現在は、整骨院や接骨院がコンビニ並みに増えたため、経営が厳しいケースも増えています。
そこで、次のように考える方も多いのではないでしょうか。
「開業をするのはかなりリスクが高いから止めた方がいいのか?」
「整骨院を開業しても儲からない?」
以上の悩みが聞かれる反面、独立開業を成功させて年収1000万円以上を達成した柔道整復師も存在します。独立開業を成功させるためにも、まずは最低限のポイントを押さえましょう。
当記事では、柔道整復師が独立開業を成功させるためポイントを5つ紹介。また整骨院・接骨院を開業するまでの流れや開業の条件、費用について解説します。
柔道整復師が開業するまでに必要な手続きの流れ
柔道整復師として開業するためには、次の手順に沿って準備を進めてください。
- 施術管理者要件(実務経験・研修受講)を満たす
- 開業予定地を選ぶ
- 事業計画を立てる
- 開業費用を準備する
- 内装や施術機器を整える
- 開業手続きを行う
- 受領委任取扱い申請を行う
必要な手続きも含めて開業までの手順を詳しく解説するので、参考にしてください。
【開業の条件】施術管理者の要件(実務経験・研修受講)を満たす
2018年の4月から柔道整復師が開業するための要件が変更され、新たに施術管理者であることが付け加えられました。
施術管理者になるためには届出の際に、実務経験や研修受講に関する要件を満たす必要があります。(※1)(※2)
※要件は変更になる可能性もあるので、詳細は各行政のホームページで最終確認しましょう。
実務経験について
満たすべき実務経験の要件は、施術管理者の届出をする時期によって異なります。以下を参考にして、要件を満たしているかどうか確認してみてください。
- 平成30年4月から令和4年3月までに届け出する場合:1年間の実務経験
- 令和4年4月から令和6年3月までに届け出をする場合:2年間の実務経験
- 令和6年4月以降に届け出をする場合:3年間の実務経験
研修の受講
施術管理者の届け出をする前に、2日程度にわけて16時間以上の研修を受講する必要があります。研修内容は次のとおりです。
- 職業倫理について
- 適切な施術所管理
- 適切な保険請求
- 安全な臨床
研修は公益財団法人「柔道整復研修試験財団」によって開催され、研修後に施術管理者研修修了証を交付してもらえます。施術管理者の届出を行う際は、届出書と一緒に修了証の写しを提出する必要があります。
開業予定地を選ぶ
整骨院や接骨院を開業する場合、まずは開業予定地の選定が重要です。開業後に失敗しないためにも、地域の競合や人口、住民の属性を調べて市場分析を行いましょう。
なかでも開業を希望する市区町村の人口や年齢層は、市場分析に役立ちます。これらの情報は地方自治体のホームページから確認することが可能です。
たとえば、変形性膝関節症や頚椎症といった加齢にともなう症状に対する施術が得意であれば、高齢者が住む地域で開業するのも1つの手段です。
頭痛や肩こりに対する施術が得意であれば、デスクワーカーが働くオフィス街や通勤に利用される駅の近くで開業することも戦略として考えられます。
単に「自宅が近いから」「通勤に便利な立地だから」という理由だけで開業予定地を選定するのではなく、開業後を見据えた場所の選定が重要です。
事業計画を立てる
整骨院や接骨院を開業する場合、平均すると1,000万円程度の資金が必要です。資金の使い道について事前に概算して、事業計画や借入資金の見積もりを立てておくことが大切です。
事業計画を立案せずになんとなく開業に踏み切ってしまうと、後にあれこれと必要になり、資金が枯渇することもあります。
事業計画を立てる際には、以下のことも考えつつ開業後の整骨院運営をイメージしておくとよいでしょう。
- 自院はどのようなコンセプトにしたいのか
- どのような患者さんをメインとしていきたいのか
- 必要な治療機器や備品は何なのか
たとえば変形性膝関節症を主な施術対象とするのであれば、膝サポーターを揃えておくことが大切です。また女性をターゲットにするのであれば、化粧台や着替えスペース、個室などを準備すると喜ばれるでしょう。
開業費用を準備する
事業計画を立案し整骨院・接骨院開業に必要な資金の概算を出したら、次に開業資金を調達します。
主な開業資金の調達方法は、次のとおりです。
- 日本政策金融公庫から融資を受ける
