シンスプリントは、ランニングやジャンプを繰り返すスポーツを行う人に多く見られる「すねの内側や外側」に痛みが出る症状です。放置すると悪化し、競技や日常生活に支障をきたすこともあります。
そんなシンスプリントの対策として効果的なのが「テーピング」。目的や痛みの出る部位に応じて正しく貼ることで、痛みの軽減・再発防止・フォームの補正といった多様な効果が期待できます。
本記事では、シンスプリントの原因やタイプごとの違いを解説したうえで、初心者でもできるテーピングの巻き方や製品の選び方を丁寧に紹介。
さらに、自宅でできるセルフエクササイズも取り上げ、症状の根本改善をサポートします。
シンスプリントの原因と基本知識
まずはなぜシンスプリントが起こるのか、どのような人に多いのかを理解しましょう。
シンスプリントとは?症状と特定のポイント
シンスプリントとは、主にすねの内側に痛みが出るスポーツ障害で、正式には「脛骨過労性骨膜炎」と呼ばれます。
走る・跳ぶなどの動作が繰り返されることで、脛骨の内側にある骨膜が炎症を起こし、ズキズキとした痛みが生じます。
痛みは初期段階では運動後に軽く出る程度ですが、悪化すると日常生活にも支障をきたすことがあります。
診断は基本的に問診と触診が中心で、画像検査では異常が見られないことも多いのが特徴です。
シンスプリントの原因|オーバーユースとフォームの影響
シンスプリントの最大の原因は「オーバーユース(使いすぎ)」です。急激に運動量が増えたときや、長時間のランニング・ジャンプ動作を繰り返すことで、脛骨周囲の筋肉や骨膜に過剰な負荷がかかります。
さらに、走行フォームの乱れや、扁平足・回内足などの足の構造的な問題もリスク要因となります。これらにより後脛骨筋やヒラメ筋、前脛骨筋といった足まわりの筋肉に余計なストレスが集中し、炎症が起こりやすくなるのです。
参考記事:【シンスプリントの治し方】脛(すね)の痛みの原因やストレッチ・テーピングなど予防法も紹介
参考記事:シンスプリントを走りながら治す方法は?脛(すね)の痛みに効くストレッチも解説
目的別|テーピングの効果と活用シーン
テーピングには予防・応急処置・再発防止など、目的に応じた役割があります。それぞれテーピングの活用方法を理解していきましょう。
痛みを和らげる目的でのテーピング
痛みを軽減したいときのテーピングは、炎症を起こしている部位への直接的な圧迫やサポートを目的に行います。筋肉や骨膜の動きを補助し、不要なストレスを減らすことで、痛みを和らげる効果が期待できます。
このときに使用するのは、肌にやさしいキネシオテープや、伸縮性のある素材が主流です。貼る際には筋肉の走行に合わせ、やや伸ばした状態で貼ることで、適度なサポート感を得られます。
スポーツ時のサポートとしてのテーピング
競技中に使うテーピングは、運動によって再び痛みが出るのを防ぎ、筋肉の余計なブレを抑える目的があります。
特にジャンプやダッシュの多いスポーツでは、負担を分散させる効果が大きく、試合やトレーニング中のパフォーマンス低下を抑える手段として重宝されます。
テープの貼り方次第では、関節の安定性を高めることも可能であり、疲労の蓄積によるケガの予防にもつながります。
再発を防ぐための補助的テーピング
痛みが一度改善された後も、しばらくは再発予防のためにテーピングを活用するのが効果的です。フォームを維持しやすくなるだけでなく、無意識のうちにかかる負担を分散し、安定した動作を保てるのがメリットです。
また、テーピングをすることで意識的に身体の使い方に注意が向きやすくなり、根本的な動作改善のサポートにもつながります。
部位別|内側・外側タイプのシンスプリントとテーピング方法
次に内側型・外側型に応じた巻き方を詳しく紹介します。ご自身の痛みに合わせたテーピング方法を確認していきましょう。
内側型シンスプリントの特徴とテーピング
内側型は、後脛骨筋やヒラメ筋が過剰に使われて炎症を起こすタイプです。痛みは脛骨の内側に集中し、走行フォームや足のアライメント不良が関係していることが多いです。
テーピングでは、内側に沿って後脛骨筋をサポートするように貼ります。足首~ふくらはぎは自分でテーピングを行うことは難しいので、コーチや家族に頼んで貼ってもらうとよいでしょう。今回、以下の動画では、50mmのキネシオテープと75mmのバンテージテープを使う方法を紹介します。
