整骨院などの自費メニューでも取り入れる運動療法は、整形外科疾患や内科疾患などでも用いられており、健康維持に欠かせません。
今回は運動療法の種類や目的を注意点とともに解説します。また、運動療法の中に取り入れたいストレッチもいくつか紹介しています。
満足度の高い自費メニューを提供するためにも、ぜひ運動療法について理解していきましょう。
運動療法とは?
運動療法とは、物理療法と並ぶ理学療法(リハビリ)の1つです。
温熱や光線、レーザーなど物理的なエネルギーを用いる物理療法と異なり、ウォーキングや筋力トレーニング等の運動によって症状の改善や予防を図るという点が運動療法の特徴です。
これまで運動療法と言えば、脳卒中後の身体麻痺などの中枢疾患に対するものや、骨折などの整形疾患に対するものが主流でした。
しかし、最近では生活習慣病の改善や心臓リハビリテーション、呼吸リハビリテーションなどの内科疾患に対する運動療法も積極的に行われています。
リハビリとの違い
中には「リハビリと運動療法に違いはあるの?」と思われる方もいるでしょう。
リハビリ(正式にはリハビリテーション)とは広い意味で「運動機能や生活機能の回復」を示す言葉です。そしてリハビリは領域によって大きく「理学療法」「作業療法」「言語療法」に分かれており、理学療法の中の1つが「運動療法」となります。
つまりリハビリと運動療法は同じ意味ですが、概念的な部分が若干異なるので覚えておいてください。
運動療法の目的と対象
適度な運動は心身を健やかに保つためにも大切です。近年、内科的アプローチにも活用されるようになった運動療法の目的と、対象となる患者について解説します。
整骨院や接骨院での運動療法の目的
整骨院や接骨院における運動療法の目的は、骨折や脱臼の施術により一時的に低下した筋力を回復する目的で行われます。
整復や固定のために患部を一時的に安静にしていると、当該箇所における協調性や巧緻性、さらには関節の動きが低下し、スムーズに動かすことができません。
ケガが治っても本来の機能に回復するには時間を要し、その間に何もしなければ日常生活に支障が出たり、再発のリスクが高まったりすることも。
整骨院では、器具や医療機器と合わせて柔道整復師の手による体の機能回復も行ないながら、日常生活の早期復帰を図っています。
内科疾患に対する運動療法の目的は、主に中性脂肪や体脂肪の減少、血圧の降下、血糖の低下、糖質代謝の改善など生活習慣病の改善です。その他には運動時の刺激により、筋萎縮や骨粗鬆症などの予防、運動によるストレス解消でストレス性疾患の改善にも効果が期待されています。
また整形疾患では、日常生活で必要となる立ち上がったり座ったりする動作や、階段の上り下りなどの移動動作の維持・改善を図るのが目的です。その他、ケガの治癒後の筋力強化や体力維持などの健康増進に用いられています。
運動療法の対象となる患者
運動療法の対象は、中枢疾患や整形疾患、そして呼吸器疾患を持つ患者さんをはじめ、急性心筋梗塞や慢性心不全などの大血管疾患の術後における患者さんなどです。
また、有酸素運動によって中性脂肪や体脂肪、糖代謝の改善が目的のため、肥満症や高脂血症、高血圧、糖尿病の患者さんも対象です。その他にも術後や活動量が低下した高齢者における体力低下の改善など、幅広い方が対象となる点も特徴と言えます。
運動療法の種類について
運動療法の種類には、有酸素運動、無酸素運動、筋力トレーニング、ストレッチングなどいくつかあります。それぞれ身体への負荷や、期待できる効果も異なるため、患者さんの症状に合った運動療法の種類を取り入れましょう。
運動療法の種類① 有酸素運動
有酸素運動とは、筋肉を動かす際のエネルギーに酸素を使う運動です。エネルギー源に脂質や糖質を使うため、血中脂質や血糖の減少が期待でき、高血圧や高血糖、脂質代謝異常症などの患者さんにも取り入れたい運動です。
また、心肺機能の改善や骨粗鬆症の予防としても取り入れられています。有酸素運動はある程度の時間をかけて、息が上がる程度の運動が理想です。
【代表的な運動例】
- ウォーキング
- ジョギング
- 体操
- エアロビクス
- 水泳・水中ウォーキング
- サイクリング
運動療法の種類② 無酸素運動
