整骨院・接骨院で自費診療に移行するメリットとデメリット及び注意点

整骨院や接骨院の数は年々増加の一途をたどっており、自費診療への移行は柔道整復師にとって急務となっています。そこで、自費診療へ移行する際のポイントなどを紹介します。

整骨院・接骨院を自費診療に移行する理由

最近、自費診療へと移行する整骨院や接骨院の数が増えてきています。では、なぜ保険診療が可能な整骨院や接骨院を、わざわざ保険の使えない自費診療へと移行させる必要があるのでしょうか。そこには業界が抱えている切実な事情があります。

保険規制が厳しくなっている 

そもそも整骨院や接骨院では、骨折・脱臼・捻挫・打撲・挫傷に限って、保険診療が認められています。ただ、骨折や脱臼は一般的に整形外科を受診することが多いため、整骨院や接骨院では実質、捻挫や打撲、挫傷(肉離れなど)しか見ることができません。

それにも関わらず、整骨院や接骨院における施術風景を見てみると、肩や腰を徒手によって揉みほぐす施術をおこなっており、マッサージ屋さんとどう違うのか分からないといったケースが多々あります。

この点に関しては、2年に1度の診療報酬改定の際に、毎度のように議論されています。なぜなら、マッサージ類似行為に関しては、保険が適用されないからです。そのため、整骨院からの保険請求に対して、各保険団体の審査が厳格化しつつあります

また、医療費が国庫を圧迫し続けていることも、保険規制が厳しくなる要因の1つとなっています。そのため、財務省では2020年度の診療報酬改定において、2%以上のマイナス改定にすることを提言しています。当然のことながら、この改定は整骨院や接骨院にも適用されることとなります。

競合が増え過ぎて市場が飽和状態になっている 

整骨院や接骨院で自費診療へと移行するケースが増えている理由の1つとして、競合が増えすぎて、市場が飽和状態になっていることもあげられます。そもそも保険診療では対象となる症状も施術も限定されている為、院同士の差別化が出来ないため、競争に巻き込まれやすくなります。一方、自費診療は自由に対象となる症状も施術内容も選択できるため、差別化がしやすくなります。

実際に数字を見てみると、柔道整復師の所属する整骨院や接骨院の数は、2006年の時点ですでに30,787院を数えていましたが、その後10年間で48,024院(およそ1.55倍)まで増えています。同年のコンビニの数が全国で54,501件であったことを鑑みると、整骨院や接骨院の数はコンビニの数とそれほど変わらないことが分かります。

そうなると当然のことながら患者さんの奪い合いが始まります。その結果、整骨院や接骨院に入ってくる収入は減少の一途をたどることとなる訳です。柔道整復師1人当たりの療養費収入を見てみると、2006年には939万円であったのが、10年後には557万円(およそ41%減)まで下がっています。

このように、保険診療だけではやっていけず倒産に追い込まれる整骨院や接骨院の数が増えてきており、自費診療への移行が急務となっているのです。

施術者の負担が増している 

自費診療へと移行する整骨院や接骨院が増えてきている施術者側の事情としては、負担が大きいということもあげられます。整骨院や接骨院の数は増え続けているのに、人口は減少傾向にあります。そのため、言い方はよくありませんが、整骨院や接骨院では薄利多売とならざるを得ないのです。

また、整骨院や接骨院を運営するうえでネックとなるのが人件費であるため、少ない人数でたくさんの患者さんを見なければならなくなり、身体を壊す柔道整復師も増えています。自費診療にすればそのようなリスクを回避することも可能となります。

整骨院・接骨院を自費診療にするメリット 

それでは次に、実際に整骨院や接骨院を自費診療へと移行した場合、得られるメリットについてみていきましょう。

客単価が上がる 

整骨院や接骨院を自費診療へと移行する最大のメリットが、客単価が上がるということです。保険診療と違い、自費診療の場合、価格設定は自分で好きなようにできるからです。客単価が上がれば、患者数が少なくても利益を上げることが可能です。価格をどのように設定すればよいのかに関しては、後程詳しく解説します。

技術を存分に発揮できる 

施術経験を積み、知識を蓄えた柔道整復師にとって、保険診療の範囲でしか施術ができないのは、物足りなく感じるのではないでしょうか。慢性的な腰痛や頭痛に対する施術に自信があったとしても、保険の枠内では十分にその技術を発揮することができません。

