ヘルニアの症状をチェックしたい! 椎間板ヘルニアの特徴や対処法を専門家が解説

腰や首の痛み、手足のしびれなどが続いている場合「これはヘルニアだろうか…」と不安に思われる方は多いのではないでしょうか?

状態を悪化させると、日常生活にも支障が出てくるかもしれません。できるだけ早めにヘルニアの症状を知り、対処を始めていくことが重要となります。

そこで本記事では、椎間板(ついかんばん)ヘルニアが起きているかどうかを判断するための簡単なチェック方法を解説しています。
また、症状を改善するためのセルフケアも紹介していますので、手足の痛みやしびれでお困りの方はぜひ参考にしてみてください。

ヘルニアとはどういうもの?メカニズムや原因をまずは確認

最初に、ヘルニアがどういう病気なのか概要を理解しておきましょう。

ヘルニアとは「体内にある臓器や組織が本来の位置から飛び出した状態」を指します。
したがって、胃ヘルニアや、鼠径(そけい)ヘルニアといった「内臓に起きたヘルニア」も存在しますが、今回の記事では首や腰に起きた「椎間板ヘルニア」をメインに紹介していきます。

椎間板ヘルニアの症状が起こる仕組み

椎間板ヘルニアについて解説した図

椎間板ヘルニアが起こる部位は、その名の通り「椎間板」です。

椎間板とは、背骨を構成する椎骨(ついこつ)と椎骨の間に存在する組織のことです。円盤のような形をしており、脊柱にかかる負担を緩和するクッションのような役割を果たしています。

この椎間板がなんらかの原因で損傷し、中から飛び出したゼラチン状の髄核(ずいかく)により神経組織の圧迫が生じることで、椎間板ヘルニアの症状が発生します。

椎間板ヘルニアの原因

猫背やストレートネック、中腰作業などにより、椎間板に圧力が加わります。そういった不良な姿勢や動作の継続が椎間板の変性をもたらし、椎間板へルニアに発展します。

そのほか、頚椎(けいつい:背骨の首部分)、腰椎(ようつい:背骨の腰部分)のヘルニアのリスクを高めるのは、以下のような要因が考えられています。

  • 加齢
  • スポーツでの外力
  • 喫煙
  • 肥満
  • 長時間の座った姿勢
  • 遺伝

なお年代でみると、首、腰で共通して30〜50代の男性にヘルニアが発生しやすい傾向があります。

【重要】ヘルニア症状のセルフチェック方法

ここからは、「頚椎椎間板ヘルニア」と「腰椎椎間板ヘルニア」の症状の特徴をそれぞれご紹介します。重症度のレベルチェックもできるようになっていますので、ぜひ参考にしてみてください。

なおこれから紹介するチェック方法は、あくまでも目安となります。ヘルニアを確定するには、医療機関でMRI検査を受ける必要がある点は、あらかじめご了承ください。

頚椎椎間板ヘルニア

頚椎椎間板ヘルニアでは、首の痛み肩こり手の軽いしびれといった初期症状がみられます。とくに首を後ろに反らせたとき(上を向いたとき)に痛みやしびれが強まりやすいことが特徴です。

頚椎のヘルニアが進行すると「手や腕の感覚が鈍くなる」「握力が低下してものが握りづらくなる」「手の細かい作業ができなくなる」といった症状が出現します。

そして重症化した場合は、歩行障害排尿障害(尿漏れ、尿が出にくくなる)がみられることも。日常生活にも支障が出てくるため、重度のヘルニアでは手術が検討されます。

参考記事:頚椎(くび)椎間板ヘルニアの改善に効果的なストレッチ・筋トレ3選を紹介

腰椎椎間板ヘルニア

腰痛下肢に生じる痛みやしびれ(坐骨神経痛)が腰椎椎間板ヘルニアのおもな初期症状です。

腰を前側に曲げる姿勢が持続すると症状が増悪しやすいことが特徴になります。もし長い時間座っていたり、中腰作業をしていたりすると腰痛やしびれが強まる場合は、腰椎のヘルニアを疑ってください。