無酸素運動とは、筋肉を動かす際のエネルギーに酸素を使わない運動です。有酸素運動に比べて短い時間にエネルギーを多く必要とし、時間当たりに消費するエネルギーが大きいことが特徴です。時間当たりのエネルギー消費量は大きいため、疲労のもととなる乳酸が溜まりやすく、長時間の運動には不向きです。
【代表的な運動例】
- 短距離走(全力疾走)
- ダンベルやマシンを使ったウエイトトレーニング
- 腕立て伏せ・スクワット・腹筋などの筋力トレーニング
運動療法の種類③ 筋力トレーニング
筋力トレーニングとは、文字通り筋力を高めるために行う運動です。
関節の動きを伴わず行う等尺性運動と関節の動きを伴う等張性運動があり、筋肉に負荷をかけて繰り返し動作を行う等張性運動はレジスタンス運動とも呼ばれ、物を持ち上げたり歩行をしたりするような運動です。
等尺性運動は、たとえば実際に膝を伸ばさないけれど伸ばそうと意識して力を入れるトレーニング方法です。関節への負担も少なく低負荷で行えるため、運動療法の開始時に用いられるほか、筋力や体力が低い方に取り入れやすい運動です。
運動療法の種類④ ストレッチング
ストレッチングとは、筋肉を柔らかくしなやかにして柔軟性を高める運動です。ケガの予防や、疲労の蓄積を予防するために運動前後に取り入れられています。
ストレッチングには、関節の動きに合わせて筋肉の伸縮を繰り返し行う動的ストレッチングと、筋肉をある程度伸ばした状態で静止して行う静的ストレッチングとがあります。
静的ストレッチングは、関節や筋肉への負荷も軽くリラクゼーション効果も得られるため、運動療法の開始時や運動後のクールダウンで用いられることが多いです。
近年の健康志向やスポーツブームにより、スポーツトレーナーの需要が高まっています。
スポーツトレーナーの関連職業として、柔道整復師の資格がありますが、両者の違いが分からない方が多いです。
当記事では、スポーツトレーナーと柔道整復師[…]
運動療法を行う上での注意点
運動療法にはさまざまな種類があり、日々のトレーニングだけではなくケガの治癒後の筋力強化や、生活習慣の改善、病気の予防などでも用いられ、それぞれに合った運動を取り入れることが可能です。
しかし、運動療法を取り入れるにあたって注意しておきたいことも。そこで運動療法を行うにあたり、運動の目安や注意点などを以下でお伝えします。
運動時間や回数の目安
運動療法にもいくつかの種類があります。そのうち、運動の機会が少ない方や運動が苦手な方でも取り入れやすいのが、有酸素運動です。酸素を十分に取り入れて、体全体の筋肉を使うことができる有酸素運動は、1回に20~40分行い、週3 回実施すると良いとされています。
また、筋トレやストレッチは簡単な10分程度のメニューからはじめ、30分~1時間程度と徐々に時間を増やしていきましょう。
何よりも運動は無理なく、楽しく行うのが長続きのコツです。運動する時間がない場合は通勤のときに一駅歩く、外出中はなるべく階段を使うなどの工夫をしてみましょう。
運動中に気を付けること
経口血糖降下薬やインスリン療法などで薬物療法を実施している患者さんは、運動中に低血糖になる可能性があり注意が必要です。
そこで、運動実施の際は患者さんが使用している薬について、医療スタッフも確認しておきましょう。特に糖尿病患者さんが運動を行う際は、必ずブドウ糖やジュースなどを近くに置いておき、低血糖の心配が少ない食後にするなど運動する時間帯にも注意しましょう。
運動療法を行うにあたり注意すべき人
以下のような方は運動療法を行うにあたり、事前に医師への相談が必要です。また、運動実施の際は医療スタッフの下で行い、開始して気分が悪くなるなどの不調がある場合には、すぐに運動を中止しましょう。
- 血糖コントロールが極端に悪いとき(尿ケトン体が中等度以上の陽性)
- 増殖網膜症による眼底出血があるとき
- 虚血性心疾患や心肺機能に障害があるとき
- 腎不全の状態
- 骨・関節の病気を持っているとき
- インフルエンザなどの急性感染症にかかっているとき
- 糖尿病壊疽
- 高度の糖尿病自律神経障害など
運動療法の種類や目的に関するまとめ
運動療法にはいくつかの種類があり、患者さんに合わせて継続可能なメニューを考えることが大切です。
そこで弊社が開発する運動療法システム・リハサクなら、500種類の運動メニューの中から患者さんの症状に応じてすぐにメニューが選択できます。本記事やリハサクを参考に、患者さんにより良い運動メニューを提案してみてはいかがでしょうか?
<参考>