- 銀行や信用金庫から融資を受ける
- 地方自治体の助成金制度を利用する
- 親族から援助を受ける
それぞれに一長一短があるので、よく調べてから動くとよいでしょう。次の記事では、開業資金の調達方法について柔道整復師向けに解説しているので、ぜひ参考にしてください。
参考:整骨院・接骨院・鍼灸院の開業資金はいくら?資金調達の方法や返済についても解説
内装や施術機器を整える
開業資金を調達したら、次に整骨院や接骨院の内装を整え、治療機器を揃える必要があります。内装を整える際は、ターゲットとなる患者層を考慮しましょう。
ターゲットとなる患者様が落ち着いて施術を受けられるような環境を整えることが大切です。たとえば高齢者をターゲットとするのであれば、落ち着いた色合いで内装を整えた方が患者様もリラックスして施術を受けられるでしょう。
20代や30代の子育て世代をターゲットにするのであれば、小さい子供連れで来院されることを想定し、キッズスペースを設けるのも1つの手です。
内装が整ったら、ターゲットとなる患者層に合わせた治療機器を導入しましょう。整骨院では、低周波治療器やマイクロ波治療器を揃えることが一般的です。外傷やスポーツ障害などをメインとして扱う場合は、超音波治療器の導入もおすすめです。
開業手続きを行う
開業手続きの際に必要な書類は次のとおりです。
- 施術所開設届
- 施術所の平面図
- 施術所の案内図
- 業務に従事する施術者の免許証
- 登記事項証明書(法人の場合)
- 開設者と施術者全員の本人確認書類
整骨院や接骨院を開業したら、まずは10日以内に所轄の保健所へ開設届を提出します。開設届と施術所平面図の一例を示すと次のとおりです。
▼川崎市の開設届
開設届は保健所で手に入れることができるので、そこに次の項目を記入しましょう。
- 整骨院や接骨院の名称
- 電話番号
- 開設場所
- 開設日
- 施術室の面積や待合室の面積
- 採光及び換気設備
- 消毒設備
▼施術所の平面図記載例
以上の他に、個人事業主として開業する場合は、所轄の税務署への開業届の提出も必要です。青色申告にすると、税制面で優遇措置が受けられるのでおすすめです。
受領委任取扱い申請を行う
整骨院や接骨院は受領委任という独自の形態を採用しているため、保険を扱った施術を行うのであれば、保険取扱いの申請が必要です。
まずは、開設届を提出した後に所轄の地方厚生局に受領委任取り扱い契約を申請します。申請の際には、実務経験期間証明書や冒頭に述べた施術管理者研修修了書の写し、開設届の写しなどが必要です。事前に所轄の地方厚生局で必要書類を確認しておきましょう。
整骨院・接骨院の開業に必要な費用
整骨院・接骨院を開業するためには、平均して1,000万円の費用が必要とされています。その内訳について、次の項目に沿って解説します。
- 初期費用
- ランニングコスト
- 広告費
各項目について具体的な費用も紹介するので、参考にしてください。
初期費用
初期費用から物件の費用を除いた場合、設備や消耗品にかかる費用は概ね50~100万円ほどです。整骨院や接骨院の規模にもよりますが、手技療法をおこなう場合、ベッドや椅子、手足を置くための台が必要です。
他にも次のような備品・消耗品も欠かせません。
- 患者さんの身体に掛けるバスタオル
- 顔の部分に使用するフェイスタオル
- ベッドシーツ
- 冷罨法に用いるタオル
- アイスパックを保管して置く冷凍庫
- 包帯
- テーピング用のテープ
- 固定用具やサポーターなどをしまっておく棚 など
これらにかかる費用を概算すると、およそ50万円から100万円となるでしょう。
また、整骨院では手技療法以外にも、各種電気治療を行うことが多いです。どのような治療機器を選択するかは柔道整復師ごとに異なりますが、保険を適用した施術を行う場合は、低周波治療器やマイクロ波治療器は準備しておいた方がよいでしょう。
外傷を診る場合は、超音波検査器(エコー)やギプスなどを利用することも多いです。これらにかかる費用を概算すると、初期投資としておよそ150万円から200万円かかると考えられます。機械類はリースすることが多いので、その後も月々数千円~数万円の費用がかかることも想定しておきましょう。
◎整骨院を開業する際に必要となる設備一覧
- 施術を行うためのベッド、椅子、手足台