内側型シンスプリントのテーピング
STEP1:立方骨(りっぽうこつ)※の辺りから足底を通して下腿内側に貼りましょう
STEP2:同様の場所から開始し1/2ずらして貼りましょう
STEP3:圧痛部位を確認しその上で交わるようにクロスさせます
STEP4:1/2程度重ねて再度クロステープを貼りましょう
STEP5:クロスさせたテープの上にバンテージテープを巻きましょう
※立方骨は、外くるぶし前方のくぼみから、指2本分ほど前方・指1本分ほど下方に指を滑らせたところあたりにある骨のことです。
外側型シンスプリントの特徴とテーピング
外側型は比較的少数派ですが、前脛骨筋や長趾伸筋が過剰に使われたことで起こるタイプです。特に足のつま先を上げる動作を多用する競技に見られやすく、スパイクを履いて行う運動にも多く見られます。
テーピングは、脛骨の外側に沿って前脛骨筋を覆うように貼ると効果的です。先ほどお伝えした内側型シンスプリントのテーピングを参考に、逆方向のテーピングを実施しましょう。
巻き方のコツと失敗しないための注意点
テーピングの基本は、「適度なテンション」と「正しい順番」です。強く引っ張りすぎると血流を阻害して逆効果になるため、伸縮タイプのテープでは最大で1/2程度の力で伸ばすのが目安です。
また、貼る前に皮膚の油分や汗を拭き取り、必要に応じてアンダーラップを使うと肌トラブルも防げます。巻き終わりは皮膚にテンションをかけず、軽く抑えるだけにとどめると剥がれにくくなります。
自分でできる!シンスプリント対策セルフエクササイズ
テーピングだけでなく、根本改善に向けた自宅トレーニングも重要です。エクササイズの方法を理解し、ご自身で適切な対処が行えるようにしていきましょう。
ふくらはぎ・足首まわりのストレッチ
ふくらはぎの腓腹筋やヒラメ筋を柔らかく保つことは、シンスプリントの負担軽減に直結します。毎日行うことで、足まわりの柔軟性が高まり、再発防止にも役立ちます。
後脛骨筋ストレッチ
STEP1:両手で足を持ちましょう。
STEP2:足首を斜め後方へ反らせ、ふくらはぎの内側が伸びた状態を保持しましょう。
STEP3:元に戻しましょう。
ヒラメ筋ストレッチ
STEP1:台の上に片足を乗せましょう。
STEP2:身体を前方に倒し、足首を曲げます。ふくらはぎが伸びた状態を保持しましょう。
STEP3:元の姿勢に戻ります。
注意点:踵が離れないように注意しましょう。
足底・足部の筋力トレーニング
足裏のアーチ構造を維持するために、足底のトレーニングなどのトレーニングが効果的です。地味ですが、足の筋力を底上げすることでシンスプリントの原因となる動作のブレを防げるようになります。
タオルギャザー運動
STEP1:タオルを床に敷きましょう。
STEP2:タオルを踏みましょう。
STEP3:指を丸めタオルを引き寄せましょう。
STEP4:指を開きタオルに置きます。繰り返し実施しタオルを引き寄せていきましょう。
Short Foot エクササイズ
STEP1:椅子に座り踵・親指・小指を床にしっかりとつける
STEP2:地面をつかむようなイメージでアーチをあげる
STEP3:アーチを下げ繰り返し実施する
注意点:足の指を曲げないように注意する
シンスプリントに効くおすすめテーピング製品と選び方
巻きやすく効果的なテーピングを選ぶことで、セルフケアの精度が格段に高まります。
シンスプリントは、スポーツや長時間の立ち仕事などによる脛(すね)の痛みとして多くの方が経験するトラブルです。そんな痛みを軽減し、再発を防ぐ方法の一つがテーピング。しかし、製品の種類が多く、「どれを選べば良いのか分からない」という声もよく聞かれます。
ここでは、目的や使用シーンに合わせたおすすめのテーピング製品を紹介しながら、選ぶ際のポイントも分かりやすく解説していきます。
初心者におすすめの伸縮テープ
初めてテーピングを使う方には、「キネシオロジーテープ(キネシオテープ)」などの伸縮性があるテープが適しています。
このタイプのテーピングは、筋肉や皮膚の動きに合わせて伸び縮みするため、貼っていても違和感が少なく、日常生活でも快適に過ごせます。特に最近では、カット済みや貼る位置に印が付いているタイプなど、初心者でも扱いやすい工夫がされた製品が多く販売されています。
