日常生活も送れないほど、腰が強く痛む疾患が「ぎっくり腰」です。
ぎっくり腰を和らげる方法として「ストレッチ」が思い浮かぶ方もいるでしょう。ただし、ぎっくり腰に対してストレッチを実施する際には注意が必要です。むやみにストレッチを行うと、逆にぎっくり腰が悪化しかねません。
当記事では、ぎっくり腰の緩和・予防のためにストレッチを行う際の注意点やポイントを解説します。最後まで目を通すことで、ぎっくり腰から早く回復できたり、ぎっくり腰を未然に防いだりできるでしょう。
ぜひお役立てください。
ぎっくり腰(急性腰痛)とは?
最初に、ぎっくり腰とはどういった疾患なのかを確認しておきましょう。
「ぎっくり腰」はいわゆる俗称で、正式名称は「急性腰痛症(きゅうせいようつうしょう)」です。
突然、激痛が腰に現れるのが特徴で、立ち上がれなくなってしまうケースも少なくありません。したがって、ほかの腰痛と比べて「突然現れる」「痛みが強い」という点が異なるといえるでしょう。
ぎっくり腰が起きる直接の原因としては、腰の筋肉の肉離れであったり、腰の骨(腰椎や椎間板)の捻挫や変形であったり、さまざまです。
ただ、どういった原因であれ、腰回りの筋肉が強い炎症を起こしているので注意が必要だといえるでしょう。
余談ですが、海外ではぎっくり腰を「魔女の一撃」と呼ぶことがあります。前触れもなく激痛が現れる様子からも、言い得て妙かもしれません。
参考記事:これってぎっくり腰!?腰椎捻挫の症状と自分でできるリハビリ方法をわかりやすく解説!
参考記事:これって肉離れ?腰に走る激痛の適切な対処法と早く治すコツを紹介!
ぎっくり腰は3つの段階に分かれる
ぎっくり腰のもう1つの特徴が、段階(時期)によって痛みの様子が異なるという点です。
以下のように分かれるので参考にしてみてください。
- 急性期:発症から2日以内、痛みレベルが最も高い時期
- 亜急性期:発症から3〜6日以内、少しずつ動けるようになる時期
- 慢性期:発症から7日以降:日常生活が送れるようになる時期
ただし、上記はあくまで目安で、症状の経過については個人差があります。
したがって、ぎっくり腰を発症してから日常生活を送れるようになるまで、早くても1週間はかかります。「ぎっくり腰が一日で治った」という話を聞く機会があるかもしれませんが、そういったケースはほぼ無いとお考えください。
なお、ぎっくり腰の急性期には、激痛によりほとんど動けません。なるべく痛みが出ない姿勢や寝方を心がけ、炎症が引くのを待ちましょう。
参考記事:【ぎっくり腰】即効では治らない!1日でも早く治す適切な対処法を解説!
参考記事:【ぎっくり腰】これでひと安心!楽な姿勢(寝方・座り方)と対処法を解説!
ぎっくり腰にストレッチは有効!ただし時期に注意しよう
では、ぎっくり腰にストレッチは効果が見込めるのでしょうか。
結論からいうと、ぎっくり腰から早期回復するためにストレッチは有効です。
ただし、発症して間もない急性期にストレッチを行うことは避けましょう。ストレッチを行うことで、筋肉の炎症が強まったり広がってしまったりするおそれがあるからです。
よって、痛みが和らぐ亜急性期あたりからストレッチを開始してみてください。
先述したように、ぎっくり腰の経過には個人差があるので、急性期・亜急性期の見極めがやや難しいですが、「いつから発症したか」で日数を数えつつ、痛みの様子とあわせてストレッチの開始時期を判断してみましょう。
また、接骨院や整体院での「マッサージ」「筋膜リリース」といった施術も、ぎっくり腰の急性期には避けるべきです。
腰の痛みにストレッチが効果的な理由
補足として、ぎっくり腰を含む腰の痛みにストレッチが効果的な理由についておさえておきましょう。
まず、腰のストレッチを行うことで筋肉が伸ばされ、血液の流れが良くなります。すると腰回りの筋肉に酸素が多く送られ、痛みが改善されやすくなるのです。
また、ストレッチによって関節(腰椎)や筋肉の動きがスムーズになり、腰への負担を軽減できます。
したがって、ぎっくり腰からの回復はもちろん、ぎっくり腰の再発予防としてもストレッチが有効です。
「腰の疲れが溜まっている」「腰が張っている感じがする」など、ぎっくり腰になりそうな時には、このあとに紹介するストレッチを実施してみてください。
参考記事:【1日たった5分】腰痛改善に必要な簡単ストレッチを原因とあわせて紹介!
