変形性股関節症でやってはいけないことは?生活での注意点やストレッチ方法も解説

「歩く」「しゃがむ」といった日常動作には、股関節の動作が欠かせません。そんな股関節に痛みが現れる病気の1つが「変形性股関節症」です。変形性股関節症を緩和するには、できるだけ股関節への負担を軽くすることが大切になります。そこで把握するべきは「やってはいけないこと」です。

当記事では、変形性股関節症においてやってはいけないこと・避けるべきことを解説します。また後半では、効果的なセルフケアを紹介しました。

最後まで目を通すことで、変形性股関節症を緩和するために何に気をつけるべきかが分かるでしょう。

ぜひお役立てください。

【確認しよう】変形性股関節症とはどんな病気?

最初に、変形性股関節症とはどういった病気なのか解説します。

変形性股関節症とは、その名の通り股関節がすり減ることで変形し、炎症や痛みを引き起こす病気です。股関節の前側はもちろん、お尻側も痛むケースがあります。

変形性股関節症の説明

痛みによって歩き方がぎこちなくなったり、しゃがむ・立ち上がるといった日常動作に支障が出たりします。また、就寝中に股関節が痛む「夜間痛」や、朝に股関節のこわばりが見られる場合も少なくありません。

変形性股関節症は、股関節への負荷や加齢が原因で発症する「一次性変形性股関節症」と、生まれつきの股関節の脱臼などが原因で発症する「二次性変形性股関節症」に分けられます。

また、男女比で見ると女性に多く見られ、50代以降に発症するケースが多いです。

なお、変形性股関節症を発症しているかどうかは、病院を受診してレントゲン画像を撮ってみないと判断できません。

参考:【股関節痛の原因は何?】関連する病気を専門家が解説!
参考:【足を開くと股関節が痛い】それって変形性股関節症?痛みの原因と対処法をわかりやすく解説!

変形性股関節症が進行するとどうなるの?

変形性股関節症は、症状の進行に応じて以下のように名前がついています。

・前股関節症
・初期股関節症
・進行期股関節症
・末期股関節症

前股関節症の段階では、おもに「股関節のだるさ・疲れやすさ」が見られます。そして初期股関節症から進行期股関節症に進むにつれて、痛みや股関節の動かしにくさが増します。

その後、股関節の変形が進み、末期股関節症になると歩けなくなるケースも多いです。

これらの症状の緩和や悪化を防ぐためには、股関節への負担が大きい「やってはいけないこと」を認識することが大事なのです。

変形性股関節症でしてはいけない・やってはいけないこと

冒頭でも少し触れたように、変形性股関節症の症状を緩和するために大切なのは「股関節への負担を減らすこと」です。逆にいうと、股関節へ負担がかかる行動や習慣はできる限り避けるべきだといえます。

では、具体的にどういったことをしてはいけない・やってはいけないのか、いくつか見ていきましょう。

股関節に負担がかかる座り方(正座・あぐら)

まず、座り方に注意するべきです。

あぐら」や「正座」、正座からお尻を横にずらした「横座り」など、股関節へ負担がかかる座り方はできるだけ避けましょう。

あぐらをかいている女性の写真

「自分が楽な座り方なら良いのでは?」と思われるかもしれませんが、たとえ自覚していなくても、股関節へ負担がかかっているもの。長時間座っている場合はなおさらです。

そして、股関節への負担が膝の痛みなどにつながる可能性もあります。

ご自身の生活習慣を振り返り、股関節への負担が大きい座り方をしていないか確認してみましょう。

悪い姿勢(猫背・反り腰・足を組む)

悪い姿勢も股関節への負担を増やす要因です。

歩いている時、股関節には体重の3倍から4倍の負担がかかっていると言われています。もし、「猫背」「反り腰」など悪い姿勢だと、重心バランスが崩れてさらに股関節の負担が増えてしまいかねません。

