性を高めることで、骨膜にかかるストレスを緩和できます。とくにシンスプリントに対しては、冷却とマッサージが同時に行える「アイスマッサージ」がおすすめです。
具体的な方法や注意点をこのあと紹介していますので、ぜひご参照ください。
ストレッチで筋肉を伸ばす
筋肉の硬さをとるために、ストレッチを行いましょう。シンスプリントに対しては、すねやふくらはぎ周辺のストレッチが有効とされています。
簡単にできるストレッチ方法がありますので、このあと詳細をお伝えします。
痛みが悪化する場合は練習量を減らす
セルフケアを行なっても痛みが悪化する場合は、足に衝撃のかかる運動は控えることが望ましいです。そのままランニングを続けていては、症状の悪化を招いてしまうかもしれません。
医療機関にも一度相談してみて、症状にあわせた処置を受けるようにしましょう。
参考記事:【シンスプリントの治し方】脛(すね)の痛みの原因やストレッチ・テーピングなど予防法も紹介
シンスプリントの痛みを緩和するストレッチ・マッサージ方法
ここからは、シンスプリントを改善に導くストレッチやマッサージの方法をご紹介します。
ぜひ無理のない範囲で、運動の前後や普段のセルフケアに取り入れてみてください。
アイスマッサージ
氷を使ったマッサージ方法になります。
運動後に行うことで患部の炎症を抑えたり、疲労回復を促進したりする効果が期待できます。
STEP2:痛みのある部位を中心に上下に動かします
STEP3:凍傷に十分注意して実施しましょう
後脛骨筋(こうけいこつきん)ストレッチ
脛骨の内側から足首にかけて付着する「後脛骨筋」を伸ばすストレッチです。後脛骨筋をやわらかくすると、運動時に脛骨が引っ張られる力が弱まるため、シンスプリントの改善につながります。
STEP2:足首をさらに斜め後方へ反らせましょう
STEP3:数秒間姿勢を保持しましょう
STEP4:姿勢を元に戻しましょう
※ふくらはぎの内側が伸びるのを感じましょう
腓腹筋(ひふくきん)ストレッチ
ふくらはぎに位置する「腓腹筋」を伸ばすストレッチです。後脛骨筋と同様、腓腹筋の柔軟性を高めると、骨膜にかかる牽引力を弱めることができます。
STEP1:壁に手をつき、足を大きく前方に開きましょうSTEP2:前方の足に体重を乗せ、ふくらはぎが伸びた状態を保持しましょう
STEP3:ゆっくりと戻しましょう
STEP4:繰り返し実施しましょう
※踵(かかと)が床から離れないように注意しましょう
【普段から実践】シンスプリントの予防法
シンスプリントが再発するケースは少なくありません。
もしランニングやダッシュ、ジャンプなどの運動をされている場合は、普段から次のような予防を継続して行うことがおすすめです。
運動量を調節する
すねの痛みを繰り返している方は、オーバーユースになっていないか練習時間や運動メニューを見直してみましょう。
とくに長期の休み明けで、久しぶりに運動を再開する際は要注意です。急激な運動量の増加はシンスプリントのリスクを高めるため、徐々に強度を上げていくように気をつけましょう。
シューズや練習環境を見直す
クッション性が低い靴を使用していると、脛骨にかかる衝撃を強めてしまいます。使い古したシューズは靴底がすり減っているケースが多いため、定期的に買い換えることをおすすめします。
また、硬い路面での練習も、シンスプリントの原因の一つです。ジャンプやダッシュ、ランニングなど足に負担のかかる運動は、土のグラウンドなどなるべくやわらかい地面を選んで実施すると良いでしょう。
足裏やふくらはぎの筋肉を鍛える
扁平足や回内足の傾向のある方は、足の構造が崩れてしまわないよう「タオルギャザー」で足裏や指の筋力を鍛えておきましょう。
やり方は簡単です。
床にタオルを広げてください。そして手前の端に足をおき、指の力を使ってタオルを手繰り寄せていきましょう。
また、「ヒールレイズ」もふくらはぎの筋力を鍛えて足首の安定性を高められます。壁に手をつき体を支えながら、両足でつま先立ちを繰り返しましょう。
ぜひ普段の補強運動として、取り入れてみてください。
まとめ
軽症の場合に限りますが、シンスプリントは運動を続けながらでも痛みを軽くしていくことは可能です。
しかし、セルフケアを続けても痛みが悪化する場合は、注意が必要です。症状がより慢性化するおそれがありますので、ランニングやジャンプなど足に負担のかかる運動は休止することを考えましょう。
また、シンスプリントを繰り返している方は、普段からの予防にも努めてみてください。ストレッチや筋トレを継続して行うことで、シンスプリントの再発を防止できるでしょう。
それでは、あなたを悩ませるすねの痛みの改善に、本記事が役立てば幸いです。
【参考文献】
1)Phil Newman 1, Jeremy Witchalls 1, Gordon Waddington 1, Roger Adams 1:Risk factors associated with medial tibial stress syndrome in runners: a systematic review and meta-analysis
2)R. Michael Galbraithcorresponding author and Mark E. Lavallee:Medial tibial stress syndrome: conservative treatment options