アキレス腱の痛み・腫れ・違和感の原因はアキレス腱炎?適切な対処法をわかりやすく解説!

アキレス腱は人体で最も強固な腱です。

歩いているときやジャンプをするときのような、地面を蹴る動作でアキレス腱は動きます。とくに走ることの多い競技をされている方や日頃ランニングを習慣にされている方はアキレス腱の痛み、つまりはアキレス腱炎になりやすい傾向にあります。

そのようなあなたに向けて当記事では、アキレス腱炎の主な原因を解説し、適切な対処方法をお伝えします。

本記事をご覧いただき、アキレス腱炎の適切な対処方法を身につけ、少しでも痛みの軽減にお役立ていただきますと幸いです。ぜひ最後までお付き合いください。

【人体で最も強固な腱】アキレス腱の働きを知ろう

はじめに痛みの対処法の理解を深めるため、アキレス腱がどのような役割を担っているかを解説します。

アキレス腱は、下腿三頭筋(ふくらはぎの筋肉)踵(かかと)を結んでいる腱です。主につま先を下に向けるときに動きます。役割としては歩く・走るときの蹴り出しや、ジャンプをして着地をするときの衝撃吸収などを担っています。

このように、アキレス腱は酷使されることが多く、運動の繰り返しと疲労の蓄積で小さな断裂が生じます。この断裂を修正する過程で炎症が生じ、アキレス腱炎を引き起こすのです。アキレス腱を説明した画像

【かかとが痛い】アキレス腱炎の一般的な症状を解説

ここからは、一般的なアキレス腱炎の症状について解説していきます。

アキレス腱炎は踵の上部(踵から5cm程度の間)に痛みが出現します。
アキレス腱の炎症が起こりやす部位

この部分に以下のような症状が見られる場合はアキレス腱炎が疑われます。

  • アキレス腱を揉むと痛い、押すと痛い
  • 歩くとアキレス腱が痛い
  • アキレス腱の局所的な腫れ、発赤(赤くなる)、熱感(熱を感じる)がある

発症から間もない軽い炎症の時期には、起床時の違和感運動開始時の痛みが出現します。しかし、動かしていくうちに痛みが軽減していくのが特徴です。

このことから、我慢して運動を継続してしまう方も多く、症状を悪化させてしまう要因にもなります。

軽い症状の場合であっても痛みの原因を把握し、適切な対処を行なっていくことが重要です。

参考記事:【なぜ?】歩くとアキレス腱が痛い原因とは?関係する足首周辺の症状と対処法を紹介

アキレス腱炎の痛みの原因とは?

アキレス腱の痛い女性の画像

次に、アキレス腱炎における痛みの原因を詳しく説明していきます。

アキレス腱炎は、一般的に通常の日常生活を送る上での活動(歩く・走る)のみでは発症しません。炎症が起こり痛みが出現する原因としては、日頃の活動量、および身体的特徴が影響します。

それでは、一般的な痛みの原因3つを紹介していきます。

オーバーユース(足首の使い過ぎ)

アキレス腱炎は、オーバーユース(足首の使い過ぎによって起こることが一般的です。足首への繰り返しの荷重ストレスによって、衝撃を吸収するためにアキレス腱に負担が蓄積し炎症が生じます。

これはアキレス腱炎を発症したスポーツ選手に対する大規模な調査によって明らかとされており、選手の60〜80%が急激な運動量の増加により痛みが出現したという報告がされています。

また、足首のオーバーユースになりやすいスポーツ種目としては、ランニング動作を繰り返すマラソンやサッカー、陸上競技。そして、ジャンプ動作を繰り返すバレーボールやバスケットボールなどの競技にアキレス腱炎は多くみられるため注意しましょう。

さらにこれらのスポーツを日常的に行なっていなくても、慣れない運動を急激に行うことでアキレス腱に痛みが出現する可能性もあります。

ふくらはぎの筋肉の柔軟性低下 

過度な運動後のストレッチ不足や日常的な運動不足加齢などにより筋肉は柔軟性が低下してしまいます。

すると、ランニング動作やジャンプ動作で足首の衝撃吸収をスムーズに行えず、アキレス腱に負担がかかり炎症が起こり痛みが出現するのです。

扁平足(へんぺいそく)や不良なランニングフォーム

アキレス腱への負担はランニングの着地動作など、足首に体重が加わる瞬間に生じます。

その際に、扁平足により土踏まずを潰すように足を着いてしまったり、骨盤が左右にブレた状態で足を着地してしまったりすると、アキレス腱が過度に引っ張られストレスが加わってしまいます。

この繰り返しがアキレス腱の炎症、痛みに繋がるのです。

アキレス腱炎の痛みに対する適切な対処法(ストレッチ・セルフケア方法)をご紹介!

