接骨院・整骨院を開業して健康保険を取扱う場合、さまざまな準備が必要です。開業すればレセプトを作成し、勝手に健康保険を請求できる訳ではありません。
そこで今回は、保険請求する際に準備することや流れ・方法、レセプトの作成について解説していきます。
接骨院・整骨院でレセプトを作成する前に知っておきたい知識
接骨院・整骨院でレセプト(柔道整復師療養費支給申請書)を作成する前に、保険請求に関する知識を入れておきましょう。この知識がなければ療養費の取扱いはできませんので、注意が必要です。
療養費の取扱いには手続きが必要
療養費を請求するには、償還払い、または受領委任払いの2つの方法があります。周知の通り、償還払いでは患者様の負担が大きく、通院していただくのは難しいです。よって、受領委任払いで療養費を請求するのですが、それには前もって手続きが必要です。
手続きとは「受領委任契約」というものです。二通りの手続き方法があり、公益社団法人の柔道整復師会の会員となり協定を結ぶか、その他柔道整復師団体に加入し個別で地方厚生局・都道府県知事と契約を結ぶかになります。
この受領委任契約をすることで、受領委任払いによる療養費の請求が認められ、レセプトを作成することができます。
それぞれの管轄に届出
柔道整復師会の会員になれば、どこに何を届ければ良いか教えてもらえますが、個別で行う場合は自分自身で調べて届ける必要があります。
ここでは、大まかな内容を記載しますので、詳しい必要書類等は各管轄のホームページをご覧下さい。届け出が必要な管轄として、以下のようなものがあります。
- 地方厚生局
- 共済組合(公務員の健康保険取扱い)
- 防衛省(自衛官の健康保険取扱い)
- 労災指定(労災保険の取扱い)
- 生活保護指定(生活保護受給者の取扱い)
受領委任払いは届出が受理された日から可能です。可能になれば、承諾通知書が届きますので、その日付をしっかり確認してレセプトを作成しましょう。
接骨院・整骨院のレセプトの算定について
レセプトを作成する際、一番大切なのは算定です。いくら公正に施術を行っていても、正しく算定されずにレセプトが作成できていなければ、保険者から返戻され利益にはなりません。算定基準をしっかり理解し、正しいレセプトを作成しましょう。
初回に算定できるもの
初検料
患者様を初めて施術した場合に算定できるもので、2部位以上の同時負傷があったとしても、初検料は1回で算定します。その部位の施術中にもう一度負傷したとしても、初回のみ初検料を算定し、2回目の算定はできませんので注意して下さい。
患者様が自分の意志で施術を中止し、1ヶ月以上経過した後に来院された場合は、同じ部位であっても初検として取扱うことができます。1ヶ月というのは、例えると1月7日~2月6日まで・6月1日~6月30日までとなります。
また、初検を行ったが何も徴候がなく「無病」や「無傷」と判断した場合でも、初検料は算定できますので覚えておきましょう。
初検時相談支援料
初検時相談支援料とは、初検時に患者様の症状に対して日常生活で気を付けること、スポーツ活動での禁止事項などを「きめ細かく」説明した場合に算定できるものです。患者様に施術方法や日常生活指導、施術後の注意点などをしっかり説明し忘れず算定しましょう。
「無病」や「無傷」には算定できませんので、注意が必要です。
時間外加算・深夜加算
施術所が表示している施術時間外で、初回施術を行った場合に算定できるものです。時間外加算は、通常の施術時間の前でも後でも算定することができます。8時からであれば8時前の施術で算定できますし、20時までであれば20時以降の施術で算定できます。
深夜加算とは原則22時~6時までですが、その時間に通常の施術時間として行っている場合は、時間外加算や深夜加算はできません。
休日加算
ここでの休日とは、日曜日・国民の祝日・年末年始でかつ施術所の休日を指します。よって、その休日でやむ得ない事情により施術した場合に算定できます。しかし、休日に往療した場合、往療料に休日加算はできませんので注意が必要です。
再検料
初検日の後、最初の後療日に算定できるもので、一回のみ算定できます。これは初検後に整復や施術を行った後、このまま後療を行う必要があるかどうか判断するためです。
再検し判断したら、忘れずに算定しておきましょう。
2回目以降も算定できるもの
往療料
基本的に保険施術は施術所で行いますが、患者様のやむを得ない理由(歩行困難や絶対安静など)により、施術所まで来られない場合は往療が認められています。その際、算定可能なのが往療料です。
距離により料金が変わり、施術所から患者様の家までは直線距離で計測し算定します。また、往療に交通費が掛かった場合は、患者様負担とします。
しかし、単なる患者様の希望による往療・定期的な往療・片道16㎞を越える往療・必要の無い患者様の往療は、算定できないので注意が必要です。
罨法料(あんぽうりょう)
罨法には冷罨法と温罨法があります。特に気を付けなければならないのは温罨法で、骨折・不全骨折は受傷日から8日以上経過していても、整復や固定を施行した初検日は温罨法は算定できません。
脱臼・不全脱臼・捻挫・打撲は、受傷日から6日以上経過して整復や施療を行った初検日は同じく算定できませんので、注意しましょう。
電療料
温罨法と併せて、電気光線器具(低周波・高周波・超音波・赤外線療法)を使用し施術を行った場合に算定できるものです。電療料単独での算定はできません。
電気光線器具の使用においては、柔道整復師の業務範囲内で行いましょう。
捻挫・打撲・挫傷
初検時に捻挫・打撲・挫傷と判断した場合に算定できるものです。しかし、単なる肩こりや慢性腰痛など、はっきりとした負傷原因や外傷症状が無いものは算定できません。
