電気の刺激によって、痛みや凝りなどの症状を改善していく治療法を「電気治療」といいます。家庭用の機械も市販されていますので、どなたも一度は電気治療を経験されたことがあるのではないでしょうか?
それだけ身近な治療法でありながら「電気を流すとなぜ体に良いの?」「電気治療は本当に効果があるの?」と疑問をお持ちの方は多いかもしれません。
そこで本記事では、電気治療の仕組みや期待される効果を分かりやすく解説しています。
最後まで読むことで、電気治療への知識をより深められるでしょう。ぜひお役立てください。
【仕組みを理解しよう】電気治療とはどういったもの?
電気治療とは、電気を流すことで体が本来持っている自己治癒力を高め、さまざまな症状の改善を図る治療法をいいます。
人の体には生体電流と呼ばれる微弱な電気が流れており、外部からの電気刺激に反応しやすいという性質が備わっています。電気治療ではその性質を利用し、電気的な刺激で筋肉を動かすことにより、マッサージ作用を起こすのです。筋肉をほぐすと血流も良くなってくるため、痛みや凝りなどの症状改善が期待できます。
また、電気治療が持つ効果は、マッサージや血流促進に限りません。電気の種類によっては、捻挫や打撲といった外傷の回復を促すことも可能です。
専門的な電気治療を受けられる施設には、接骨院・整骨院、整形外科クリニックなどがあります。電気治療にはどのような種類があり、効果はどのように変わってくるのか。その詳細はのちほどご紹介していきます。
電気治療は正しく使えば効果あり
「電気治療は本当に効果があるの?」と疑問をお持ちの方は多いかもしれません。
電気治療を受けることで「痛みが軽くなった」と効果を感じる方がいます。しかし、その一方で「電気を流したけれど効果が良く分からない」といった声を耳にすることも少なくありません。
効果のある・なしに関しては「適切な電気治療を受けられれば効果がある」と言えるでしょう。きちんと筋肉の凝りやツボに当たるようにパッドを貼り、適当な強さの電気刺激を加えられれば、電気治療によって痛みや凝りといった症状を緩和していくことは可能です。
もし電気治療で効果を感じられない場合は、パッドを貼る箇所がずれて、原因となる筋肉に電気刺激を加えられていない可能性があります。また、電気の種類によっては深部まで刺激が届かず、筋肉の凝りが取りきれないということも考えられるでしょう。
強いほど効果があるの?
電気の強さですが、強ければ強いほど効果がある訳ではありません。刺激が強すぎると防御反応で筋肉がこわばり、反対に痛みや凝りにつながってしまう可能性があります。
治療効果を高めるには、リラックスした状態で電気治療を受けることが大切です。もし電気が強すぎて体に力が入る場合は、施術者に伝えて心地よい強さに調整してもらいましょう。
電気治療の種類と期待される効果
施術所でよく使用されている電気治療器には、以下のようなものがあります。
一口に電気治療といっても、さまざまな種類があり効果も異なります。ご自身でも症状に合わせた電気治療を選択できるよう、各々の特徴を知っておきましょう。
TENS(経皮的電気刺激療法)
低周波電流を流して、表面的な電気刺激を加えていく治療法です。一般的に「低周波治療」と呼ばれています。低周波治療には、電気刺激によるマッサージ作用のほか、痛みを鎮める「鎮痛作用」が期待できます。
ここで、低周波を流すことで鎮痛作用が働く仕組みを簡単に説明します。
痛みの感覚よりも、肌に何かが触れている「触刺激」のほうが脳に優先的に伝えられることをご存じでしょうか?その特性を利用し、低周波の弱い電気刺激(触刺激)を加えることで痛みが脳に伝えられる経路を遮断してしまうのです。(ゲートコントロール理論)
手や足などをどこかに強くぶつけた際、痛みがある箇所を手でさすりますよね。それはゲートコントロール理論を利用して、自然と痛みをやわらげようとしていることが考えられます。筋肉の凝りのほか、慢性的な痛みに対してもTENSは利用されることが多いです。
また、低周波治療器は鍼と一緒に使用する場合もあります。刺した鍼に電気を流すと、ツボ刺激とともに筋肉を動かすマッサージ作用を加えられるため、より鍼灸の施術効果を高められます。
参考記事:鍼(針)治療はなぜ効果がある?痛みを改善するメカニズムや効き目が出るまでの期間を解説
干渉波療法
干渉波療法は、異なる2種類の周波数の電気を干渉させる(重ね合わせる)ことで、体内に新しい周波数の電気を発生させる電気治療です。たとえば5020Hz(ヘルツ)と5000Hzの電流を干渉させた場合、両周波数の差である20Hzの電気が体内に生まれます。
低周波と比べて、干渉波は体の深部まで刺激できます。また、パッドとパッドの間に電気が流れるため、広い範囲の筋肉を刺激することも可能です。
とくに肩こりや腰痛などの慢性症状に対して干渉波療法はよく使用されています。電気刺激で筋肉をほぐして血流を促し、痛みや凝りの緩和を図っていくのです。
