骨折を早く治す方法とは?骨折が治るしくみや治癒に必要な期間について解説

骨折は年齢や性別に関係なく、誰にでも起こりうる身近な怪我の一つです。

骨折をするとギプスやシーネなどによる固定や、場合によっては手術が必要となる可能性もあり、日常生活に大きな支障をきたします

そのため、なるべく早く骨折を治したいと考える方も多いでしょう。

そこで本記事では、骨折を早く治す方法や治癒に必要となる期間について、わかりやすく解説します。

本記事をご覧いただき、骨折治療にお役立ていただきますと幸いです。ぜひ最後までお付き合いください。

まずは骨折が治るしくみを確認

足首に包帯を巻く医師と患者の写真

骨折が治るまでの過程は、「炎症期」「修復期」「リモデリング期」の3段階に分けられます1)

炎症期は折れた骨から出血が起き、腫れや痛みなどが強い状態です。1週間から2週間程度経過すると、修復期に入り仮骨(かこつ)と呼ばれる新しい骨が形成されます。

その後数か月経過すると、骨の強度を高め元の状態に戻すリモデリング期を経て、骨折からの完治となります。

治癒過程からもわかる通り、一度骨折をすると元の状態に回復するまでは、一定の期間が必要です。ただし、状態に合わせて適切な治療を行い、骨折の治癒を促すことで骨折からの早期改善が期待できます。

病院で行われる骨折の治療法とは?

骨折が疑われるときは、放置せずになるべく早い段階で病院を受診し、適切な治療を受けることが重要です。早期に受診し、レントゲンなどの検査や医師の診察を受けることで、骨折の状態が正確に把握できるでしょう。

病院で行われる治療は「保存的治療」と「手術的治療手術療法)」のどちらかが骨折の状態に合わせて選択されます。

ここからは、2つの治療法について解説します。

保存的治療

腕にギプスを巻く患者の写真

保存的治療とはギプスやシーネ、装具などを使用して骨折部位を固定し、骨の回復を待つ方法です。骨が折れて大きなずれが生じている場合、「徒手整復(としゅせいふく)」と呼ばれる、骨や関節を正常な位置に戻す処置が行われることもあります。

また近年は、骨の回復促進や腫れの改善に効果のある「超音波療法」を行う2)病院が増えています。非常に微弱な刺激であるため、治療中も痛みを感じることはなく、早い段階から超音波治療を行うことで治療期間の短縮につながるでしょう。

手術的治療(手術療法)

手術をする医師たちの写真

徒手整復を行っても元に戻ってしまう骨折や、体重がかかる部位の骨折などの場合、手術が必要となります。

手術療法にはさまざまな種類があり、骨折の種類や状態、部位などから総合的に判断し適した手術を医師が決定します。一般的には、金属のネジやプレートを使用して骨折部を固定する「骨接合術こつせつごうじゅつ)」を選択する場合が多いです。

手術を行うことで正確かつ確実に整復や固定ができるため、保存療法と比較して早期に骨折部位を動かせます。さらに、受傷後に早い段階で手術を行うことで、入院期間の短縮や早期の社会復帰が期待できるでしょう3)

【自分でできる】骨折を早く治すためにオススメの方法を紹介

先述した通り、骨折の治癒には一定の期間が必要です。ただし、適切な治療により骨の再生を促すことで、骨折の早期回復が期待できます。

ここからは、骨折を早期に回復するオススメの方法を紹介します。自分でも簡単に実践できますので、ぜひ参考にしてみてください。

骨折した部位を安静にする

骨折した部位の安静を保つことで、骨の回復を促進できます。痛みが強い時期には、骨折部位に負担がかかる動作はなるべく控えましょう

ただし、必要以上に運動を避けると筋力低下や血流量の低下などにより、骨折の治癒に影響を及ぼす可能性があります4)

とくに修復期に仮骨が作られるためには、骨折部位へ血液を送ることが重要です。担当の医師と相談しながら、骨折部位に直接負荷のかからない、適度な運動で体を動かしましょう

睡眠時間をしっかりと確保する

骨の修復には、睡眠時間の確保と良質な睡眠が重要です5)。睡眠中に体をしっかりと休めることで、組織の修復や細胞の再生に効果があります。

また、睡眠不足が続くと自律神経のバランスが崩れ、組織の回復に影響を及ぼす可能性もあります。

「日中はしっかりと日光を浴びる」「自分の体に合った寝具を使用する」などで環境を整え、規則正しい生活を目指しましょう。

骨の回復を促すバランスの良い食事をとる

骨の再生や回復には「カルシウム」や「タンパク質」、「ビタミンK」、「ビタミンD」などの栄養素の摂取が必要です。

食材の中では牛乳や小魚、緑黄色野菜、納豆などがオススメです。ただし、過剰に摂取したからと言って早期に回復するわけではないため、バランスの良い食事を心がけましょう

普段の食事ではなかなか補えないと感じる方は、サプリメントやプロテインなどの栄養補助食品でも摂取可能です。とくに、低栄養状態が原因となり骨折をした場合、栄養補助食品は栄養状態改善に効果があると言われています6)

また、加熱式タバコを含めた「過度な喫煙」は骨の回復を妨げる7)と報告されています。骨折からの回復を早めるために、禁煙は必要不可欠と言えるでしょう。

参考記事:肋骨のひび(不全骨折)を早く治す方法はある?安静期間における食べ物や寝方の工夫を解説

骨折が治る(骨がくっつく)までに必要な期間を部位別に紹介

骨折による痛みがいつまで続くかは、本人の痛みの感じ方や炎症程度により異なるため、一概には言えません。

しかし、最良な条件下で骨がくっつくまでに必要な最短期間は「Gurlt(グルト)の癒合日数」により定められています。ただ実際は、骨折時の年齢や運動習慣、栄養状態が人によって異なるため、期間はあくまで参考程度に確認してみましょう。

骨折部位 最短必要週数
中手骨(指の骨) 2週
中足骨(足趾の骨) 2週
肋骨 3週
鎖骨 4週
橈骨・尺骨(手首) 5週
上腕骨 6~7週
大腿骨 8~12週
脛骨・腓骨(すね) 7~8週

参考記事:突き指を正しい処置で早く治す!骨折との見分け方や対処法を専門家が解説

【予防が重要】骨折する可能性が高い人の特徴とは?

