接骨院・整骨院の問診票とは?作成手順・質問項目・記入例を徹底解説

接骨院・整骨院の問診票とは?作成手順・質問項目・記入例を徹底解説

問診票は初診患者との信頼関係を築くうえで、欠かせない重要書類です。症状や生活習慣を正確に把握し、最適な施術方針を導き出すための基盤であり、同時にトラブル防止や個人情報保護にも関係します。

この記事をご覧いただくことで、接骨院の問診票の基本構成から作成手順、質問項目の設計、記入例、さらに改善のポイントまでを体系的に理解できます。

これから開業を予定している方はもちろん、既存の問診票を見直したい方にとっても、実践的に役立つ内容です。ぜひ最後までご覧ください。

接骨院・整骨院の問診票とは

接骨院・整骨院の問診票は、患者の症状や生活背景を正確に把握し、最適な施術方針を立てるための基本資料です。単に情報を記入するための書類ではなく、患者との信頼関係を築くための重要なコミュニケーションツールとして機能します。

初診時に「どんな悩みを抱えて来院したのか」「どのような生活習慣が影響しているのか」を丁寧に聞き取ることで、施術の方向性を明確にし、満足度や再来率の向上にもつながります。

また、問診票はカルテ作成や保険請求の基礎資料としても欠かせません。個人情報保護法などの法的観点からも、記載内容の明確化と保管ルールの遵守が求められます。特に接骨院・整骨院では健康保険や自賠責保険を扱う場面が多く、施術同意書との整合性を保つことが信頼性の確保につながります。

セラピストから問診を受ける患者

接骨院・整骨院の問診票を作成する前に確認すべきポイント

問診票を作る際、いきなりフォーマットを整えるのではなく、まず「目的」と「活用方法」を明確にすることが大切です。院の方針や施術対象に合わせて、どのような情報を得たいのかを整理しておくと、後の記入負担や改訂の手間を減らせます。

問診票を作る際、まず意識すべきは「どんな目的で」「誰が使うのか」という視点です。ここでは、作成する前に確認すべきポイントをご紹介します。

目的設定を最初に明確にする

問診票には大きく分けて次の2つの目的があります。

  1. 診療・施術に必要な情報を正確に収集すること
  2. 患者との信頼関係を構築すること

この2点のどちらかが欠けると、形だけの書類になってしまいます。特に初診患者の場合、「話を聞いてもらえた」という印象を与えるだけで満足度が上がります。

院の方針に沿った質問設計

院によって得意分野(スポーツ障害、慢性痛、交通事故など)が異なるため、治療方針と一致する設問を設けることが大切です。

たとえば、姿勢・仕事姿勢に関する質問を多く設ける院もあれば、睡眠・運動習慣を中心に聞くケースもあります。

個人情報保護と記載ルール

個人情報は、第三者提供や保管期間を明示し、患者の署名を得ておく必要があります。特に電子化する場合は、アクセス権の管理が不可欠です。

接骨院・整骨院の問診票の作成手順

問診票の内容は、患者・スタッフ双方にとってわかりやすく、無理なく記入・運用できる構成にすることが重要です。問診票作成の流れは、「基本情報 → 症状 → 既往歴 → 生活背景 → 同意項目」という順序が一般的です。

ここでは、現場で使いやすくミスの起こりにくい問診票を作るための5つのステップを紹介します。

ステップ1:基本情報欄を設計する

患者氏名年齢」「住所」「電話番号」「職業」「来院経路」などを記入する欄を設けます。「保険証番号」や「紹介元」を記載する項目を追加しておくと、事務処理がスムーズになります。 

ステップ2:症状や発症経緯を聞く項目を作る

「どの部位が痛いか」「いつから痛いか」「どんな動作で痛むか」を明確に記載してもらいます。人体シルエットの図を印刷して記入してもらう形式も有効です。視覚的に伝わりやすく、スタッフの共有も容易になります。