参考記事:寝ながらできる腰痛改善ストレッチ!4つの症状別の対処法を解説
ぎっくり腰の緩和・予防におすすめのストレッチを解説
ここから、ぎっくり腰からの早期回復・予防のためにおすすめのストレッチを3つ紹介します。
どれも簡単に実践できるので、ぜひ続けてみましょう。ただし、痛みの様子をみながら慎重に行うことを忘れないでください。
お尻周りのストレッチ
1つ目は「大殿筋(だいでんきん)ストレッチ」です。
STEP2:お尻を斜め後方へ動かしましょう
STEP3:元の姿勢に戻ります
STEP4:お尻の筋肉の伸びを感じながら繰り返しましょう
こちらのストレッチには、お尻の後面に付く「大殿筋」を柔らかくする効果があります。夜寝る前や朝起きた後に行うのもよいでしょう。
背中のストレッチ
2つ目は「ヒップロール」です。
STEP2:両手を真横へ広げます
STEP3:両膝を閉じたまま片側へ倒しましょう
STEP4:元の姿勢に戻ります
※腰の筋肉の伸びを感じながら実施してみてください
※肩が床から離れないように注意しましょう
上記のストレッチを行うことで、背中に付く「脊柱起立筋(せきちゅうきりつきん)」が柔らかくなります。就寝時や起床前に、布団やベッドで寝ながら実施してみましょう。
骨盤の体操
3つ目は「骨盤前後傾運動(こつばんぜんこうけいうんどう)」です。
STEP2:骨盤を転がすように前後に動かしましょう
STEP3:骨盤と一緒に背骨も動かします
STEP4:可能な範囲で大きく動かしましょう
こちらの体操を行うことで、骨盤の動きが改善します。仕事の休憩時間を使って行ってみても良いかもしれません。
ぎっくり腰へストレッチを行う際のポイント・注意点
ここで、ぎっくり腰に対するストレッチを行うにあたってのポイントや注意点を解説します。
繰り返しになりますが、ストレッチを開始する時期が重要です。くれぐれも、ぎっくり腰が発症した直後にストレッチを行うことは避けましょう。
ストレッチを行う際は、力を抜きリラックスしたうえで、呼吸を止めないように意識してみてください。「お風呂上がり」など身体が温まり筋肉が柔らかくなっている時に実施するのも有効です。
また、「ストレッチポール」を使ってみたり、筋膜リリースを行うために「グリッド」を用いてみたり、バリエーションを増やすのもおすすめです。
そして、即効性には期待せず、コツコツ継続するように心がけてみてください。毎日ストレッチを続けることで、徐々に効果が見えてくるでしょう。
ぎっくり腰が改善しない場合は病院を受診しよう
もし、1か月以上経ってもぎっくり腰が改善しない、あるいはストレッチを続けているのに何度もぎっくり腰が再発する場合は、一度病院で診てもらうべきです。
腰の筋肉や骨とは別の部位に原因があるかもしれませんし、重篤な病気を発症しているケースもあり得るので、なおさら医療機関での精密な検査が大切になります。
検査を行い正確な原因が特定できたうえで、どのように対処するべきかをお医者さんと相談してみてください。
まとめ
ぎっくり腰を発症すると、強い痛みとともに焦りを感じるものです。さまざまな方法で早期改善を試みたくもなるでしょう。ですが、ぎっくり腰の段階を冷静に判断することを忘れないでください。逆に痛みが増し、長引く結果になりかねません。
ぎっくり腰に対してのストレッチは有効です。ただし、発症直後に行うのは避け、炎症がある程度引いた段階から実施するように心がけましょう。日々のストレッチは、ぎっくり腰の予防にも有効です。ぜひ毎日コツコツ続けてみてください。
それでは当記事が、あなたの悩み改善に役立てば幸いです。
【参考文献】
1)腰痛診療ガイドライン改訂版策定委員会:腰痛診療ガイドライン改訂版
2)ANTHONY DELITTO, PT, PhD • STEVEN Z. GEORGE, PT, PhD • LINDA VAN DILLEN, PT, PhD • JULIE M. WHITMAN, PT, DSc GWENDOLYN SOWA, MD, PhD • PAUL SHEKELLE, MD, PhD • THOMAS R. DENNINGER, DPT • JOSEPH J. GODGES, DPT, MA:Low Back Pain Clinical Practice Guidelines Linked to the International Classification of Functioning, Disability, and Health from the Orthopaedic Section of the American Physical Therapy Association
3)相羽 宏, 舟崎 裕記, 川井 謙太朗:腰痛に対する運動療法—理学療法的視点から—