- バスタオル、フェイスタオル、ベッドのシーツ
- 罨法に用いるタオルやアイスパック、冷凍庫など
- 包帯やテーピングをしまう棚
- 電気治療機器
- 運動療法に用いる道具類
ランニングコスト
人件費をはじめとするランニングコストは、まずは3ヶ月分ほどを用意しましょう。整骨院や接骨院では受領委任払いと呼ばれる方法で、保険者から施術費が支払われます。この制度によると、支給を受けるためには、施術を行った柔道整復師が療養費支給申請書(レセプト)を保険者に毎月提出し、直接療養費を受け取ります。
本来は患者が保険者から受け取るはずの療養費を柔道整復師に手続きを委任して、直接柔道整復師に渡してもらうようにするため「受領委任払い」と呼ばれます。
レセプトは毎月8日の午後5時までに提出するのですが、実際に療養費が支払われるのは3ヶ月後の20日です。そのため、開業時にはあらかじめ3ヶ月分程のランニングコストが必要です。
ランニングコストとして考えられる項目は次のとおりです。
- 人件費
- 電気代
- 水道代
- 光熱費
- 地代家賃
- 通信費
- 消耗品
特に人件費と地代家賃はランニングコストのなかでも大きなウェイトを占めるため、忘れずに3カ月分を用意しましょう。
広告費
広告費の概算は、およそ15万円から50万円といわれていますので、自分たちの予算と照らし合わせながら見積もるようにしましょう。
広告をする場合は、次のような方法が考えられます。
- チラシの配布
- ダイレクトメール
- ホームページ
- ソーシャルネットワークサービス(SNS)
- ブログサービス
- YouTube
- 口コミサイト
とくにインターネットの利用が増えた昨今、オンライン広告は主流といえるでしょう。
ホームページは時間帯や曜日にかかわらず患者を集客してくれますが、それはGoogle検索やYahoo検索で上位表示されるからこそ効果を発揮します。
ホームページの表示順位が下位になるほど、クリックされづらくなります。そのため、検索結果に上位表示させる「SEO対策」は整骨院の患者集客にとって欠かせない施策です。
SEOとあわせて、SNSやYouTube、口コミサイトといった他社の媒体を使った広告も相乗効果が期待できます。
ただし、口コミサイトは無料で登録できる反面、正会員として費用を払っている治療院が上位に表示される仕組みを採用する媒体もあります。そのため口コミサイトに有料登録すると集客効果が期待できますが、費用対効果も勘案することが大切です。
また、開業当初に来てくれた患者様には、定期的にダイレクトメールを出してアフターフォローするのも有効です。アフターフォローに力を入れると、リピーターを獲得したり、紹介を増やしたりする効果が期待できます。
柔道整復師が独立開業を成功させるための5つのポイント
柔道整復師として独立開業を成功させたい場合は、次に示す5つのポイントを守りましょう。
- インターネットでの集客方法を学ぶ
- 経営力を付ける
- 患者フォローを怠らない
- 施術スキルを高める
- 初期投資を抑える
それぞれについて詳しく解説します。
インターネットを利用した集客方法を学ぶ
整骨院・接骨院の独立開業を成功させるために、インターネットを利用した集客方法を学ぶことが大切です。このような方法は、Webマーケティングとも呼ばれ現代ビジネスで成功するためには欠かせない施策のひとつです。
Webマーケティングを始める場合、まずは次の方法で自院のホームページを作成しましょう。
- ホームページの制作代行業者に依頼する
- ココナラやランサーズ、クラウドワークスなどのクラウドソーシングサイトで依頼する
- ワードプレスを利用する
- WIXやJimdoなどのホームページ作成サービスを利用する
ホームページの制作代行業者に依頼するとコストがかかりますが、キレイなホームページを作成できます。また費用を抑えてホームページの作成を外注したい場合は、クラウドソーシングサイトの利用もおすすめです。
ワードプレスやホームページ作成サービスは無料でもホームページの作成が可能です。ワードプレスは作成の自由度が高い反面、操作方法をある程度学ぶ必要があります。一方でホームページ作成サービスは、ワードプレスに比べて自由度が劣る反面、初心者でも扱いやすいことがメリットです。
コストやITスキルに応じて自分にあった方法で、ホームページを作成してみてください。