痛みが出現する3つの原因はご理解いただけましたでしょうか?

ここからは、アキレス腱の痛みに対する適切な対処法を解説していきます。

安静第一の『急性期』

急性期には、炎症症状によって歩くだけでも痛みが強く現れる場合があります。

スポーツなどは中断し、安静にすることが大切です。また、常日頃からかなりの歩数を歩いている方は可能な限り活動量も減らし、足への負荷を軽減しましょう。

日常生活で痛みなく過ごせるようになったら、少しずつふくらはぎの筋肉の柔軟性を改善させるストレッチを行いましょう。

ふくらはぎのストレッチ

STEP1:壁に手をつきましょう
STEP2:足を大きく前方に開きます
STEP3:前方の足に体重を乗せましょう
STEP4:ふくらはぎが伸びた状態を10秒間程度保持します
※踵が床から離れないように注意しましょう

筋トレを開始する『回復期』

回復期は歩く時の痛みは軽減したけど、走るなど負荷の高い動きで痛みがでるケースが当てはまります。

炎症によって筋力が低下してしまった筋肉を戻すために、軽めの筋トレを実施していきましょう。

座位ヒールレイズ

STEP1:椅子に座り姿勢を正しましょう
STEP2:片足の踵を持ち上げます
STEP3:ゆっくり下ろします
STEP4:繰り返し実施しましょう
負荷を増やしたい場合は両手を膝の上に置きながら実施します

スポーツ復帰に向けた『筋力増強期』

スポーツ復帰や再発防止のためには、一定の安静期間をすぎたら筋トレを行い筋肉を強くすることが大切です。

ただし、激しい筋トレは負担が大きいので、痛みのない範囲で徐々に進めていきましょう。

ヒールレイズ

STEP1:つま先を台の上に乗せましょう
STEP2:踵を高く上げます
STEP3:ゆっくり時間をかけて踵を下ろしていきましょう
STEP4:繰り返し実施します
踵を勢いよく下ろさないように注意しましょう

アキレス腱の痛みってどのくらいで治る?

海外の報告では、なるべく早い段階でアキレス腱炎を発見し、適切な処置を行えば約1ヶ月ほどで痛みが改善するともされています。

ただし、症状の程度は人によってさまざまで、痛みが改善するまでの期間にも個人差があります。適切な対処を行なっても痛みが改善しない場合は、自己判断はせず専門の医療機関を受診しましょう。

放置すると断裂の危険性も!?アキレス腱の痛みの予防法とは?

アキレス腱が一部、または完全に切れてしまう症状が「アキレス腱断裂」です。

アキレス腱炎は腱に小さな断裂が生じ痛みが出現する状態ですが、アキレス腱断裂と比べると軽い症状だといえます。アキレス腱炎を発症していながら、組織が弱くなっている状態を放置したまま無理にスポーツを行うと、最悪のケースではアキレス腱断裂につながります。

痛みの予防のため以下の対処方法を行いましょう。

  • スポーツをした後は必ずストレッチをして柔軟性を保つ
  • 違和感や痛みを感じたらアイシングを行う

上記のようにストレッチ・アイシングを行うことで、アキレス腱の疲労を取り除くことが大切です。

まとめ

以上、アキレス腱炎における痛みの対処法について解説いたしました。

アキレス腱炎は主にオーバーユース(使い過ぎ)により生じ、場合によっては歩くだけでも痛みが出現するケースもあります。また、痛みの程度によって対処法が異なり、誤った対処法を行うことで症状が悪化してしまう可能性もあります。

痛みの程度に合わせて適切な筋トレ・ストレッチを行いましょう。

それでは本記事をあなたの痛みの改善にお役立ていただけますと幸いです。

参考文献

1)Kvist M. Achilles tendon injuries in athletes. Ann Chir Gynaecol. 1991;80(2):188-201.
2)Kaufman KR, Brodine SK, Shaffer RA, Johnson CW, Cullison TR. The effect of foot structure and range of motion on musculoskeletal overuse injuries. Am J Sports Med. 1999 Sep-Oct;27(5):585-93.