転倒している人の写真

ここまでご説明した通り、骨折から回復するためには一定の期間が必要です。また、骨折により日常生活にも支障をきたすため、可能な限り予防したい方が多いはず。

そこでここからは、骨折のリスクが高い方の特徴を紹介します。もし当てはまっている場合も、先ほど説明した早期回復にオススメの方法を日常的に実践することで、骨折の予防にも効果的です。

ぜひ、ご自分に当てはまるものがないかご確認ください。

骨密度が低い

女性の場合、骨密度は50歳前後から徐々に低下しやすくなります。加齢やホルモンの分泌量の減少、食事量や運動量などの生活習慣の変化が原因と言われています。

また、骨密度の低下から起こる「骨粗しょう症」は、骨が弱くなる疾患です。骨粗しょう症になると骨折のリスクが高まり、一度骨折すると介護が必要となる可能性も高くなります。

ただし、薬物療法やバランスの良い食事、適度な運動は骨粗しょう症の治療や予防に効果的です。

早期に発見し治療するためにも、とくに症状がない場合でも、50歳を過ぎたら定期的に骨密度の検査を行うとよいでしょう

喫煙や飲酒の習慣がある

現在喫煙している方は骨折リスクが約1.3倍、1日3単位以上の飲酒をする方は骨折リスクが約1.7倍高くなると言われています8)。例えば3単位とは、ビールであれば500ml缶を3本、日本酒であれば3合程度の量です。

飲酒は適量であれば問題ありませんが、喫煙は骨折のみではなく、がんや脳梗塞などのさまざまなリスクを高めます。骨折をはじめとした様々な病気を予防するためにも、喫煙習慣のある方は一度禁煙を考えてみるとよいでしょう

運動をする習慣がない

日常的にウォーキングや軽いランニングなどの運動を行う習慣がない場合、骨折するリスクが高い9)と言われています。また、日常的な運動習慣は骨粗しょう症の予防にもなります

さらに日常的な運動は、筋力の維持や関節の柔軟性・バランス能力の向上に効果的です。それにより転倒するリスクを軽減でき、間接的に骨折するリスクも軽減できるでしょう。

過去に骨折している

過去に骨折したことがある場合、その後骨折するリスクは約2.0倍高くなるとの報告があります10)。とくに、骨粗しょう症と診断されると骨折を繰り返す方が多いため、骨折前の状態に戻ることが難しくなるのです。

骨粗しょう症は早い段階で発見し、治療を行えば予防や治療に効果的です。自治体で骨粗しょう症検診を行っている場合も多いため、定期的に骨密度の検査を行いましょう。

参考記事:打撲ができたら病院に行くべき?骨折かもしれない危険な症状と対処法を紹介

まとめ

本記事では、骨折を早く治す方法をはじめ、治るまでに必要な期間や骨折する可能性が高い方の特徴について解説しました。

骨折の治癒には一定の期間を要しますが、適切な治療を行いつつ規則正しい生活を送ることで、早期回復が期待できます。骨折が疑われる場合はすぐに整形外科病院を受診し、医師と相談しながら治療を進めましょう。

また、骨密度の低下は骨折リスクを高めます。早期に発見し治療するためにも、50歳を過ぎたら定期的に骨密度の検査を行ってください

それでは、あなたの悩みを改善するのに、本記事をお役立ていただけますと幸いです。

参考文献
1)久保田 雅史,小久保 安朗:骨折に対する効果的なリハビリテーションの展開─骨折治癒過程の基礎と術後リハビリテーションのポイント─.物理療法科学(26),21-26,2019
2)横田 里奈,一瀬 裕介:術後橈骨遠位端骨折における超音波療法の有用性─準ランダム化比較試験─.理学療法科学 34(6),805–809,2019
3)日本整形外科学会,日本骨折治療学会:大腿骨頚部/転子部骨折診療ガイドライン2021改訂第3版,83-84
4)佐藤知香,梅本安則,田島文博:安静臥床が及ぼす全身への影響と離床や運動負荷の効果について,Jpn J Rehabil Med,56(11),842-847,2019
5)Ann Transl Med:rehalose enhances bone fracture healing in a rat sleep deprivation model, 2019 Jul;7(14):297
6)松本 卓二,木村 友香子:リハビリテーション後に投与する栄養補助食品の大腿骨近位部骨折患者における栄養学的指標の改善効果,日本静脈経腸栄養学会雑誌32(3),1211-1214,2017
7)Kazuya Nishino MD,Koji Tamai MD PhD:Heated Tobacco Products Impair Cell Viability, Osteoblastic Differentiation, and Bone Fracture-Healing,The Journal of Bone and Joint Surgery103(21),2021
8)骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン第III章,39-41,2015
9)吉村 典子,運動、身体活動改善による骨折・骨粗鬆症予防のエビデンス,日衛誌(58),328-337,2003
10)C M Klotzbuecher, P D Ross;Patients with prior fractures have an increased risk of future fractures: a summary of the literature and statistical synthesis,J Bone Miner Res,15(4),721-739,2000