経営力を付ける
柔道整復師としての技術があっても経営力を身に付けなければ、治療院を大きくし、収入を安定化させることは困難です。
整骨院や接骨院の場合、患者さんの不調を改善する一方でスタッフをケアし、売上と経費のバランスを見ていくことが経営のポイントといえます。また、新規患者さんの獲得数を増やし、リピート率をアップさせることも重要です。
政策や経済環境の変化など、常に先を読んでリスクを回避しつつ、経営の安定化に努めましょう。
常日頃から書籍を読んだり、勉強会に参加したりしてインプットしながら、同時にアウトプットも重ね、経営者として研鑽することが大切です。
患者フォローを怠らない
整骨院や接骨院を成功させるカギは、患者フォローを怠らないことです。定期的にダイレクトメールを送ったり、誕生日や記念日にグリーティングメッセージを送ったり、患者様との関係を持ち続けることが大切です。
また、初診時には来院いただいたことに対する「サンキューレター」、再診時には今の症状や今後の見通しについて詳しく記した施術計画書を送りましょう。
そうすることで、患者様のリピート率アップが期待できます。
施術スキルを高める
多くの患者さんは、施術効果が実感できないと施術者に対する期待感が損なわれていきます。そのためスキルを高めて、効果の実感できる施術を提供することが大切です。
最新の技術を学び続けることで、患者様が施術に満足できるようになり、リピート率のアップが期待できるでしょう。
基本的な施術を学びつつ、常に最新の施術法を学んで置くことも整骨院・接骨院の独立開業には大切なポイントだと言えます。
初期投資を抑える
初期投資を抑えると、廃業するリスクを軽減できます。なぜなら、初期投資を抑えることで運転資金を多く確保でき、売上が思ったように伸びなかった時期をしのぎやすくなるからです。
またリースや借り入れなどをする場合は、自己資本を多めにして返済額を抑えることも廃業リスクの軽減に役立ちます。
競合が多い柔道整復師業界では、思ったように売上が伸びないリスクがつきものです。初期投資を抑えて、まずは儲けるよりも事業を継続させるように心がけましょう。
柔道整復師におすすめ!将来性のある独立開業のやり方
独立開業後に将来性のある接骨院・整骨院にしていくためには、患者様のアフターフォローに力を入れることが大切です。
そうすると来院された患者様が満足感を得られるため、定期的に通っていただけるようになります。
特に昨今は健康意識の高い方が多いので、体の専門家として積極的にアドバイスをすると患者様にも喜んでもらえます。そこから治療のあとのメンテナンス通院に誘導すると、長く整骨院に通ってもらえるでしょう。
患者様へのアフターフォローを充実させたい場合は、リハサクの利用を検討してみてください。患者様のアフターフォローを手軽に行えるような機能が備わっていますので、大きな集客効果が期待できます。
以下では、リハサクの導入事例を紹介しているので、ぜひ参考にしてください。
まとめ:柔道整復師として力をつけたら開業しよう
柔道整復師として開業することは、資格と実務経験さえあればそれほど難しいことではありません。
ただし、成功できるかどうかは開業後の経営手腕にかかっています。競合が多いため、集客に失敗すると、すぐに患者様が減少し経営が成り立たなくなるでしょう。
柔道整復師が整骨院・接骨院を開業するためには、まずは開設届や受領委任払いの申請などの手続きをすすめます。それと同時に開業費用を準備し、集客・リピートの方法を学ぶことが大切です。
さらには開業におけるリスクを事前に把握して対策を施し、将来的に経営を軌道に乗せるイメージを持つことも重要です。
独立開業の成功確立を高める方法として、患者のアフターフォローに力を入れてリピート率をアップさせる取り組みが考えられます。アフターフォローに必要な運動指導の内容や資料作りに時間を割けない場合は、リハサクの利用を検討してみてはいかがでしょうか。
リハサクを利用すると、理学療法士が考えた運動指導を動画を使って患者様に提供できます。リハサクに関する資料を無料でダウンロードできますので、興味がある場合は、ぜひご覧ください。
<参照元>
1)施術管理者の要件について(周知のご依頼)|厚生労働省保険局医療課
2)柔道整復師療養費の受領委任を取扱う施術管理者の要件について|関東信越厚生局