太もも(大腿)の裏が痛いのはなぜ?痛みの原因と簡単ストレッチ・マッサージを紹介

太ももの裏が痛くなると、日常のさまざま場面に影響します。

部活などでの運動中はもちろん、自転車に乗っている時、椅子に座っている時も痛みが気になってしまうはず。

それだけに、太もも裏の痛みを放置するべきではありません。

当記事では、太もも(大腿)裏の痛みの原因や、おすすめセルフケア方法を紹介します。最後まで目を通すことで、なぜ太ももの裏が痛むのかがわかり、仕事やスポーツにより一層集中して取り組めるでしょう。

ぜひ参考にしてください。

太もも裏の構造(筋肉・神経)を確認しよう

痛みの原因を見る前に、太もも裏の構造について確認しておきましょう。

太もも(大腿部)の裏側には、「大腿二頭筋(だいたいにとうきん)」と「半腱様筋(はんけんようきん)」「半膜様筋(はんまくようきん)」という3つの筋肉がつきます。

そして、上記3つの筋肉を合わせた名称が「ハムストリングス」です。この後もたびたび出てくるので把握しておいてください。

太もも裏に付くハムストリングス(大腿二頭筋・半腱様筋・半膜様筋)

また、太ももの裏には「坐骨神経(ざこつしんけい)」という名の太い神経が走っています。

なお、太もも裏の筋肉や神経は、「足を後ろに上げる」「歩く」「膝を曲げる」といった動作に作用します。

【違和感】太もも裏が痛い原因とは?

ここから、太もも裏が痛む原因として考えられる、3つの症状(病気)について詳しく見ていきます。

太もも裏が痛む理由として考えられるのは、おもに「神経の損傷」もしくは「筋肉の損傷や炎症」です。痛みの原因や痛めたきっかけによって、症状が少しずつ異なります。

いずれも、軽症であれば2週間ほどで痛みが引くケースが多いですが、重症だと3か月以上痛みが続く場合もあります。

また、以下で紹介するのはあくまで一例です。正確な診断は医療機関でしかできないという点をあらかじめご確認ください。

では見ていきましょう。

参考記事:太ももが痛い原因を部位別に徹底解説!ストレッチやセルフマッサージなど治し方も紹介

坐骨神経痛

坐骨神経痛(ざこつしんけいつう)に悩んでいる様子

1つ目は「坐骨神経痛(ざこつしんけいつう)」です。腰から足にかけて走る坐骨神経に沿って痛みしびれが現れる症状を指します。

したがって、ある特定の病気を指すわけではありません。坐骨神経痛が現れる病気の例は以下の通りです。

  • 腰部脊柱菅狭窄症(ようぶせきちゅうかんきょうさくしょう)
  • 梨状筋症候群(りじょうきんしょうこうぐん)
  • 腰椎椎間板(ようついついかんばん)ヘルニア

上記のように、坐骨神経痛は骨の変形や筋肉の緊張によって発生しやすいですが、妊娠時に現れるケースもあります。もし、「太もも裏がピリピリ痛む、かつ腰も張っている」という場合は、坐骨神経痛である可能性を考えましょう。

参考記事:【腰から片側の足にかけての痛み】坐骨神経痛の原因と3つの対処法を専門家が解説!
参考記事:坐骨神経痛でやってはいけないことは?つらい症状を軽くする簡単ストレッチも紹介!

ハムストリングス付着部炎

2つ目は、ハムストリングスが付く部位に炎症が起こる「ハムストリングス付着部炎」です。おもに走ったりジャンプしたりするスポーツがきっかけで発症します。

ハムストリングスは、臀部(お尻)付近の「坐骨結節(ざこつけっせつ)」という部位に付いており、この部位に炎症が起こることで痛みが現れます。

したがって、太もも裏の上部(お尻に近い部位)が痛むのが特徴です。歩いたりしゃがんだりする瞬間はもちろん、椅子に座った際に痛みが出やすいので注意してください。

太もも裏の肉離れ

3つ目に考えられるのが、ハムストリングスが損傷・もしくは断裂する「肉離れ」です。スポーツ経験があれば、一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。