また、神経の圧迫されている部位によって、腰椎椎間板ヘルニアは2つのタイプに分けることができます。

腰椎の下部で、馬のしっぽのように枝分かれしている馬尾(ばび)神経が障害されたヘルニアが「馬尾型」です。
馬尾神経が圧迫されると「腰部や下肢が激しく痛む」「足に力が入りにくい」「下肢の感覚が鈍い」「排尿や排便に異常がある」といった症状がみられる場合があります。馬尾型であれば、基本的に左右の下肢に症状がみられます。

危険度が高く、重度のヘルニアとなるため、馬尾型が疑われる際は早急に医療機関を受診して適切な治療を受けることが重要です。

一方、腰椎から左右に枝分かれした神経の根元が圧迫されたヘルニアが「神経根(しんけいこん)型」です。神経根症状は馬尾型とは違って、片側の下肢に痛みやしびれがみられます。
馬尾型と比較して重症度は低くなっていますが、神経根型も症状を進行させると足に力が入りにくくなるなど、日常生活に支障が出てくるおそれがあります。

参考記事:​​【腰から片側の足にかけての痛み】坐骨神経痛の原因と3つの対処法を専門家が解説!
参考記事:​​腰椎椎間板ヘルニアとは?痛みを和らげる方法をわかりやすく解説!

【症状チェック後にできる】ヘルニアが疑われる際の対処法

前述した症状の特徴から、頚椎や腰椎のヘルニアが起きている可能性のある方は、次のような対処を行ってください。

医療機関に行く

医師の診断を受けている写真

椎間板ヘルニアが疑われる際は、まず医療機関を受診してください。画像での検査を行ったうえで、痛みやしびれの程度にあわせて治療方針が決定されます。

ヘルニアを進行させるおそれがありますので、自己判断で放置することは避けるようにしましょう。

症状が強い時期は安静にする

ヘルニアの影響で首や腰に激しい痛みをともなう場合は、安静を心がけてください。無理に体を動かすと、症状をより長引かせてしまいかねません。

もし患部に熱を感じる際は、氷水を当てて10分ほどアイシングしてみてください。冷やすことで炎症を抑える効果を期待できます。

反対に、温めると炎症が強まる可能性があります。激しい痛みがあるときは、湯船に浸かった入浴は控えることをおすすめしています。

ストレッチで筋肉の柔軟性をつける

椎間板ヘルニアの回復を促すため、医療機関の治療とあわせてストレッチや運動などのリハビリを行います。体の柔軟性を高めることで、椎間板にかかるストレスを緩和するのです。

椎間板ヘルニアに対してはどのようなストレッチを行えば良いのか、詳細はこのあと紹介します。ぜひご参照ください。

椎間板ヘルニアの改善・予防が期待できるストレッチ3選

それでは、椎間板ヘルニアに効果的なストレッチ方法をみていきましょう。
ヘルニアは再発率の高い病気となっていますので、予防のためにもストレッチの継続をおすすめします。

ハムストリングスのストレッチ

太ももの裏側に位置するハムストリングスを伸ばすストレッチです。
ハムストリングスをやわらかくすると、骨盤が後方に引っ張られる力が弱まります。それにより姿勢が改善されてくるため、椎間板にかかるストレスも減ってくるでしょう。

ハムストリングスストレッチ
STEP1:仰向けとなり片脚を抱えましょう
STEP2:可能な限り膝を伸ばしましょう
STEP3:元の姿勢に戻ります
STEP4:繰り返し実施しましょう
※もも裏の筋肉が伸びるのを感じながら実施しましょう

片側を30秒ほど伸ばしたら、反対側も同じ要領でストレッチを行います。

お尻のストレッチ

お尻にある大臀筋(だいでんきん)を伸ばすストレッチです。
大臀筋の緊張をゆるめると、股関節や腰部の動きがやわらかくなるため、椎間板への負担軽減につながります。

大臀筋ストレッチ
STEP1:片脚をお腹に引き寄せましょう
STEP2:反対側の肩に向けてひねります
STEP3:姿勢を10秒間保持しましょう
STEP4:元の姿勢に戻します。繰り返し実施しましょう。

お尻の筋肉がしっかり伸びていることを意識してください。片側を30秒ほど伸ばしたら、反対側も同じ要領でストレッチを行います。

神経のストレッチ

お尻から太もも裏側を通り、足先まで伸びている坐骨神経の動きを良くするためのストレッチです。坐骨神経を伸ばすことで、椎間板ヘルニアの影響で生じる坐骨神経痛の緩和を期待できます。