また、座っている時の姿勢が悪いと、股関節周りの筋肉が縮み、結果的に負担が増してしまいます。立っている時や座っている時の姿勢に注意してみてください。

くわえて、「足を組む」癖も、股関節へ負担をかけるので避けるべきです。

しゃがむ機会が多い・重いものを持つ仕事

変形性股関節症に悩む方にとって、「農業」「介護」「運送業」など、しゃがんだり重いものを持ったりする機会が多い仕事はできるだけ避けることが望ましいです。

自由に休憩できるならまだしも、仕事となれば長時間に渡ってしゃがむ・重いものを持つ動作が繰り返されることになります。股関節への負担が増えることは想像に難くありません。

とはいえ、仕事を変えることは容易ではないはず。もし、しゃがんだり重いものを持ったりする機会が多い仕事に従事している場合、「決して無理してはいけない仕事」であると認識しながら、オーバーワークにならないよう注意しましょう。

過度な運動・スポーツ

変形性股関節症の段階にもよりますが、股関節への負荷が軽い運動は効果的です。

ただし、過度な運動やスポーツはマイナスになってしまいます。痛みを我慢しての長距離ランニングや激しい筋トレは控えてください。

「股関節の痛みをなんとか改善したい」という焦りが強いと、つい運動量が増えがちです。くれぐれも注意しましょう。

不規則な生活・急激な体重増加

「寝不足」や「食べ過ぎ」など、不規則な生活も避けましょう。

睡眠不足では身体の疲労が蓄積しやすく、股関節の痛みが強まる可能性が高いです。

また身体のリラックスと緊張をコントロールする「自律神経」のバランスが崩れて、ストレスがたまりやすくなります。ストレスが過食や偏食につながり、肥満を招きます。

体重が増えれば、それだけ股関節への負担が増えるのはいうまでもありません。

変形性股関節症の緩和に効く!おすすめセルフケア方法

ここから、変形性股関節症の痛みを和らげるために効果的なセルフケア方法について解説します。

変形性股関節症を緩和するためには、「股関節への負担を減らす工夫」と「股関節周りの血流を良くすること」の両方が必要になります。

どれも効果が期待できるので、ぜひ参考にしてみてください。

まずは股関節のストレッチを続けよう

とくに手軽でおすすめなエクササイズが、股関節周りのストレッチです。

じっくりとストレッチを行うことで、筋肉が伸び血流が良くなるので痛みの改善に役立ちます。そして、股関節の柔軟性(可動範囲)が上がったり、関節の動きがスムーズになるといったメリットも期待できます。

では、おすすめのストレッチを紹介しますので、ぜひ実践してみましょう。

1つ目は「大殿筋(だいでんきん)ストレッチ」です。

大殿筋ストレッチ
STEP1:四つ這い姿勢になり、お尻を斜め後方へ動かします
STEP2:元の姿勢に戻りましょう。繰り返し実施しましょう
※お尻の伸びを感じながら実施してみてください
※腰を反らさないように注意しましょう

上記のストレッチは、お尻の後ろに付く「大殿筋(だいでんきん)」を柔らかくするのに適しています。歩く動作が楽になるという効果も期待できます。

2つ目は「腸腰筋(ちょうようきん)ストレッチ」です。

腸腰筋ストレッチ
STEP1:片脚を前方へ大きく開き、膝を曲げ前方の足に体重をのせましょう
STEP2:元の姿勢に戻ります。繰り返し実施しましょう
※股関節の付け根の伸びを感じながら実施しましょう
※腰を反らさないように注意してみてください

こちらのストレッチによって、股関節の前面に付く「腸腰筋(ちょうようきん)」を柔らかくできるので、「足を持ち上げる動作がスムーズになる」「体幹が安定する」などの効果があります。

セルフマッサージもおすすめ

股関節周りをセルフマッサージするのも有効です。ストレッチよりもピンポイントで筋肉をほぐせるメリットがあるほか、リラックス効果も期待できます。

セルフマッサージを行う際は、自身の親指や手のひらを使い、筋肉が厚い部分を中心にゆっくり揉みほぐしてみましょう。なお、強く押すと痛みが悪化する可能性があるので注意してください。