貼るときの失敗も少なく、強く引っ張りすぎなければ肌トラブルも起きにくいのが特徴です。
また、肌への負担を最小限に抑えたい人には、通気性の良い綿素材タイプや、敏感肌用の低刺激タイプのものを選ぶと安心です。
競技中に使いやすい耐久タイプのテープ
部活や大会、日々のトレーニングで激しい動きをする方には、スポーツ専用に設計された「パワーテープ」などの耐久性に優れたタイプがおすすめです。
これらのテープは粘着力が強く、汗や水に強い仕様が施されています。長時間にわたって激しい運動をしても剥がれにくく、しっかりと筋肉をサポートしてくれます。
特にスパイクやランニングシューズを履く競技では、テーピングが摩擦でずれることがありますが、耐久タイプであればズレの心配も軽減されます。
ただし、粘着力が強い分、貼り直しが難しく、はがすときに痛みを感じる場合もあります。事前に皮膚を保護するクリームやアンダーラップを使うのもひとつの手です。
テーピングを選ぶときのポイント
製品を選ぶ際に重視すべきポイントは、以下の3つです。
- 使用目的に合っているか
予防や痛み軽減、競技中の補強など、目的によって適したテーピングは異なります。軽いサポートで良いならキネシオ系、本格的に支えたいならパワータイプと使い分けましょう。 - 肌に優しい設計か
長時間貼ることになるため、かぶれやすい人は低刺激・通気性重視のものを選ぶのが基本。肌に合わない場合はすぐに使用を中止しましょう。 - 扱いやすさ(貼りやすさ)
初心者は、あらかじめカットされていたり、貼る位置のガイドがついていたりする製品を選ぶと失敗が少なく済みます。
テーピングは正しく使えば、ケガの予防や痛みの軽減に大きく貢献してくれる頼もしいツールです。自分の目的や生活スタイルに合った製品を選んで、ぜひ日常のケアやスポーツシーンに取り入れてみてください。
まとめ
シンスプリントの予防や改善には、原因を理解し、目的に応じた正しいテーピングを行うことが重要です。内側型・外側型に合わせた貼り方や、製品選びを工夫することで効果は格段に高まります。
また、ストレッチや筋力トレーニングなどのセルフエクササイズを併用すれば、再発防止や根本改善にもつながります。症状に応じたケアを継続し、快適な運動習慣を取り戻しましょう。
【参考文献】
1)Raissi GR, Cherati AD, Mansoori KD, Razi MD. The relationship between lower extremity alignment and Medial Tibial Stress Syndrome among non-professional athletes. Sports Med Arthrosc Rehabil Ther Technol. 2009 Jun 11;1(1):11. doi: 10.1186/1758-2555-1-11. PMID: 19519909; PMCID: PMC2700791.
2)Newman P, Witchalls J, Waddington G, Adams R. Risk factors associated with medial tibial stress syndrome in runners: a systematic review and meta-analysis. Open Access J Sports Med. 2013 Nov 13;4:229-41. doi: 10.2147/OAJSM.S39331. PMID: 24379729; PMCID: PMC3873798.
3)Yagi S, Muneta T, Sekiya I. Incidence and risk factors for medial tibial stress syndrome and tibial stress fracture in high school runners. Knee Surg Sports Traumatol Arthrosc. 2013 Mar;21(3):556-63. doi: 10.1007/s00167-012-2160-x. Epub 2012 Aug 9. PMID: 22875369.