坐骨神経モビライゼーション
STEP1:両手を後ろに回しましょう
STEP2:上を向きながら膝を伸ばし足首を反らせましょう
STEP3:姿勢を戻し下を向きます
STEP4:上を向きながら膝を伸ばし足首を反らせましょう
※痛みのない範囲で無理せず行いましょう
※膝の伸展と足の背屈を意識しましょう

片側を10回ほど行ったら、反対側も同じ要領でストレッチを行ってください。

【症状の進行に注意】ヘルニアでやってはいけないこと

ヘルニアの人がやってはいけない危険なことがいくつか存在します。症状の進行にもつながりかねませんので、日常生活で十分に気をつけておくようにしましょう。

症状を放置する

日常生活を送るなかで、姿勢を支えるために椎間板には常に負担がかかっています。加えて椎間板は、加齢とともに徐々に劣化しやすくもなっています。
したがって、ヘルニアに対して何もケアを行わず放置していると、症状が悪化していく可能性が高いです。

最初は痛みやしびれが軽い傾向にあるため「まだ大丈夫だろう」と思われるかもしれません。
しかし、ヘルニアの進行を防ぐためには、なるべく初期症状がみられる段階で対応を行うことが重要です。

長期間安静にする

ベッドで横になっている人の写真

ヘルニアの症状が強く出ている際は、安静が大切です。
しかし、長期間体を動かさないでいると体幹の筋力が低下し、椎間板にかかる負担を増強させてしまうかもしれません。

状態にもよりますが、安静はなるべく3日以内に抑えるようにしてください。その後は医療機関での治療もあわせながら、可能な範囲で体を動かすように気をつけましょう。

首や腰に負担をかける

重たいものを持ち上げると、腰椎に強い負担がかかります。さらに前屈みの姿勢は、より椎間板に圧迫力が加わり、ヘルニアを起こしやすくなります。

ヘルニアの再発や悪化を防ぐためにも、重量物はなるべく持たないようにするか、腰を屈める際は膝から曲げるようにすると良いでしょう。

また、普段の姿勢にも注意が必要です。猫背にならないよう胸を軽く張り、耳の穴と肩、股関節が一直線上に並ぶように意識してください。

加えて、同じ姿勢が続くのも首や腰への負担を強めます。デスクワークやスマホの操作をしている際も適度に休憩を入れて、体をこまめに動かすようにしておきましょう。

参考記事:【簡単】姿勢を良くする方法4選!猫背や反り腰を改善して正しい姿勢を保つには

タバコを吸う

ヘルニアのリスクを高める要因に喫煙が考えられています。
タバコに含まれるニコチンの作用で毛細血管(もうさいけっかん)が収縮し、椎間板への血流量が減少します。それにより十分な酸素や栄養素が椎間板に行き渡らず、変性を進めてしまうのです。

ヘルニアの発症に不安をお持ちの方は、禁煙することが大切です。

参考記事:【腰椎椎間板ヘルニア】やってはいけないこと5つ!予防に効果的なストレッチも紹介

まとめ

今回の記事では、椎間板ヘルニアの症状の特徴と対処法について解説しました。

椎間板ヘルニアは症状を長引かせるほど、後遺症を残すリスクが高くなっていきます。本文で紹介した症状のチェック方法をよくお読みになり、早めの対応を心がけましょう。
また、ストレッチは椎間板ヘルニアの予防になりますので、ぜひ日常に取り入れてみてください。

それでは、当記事があなたのお悩みの解決に役立てば幸いです。

【参考文献】
1)椎間板ヘルニアガイドライン
2)Denis Mulleman 1, Saloua Mammou, Isabelle Griffoul, Hervé Watier, Philippe Goupille:Pathophysiology of disk-related sciatica. I.–Evidence supporting a chemical component
3)Hongwei Wang 1, Jiwei Cheng, Hong Xiao, Changqing Li, Yue Zhou:Adolescent lumbar disc herniation: experience from a large minimally invasive treatment centre for lumbar degenerative disease in Chongqing, China
4)A L Nachemson:Disc pressure measurements