【要注意】脊柱管狭窄症でやってはいけないことは?自宅で出来るストレッチも解説!

「少し歩くと足が痛くなって歩けなくなる」「足にしびれがあるけど、前かがみになると治る」
上記のような症状が出ているあなたは、脊柱管狭窄症(せきちゅうかんきょうさくしょう)の可能性があります。

脊柱管狭窄症とは、背骨に何かしらの問題が起きており、神経が圧迫されることで痛みやしびれが引き起こされる病気です。 1)

当記事では、脊柱管狭窄症の方がやってはいけないことをテーマに、原因や効果的なストレッチと合わせて解説していきます。

最後まで読んでいただければ、脊柱管狭窄症への正しい対処法が身につき、痛みやしびれの悪化を予防することができます。ぜひ、最後までお付き合いください。

まずは脊柱管狭窄症の基礎を知ろう!

腰を抑えている写真

冒頭で説明したように、脊柱管狭窄症は簡単にいうと脊柱管あるいは椎間孔(ついかんこう)と呼ばれる神経の通り道が狭くなり、神経を圧迫している状態です。

少々わかりにくいと思うので、まずは脊柱管狭窄症のメカニズムを詳しく説明していきます。

まず、脊柱とは背骨のことです。背骨は椎骨(ついこつ)と呼ばれる骨が積み重なってできており、頭側から「頸椎、胸椎、腰椎、仙骨」と分けられています。

また、積み重なった椎骨には頭から腰まで筒状の通り道があり、筒の中を神経が通っています。

つまり脊柱管狭窄症とは、何かしらの原因で神経の通り道が狭くなり、神経を圧迫することで痛みやしびれ、運動障害などを引き起こす病気です。1)
脊柱管狭窄症を解説している図

それでは、どのような原因で神経の通り道が圧迫されるのでしょうか?

主には、加齢や労働(重いものを運ぶなど)、すべり症や椎間板ヘルニアなどの病気により椎間板や椎骨が変形し神経を圧迫することが原因となります。

また、脊柱管狭窄症の症状としては、以下の項目が挙げられます。

  • 歩いていると足に痛みやしびれが現れ歩けなくなり、少し休むと症状が軽くなり再び歩けるようになる。(間欠跛行:かんけつはこう)
  • 立っていると足のしびれや痛みが強くなる
  • 背中を反らせたり、ひねったりするのが辛い
  • しびれや痛みは足の両側にある
  • 座ったり、前かがみになったりすると楽になる
  • 歩くのはつらいが、自転車は乗れる1)

これらの項目は脊柱管狭窄症による症状ですが、進行すると足の力が入らなくなったり、便秘や尿漏れなどの排泄障害を引き起こしたりします。

加えて、脊柱管狭窄症は立つ、歩くなどの日常生活に欠かせない動きで痛みを引き起こします。

そのため、無理に動くことは痛みやしびれの悪化を招く可能性があり、病状が進行してしまうケースもあるのです。

これらの理由から、無理な動きをしないよう、脊柱管狭窄症の方がやってはいけないことを理解する必要があります。

【危険】脊柱管狭窄症でやってはいけないことは?

脊柱管狭窄症は、特定の運動によって病状が進行してしまい、痛みやしびれが強くなってしまうケースもあります。

なので、知らないうちに”やってはいけないこと”を行ってしまい、体に負担をかけてしまう可能性があるため非常に危険です。

それでは、これから解説する「やってはいけないこと」をしっかりと確認していきましょう。

体を反らせる姿勢は避けよう

脊柱管狭窄症は、体を反らせる姿勢で痛みやしびれが悪化します。1)その理由は、体を反らせることで、脊柱管が狭くなり神経を圧迫するからです。

しかし、体を反らせて脊柱管が狭くなるのは、脊柱の構造上で起こる生理的な変化です。そのため、すべての方が体を反らせるたびに、痛みやしびれが出るわけではありません。

というのも、加齢や骨の変形などにより、すでに神経を圧迫している方が体を反らせることで、より神経の圧迫が強くなり痛みやしびれが引き起こされるのです。

したがって、脊柱管狭窄症が疑われる方は痛みやしびれを悪化させるため、体を反らす動きはできるだけ控えるようにしましょう。

参考文献:【症状別】腰を反らすと痛い場合の対処法を3分で解説

痛みの出る運動・ウォーキングは控えよう

男女がランニングしている写真

脊柱管狭窄症には、身体機能の維持・向上や、日常生活の質を向上させる上で運動が有効とされています。1)なので、ウォーキングなどは足や腰の筋力低下を予防するのに効果的です。