骨折・脱臼について
骨折・脱臼
骨折や脱臼は、部位によりそれぞれ算定基準が決められています。肋骨骨折は1本単位で算定するのではなく、左側か右側で算定します。
手指・足趾の骨折や脱臼は、1本単位で算定できます。発育性股関節脱臼は支給対象ではないため、算定できません。
また、頭蓋骨骨折・脊椎骨折・胸骨骨折・膝蓋骨骨折・単純ならざる骨折は原則として算定できませんが、医師から後療を依頼された場合は算定できます。しかし、その場合はレセプトの摘要欄に後療を依頼された医師、または医療機関名を記載しておく必要があります。
金属副子等加算
骨折・不全骨折・脱臼の固定の際、固定材料(金属副子・合成樹脂副子・副木・厚紙副子)を使用すれば、整復料・固定料・後療法の加算として算定できるものです。また、経過の中で固定材料の交換が必要になった場合は、2回まで後療料に加算できますので、覚えておきましょう。
交換したら、交換日をレセプトの摘要欄とカルテに記載します。
施術情報提供料
骨折・不全骨折・脱臼等の柔道整復師の応急施術を受けた患者について、保険医療機関で診察が必要と認められる場合に、柔道整復師の紹介に基づき実際に受診した際に算定できます。
条件として①紹介状の年月日が初検日と同一日、②紹介する際に定められた形式の「施術情報提供紹介書」があるため、それを使用し患者様か医療機関に交付した場合、③交付した施術情報提供紹介書の写しをカルテに添付しておき、請求を行う際はレセプトに写しを添付する必要があります。
柔道整復師が骨折・不全骨折・脱臼と評価し応急処置を行ったとしても、紹介先の医療機関で捻挫・打撲・挫傷と診断された場合は、原則として施術情報提供料は算定できません。紹介先の診断をしっかり確認しておきましょう。
柔道整復運動後療料
骨折・不全骨折・脱臼において、運動機能の回復を目的とした後療法を1回20分程度実施すると算定できるもので、負傷日から16日間以降で1週間に1回程度、月に最大5回まで算定可能です。しかし、ストレッチは柔道整復師運動後療として認められていませんので、可動域訓練などの後療法が条件となります。
柔道整復師運動後療を算定した日をカルテに記載し、請求を行う際はレセプトの摘要欄にも記載する必要があります。
その他、細かい注意点として負傷日が月の16日以降になっている場合、その月に算定することはできませんので注意して下さい。
その他の算定基準
近接部位
負傷した部位が近接している場合、負傷した全ての部位を算定できないことがあります。算定方法は「厚生労働省近畿厚生局 受領委任の取扱いの理解のために」に詳しく記載されているので、ご参照ください。
3部位以上の施術の場合
施術部位が3部位以上の場合、3部位目は算定できるが4部位目以降は算定できません。また、3部位目の全ての傷病(骨折・脱臼・捻挫・挫傷・打撲)の後療料などは、100分の60に相当する料金で算定する必要があります。算定過程で1円未満の端数が生じた場合、小数点以下1桁を四捨五入します。
接骨院・整骨院のレセプトの注意事項
長期理由について
初検日から3ヶ月を超える捻挫・打撲・挫傷の施術は、レセプトの摘要欄に長期理由を記載するか「長期施術継続理由書」を添付しなければなりません。通常、このような負傷は3ヶ月以内に施術が終わることが多いため、なぜ長期の施術が必要なのか理由を提示しなければなりません。
同意医師について
骨折・不全骨折・脱臼の施術は、「応急処置」以外は医師の同意が必要です。応急処置というのは、例えば夕方に来院されたら骨折と判断し、応急処置として整復・固定を施したとします。時間が遅かったため、翌日に医師の同意をいただきました。この場合、応急処置をした日に骨折として整復料・固定料などを算定し、翌日の日付で医師の同意をいただいても算定可能なのです。
そして、医師の同意をいただいた日をカルテに記載し、請求を行う際はレセプトの摘要欄にもその旨を記載する必要があります。
返戻について
レセプトに不備があった場合は、保険者またはレセプト業務の所属団体から返戻されます。健康保険の請求は、少しでも不備があれば返戻されてしまいます。
特に、健康保険証の保険者番号・記号・番号・氏名・生年月日などは間違えやすく、必ず返戻対象となりますので入力する際は気を付けてください。
レセプトが返戻されると再請求する手間が増えるうえ、報酬を受け取る時期が通常よりも1か月以上遅れます。経営の負担となる上に、保険者からの信用低下にもつながるため、レセプトの返戻はなるべく避けることが大切です。
そこで当記事では、レセプト[…]
まとめ
保険請求をするには、事前に受領委任契約の手続きを行い、承諾書を受理したら可能です。そして、レセプトの作成方法をしっかり学び、公正な算定ができるようにします。
前述の通り、さまざまな算定基準があり複雑になっておりますので、詳細は地方厚生局やそれぞれの管轄で確認してください。
それでは当記事が少しでも、レセプト業務の参考になれば幸いです。
<参照元>
https://www.zenjukyo.gr.jp/hokenseiyu_dekirumade/
https://thankyou-recruit.com/active/1918/
https://kouseikyoku.mhlw.go.jp/kinki/shinsei/shido_kansa/judo/000199290.pdf
https://www.osakakokuhoren.jp/wp/wp-content/themes/twentyten/aha/0413ayo_5.pdf