ステップ3:既往歴・通院歴を確認する

「これまでに整形外科・整骨院などに通院した経験」「服薬・手術歴」「既往症」などを記入します。重複施術や禁忌行為を避けるために欠かせません。

ステップ4:生活習慣・仕事環境などを把握する

姿勢・運動習慣・睡眠・仕事内容などを聞き取り、原因分析に活用します。長時間のデスクワークや肉体労働など、生活環境が痛みを左右するケースは少なくありません。

ステップ5:同意・注意事項の項目を入れる

 治療内容や個人情報の取り扱いについて同意を得る欄を設けます。「施術は治療目的であり、医療行為ではありません」などの文面を添えることで、トラブル防止になります。

接骨院・整骨院の問診票に入れるべき質問項目リスト

どの質問を必須にするか、任意にするかは、院の方針や患者層によって異なります。ここでは、基本構成を保ちつつも、効率的に情報を集められる質問項目を分類表として整理します。

自院の特色に合わせて取捨選択しましょう。

【問診票に入れるべき質問項目分類表】

分類 質問項目 内容例 目的
必須項目 氏名・生年月日・住所・連絡先 基本情報の確認 カルテ作成・保険請求
主訴・症状 「どの部位が痛い」「いつから」 施術内容の判断材料
発症原因 「事故」「スポーツ」「姿勢」 法的対応・施術方針決定
既往歴・服薬 「過去の病気」「服薬中の薬」 禁忌行為の回避
同意欄・署名 施術内容・個人情報の同意 リスク管理
任意項目 職業・勤務形態 「デスクワーク」「立ち仕事」 生活習慣分析
睡眠・運動・食生活 「睡眠時間」「運動頻度」 体調の背景理解
来院目的・期待 「早く治したい」「メンテナンス」 モチベーション確認
精神的ストレス 「仕事のストレス」「家庭」 痛みの心理的要因分析
来院経路 「紹介」「ネット検索」 マーケティング活用

この分類を基準に、自院の特徴に合った項目を取捨選択するのがおすすめです。たとえばスポーツ障害専門院なら、運動内容・ポジションなどを細かく設定。

交通事故対応院なら「保険会社」「事故日」「病院併用の有無」などを追加します。

接骨院・整骨院の問診票の記入例・書き方のコツ

どれほど丁寧に設計された問診票でも、患者が書きづらければ意味がありません。ここでは、実際の記入例を交えながら初診・再診・事故対応など、場面ごとのポイント解説と、書きやすく・読みやすい問診票を作るためのコツを紹介します。

問診票は「患者がスムーズに書けること」と「スタッフがすぐ理解できること」の両立が重要です。特に接骨院では、保険診療・自費施術・事故対応など状況が多様なため、目的別の書式を用意するのも効果的です。

問診票に記載するセラピスト

記入例①:初診のケース

初めて来院した患者にとって、問診票は「院の第一印象」を決める書類です。この段階では、過剰に専門的な質問を避け、「痛みの場所」「いつから」「どんな時に痛むか」「どんなことを期待しているか」といった基本情報に集中させましょう。

【記入例】

  • 症状:右肩を上げると痛みがある。2週間前から。
  • きっかけ:荷物を持ち上げた際に違和感。
  • 通院歴:なし。
  • 希望:仕事に支障があるため、早く改善したい。

このように、患者が自分の言葉で書ける質問形式「はい/いいえ で終わらない設問」が理想です。

記入例②:再診・継続通院のケース

 再診時は「前回からの変化」を中心に設問を構成します。

 【例】

  •  痛みの強さはどの程度変化しましたか?(10段階評価)
  • 改善を感じる動作・痛みが残る動作は?
  • 通院頻度に無理はありませんか?

このように、「前回→現在→次回」に一貫性を持たせることで、治療計画の精度が向上します。

記入例③:交通事故・保険対応のケース

事故対応時の問診票は、法的トラブル防止の観点からも極めて重要です。

次のような項目を明確に記載します。

  • 事故発生日時・状況(相手車両の有無・警察届出の有無)
  • 病院受診歴・診断名 – 保険会社名・担当者連絡先
  • 他院との併用有無(整形外科・整体など)