しかし背筋を伸ばした状態で運動するのは、体を反らすのと同じく神経を圧迫し、痛みやしびれが悪化する可能性もあります。

加えて、背中周りの筋トレもオススメできません。なぜなら、筋トレの後は一時的に筋肉が硬くなり、神経を圧迫してしまうためです。

結果的に、痛みやしびれを悪化させる可能性がありますので、背中周りの筋トレは控えましょう。

寝る姿勢に気をつけよう

脊柱管狭窄症は、体を反らせることで痛みやしびれが悪化します。立っている時はもちろんのこと、寝ている時にも腰や背中を反ってしまう場合があります。

とくに、あお向けで寝る姿勢は体が反りやすいので注意が必要です。

以下の項目を参考に、寝るときの姿勢や環境の見直しをしましょう。

  • 背中を丸めるようにして横向きで寝る
  • お向けで寝るときは、クッションやタオルを膝下に入れて腰が反らないようにする
  • 寝具は枕の高さを合わせ、硬めのマットレスを選ぶ3)

【オススメ!】脊柱管狭窄症でやっても良い運動

先ほど脊柱管狭窄症に対して、運動が身体機能の維持に効果的であることをお伝えしましたが、どのような運動が安全に行えるのでしょうか。

簡単にまとめると、安全に行える運動とは「痛みやしびれのない姿勢で行える運動」になります。

それでは、脊柱管狭窄症の方が痛みやしびれのない姿勢でおこなえる、やってもいい運動を解説していきます。

水中ウォーキングで全身の筋力低下を予防しよう

通常のウォーキングでは、重力の影響で背中や腰への負担が大きくなり、痛みやしびれを引き起こしやすくなります。

したがって、水中ウォーキングで浮力を利用し、体への負担を減らすことは非常に効果的です。2)

他にも、水の抵抗力を利用することで全身の筋肉を使うため、無理なく筋力低下の予防ができます。

自転車型トレーニング器具を使った運動も効果的

自転車型トレーニング器具を使っている写真

脊柱管狭窄症は、前かがみの姿勢になることで痛みやしびれが楽になります。つまり、前かがみで運動をおこなえるサイクリングや自転車型トレーニング器具を使用した運動は非常に効果的です。

とくに自転車型トレーニング器具は、室内でおこなえて運動レベルも簡単に設定できるためオススメです。

ただし、長時間同じ姿勢で運動を続けていると、腰などの負担につながるため、こまめに休憩を挟むなどしましょう。

こまめなストレッチで正しい姿勢を身につけよう

脊柱管狭窄症は、椎骨や椎間板の変性といった背骨自体の問題に加えて、周辺の筋肉が硬くなることで神経の圧迫をより強めてしまうケースもあります。日常生活において筋肉を硬くしてしまうのは、姿勢の影響が強いでしょう。

とくに脊柱管狭窄症の方の多くは、脊柱起立筋(せきちゅうきりつきん)と呼ばれる背中の筋肉が硬く、反り腰姿勢になっている傾向があります。
なので、こまめにストレッチをおこない、筋肉を柔らかく保つことが背中や腰への負担を減らすのに効果的です。

もし、仕事で同じ姿勢が続いたり、座っている時間が長くなったりする時は、合間で簡単なストレッチをおこなってみましょう。

参考記事:【簡単】姿勢を良くする方法4選!猫背や反り腰を改善して正しい姿勢を保つには

脊柱管狭窄症の対処法!自宅で出来る効果的なストレッチ・運動を紹介

では、脊柱管狭窄症に効果的な自宅でできる簡単なストレッチを解説していきます。

筋肉の緊張は心理的影響を大きく受けるため、なるべくリラックスした環境でおこなうのが望ましいです。
たとえば、仕事終わりやお風呂の後などにおこなうと、よりストレッチの効果が高まるのでオススメです。

股関節周りの柔軟性を改善させる腸腰筋ストレッチ

脊柱管狭窄症は、腰や背中を反らせるような姿勢で痛みやしびれが悪化するため、正しい姿勢を保つ必要があります。

とくに、腰や背中を反ってしまう原因が筋肉にある場合は、原因となっている筋肉の緊張を和らげることが大切です。
中でも、腸腰筋(ちょうようきん)は股関節の前面にある筋肉で、腰椎や骨盤の動きをサポートしています。

つまり、腸腰筋が硬くなると腰椎を前方へ引っ張る力(腰を反る力)が大きくなり、背中や腰が反りやすくなるのです。腸腰筋の緊張を和らげ、背中を反らせる姿勢改善もしていきましょう。

腸腰筋ストレッチ

STEP1:片足を前方へ大きく開きましょう
STEP2:膝を曲げ前方の足に体重をのせましょう
STEP3:繰り返し実施します
STEP4:股関節の付け根の伸びを感じながら実施しましょう
※腰を反らさないように注意しましょう