また、マッサージ作用で筋肉や関節の柔軟性を高められるため、ケガのリハビリに干渉波が使用される場合もあります。長期の固定で固まった筋肉をほぐして、本来の可動域を取り戻していきます。
ハイボルト療法(高電圧電気刺激療法)
ハイボルトは、高電圧の電流を利用した電気治療器になります。
干渉波と比較して、より体の深部まで電気刺激を加えられることがハイボルト療法の特徴です。マッサージでは届かないような、深い箇所にある筋肉(インナーマッスル含む)をほぐして血流を改善することが可能です。したがってハイボルトは、通常のマッサージや電気治療ではほぐせない、根強い肩こりや慢性腰痛をお持ちの方におすすめといえるでしょう。
また、ハイボルトは鎮痛作用にも非常に優れています。強い電気刺激で神経の興奮を抑え、痛みの感覚を一時的に遮断するのです。即効性が期待できるため、施術直後でも効果を実感していただけることが多いです。(刺激はやや強めですが、その分短時間で治療効果を発揮できます)
慢性的な症状はもちろんのこと、ぎっくり腰や四十肩、腱鞘炎、オスグッドといった炎症をともなう急な痛みに対してもハイボルトはよく使用されています。(ハイボルト、マイクロカレントを除いて、基本的に急性症状には電気治療を利用できません)
EMS(神経筋電気刺激療法)
EMSは、筋力アップを目的として行われる電気治療になります。電気を流すことで強制的に筋肉を動かし、トレーニング効果を発揮するのです。
施術所で使用するEMSは、市販されているEMSとは違って、高周波の電気を流せるようになっています。高周波によって体の深部まで通電できるため、通常の筋トレではなかなか鍛えづらい、インナーマッスルを集中的に鍛えることも可能です。
腸腰筋(ちょうようきん)や腹横筋(ふくおうきん)といった骨盤を支えるインナーマッスルを強化することで、体幹の安定感が増します。それにともない正しい姿勢を維持できるようになりますので、肩こりや腰痛の予防にもつながります。
その他、膝の痛みを改善・予防する目的で、股関節や太ももの筋肉をEMSで鍛えるケースも多いです。
微弱電流療法(マイクロカレント療法)
微弱電流療法(マイクロカレント療法)は、名前の通り微弱な電気を流していく電気治療です。電気の刺激は非常に弱く、治療中は何も感じないことが多いです。
マイクロカレントでは、人間の体にもともと流れている微弱な損傷電流(そんしょうでんりゅう)に似た電気を流すことで、組織の修復力を促していきます。損傷電流とは、傷ついた細胞に働きかけて修復を促す電流のことです。
マイクロカレントを流すことで捻挫や骨折、肉離れ、むちうちといった外傷に対して、炎症を抑えて治癒を早める効果を期待できます。また、微弱電流は両手首、両足首に電極をつないで、全身に通電することも可能です。全身を流れる生体電流を整えることで、自律神経のバランスを調整する効果が期待できます。
【禁忌】電気療法を受けられない方について
以下のような方は、電気治療を受けられないためご注意ください。
- 体に金属が入っている方
- 悪性腫瘍(ガン)患者の方
- ペースメーカーが入っている方
- 心臓疾患がある方
- 知覚異常のある方
- 発熱している方
- 急性外傷、骨折など急性症状のある方(ハイボルト、マイクロカレントは除く)
また、病気ではありませんが、妊娠中の方も電気治療を受けられません。電気を流すことで、胎児に影響が出るおそれがあるためです。そのほか、何か体調に不安を感じる場合は、あらかじめ医師や接骨院・整骨院の施術者と相談するようにしてください。
電気療法に何か副作用はある?
筋肉の凝りが強い方が電気治療を受けると、施術後にだるさを感じる可能性があります。血流が急に良くなることで、体に溜まった老廃物が体内を巡ってしまうためです。
しかし、それは体が良くなろうとする過程で起こる好転反応になります。水分を多めにとり、安静にしていれば長くとも2〜3日以内には元の状態に戻るでしょう。
また、EMSの場合は筋肉を動かし鍛える目的があるため、施術後に筋肉痛になることがあります。しかし、筋肉痛は筋肉の一時的な炎症になりますので、副作用とは言えないでしょう。
基本的に電気治療を「やりすぎた」「使いすぎた」からといって、体に副作用が及ぶことはありません。また、正しく電気治療が行われていれば「やけど」など、肌に何かの跡が残る心配もほとんどありません。
禁忌に当てはまる方でなければ、どなたでも安心して電気治療を受けていただけます。
まとめ
今回の記事では、接骨院・整骨院や整形外科クリニックなどで行なわれている電気治療について詳しく解説しました。
肩こりや腰痛といった慢性症状に限らず、捻挫や打撲、肉離れといったケガに対しても電気治療は有効です。また、電気の刺激で筋肉を鍛えられるため、電気治療を受けることで痛みや凝りの予防にもつなげられるでしょう。
それでは本記事を参考に、電気治療をあなたのお悩みの解決に役立てていただけたら幸いです。