上記のような情報が正確に残っていないと、保険対応の際にトラブルが発生するリスクがあります。
また、施術同意書を必ず添付し、施術内容・目的を明記しておきましょう。

接骨院・整骨院で問診票を改善するためのポイント

作成した問診票は、一度作って終わりではなく、定期的に見直すことが重要です。患者の傾向や治療メニューが変わると、必要な情報も変化します。ここでは、現場で活用できる「改善チェックリスト」を使って、改善の方向性を明確にします。

問診票の改善は、患者・スタッフ・院の三方向の視点で行うのが基本で、「患者にとって書きやすいか」「スタッフにとって処理しやすいか」「院の目的に合っているか」をそれぞれ検証します。

問診票改善チェックリスト

チェック項目 内容 改善のヒント
患者が書きやすいレイアウトか 文字が小さすぎない・余白がある フォントは12pt以上、1ページ内に収まる構成
設問が多すぎないか 10分以内で記入できる量か 不要項目は年1回見直し
記入ミスが多い項目はないか 空欄・誤記が頻出していないか 選択式に変更・補足説明を追加
スタッフが確認しやすいか 回答の読み取り・入力が容易か チェック欄の配置を統一する
法的記載が漏れていないか 同意文・署名欄は明示されているか 弁護士・社労士監修を検討
院の強みを反映しているか 得意施術や理念が伝わる内容か PR項目や紹介欄を追加
定期的に更新されているか 最終改訂日が明記されているか 半年〜1年ごとにアップデート

このようなチェックをもとに、「今の問診票が患者視点に立てているか」を評価しましょう。問診票の改善は、患者満足度の改善=経営改善にもつながります。

接骨院・整骨院におけるWeb問診・デジタル化の活用

最近は、紙の問診票からタブレット・スマートフォンで入力する「Web問診」への移行が進んでいます。ここでは、Web問診の仕組みや導入の流れ、注意すべき個人情報保護のポイントを具体的に解説します。

紙の問診票は、記入漏れ・読みにくさ・転記ミスといった問題が生じやすいのが難点です。一方でWeb問診では、患者が事前にスマートフォンなどから入力でき、受付での待ち時間を短縮できます。さらに、電子カルテとの連携により、スタッフの入力負担も軽減されます。

デジタル化導入のステップ

Web問診や電子問診を導入する際は、単に紙の内容をデジタル化するだけではなく、院内の運用体制やセキュリティ面までを含めた準備が重要です。

  1. Web問診ツールを選定する(クラウド型・アプリ型など)
  2. 既存の紙問診票を電子フォーム化(Googleフォーム等で試験運用も可能)
  3. 個人情報保護対策を設定(通信暗号化・アクセス制限)
  4. スタッフ教育を実施(入力サポート・説明方法の統一)

導入のメリット

Web問診や電子問診の導入におけるメリットは、特に下記のような点が挙げられます。

  • 待ち時間短縮・受付業務の効率化
  • 患者情報の自動集計・分析
  • 記入ミス・転記ミスの防止
  • 感染症対策(非接触対応)

このように、Web問診を上手に活用すれば、スタッフの負担を軽減しながら、患者満足度とリピート率の両方を向上させることができます。

■注意点

Web問診では、端末操作に不慣れな患者への配慮が必要です。高齢層が多い地域では、紙と併用する「ハイブリッド運用」が望ましいでしょう。

問診してタブレットに入力するセラピスト

まとめ:接骨院・整骨院の問診票は「患者との信頼関係」を築く第一歩

問診票は、患者の声を最初に受け取る大切なコミュニケーションツールです。正確な情報収集に加えて、安心して通える信頼感を与える役割も担っています。最後に、この記事の要点を整理して振り返りましょう。

接骨院の問診票は、症状を把握するための単なる紙ではなく、「患者理解」と「信頼構築」のための出発点です。

  • 目的を明確にし、院の方針に沿った質問を設定する
  • 患者が書きやすく、スタッフが扱いやすい設計にする
  • 定期的に見直し、改善チェックリストで検証する
  • デジタル化で業務効率を上げる

問診票を整えることは、治療効果を最大化するだけでなく、接骨院の経営基盤を強化する行為でもあります。日々の現場で改善を重ねながら、「書かせる問診」から「信頼を築く問診」へと進化させていきましょう。

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