背中の緊張を和らげる膝抱えストレッチ

膝抱えストレッチは、背中を丸めることで神経の通り道である脊柱管を広げます。

また、背中周りにある筋肉の柔軟性を高めることもでき、背中を反らせる姿勢も改善できます。

このことから、膝抱えストレッチは痛みやしびれを減らすのに非常に効果的なので、ぜひおこなってみましょう。

膝抱えストレッチ

STEP1:両足を抱えましょう
STEP2:腰を丸めるようにお腹に引き寄せます
STEP3:姿勢を保持しましょう
STEP4:腰が伸びるのを感じながらおこないましょう
※丸めたタオルを入れるとさらに伸びます

お尻の筋肉を強化するヒップリフト

大殿筋(だいでんきん)はお尻にある大きな筋肉で、正しい姿勢や体の安定性を保つために大切な筋肉です。そのため、大殿筋の筋力が弱まると脊柱や関節が不安定となり、正しい姿勢を保てなくなります。

結果的に、より神経を圧迫し痛みやしびれが強くなる可能性もあるので、お尻の筋トレも大切な運動です。

ただし、お尻を挙げる運動は、同時に背中や腰を反ってしまうこともあるため、正しい姿勢を意識しておこなうよう注意してください。

両脚ヒップリフト

STEP1:仰向け姿勢となり両膝を曲げましょう
STEP2:お尻を持ち上げましょう
STEP3:繰り返し実施しましょう
STEP4:体が一直線になるまでお尻を持ち上げましょう
※腰を反らさないうよう注意しましょう

脊柱管狭窄症でやってはいけないストレッチとは?

ここまで、脊柱管狭窄症に効果的なストレッチを紹介してきました。逆にやってはいけないストレッチはあるのでしょうか?

結論からいうと、体を反らすストレッチはやってはいけません。

たとえば、長時間仕事をしたり、座っている時間が長く続いたりすると、両手を挙げて背中を伸ばす方もいるのではないでしょうか。ですが、背中を伸ばす動きは神経を圧迫し、痛みやしびれを悪化させます。

したがって、背中を反らせる、ひねるなど、無理な動きでストレッチをおこなうことはやってはいけません。

【ほっとくとどうなる?】脊柱管狭窄症は早めの治療が大切

最後に、脊柱管狭窄症をほっとくとどうなるのかを解説していきます。

脊柱管狭窄症と診断を受けても、痛みやしびれなどの症状が軽いケースは対処せず、放置する方もいると思います。しかし、脊柱管狭窄症は自然に治癒することはありません。

そのため、適切な処置をおこなわなければ、病状の進行により手術が必要になることもあります。

進行した場合の症状は、以下になります。

  • 痛みやしびれが悪化する
  • 足の筋力が落ちて歩けなくなる
  • 尿漏れや便秘などの膀胱直腸障害になる

以上のように、病状が進行すると痛みやしびれだけではなく、日常生活に支障をきたすため、早めに治療を受けることが大切です。

まとめ

今回は、脊柱管狭窄症でやってはいけないことを解説しました。

最後にまとめますと、

  • 脊柱管狭窄症は骨や筋肉が神経を圧迫することで、痛みやしびれが出る
  • 背中を反らせる動きや、痛みの出る運動はやってはいけない
  • 起きているときだけでなく、寝ているときの姿勢にも注意が必要
  • 運動は腰や背中の負担を取り除いた姿勢でおこなう
  • 脊柱管狭窄症は痛みやしびれの度合いに関わらず、ほっといてはいけない

となります。

また、ストレッチや筋トレはすぐに効果が出ることはありません。なので、痛みやしびれを改善するには根気よく継続していくことが大切です。

それでは、当記事があなたの痛み改善のお役に立てれば幸いです。

参考文献
1)腰部脊柱管狭窄症診療ガイドライン2021(改訂第2 版)
2)Efficacy of Therapeutic Aquatic Exercise vs Physical Therapy Modalities for Patients With Chronic Low Back Pain – 2022 – Meng-Si Peng, Rui Wang, Yi-Zu Wang, et al – Physical Medicine and Rehabilitation
3)Radwan A, Fess P, James D, Murphy J, Myers J, Rooney M, Taylor J, Torii A. Effect of different mattress designs on promoting sleep quality, pain reduction, and spinal alignment in adults with or without back pain; systematic review of controlled trials. Sleep Health. 2015 Dec;1(4):257-267. doi: 10.1016/j.sleh.2015.08.001. Epub 2015 Oct 19. PMID: 29073401.