自費診療であればそのような枠にとらわれることなく、これまで学んできた技術や知識を存分に発揮し、さまざまな症例を見ることができるようになります。

治療院に見合った患者さんにだけ施術できる 

柔道整復師も人間なので、すべての患者さんに対して同じ感情で接することができるわけではありません。中には短時間マッサージのような感覚で来られるなど、できれば遠慮したい患者さんもいることでしょう。もちろん、あまりに態度が悪い患者さんに対しては、来院をお断りすることもなくはないでしょうが、基本的に保険診療の場合、すべての患者さんを受け入れる必要があります。

自費診療の場合、自分の整骨院や接骨院に合ったカラーの患者さんだけを集め、見ることが可能です。施術におけるストレスから解放されるという点でも、自費診療への移行はおすすめといえます。

コストが高い物療機器を買う必要がない

一般的に、整骨院では低周波治療器や干渉波治療器、マイクロ波治療器、超音波治療器、赤外線治療器、冷・温罨法、サーモスタット、エコー検査器、シップ、包帯、テーピングなど、実にさまざまな治療器具を用いて施術に当たります。これらにかかる費用や維持費、電気代などは相当な額に上ります。一方、自費診療の場合、自分の手だけで施術をおこなうことが可能なので、固定費などの大幅な削減が可能となります。

毎月の保険請求が不要となる 

柔道整復師には、療養費を患者さんに代わって請求する「受領委任」が認められています。ただ、そのためには毎月レセプト作業をおこなう必要があります。月末のレセプト作業は柔道整復師にとって大きな負担となりますし、外部に依頼するとなればその分、また余計な費用が掛かります。自費診療なら、そのような煩雑な手続きから解放されます。

また、保険請求内容の確認の為に保険者側が患者に電話をするなど患者への迷惑もなくなりますし、最悪のケースでは保険適用が認められず、保険分の収入を逃してしまうリスクから解放されます。

 

整骨院・接骨院を自費診療にするデメリット 

整骨院や接骨院を自費診療へと移行することには大きなメリットがありますが、一方でいくつかのデメリットがあることも忘れてはいけません。

既存顧客を失う可能性がある 

整骨院や接骨院を自費診療へと移行する際に、柔道整復師にとって大きな悩みとなるのが、これまで来てくれていた患者さんを失う可能性があるということです。よほど「この先生でなければだめ」という患者さんでもなければ、大幅な負担増となる自費診療への移行を受け入れてくれないのではないでしょうか。

正直なところ、「保険が使えるから来ている」という患者さんも多いことでしょう。自費診療へと移行する際、最初に越えるべき壁がこの問題です。

軌道に乗せるまでに時間がかかる 

これまで保険診療のみおこなっていた柔道整復師にとって、自費診療は未知の世界だと思います。どんな施術を提供すればよいのか、施術時間は何分で、単価をいくらに設定すればもっとも患者さんを集められるのかなど、実際にやってみなければ分からないことだらけです。

そのため、売り上げが安定化するまでにしばらく時間がかかってしまいます。自費診療に移行して失敗したと思わないよう、ある程度の資金を蓄えておくことが重要です。

患者に対する説得力が求められる 

保険診療の場合と比べ、自費診療になると患者さんに対する説得力がより求められることとなります。患者さんにとっては安くない施術費を払っているわけですから、その分、納得のいく結果を求めるのは当然といえます。

例えば腰痛であれば、なぜ腰痛が起こっているのか、それに対してどのような施術をおこなうのか、施術の結果どんな状態になっているのか、経過はどうなっていくのか、説得力のある言葉で説明する必要があります。

整骨院・接骨院を自費診療にする際のポイント 

整骨院や接骨院を自費診療へと移行するのは、ある意味では時代の流れといえます。では、実際に自費診療へと移行する際、どのようなことに注意する必要があるのでしょうか。

徐々に自費診療へと移行する 

よほど経営に自信がある方や、貯金に余裕がある方でもない限り、いきなり完全に自費診療へと移行するのではなく、段階的に移行していくのがおすすめです。例えば、土曜日の午後だけを自費診療にあてるとか、スタッフには保険診療を担当してもらい、自分は自費診療だけをおこなうなどといった手があります。

そして「これなら自費診療だけでもやっていける」という確信を得た時点で、完全に自費診療へと移行すると良いでしょう。

適切な価格設定にする 

自費診療をおこなう際に、大きな悩みとなるのが価格設定です。高すぎては患者さんを集めにくくなりますし、安すぎては保険診療をやめた意味がありません。ではいくらが最適なのかというと、それは人それぞれというしかありません。逆に、月にいくら売り上げたいのか考え、そこから逆算していくと良いでしょう。

例えば1ヶ月あたり100万円の売り上げを希望するとします。仮に月間の営業日数を25日とした場合、1日の売り上げは4万円必要となります。

1日に8時間営業し、10人の患者さんを見られるのであれば、客単価は4000円ということになります。1日に5人しか見られないのであれば、客単価は8000円となります。このように、初めに目標とする金額を設定し、そこから逆算して微調整を加えていくと良いでしょう。