もしくは、グリッド(筋膜を伸ばすローラー)を使ってセルフマッサージするのもおすすめです。股関節をグリッドに乗せ、ゆっくり動かすことで効率的にほぐれるでしょう。

立っている・座っているときの姿勢に注意しよう

姿勢の乱れが股関節への負荷を増やします。日常生活のなかでの姿勢をチェックしてみてください。

立っている時や座っている時に、背中が丸まった「猫背」になっていたり、腰が反り過ぎた「反り腰」になったりしていませんか。仕事中などに、つい姿勢が崩れがちになるので注意が必要です。

具体的には、股関節・肩・耳が縦に一直線に並ぶように意識してみてください。このように心がけることで、重心が正しい位置に乗るので、股関節への負担が減るでしょう。

正しい立位姿勢を説明した写真

参考:【簡単】姿勢を良くする方法4選!猫背や反り腰を改善して正しい姿勢を保つには

股関節に負荷がかからない運動を行おう

過度な運動は避けるべきですが、股関節への負荷が少ない運動は効果的だといえます。

運動によって筋肉を使うことで「筋ポンプ作用」が活発になり、血流が良くなります。また、股関節周りの安定性も向上するので、負荷の軽減につながるでしょう。

なかでも「平らな道での軽いウォーキング」「プールでの水中ウォーキング」「支えを使った浅いスクワット」などがおすすめです。

短時間でも良いので、ぜひ継続してみてください。

できるだけ椅子・ベッドを使おう

股関節への負荷を軽くすることを考えると、「しゃがむ」「正座」「あぐら」はできるだけ避けるべきです。

したがって、食事や作業にはテーブルや椅子を用いて、就寝時はベッドを使用する「洋式」に近い生活環境が望ましいといえます。

もし、いわゆる「和式」に近い生活をされている場合、家具を替えることは容易なことではありません。しかしながら、股関節への負担を減らすためには大切なことなので、部屋のレイアウトを変えられないか検討してみてください。

生活習慣(食生活・睡眠)を見直そう

「食事」や「睡眠」といった生活習慣も見直してみましょう。

食べる量が多すぎたり、栄養バランスが偏っていたり、あるいは食事の時間が遅すぎると、体重増加(肥満)につながりやすくなります。したがって、睡眠の3時間前までに、栄養バランスが取れた食事を適量とるように意識してみてください。

また、寝不足も肥満につながりやすく、自律神経の乱れから痛みを悪化させる原因になります。

毎日、十分な睡眠時間を確保しましょう。また、就寝前のスマホ操作は睡眠の質を低下させるので、できるだけ避けることをおすすめします。

寝る姿勢にも注意しよう

股関節への負担を考え、寝相にも注意してみてください。

就寝時はできるだけ仰向け、もしくは横向きになるのがおすすめです。そのうえで、膝の下にクッションや布団を入れることで、股関節への負担を減らせます。

寝方は本人の習慣や癖でもあるので、変えることは決して容易ではないでしょう。ただ、夜間の数時間は姿勢が固定されるので、できるだけ股関節へ負担が少ない寝相を心がけてみてください。

不明な点があればお医者さんに相談しよう

変形性股関節症のセルフケアを行うなかで、分からない点や不安な点が出てくるかもしれません。

その際は、かかりつけのお医者さんに相談しましょう。また、症状の様子や注意すべき点など、アドバイスをもらうことも大切です。

ぜひ、定期的な通院を欠かさないように心がけてください。

まとめ

変形性股関節症が進行すれば、それだけ症状は深刻になり日常生活への影響も大きくなります。

まずは股関節へ過剰な負荷がかからないように十分に注意しましょう。股関節を酷使する作業や体重増加につながる習慣はできるだけ避けるべきです。

そのうえでストレッチやセルフマッサージなどを続けてみてください。

場合によっては、「しゃがむ」動作を減らすために、生活環境を見直す必要もあるかもしれません。ご自身の健康を優先しながら検討しましょう。

それでは当記事が、少しでもあなたのお役に立てば幸いです。

【参考文献】
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7)公益社団法人 日本整形外科学会:「変形性股関節症」
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