なお、肉離れの正式名称は「筋挫傷(きんざしょう)」です。

肉離れはさまざま部位に発生しますが、最も発生率が高いのがハムストリングスです。肉離れはスポーツがきっかけで発症するケースが多いですが、重い荷物を持った瞬間に発症する場合もあります。

また、肉離れでは「太もも裏を伸ばすと痛い」「歩くと太もも裏が痛くなる」などの症状のほか、内出血(皮膚内での出血)が見られるのが特徴だといえます。

参考記事:肉離れを早く治すコツとは?痛みの原因に効くストレッチやマッサージ・食べ物を解説
参考記事:肉離れが治るまで何日かかる?早く治すコツや部位別のストレッチ方法も紹介

太もも裏の痛みを放置するとどうなる?

太もも裏の痛みが小さく気にならない程度なら、「そのうち痛みは引くだろう」と、放置してしまうこともあるでしょう。

しかしながら、太もも裏の痛みをそのまま放置するのはおすすめしません。

もし痛みをそのままにすると、さらに痛みが強まってしまう可能性が高いです。時間の経過とともに、我慢できないほどの激痛に変化するケースもあるでしょう。

また、太もも裏から腰や膝にかけて痛みが広がってしまうリスクも考えられます。

とくに、日々スポーツに打ち込んでいる方や、仕事で長時間歩き回る方は、太もも裏の痛みを放置せず早めにケアしましょう。

太もも裏の痛み改善に効果のあるセルフケアを紹介

ここから、太もも裏の痛みに悩む方におすすめのセルフケアを解説します。

どれもすぐに始められる簡単な方法なので、ぜひ実践してみてください。

痛みが強いうちは激しい運動を避ける

太もも裏の痛みが強いうちは、負荷の大きい・激しい運動は避けるべきです。

大会を控えたスポーツ選手であれば、痛みを押して練習したくなりがちですが、無理に動くと痛みを悪化させることになりかねません。

走る・しゃがむなどの動作は避け、別の箇所のトレーニングを行いましょう。あわせて、このあとに紹介するストレッチを入念に行うのもおすすめです。

太もも・股関節のストレッチを行う

太ももや股関節のストレッチも効果的です。

ゆっくり筋肉を伸ばすことで、太もも周りの血流が良くなり、痛みが緩和されやすくなります。では、おすすめのストレッチを紹介しますので、ぜひ取り入れてみてください。

1つ目は「ハムストリングスストレッチ」です。

ハムストリングスストレッチ
STEP1:仰向けとなり片足を抱えます
STEP2:可能な限り膝を伸ばしましょう
STEP3:元の姿勢に戻ります
STEP4:繰り返し実施しましょう
※もも裏の筋肉の伸びを感じながら行いましょう
※太ももがお腹から離れないように注意してみてください

名前の通り、上記のストレッチによって「ハムストリングス」を効率よく伸ばせます。就寝前に布団の上で行うのもよいでしょう。

2つ目は「大殿筋(だいでんきん)ストレッチ」です。

大殿筋ストレッチ
STEP1:片脚を反対側の太ももの上に乗せます
STEP2:前膝を抱え反対側の肩へ引き寄せましょう
STEP3:元の姿勢に戻ります。繰り返し実施しましょう
※お尻の筋肉が伸びた状態を保持しましょう
※腰が丸まらないように注意してみてください

こちらのストレッチを行うことで、「股関節を反る」「歩行」など、ハムストリングスと似た働きをする「大殿筋」が伸びます。大殿筋が緩むとハムストリングスも緩みやすくなります。