サービスの質・内容にもよりますが、目安としては施術単価が150~200円/分となるようにサービスの単価を設定しましょう。自分の腕やサービスに自信があれば、200円/分を超える設定でも良いでしょう。

また、患者の月間総支払額は2万円以内を目安にすると良いでしょう。 仮に客単価が4000円なら、そのお客さんを月に5回より多く来院させようとすると客離れのリスクが大きくなります。来院頻度と単価の関係を考えておくことも大切です

施術計画を立て評価を行う 

保険診療をおこなっている場合、「また明日来てください」とか「次は3日後に処置します」などといった声掛けをしやすいですし、患者さんの方でもあまり疑問を抱きません。ところが、1回の施術が仮に8000円であった場合、「また明日来てください」という声掛けだけで来てくれるでしょうか。おそらくそれだけでは来てくれないでしょう。

そこで必要となるのが、患者さんの状態を評価することと、施術計画を立てることです。来院したときの状態と施術後の状態がどう違うのか、必ず確認することが重要です。ポイントは患者さんの口から「楽になった」「こんなに変わった」と言わせることです。その上で、「この状態を維持するためには〇日後の施術が必要です」と声掛けするわけです。

また、中長期的な施術計画を立て、その通りに改善していく技量も必要となります。なによりも大事なことは、「この先生なら治してくれる」と患者さんに思われることです。

自発的にやる仕掛けを用意する

整骨院や接骨院のホームページなどを見ていると、セールスはしているものの、マーケティングをおこなっているところはほとんどありません。例えば、「初回に限って〇%OFF」とか、「こんな施術をおこなっています」というのはセールスです。一方、マーケティングとはあなたの存在が、患者さんにとって必要だと思わせることです。

こちらから売り込み(セールス)をしなくても、患者さんの方が自ら「この先生に見てもらいたい」と思える状況を作ることが理想なのです。そのためには患者さんの課題を理解し、「自分ならそれを解決できますよ」というアプローチをすることが重要となります。

技術を学び続ける 

整骨院や接骨院を自費診療へと移行し、無事にリピーターを確保することができました。ただ、そのようなリピーターが、突然来なくなることがあります。では、なぜそのようなことが起こるのでしょう。理由はもちろんいろいろあるのですが、単純な理由として「患者さんが飽きる」ことがあげられます。

毎回のように同じような施術をしていると、患者さんの方でも「これで本当によくなるのかな?」と疑問を抱き始めます。技術を学び続け、同じ患者さんであっても、その時々に応じた施術を提供することで、「この先生は自分のためにこんなに頑張ってくれている」と思われるようになるのです。

患者満足度を向上させ、リピーターを増やす

この店舗に通い続けたいと思うファンが多いこと、これが自費診療で長期的に成功する治療院の特徴です。保険診療の際は、「近い・安い」ということを理由にお店を訪れるケースが多いのですが、自費診療となると単価も高く、どこにでもあるお店でも良いというわけにはいきません。

単価が高い分、保険診療の時ほど新患や客数が増えないので、リピーターを増やしていかないと経営が成り立ちません。その為には、一人一人丁寧なコミュニケーションを心がけ、自宅での運動指導などのアフターフォローをするなどして、じっくりと患者の心をつかんでいき患者との信頼関係を築いていきましょう。

まとめ

整骨院や接骨院を自費診療へと移行するのは大きな決断かもしれませんが、業界の今後を考えた場合、1つの選択肢というよりは必須の条件といえるのではないでしょうか。いきなり完全に自費診療へと移行するのが難しければ、段階を踏んで徐々に移行していくという手もあります。国の歳入と医療人の関係をみても、このままではいずれ立ち行かなくなります。

そのような事態が起こったときに、まず淘汰されるのは医師ではなく、保険診療をおこなっている柔道整復師でしょう。また、2010年代後半にかけて、整骨院や接骨院の倒産件数が増加している現実もあります。患者さんから「良くなった」「ありがとう」といわれる素晴らしい仕事を続けるためにも、自費診療への移行を考える時期に来ているのではないでしょうか。

<参考元>

https://www.mof.go.jp/budget/budger_workflow/account/fy2017/ke3011c.html

https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-iryohi/17/dl/data.pdf

https://www.jusei-news.com/gyousei/news/2019/11/20191105.html

https://www.e-shugi.jp/contents/k/069_20171025/

https://memorva.jp/ranking/sales/jfa_konbini_uriage_tenposuu_kyakutanka_2016.php

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