椅子に座ったまま行えるので、仕事や勉強の合間に実施してみてください。

太もも裏をセルフマッサージする

太もも裏のセルフマッサージもおすすめです。ストレッチと比べて、筋肉をよりピンポイントにほぐせるメリットもあります。

とはいえ、太もも裏の筋肉を自分の手でマッサージするのは意外と難しいです。その際はグリッド(筋肉を伸ばすローラー)を使用してみてください。

では、グリッドを用いたセルフマッサージ方法を紹介します。

グリッドマッサージ(ハムストリング)
STEP1:グリッドを準備しましょう
STEP2:グリッドに太ももの後面を当てます
STEP3:身体を動かし筋肉をマッサージしましょう
※腰を反らさないように注意しましょう
グリッドを使えば、手軽にハムストリングスをセルフマッサージできます。長い間使えるアイテムなので、ぜひ購入を検討してみてください。

テーピング・サポーターを着用する

太もも裏の痛みが強く、歩く動作にも支障が出ている場合は、テーピングやサポーターを着用してみましょう。

テーピングやサポーターには、筋肉の動きを適度に制限し固定する働きがあるので、着用することで歩行動作が楽になります。

テーピングとサポーターのうち、より簡単に着用するならサポーターがおすすめです。通販サイトや薬局で販売されているので、ご自身の太もものサイズに合うものを選んでみてください。

ただし、テーピングやサポーターそのものには痛みを緩和する効果はありません。

したがって、太もも裏の痛みが減ってきた段階で取り外すように心がけましょう。

座り姿勢を整える

太もも裏の痛み緩和には姿勢を整えるのも大事

太ももの裏が痛い時に注意したいのが「座った姿勢」です。

背中が丸まった、いわゆる「猫背」のような姿勢で長時間座ることで、ハムストリングスが縮み負荷がかかってしまいます。すると、肉離れや坐骨神経痛につながりやすくなってしまいます。

そこで、座った際に正しい姿勢を心がけましょう。適度に胸を張り、背中が丸まらないように注意してみてください。

またパソコン作業する際は、画面の位置を正しい姿勢での目線の高さに調節することも大切です。画面の位置が低すぎると、つい目線も下がり背中が丸まりやすくなってしまいます。

最初は意識する必要があると思いますが、そのうち自然と正しい姿勢で座れるようになるはずです。

参考記事:猫背を治す方法とは?姿勢改善にオススメのストレッチ・筋トレを詳しく紹介!
参考記事:【簡単】姿勢を良くする方法4選!猫背や反り腰を改善して正しい姿勢を保つには

クッションの使用もおすすめ

姿勢を整えるのとあわせて、座る際にクッションを使用するのも有効です。

クッションの厚みによって太もも裏の負荷がより減るので、痛み改善に役立ちます。座って行う作業が多い方はぜひ購入を検討してみましょう。

ネットショップなどで、多種多様なクッションが販売されています。デザインや素材などを比較しながら、気に入ったクッションを探してみてください。

痛みが改善しない場合は病院を受診しよう

もし、太ももの裏の痛みが一向に改善しない場合は、病院(整形外科)を受診しましょう。筋肉や神経とは別のより重篤な病気が原因かもしれないからです。

病院の精密な検査によって、痛みの正確な原因が分かります。そのうえで、お医者さんと話し合いながら、その後の対処法を考えていきましょう。

まとめ

太もも裏の痛みは決して侮れません。スポーツのパフォーマンスに影響しますし、普段の歩行動作もしにくくなってしまう場合があります。

繰り返しになりますが、痛みを放置することは避けるべきです。

ぜひ本文で紹介したセルフケアを継続してみてください。ストレッチやセルフマッサージを行ったり、姿勢を整えたりすることで、太もも裏の痛み改善が期待できます。

それでは当記事が、あなたのお役に立てば幸いです。

【参考文献】
1)日本ペインクリニック学会:Ⅳ J.下肢の疾患・痛み – J 1.坐骨神経痛
2)日本整形外科学会:坐骨神経痛

3)日本臨床スポーツ医学会:5.ハムストリング付着部損傷の手術
4)東邦大学 医療センター 大橋病院 整形外科:スポーツ整形外科の主な疾患:ハムストリング付着部炎
5)日本臨床スポーツ医学会:1.肉離れの診断と治療 – 日本臨床スポーツ医学会
6)公益社団法人 日本整形外科学会:肉離れ